レビューまとめ読み[201-250]

2004-11-08

XHTMLによるWeb開発

XHTML による……と題されていますが、内容は必ずしも XHTML と直接関係するものではなく、XML 形式で蓄積したデータから XHTML 文書を出力するシステムの開発において必要となる、様々な技術について幅広く取り上げた初級解説書です。大著ですが、本書1冊を読んだだけで Web 開発のプロフェッショナルになれるというものではありません。

本書が分厚いのは要を得ない解説がダラダラと続くからで、日本人の著者がリライトすれば厚さが半分になるのではないかと思います。とくにマークアップ言語の解説は冗長で、「XHTML+CSSで書くホームページ構造デザインガイド」の巻末付録として収録されたリファレンスと比較すれば、いずれが優れているかは一目瞭然でしょう。

Web 開発のような大きなテーマを1冊で扱う場合、日本の解説書ではワークフローや抽象レベルの話に絞っています。ところが本書は具象レベルの話題ついて泥臭い現場の知識を詰め込んでいます。この方針には疑問があります。本書の解説は中途半端で、きちんと読み込んでも実務レベルに達しません。結局、他書できちんと学ぶ必要があるのだから、それらは本書を無駄に厚くし、読みづらくしているだけではないでしょうか。

とはいえ、サーバなどの知識まで含めた「教科書的な知識」を総合した解説書は珍しく、幅広い技術について「複雑なWebアプリケーションを開発する際には関係者全員が知っておくべき」と考える意識の高い Web 開発業者では、社員みなに読ませる価値があるのかもしれません。

XHTML技術大全―新しいWebページの可能性と活用技法

本書のタイトルには注意が必要です。XHTML、CSS、XSL、XForms、DOM、XLink などの比較的簡素な解説が延々と続く本書は、なるほど幅広い内容を扱っているわけですけれども、XHTML の解説を除けば、網羅性と実際の活用において疑問が残ります。この内容と構成で「大全」と呼ぶことには抵抗があります。

W3C の勧告は、過去の勧告や各種 RFC を参照して説明を省略している箇所が少なくなく、素人が眺めても何がなんだかよくわからないのが実情だ……といってもよいでしょう。そこに本書が登場する素地があります。ただし本書は、仕様書がちんぷんかんぷんの初級者を対象としていません。比較的読みやすい HTML4.01 の仕様書を概ね読み解くことができ、XHTML を取り巻く状況について一定の知識があることが前提となっているのです。

HTML が XML ベースの世界へと大きな一歩を踏み出したことにより、視界がグンと広がったのは事実です。各技術は、既に業務レベルでは活用が進んでいますが、趣味のレベルではその恩恵にあずかることはほとんどありません。したがって趣味で Web サイトを作っている方が XHTML の文法を勉強するためだけに本書を購入するのは間違いです。

解説の文章もレイアウトも生硬で、とっつきにくい本です。現状では、本書の扱う技術については XHTML よりも XML の方が切り口としてふさわしいと思います。「標準XML完全解説〈上〉」「同〈下〉」などと比較検討されることを勧めます。

2004-11-10

速効!図解ホームページ作成 HTML&CSS編

Web サイト作成入門の好著です。本書は、著者の前著「HTML&CSSマスターブック」に Web サイト作成の大きな流れ、画像の作成、ファイル転送の解説を加え、Web サイト作成全般をフォローする1冊に仕上げたものです。速効!図解シリーズの読みやすいフルカラー紙面は今回も素晴らしく、HTML と CSS の解説は十分に信頼の置けるものであり、安心してお勧めできます。

初心者に正しい解説は受け入れられないという迷信から、Web サイト作成入門書には嘘とごまかしの多い解説があふれていました。近年ようやく呪縛が解けつつあり、大手出版社の看板シリーズから刊行された信頼できる解説書は、本書で2冊目となります。

その1冊目「できるホームページHTML入門」と比較しますと、本書の方が到達レベルは高く、ページは少なくなっています。「できる〜」が通読型の解説を志向し、本全体でひとつの Web サイトを構築するのに対し、本書は辞書的な構成を採用しており、項目ごとにサンプルを書き起こしています。「できる〜」が微細な手順まで図解し、キーボード操作まで詳解するのに対し、本書は解説の本筋において有意な単位で手順を図解し、記号の入力を除きキーボード操作には触れません。

パソコン初心者には「できる〜」をお勧めします。一方、Web サイト作成の初心者には本書をお勧めします。ただし解説がわかりやすいからといって一気に読破を目指さず、まず1,2,3,5,10章を読み Web サイト作成の全体像をつかみましょう。中盤以降の辞書的解説は、それから読んでも遅くありません。

なお通読型解説書をお望みで、Web サイトの構想や更新についてもヒントがほしい方には「HTMLとスタイルシートによる最新Webサイト作成術」をご紹介します。2色刷の地味な本ですが、検討する価値はあります。

スタイルシートサンプルブック

CSS2 の初級リファレンスです。タイトルが示す通り、本書は主要なプロパティの全てについて実践例が示されています。ただし本書の本質はリファレンスであり、巻末の CSS によるレイアウトの作例など非常に充実しているものの、やはり付録の域を出ません。CSS によるデザインテクニック集を期待すると肩透かしを食います。

CSS2 の仕様は幅広いのですが、ブラウザの対応が追いついていません。本書は CSS2 の実用範囲をほぼ完全に収録しており、類書にない詳細かつ現実的なサンプル+解説を通して、きちんと CSS の活用法を学ぶことができます。また CSS を適用する HTML 文書のマークアップがきちんとしている(CSS による装飾を前提としたいい加減なものではない)ので、そちらの面でも参考になるでしょう。

中級者の本格的な学習には「詳解 HTML&XHTML&CSS辞典」を勧めますが、実用レベルでは本書1冊で幅広い層の需要に対応します。

本書は世評の高い「そのまま使えるスタイルシートサンプル集」の改訂版です。相変わらず情報過多の印象がある紙面構成ですが、フルカラーで端正なデザインは美しく読みやすいので、不安を感じる必要はありません。自信を持ってお勧めできる1冊です。とはいえ全般に文字が小さく、老眼の方には少々つらいかもしれません。

いますぐスタイルシート&JavaScriptが使える本

CSS と JavaScript の入門書です。「タグ入門ガイド いますぐHTMLが使える本」の姉妹書ですが、とくに内容上の連携があるわけではなく、それぞれ単独で読んでまったく差し支えありません。

本書は CSS と JavaScript について、簡明に説き起こした解説書です。到達レベルは高くありませんが、とくに JavaScript の入門記事は非常によくできており、初心者がずるずると脱落していく箇所をしっかりフォローしています。とはいえ DOM はまったく扱いませんし、CSS の解説も含め Web 標準の志向が非常に薄いことには注意が必要かもしれません。

CSS の解説の終盤では、Web 標準の見地からは「やってはいけない」とされるテクニックが注釈無しで紹介されます。これでは CSS を使う価値がない、むしろ有害となる作例であり、非常に気になります。JavaScript の使われ方も同様で、「本当に有意義な使い方」を考えさせるような構成にはなっていません。本書の解説は、「できる」し「面白そう」だから「やってみよう」という方針なのです。

その意味で、私は本書を高く評価できません。しかし初心者には嬉しい一冊でしょう。とくに JavaScript については、最初は「楽しい」ことに挑戦する他ないだろうとも思うのです。JavaScript の解説が気に入ったので、甘く点をつけました。

これ一冊でわかる!!HTML+スタイルシート

Web サイト作成の入門書です。HTML や CSS について信頼できる解説をしており、また画像作成やファイル転送などの解説も収録されていますから、この1冊で無事に Web サイトを公開できます。2色刷の紙面は地味ですが、全体を通してひとつのサイトを作り上げていく解説は通読に適し、流れを見失いにくく、挫折することなく理解を深めていくことが可能です。

本書は「これ一冊でわかる!!HTML 最新版」の大改訂版に当たります。HTML を装飾に用いるのはよくない、と説明しつつ、そうせざるを得なかった前作から大きく踏み出し、装飾をきちんと CSS に任せ、HTML を正しく文書構造の明示のみに用いる Web 製作手順を解説しています。そのため本書の解説は理屈が通ってスッキリし、安心してお勧めできるものとなりました。飛ばし読みせず、ていねいに本文を追うことを勧めます。

旧版のレビューでは類書「HTMLとスタイルシートによる最新Webサイト作成術」を勧めましたが、新版はこれと比肩しうる内容です。ただし、構想段階で役立つヒントや巻末のリファレンスなどは「作成術」の方が詳しく、比較検討の余地があります。

フルカラーの画面写真がたくさんある本がほしい方には「できるホームページHTML入門」「速効!図解ホームページ作成 HTML&CSS編」「プロが教える!!初心者のためのホームページデザイン教室」をご紹介しておきます。

ホームページの学校 CSS編

CSS の入門書です。7日間でマスターできる構成となっており、講義にしたがって学習を進めることにより確実に基本を学ぶことができます。

ただし、本書は表面的な CSS の文法を追うばかりで、CSS の登場した経緯や、その本来あるべき利用法については、ほとんど教えてくれません。なぜなら、著者自身が CSS を十分に理解していないからです。そのことは CSS によって装飾を施される HTML 文書のサンプルを見れば明らかです。きちんと構造化されたケースは稀で、大半の作例では br 要素による改行や、div 要素や span 要素の濫用が目立ちます。

本書と似たコンセプトで書かれた秀作「Webスタイルシート・デザインガイド」が刊行された現在、本書は存在意義を失ったといってよいでしょう。

HTML & XHTML 第5版

HTML の百科事典とでも呼ぶべき解説書です。大きな版型、分厚い背中、地味な紙面、文字がたくさん……となると敬遠される方が多いでしょうが、気になっているのであれば一読の価値はあります。大著ながら「わかっている人」ならスイスイ読めて、しかも勉強になります。逆に、初心者にはつらいでしょう。

要素と属性の紹介、文法規則、使用上の注意が本書の中心をなし、その他、HTML を取り巻く様々な状況や周辺技術について浅く広い解説がたくさん集められています。ところどころ興味深いエピソードなども挿入され、面白い解説書なのですが、著者はいささか饒舌です。少なくとも実用レベルでは無駄が多く、もっと簡潔にまとめてレイアウトを改善し、情報の視認性と一覧性を高めてほしいところ。じつは「詳解 HTML&XHTML&CSS辞典」がこの要求を完全に満たしており、本書は現在、趣味的な本という位置付けになることに注意してください。

また本書はひたすら HTML を語り倒すので、「Web サイトを作る」ために勉強している初心者にとって、たいへんな回り道となります。急がば回れとは申しますが、体力と時間の問題も考慮しないわけにはいきません。初心者の方は「HTMLとスタイルシートによる最新Webサイト作成術」など、よくできた入門書で学習して Web サイトの製作・運用経験を積むべきです。本書に挑戦されるのは、その後がよいでしょう。

本書は初級者には高い山に見えますが、ある程度の勉強を積んできた方には、整備されたハイキングコースとして気軽に楽しめる宝の山です。書かれている内容の大半は既に知っている、というレベルの方にこそ、お勧めしたいと思います。

2004-11-11

詳解 HTML&XHTML&CSS辞典

HTML と CSS の中級者向けリファレンスです。豊富な情報がよく整理されたフルカラーで見やすい紙面、パラパラとページをめくるだけで目的の情報にたどりつける構成、きちんと書かれたサンプルなど、行き届いた1冊です。しかし本書の最大の特徴は、W3C 勧告の内容を正確に伝える硬派な編集・解説方針にあります。

本書が解説する範囲は HTML4.01、XHTML1.0、XHTML1.1、XHTML Basic、CSS2 で、HTML3.2 以前と CSS1 は対象外です。範囲内の全要素、属性、プロパティ、値について必須/任意選択/非推奨/仕様外を区別して紹介します。ブラウザの対応状況は WinIE4-6、MacIE4-5、NN4-6、Opera6 の8種を調査。対応ブラウザのない項目も粛々と解説されます。ブラウザの独自拡張は巻末付録で最低限の情報が紹介されています。

HTML の解説はとくに素晴らしく、バージョン毎の仕様の違いが明確に示されています。また各要素に内包可能な要素の一覧を示した「DTDでの要素の定義」は類例のない傑作で、実践において非常に役立ちますし、ABC 順の索引としても重宝します。

本書を十全に活用すれば、通常の範囲で仕様書の原文を調べる必要は消えます。膨大な情報をコンパクトにまとめ、正しい情報を実用的に整理しまとめた本書は、自信を持ってお勧めできます。ただし初級者は情報量に圧倒され戸惑うことが予想されますので、最初の辞典は同著者の「プチリファレンスHTML」が無難でしょう。

CSS2.1 の勧告が目前に控えていること、本書刊行後にブラウザシェアの変動があったことなどを踏まえ、来年あたり改訂版が刊行されることに期待しています。

XHTML+CSSで書くホームページ構造デザインガイド

Web サイト製作の経験はあるが HTML や CSS について熱心に勉強してこなかった方に最適な再入門用の解説書です。本書は XHTML と CSS を正しく使った「多くの閲覧者に優しく製作者にも利点の多い Web 製作の手順と考え方」について詳説しています。

スタイルシートスタイルブック」「スタイルシート・ステップアップ・アレンジブック」「HTML&スタイルシート デザインブック」など、整然とした HTML 文書を CSS で装飾するテクニックを扱った書籍は既に複数存在します。そこでテクニックの紹介は他書に譲り、マークアップと装飾の基本的な理論を詳しく解説することに注力しています。また実践で役立つ文法外のポイントを押えているのも本書の特徴です。

これは XHTML についても同様で、本文中では「考え方」の解説に注力し、文法解説の大半を巻末のリファレンスに頼っています。類書「スタイルシート スタンダード・デザインガイド」が HTML4.01 の全体像を本文で解説したのとは対照的です。しかしいずれも「経験者が新しい Web 製作手法を学ぶ」再入門書であり、初めて HTML や CSS に触れる方にはお勧めできません。逆に高度な話に期待される方も他書を検討なさるべきです。

初級者から中級者まで1冊で対応するとアメリカ流の大著になり、日本の大半の読者にはついていけない本になります。用途を間違えず、最適な本を選択していけばよいのだと思います。

2004-11-25

Z式マスターワード2003

Word の初級解説書です。大判ながら図解が細かく、一見、紙面はごちゃごちゃして見えます。しかし実際に読んでいけば、図解が細かいのはステップをていねいに踏んでいるからだと気づきます。レイアウトが一貫しているので、迷いなく読み進められます。値段に比して内容は豊富で、マスターすれば相当な知識量となります。

初心者・初級者向けの解説書には2つの方向性があります。基本項目に絞って解説する入門書と、マイナーな項目まで紹介する総合解説書です。本書は後者ですが、私は前者を勧めます。「ひと目でわかるMicrosoft Office Word 2003」と「これでわかるワード2003」を除く総合解説書は、いずれも基本方針に問題があるからです。

Word は全体→部分の順で作りこむ整然とした作業工程を基本としており、大量の書類作成を支援する機能が豊富に用意されています。きちんと活用すれば個人ユースでも便利なのですが、理解が浅いとトラブルの原因ともなります。ところが初級者向けの総合解説書の大半は支援機能を上級機能として解説せず、部分→全体の順で文書を作成する場当たり的な手順を示し、Tips の紹介に力を入れています。

Word を使いこなしたい方は、基本操作を学んだら、Tips はさておいて「文書作りでつまずくWordのしくみと落とし穴」などで Word の考え方をしっかり学ぶべきです。逆に文書作成の非効率を諦め、一定レベルで妥協するならば、本書は有力な選択肢のひとつとなりますが、それなら入門書の方がよいと思います。

2004-12-21

はじめよう! みんなのブログ Vol.2

Vol.1 は刊行時点における初心者向けブログ解説書の決定版でしたが、Vol.2 はシリーズものの弱点を避け切れなかったのではないか、という印象です。前作を所有している読者をも対象とせざるをえないため、王道的な入門記事を概要程度に扱うことしかできず、窮屈な構成となっています。

では前作の読者ならお勧めできるのかというと、難しいところ。なぜなら、ブログ初体験の読者を無視できないため、様々なブログサービスを紹介する記事や、ごく初歩的なカスタマイズの解説記事などに多くのページが割かれているからです。

不定期刊行の「初級者向けブログ専門誌」としては素晴らしい仕上がりで、楽しく読める1冊です。ブログを運営している著名人へのインタビューなど、通常の解説書にはない旬の話題が盛りだくさん。けれども、ムック本としては中途半端な印象があります。初心者がほしい情報は全部この1冊で手に入る! というお得感、安心感は Vol.1 と比較して、かなり減じています。

僅かに内容が古くなっているとはいえ、初心者が1冊だけ買う本としては、Vol.1 を勧めます。雑誌として読むなら、今後も注目していきたい……といった感想を持ちました。

このブログがすごい!2005

おもしろいブログ、人気のブログを紹介するムック本です。前半は、適当なランキングによる特選ブログの紹介と、テーマ別のお勧めブログ紹介。「このミステリーがすごい!」などと基本的には同路線のムック本といってよいでしょう。

宝島社のムック本だけに、人気ブログを紹介しつつも、ベストセラーなら何でもいいという路線は採用していないのでご注意ください。「このミス」が西村京太郎やパトリシア・コーンウェルを無視しているのと同様に、本書も多くの人気ブログを無視しています。自分の好きなブログが宮部みゆき(ランキング常連組)か内田康夫(無視され組)か判断できない方は、購入前に立ち読みされることを勧めます。

後半は出版社ならぬブログサービス提供社の紹介と、インタビューで構成されています。各社のセールスポイントや、サービス毎の人気ブログ紹介(意外と紹介数は多い)など、ブログ界隈のスナップショットとして意外に価値ある資料となっているように思います。ただし10社しか紹介されていないので、気になる方は要確認。

著名な個人サイトには息の長いものが多いので、次年度版以降の発刊には不安がいっぱいです。「この文庫がすごい!」は1996年に始まり、2001年版で息切れしました。「既出だから」といった編集の都合抜きで、純粋に頂上ブログを総覧できるのは、今年度版だけかもしれません。逆にいうと、本書は「買い」です。

ブログでできる簡単ホームページ作り

ニフティのレンタルブログサービス「ココログ」の入門書です。

ココログでつくるかんたんホームページ」と異なり、ココログプロにおける CSS を用いたデザインのカスタマイズなども扱っているので、既にサービスを利用している方であっても読む価値があります。逆にココログベーシックでブログを運営し満足されている方にとっては、買う必要のない1冊といえます。

分厚い本ですが、それは紙が厚いためであって、ページは決して多くありません。しかも余白の多いレイアウトに図解中心の解説ですから、すぐに読み終わるでしょう。ただし本書は(スペースの配分はともかく内容的には)文章による解説が中軸に据えられ、図解は操作手順の説明のみを担当しています。けれども、その文章は簡潔でありながら読者に優しく、また解説の流れが明快なので、心配は無用かと思います。

初心者は、利用するサービスと解説書の説明が完全に一致しないと混乱します。本書を読了してもココログしか使えるようにならないので、注意が必要です。他のサービスへの乗り換えは、パソコン、ネット、ブログの文化や技術用語などに十分慣れるまではお勧めできません。

できるブログ

paperboy&co. のレンタルブログサービス「JUGEM」の入門書です。全10章を読破すれば、付録として収録された「ココログ」の解説も楽々理解できるでしょう。

ブログ入門書が特定のレンタルブログサービスの解説書となるのは、致し方ないことです。サーバをレンタルしてブログを設置するためには、多くの前提知識が必要となり、初心者には荷が重いからです。本書の不幸、あるいは著者・編集者のリサーチ不足が招いた悲劇は、本書刊行後まもなく JUGEM が新規登録を停止したことです。初心者は新規登録受付中のサービスを解説している「ウェブログ・ビギナーズ」「ブログでできる簡単ホームページ作り」「はてなの本」など他書に当たるべきです。

ただし、JUGEM は初級者をターゲットとした無料サービスには珍しく HTML も CSS もフルカスタマイズできました。したがって本書は、他の多くの中級者向けブログサービスを利用する基礎となる HTML と CSS の解説を有しています。HTML と CSS そのものの解説としては大いに問題含みの不完全なものですが、ブログのカスタマイズという文脈においては、これで十分役立ちます。

レンタルブログの解説書には、入門書の次がデザインカスタマイズの専門書(中級)となっており、間をつなぐ本がありません。微妙な線ですが、そのあたりを狙って本書を購入するのはアリかもしれません。いずれにせよ、基本的には JUGEM の入門書に他ならないので、購入前によく検討されることを勧めます。

ブログの力

非常に地味かつ特異な本です。著者は謙虚なブログユーザで、技術革新を素直に歓迎し、あちこちで学んだ知識を読者にお裾分けしてくれます。全知全能の先生がバリバリ説明する、というスタイルではない。

実際、本書の内容には間違い(といって悪ければ、知識や視野の狭さゆえに「木を見て森を見ず」となっている説明)が多々あります。例えばウェブログの発祥について、レンタルブログサービスの登場により、ウェブログの本質が、サイトの(更新)スタイルからツールやシステムへすりかわって以降の流れしか示さない。しかし著者の「程度」を赤裸々に明かした解説スタイルは、他書にない堅実な「重さ」を有しています。

また、読者としてブログをどう読んだら楽しいか、ていねいに説明していることも目を引きます。大半の類書はブログをはじめたい書き手のための解説書なのですが、さすが中高年をターゲットにした1冊といえます。

一方、レンタルブログサービスの利用法の詳細な図解などなく、当然パソコンの操作法など一言もなし。WWW というのはサーバと個々のユーザのパソコンがケーブルでつながっていて……という説明もない。つまり、パソコンが使えて、ネットにも慣れている、そんな方を対象読者としているわけです。技術的な話はアッサリしており、いかにブログを運営していくか、といった話が後半のメインとなります。

よい本ですが、中級ユーザには退屈でしょう。初心者、初級者に勧めます。なお「ウェブログ超入門!」と比較検討されるとよいでしょう。

ブログで始める超速起業入門

本当に起業して成功してしまう人がいるのが問題といえば問題なのですが、「あなたにもできる」風の煽りに乗せられないことが大切です。何とか健康法のようなもので、実際に成功者はいるのですけれども、ではその人が「ふつうの人」だったのかどうか、その成功体験を一般化できるのか、よく考えねばなりません。

メルマガで起業する、という本がたくさん書かれた時代がありました。メルマガは基本的に過去の資産が死蔵されていくから、スタートダッシュに失敗したらもうダメだという傾向があるが、ブログなら記事がきちんと検索エンジンに引っかかるから、以前失敗した人でも大丈夫、と著者は説明します。しかし結局のところ、本質的には文章を書いて起業しようという話なのです。だから、本を書いて起業、ミニコミを発行して起業、といった本も過去にはたくさんあって、死屍累々であるという事実は押えておくべきです。

書くツールはどんどん進化してきましたが、有用な文章まで自動で生み出す機械はありません。これは著者も認めている通りで、つまるところ書けない人には書けない。

だから本書の読者の大半は、起業などしないでしょう。本当に起業される方は、本気で検討されるだろうから、私がここで苦言を呈する必要もないだろうと思います。それでも、老婆心ながら、ブログは趣味にとどめおくのが賢明です、と申し上げておきます。

なお、本当に誰でもスズメの涙程度に稼げるアフィリエイト広告などについてもページが割かれていますので、趣味のブログでも本書の購入代金程度は取り戻せるかもしれません。

Movable Typeスタイル&コンテンツデザインガイド

MT の中級書です。MT3.1 まで対応しており、前半はテンプレートタグの詳細な事典、後半はオリジナルのテンプレートを作成し簡易 CMS として活用する方法の解説となっています。MT を CMS として用いる方は多くないでしょうが、私は全ての中級ユーザに本書を勧めます。

MT は暗中模索の時期を経てウェブログスタイルのデファクトスタンダードを築いたツールです。目標の不明確が、自由度の高い仕様に結実しました。MT 以降のウェブログツールの大半がシンプルで小さく、ウェブログにしか使えないのは、到達目標が明確だったからです。先駆者の苦労が、MT を孤高の存在としました。

前半のテンプレートタグ事典だけでも本書は至高の MT 解説書といえますが、真骨頂は後半の CMS としての MT を解説した部分でしょう。今、私たちは「ウェブログの形」について多くの先入観を抱いています。それ故に、テンプレートの本質について、実はよく理解していない。1からテンプレートを組み上げる演習を繰り返し、本書を読了したとき、ウェブログスタイルの巧緻とアイデアに驚嘆するでしょう。

「わかっている人」向けに書かれていることもあって、HTML と CSS がきちんと用いられているのも本書の特徴です。MT のデフォルトテンプレートは HTML の用法に難があることで有名です。本書の仕上げに、白紙の状態からウェブログスタイルのオリジナルテンプレートを作成すると、たいへん勉強になります。

本書はコンテンツの表現に多くを割き、インデックスの工夫はアッサリしています。これは MT の CMS としての弱点によるもので、実際、プラグインなしではあまり大したことはできません。このあたり不満のある方は、さらに WWW で情報を収集されることを勧めます。

2004-12-25

月刊!木村剛Vol.3

ニフティのレンタルブログサービス「ココログ」にて有名人ブログ枠で快調にとばしている「日刊!木村剛」の集成版。順調に刊行ペースが落ち、第3巻にして早くも季刊誌になってしまった「月刊!木村剛」ですが、内容は面白いですよ。

ただ、雑誌としての弱さは否めません。木村さんがテーマに取り上げている内容は、いずれも長いスパンで取り組んでいく他ない課題です。本来、月刊誌であれば、同じテーマの特集を2号続けることはせず、また1号毎に一定のまとまりを持った内容の記事を読者に提示していかねば商品になりません。しかし本書は、日刊ペースで書かれた記事をまとめたものなので、月替わりのテーマ・切り口が不明確であり、また、暫定的な結論もない。

年単位ならば、こうした日々の記録の集成も、時代のスナップショットとして有意義なのでしょうけれども、月刊誌としてはどうか。この調子では、今後もずるずると刊行間隔が開いていき、ついには「木村剛年鑑」になってしまうのではないか、と危惧します。

本来、こういう本は、サイトの読者がファングッズ的な買い方をして支えていくべき商品(売れない漫画の単行本のようなもの)です。今は無料で読めるウェブ上の情報も、数年後には消えていますよ。将来、また読み返したいと思うなら、本の形で所有しておくのが安全確実だと思いますが……。

2005-01-11

はじめてのホームページ・ビルダーV9

HPB9 の初級解説書です。HPB9 から追加された「スタイリッシュエフェクト」は簡単にカッコいいデザインを作る機能ですが、中級者には用無しです。その意味では「どこでも配置モード」と似た存在で、本書に詳細な解説はありません。また中級以上の機能は解説対象外のため、本書は画面写真以外 HPB8 版と大差ない内容です。

しかし不人気な Hotmedia の解説を削り、入門記事とアートデザイナーの解説を充実した結果、初級解説書としてバランスがよくなりました。「標準モード」を中心に速習を目指し、付属ツールの説明を絞り込んだ、見通しのよい1冊です。紙面は機能的に整理され、上品な印象。柱の情報が充実しており、頁をパラパラめくるだけで目的の項目を発見できます。

初心者は1・2・3・8章をきちんと学び、Web サイトの作成・公開に必要な最小限の技能を身につけてください。Web サイトの公開が最終章なのは「ページを作る→公開する」という流れ故ですが、4〜7章は高度なデザインを実現する方法の解説なので、後回しが正解です。なお「どこでも配置モード」を高級な手法として紹介する3章は問題アリ。初心者向け機能が有用なのは最初だけ。結局は「標準モード」を極める他ありません。要注意。

「スタイリッシュエフェクト」に興味の無い初心者、辞書的にも使えるスッキリした構成の解説書がほしい初級者に、本書を勧めます。超初心者には「できるホームページ・ビルダーV9」を、中級に手が届きそうな方には「ホームページ・ビルダー9スーパーリファレンス」を勧めます。

できるホームページ・ビルダーV9

HPB9 初級解説書の傑作です。入門者に最適で、バージョンアップユーザには物足りないでしょう。

HPB は毎年どんどん機能が追加され巨大化してきました。HPB9 でも多数の機能が追加されましたが、初級者向けに大きく宣伝されているのが「スタイリッシュエフェクト」です。本書は、この機能について全85項目中、1項目だけを割いて説明しています。つまり、ほとんど説明していません。

最近の HPB にはメーカ標準添付のマニュアルが付属しています(通常版)。HPB2000 の頃と異なりフルカラーで読みやすく、また初心者向けに機能を絞った内容。市販の初級解説書が存在意義が問われる状況です。

HPB には「どこでも配置モード」と「標準モード」があり、それぞれを補助する機能として「テンプレート」と「スタイリッシュエフェクト」が用意されています。いずれもメーカご自慢の機能なので、標準添付のマニュアルは2つのモードと2つの機能を全てきちんと解説します。当然、学習負担は大きく混乱を招きます。

本書は旧版以来一貫して「標準モード」(補助なし)を最重視してきました。最も自由度が高く、技術的にも真っ当な手法だからです。補助機能は自由度が低く、「どこでも配置モード」は技術的に無理があります。本書はそれら初級者専用の手法を「通過点」と割り切って紹介します(「スタイリッシュ〜」はオマケ機能扱い)。そのため本書の読者は機能のジャングルで迷子になりません。

初心者は完成した Web サイトを公開する5章まで、ていねいに読み進んでください。短期間で初級者専用の手法を一通り経験・卒業し、補助なし「標準モード」の基礎基本まで学習します。着実に段階を踏みますので、読み飛ばさなければ大丈夫です。6章以降は興味にあわせてどうぞ。

超図解ホームページ・ビルダーV9総合編

HPB9 の初級解説書です。入門書としては最も意欲的な1冊で、初級者こそ使いこなしたいサイト管理機能など、類書が目先の分かりやすさを優先して解説を避けている(あるいは後回しにしている)領域について、前半から積極的に解説しています。

当然の結果として、多くの人が知りたいであろう画像の作成法が後回しになるなど、初心者の思い描く展開と異なる学習順序を強いる構成となっているのは事実です。しかしながら、読み飛ばしをせずマジメに学習する初心者にとって、本書ほど力のつく入門書は他にありません。4章まで頑張って読み通すことを期待します。5〜7章は、実際にサイトを運営しながら少しずつ勉強していけばよいでしょう。

良薬口に苦し、といいます。たかが趣味のために……と思われる方は、他書にあたるべきでしょう。

紙面はオールカラー、歴史あるシリーズだけに、図解は手慣れたものです。操作手順の図解+注釈という構成ながら情報量は多く、読み進むには一定の時間がかかります。

本書のタイトルは「総合編」ですが、HPB の全機能を扱っているわけではありません。とくにアートデザイナー以外の付属ツールの解説は少ない(またはゼロ)なので、バージョンアップユーザなど中級者には物足りないだろうと思います。あくまでも初級解説書と考えてください。

2005-01-12

SOURCENEXT Selection IBM ホームページ・ビルダー V9 謝恩キャンペーン版 学割パック ガイドブック付き

HPB9 の学割版とガイドブック「できるホームページ・ビルダーV9」をセットにした商品です。

初めて Web サイト作成に取り組む方にはお勧めの商品です。一方、既に Web サイトと HPB の旧版を所有されている方は、よく検討なさってください。たしかに今回も多くの機能が追加されています。「スタイリッシュエフェクト」機能などは初級者には面白いでしょうが、結局のところテンプレート機能の亜種に他なりません。多くのユーザにとって、日用の範囲内では、バージョンアップの価値は薄いはずです。

さて、本商品は学割パックですが、間もなく学校を卒業される方には通常版の購入を勧めます。プログラミング環境などと比較して、大した価格差ではないからです。また、HPB は基本設計が数年間にわたって変化していません。シンプルな使い方しかしないのであれば、一度買ったら4年以上もの間、バージョンアップの必要はないのです。まだ学校の卒業まで時間のある方も、その辺りはよく考えて商品を選択されるとよいでしょう。

オマケのガイドブックですが、じつは標準添付のマニュアルの方が内容は多いのです。しかしながら、マニュアルは2色刷で百科事典的な構成になっており、通読には向きません。パソコン教室の講義のようなチュートリアル形式の解説をフルカラーで読めるという点で、ガイドブックは初心者にはありがたい存在だと思います。逆にいって、手探りで機能をたしかめ、躓いた箇所のみ本で調べるタイプのユーザには無用の長物です。

IBMホームページ・ビルダー V9 + はじめての公開サービスパック 学割パック 特別キャンペーン版 初回限定

HPB9 の学割版とレンタルサーバサービス「BBWeb-Arena」の6ヶ月無料使用権をセットにした商品です。

Web サイトを公開するためにはサーバを用意しなければならないのですが、この手順の理解と実行が初心者には簡単でない。ソフトウェアの操作なら全員共通ですが、サーバの選択と利用手順は千差万別で、何の経験も知識もないのに「判断」が求められてしまうからです。また、HPB はなまじっか高度なことができるのも問題で、動画のストリーミングに対応したサーバなんて、じつは滅多にないわけです。だから、「なんでうまくいかないんだろう?」と悩むことになる。

そこで本商品の出番となるわけですが、「BBWeb-Arena」はじつのところ初心者向けとはいい難いサービスです。ふつうの初心者は動画のストリーミング配信などしませんから、もっと安価なサービスが相応でしょう。広告の自動挿入に面食らうかもしれませんが、無料サーバでも十分というケースがほとんどのはずです。

100MBの公開スペースを6ヶ月間無料で利用でき、さらに7ヶ月目以降も「10MB」を6ヶ月間無料(合計1年間無料)で利用できるのですが、この容量で満足できるのかどうか、そして1年を過ぎたら月額840円の出費になることをどう考えるか。とはいえ、キャンペーンによる値下げ+Amazon の割引販売があるので、定価で買うことを思えば十分オトクなので、深く考えない方が良いかもしれません。安心を買いたい初心者にはお勧めします。

ホームページ・ビルダー V9 バージョンアップ版+Flash Maker2 バリューパック

キャンペーン中の新規インストール版(通常版)の価格は、バージョンアップ版の定価とほぼ同額です。パソコンの買い替え、ハードディスクのフォーマット、OS のバージョンアップや再インストールを検討されている方は、今なら通常版の購入をご検討ください。ソフトウェアを入れなおすとき、いちいち「旧版を再インストール→バージョンアップ版を再インストール」という手順を踏むストレスは、案外、バカになりません。

さて、HPB9 は「スタイリッシュエフェクト」「UTF-8 対応」「aDesigner 搭載」がバージョンアップの目玉で、カッコよくて国際対応でアクセシビリティに配慮した Web サイトを簡単に作成できる、という触れ込みになっています。この宣伝文句は嘘ではないけれど、過剰な期待は禁物。ふつうのユーザがふつうに使う範囲内では、旧版と大差ないと考えるべきです。

Flash Maker2 が安く手に入るのがこのセットの魅力ですが、考えてみれば HPB には動画を作成する機能が既に複数存在します。「ウェブ アニメータ」「ウェブビデオ スタジオ」「HotMedia クリエーター」……。とはいえ HPB に Flash Maker2 を代替する機能はなく、このセット商品には意味があります。しかし何故、IBM の開発チームは「Flash Maker2」を作ることができなかったのか。

この商品は値段が非常に手頃でお勧めなのですが、HPB の先行きには不安を感じます。また今年の晩秋には大量の新機能を手土産にバージョンアップしますが、セット商品の呪縛から逃れられないでしょう。

2005-01-16

SOURCENEXT Selection IBM ホームページ・ビルダー V9 謝恩キャンペーン版 バージョンアップ版 ガイドブック付き

HPB9 バージョンアップ版と入門書「できるホームページ・ビルダーV9」のセット商品です。謝恩キャンペーン版は価格が安いのですが、内容は同じですから安心してください。

さて、ガイドブックが入門書であることには注意が必要です。HPB9 の追加機能は大きく3つありますが、いずれも入門レベルのユーザには縁遠い機能です。使い方次第では「スタイリッシュエフェクト」は入門者もぜひ使いたい機能となりますが、「できるホームページ・ビルダーV9」はほとんどこの機能を解説していません。

基本的な使い方は HPB6 以降ほとんど変化しておらず、インターフェースも HPB7 以降は似たようなものです。つまり、ほとんどのバージョンアップユーザにとって、入門書で初歩の操作手順を復習する必要がないのです。標準添付のマニュアルは2色刷で味気ないものですが、わからないところを調べるだけなら、これで十分でしょう。

ずっと HPB を宝の持ち腐れにしており、すっかり操作方法も忘れてしまっていたが、バージョンアップを機に勉強し直すつもり……といった特殊なケースでなければ、ガイドブック無しのバージョンを勧めます。

IBMホームページ・ビルダー V9 + はじめての公開サービスパック バージョンアップ版 特別キャンペーン版

HPB9 のバージョンアップ版とレンタルサーバサービス「BBWeb-Arena」の1年間無料使用権をセットにした商品です。

Web サイトを公開するためにはサーバを用意しなければならないのですが、この手順の理解と実行が初心者には簡単でない。ソフトウェアの操作なら全員共通ですが、サーバの選択と利用手順は千差万別で、何の経験も知識もないのに「判断」が求められてしまうからです。そこで本商品の出番となるのですが、HPB がバージョンアップ版ですから、経験者対象の商品なのでしょう。とすると、ちょっと妙な商品だと思いますね。

「100MB」の公開スペースを6ヶ月間無料で利用でき、さらに7ヶ月目以降も「10MB」を6ヶ月間無料(合計1年間無料)で利用できる……という条件は、決して素晴らしいものではありません。1年後からは月額840円かかるわけで、それならバージョンアップを機に、もっと安価なレンタルサーバサービス(例えば「さくらインターネット」)に挑戦なさることを勧めます。

たしかに無料サーバなら広告が出てしまいます。しかしこの商品だって HPB を単独で買うより割高なので、「無料使用権」という言い方には嘘があるというべきでしょう。

2005-02-10

ゆかいな誤変換。

誤変換をテーマにした本は過去に何冊か出ていますが、本書の特徴は意図的に生み出された誤変換を集めたところにあります。したがって、「あるある」ではなく「そんなアホな」という誤変換ばかり。あまりにシュールで想像力の追いつかない誤変換文もありますが、理解を助ける親切なイラストが用意されているので安心です。

本書の実体は旧来からある「語呂合わせ」の集成です。「ソフト部→祖父 飛ぶ」といった例を見ての通り、冷静に考えれば「だから何なんだ」という内容。これで笑うのは簡単なことではありません。本書が商品として成立しているのは、言葉遊びに「誤変換」とラベルをつけ、作意を消して「偶然の産物」を騙ったからだと思います。

もちろん、本書に収められているのは誤変換の事例です。では本書の真の著者は日本語変換ソフトウェアなのか? 違います。肝心なのは、元テキストの選択だからです。「音節の区切りや字の選択次第で別の文章が浮かび上がるテキスト」を発見した投稿者の柔軟な日本語感覚が、見事な誤変換を呼び寄せているのです。

さて、本書は何度も発売が延期されました。著者のイラストが遅れたため、と聞きます。ならば編集者には十分な時間があったはずなのに、重複・誤字・脱字の多いこと多いこと。遅れたついでに、もう少しよく見直してから出版していただきたかったと思います。

詳解HTML&XHTML&CSS辞典 改訂版

HTML と CSS の中級者向けリファレンスです。豊富な情報がよく整理されたフルカラーで見やすい紙面、パラパラとページをめくるだけで目的の情報にたどりつける構成、きちんと書かれたサンプルなど、行き届いた1冊です。しかし本書の最大の特徴は、W3C 勧告の内容を正確に伝える硬派な編集・解説方針にあります。

本書が解説する範囲は HTML4.01、XHTML1.0SE、XHTML1.1、XHTML Basic、CSS2 等で、HTML3.2 以前、CSS1、CSS2.1 は対象外です。範囲内の全要素、属性、プロパティ、値について必須/任意選択/非推奨/仕様外を区別して紹介します。ブラウザの対応状況は WinIE4-6、MacIE4-5、NN4-7、Opera6-7、safari1.2、firefox1.0 の12種を調査。対応ブラウザのない項目も粛々と解説。各社の独自拡張は巻末付録で最低限の情報を紹介しています。

HTML の解説はとくに素晴らしく、バージョン毎の仕様の違いが明確に示されています。また各要素に内包可能な要素の一覧を示した「DTDでの要素の定義」は類例のない傑作で、実践において非常に役立ちますし、ABC 順の索引としても重宝します。本書を十全に活用すれば、通常の範囲で仕様書の原文を調べる必要は消えます。

本書は中級者には最高の一冊ですが、初級者には「プチリファレンスHTML」を勧めます。

なお旧版からの変更点は、対応状況の調査対象を加増、画面写真の差替え、W3C 勧告の改訂に対応、HTML Media Types の内容を反映、など。内容の9割は旧版と共通です。一方改訂版1刷では Transitional DTD を XHTML1.1 とする誤植がリンク〜フレームの約100頁にわたって発生しており、2刷以降の修正が期待されます。

2005-02-16

「電車男」は誰なのか―“ネタ化”するコミュニケーション

電車男」は 2ch 発の書籍なのに、なぜか 2ch の住人には大不評。一体、なぜ? この疑問を解く鍵を求めて、私は本書を手に取りました。結果、概ね満足しました。

大所高所から分析した批評家風の言葉はたいてい、無意識に動いている現場の人間には違和感のあるものです。発言者が現場の人間だったとしても、それは同様です。上司の訓示が上滑りしているように感じるのはこのためで、土台、言葉にならないものを言葉にすれば、こぼれるものが多いのは仕方ありません。

著者は 2ch の住人ですし、私も利用者の一人です。けれども、やはり本書の説明には違和感がある。著者自身もそうだと思います。

読んでいて面白かったのは、「自分のよく知らない部分の説明ほど、もっともらしく思われる」こと。本書を読んで、すっかりもやもやが消えた方は、多分、2ch に代表されるような文化に染まっていないのでしょう。著者の前作「美しい日本の掲示板」と同様、リトマス試験紙のように使える1冊です。

ただし、本書はかなりマニアックです。多数の補注も、マニアをニヤリとさせるような記述に終始しており、ネット初心者をサポートしません。ベストセラーとして大々的に報道されて初めて「電車男」を知ったような方にはお勧めいたしかねます。

今週、妻が浮気します

WWW には一般人が一般人の質問に答える知識コミュニティが多数存在し、OKWeb はとくに著名なサービスです。本書は回答の募集が〆切られるまでの約2週間に111もの回答がついた有名な Q&A を書籍化したものです。

内容の変更は改行位置、誤字・脱字の修正など僅かであり、OKWeb を訪問すれば本書とほぼ同内容のログが無料で読めます。しかしながら、WWW の文書はたいてい数年で消えます。書籍の形で手元においておく方が安心です。人に勧めるにも便利でしょう。ベッドや電車や飛行機の中でも読みやすい。私は納得して買いました。

さて、内容はタイトル通りの相談から始まります。相談者と回答者の凡庸なやり取りが延々続き、無策のまま時間ばかり過ぎてゆく。当日、相談者が浮気現場に踏み込むことで前半の山場を迎えます。第2部は深い悲しみの淵に沈んだ相談者の苦悩の軌跡。続々寄せられる回答群は錯綜・迷走し、物語の先行きは闇中に没します。相談者の決断と結末は実際に読んでお確かめください。

小説なら本筋が終息すればエピローグ(本書には相談から約1年経った現在の状況が簡潔に報告されています)へつなげるところですが、本書は実録カットなし故に、かなり長い補足のやり取りが続きます。何せ「編集」の希薄な本だけに、あちこち無駄が多いことは覚悟して読む必要があります。

また、よくよく考えれば、過去に何度も小説や映画になってきた題材・内容なのであって、大勢の人のやり取りとして過剰なディテールが付与されているに過ぎない……ともいえるでしょう。でも、いいんじゃないでしょうか、そういう本がまたひとつ増えたって。

HTML&CSSビジュアル・リファレンス

HTML と CSS の中級リファレンスです。主要な解説をコンパクトに収めて一覧性を高めるため、類を見ない精緻な表組みを用いたレイアウトを採用したのが本書の特徴です。この試みが成功しているかどうかは難しいところ。とっつきにくいのは事実ですが、慣れれば視線をほとんど移動させることなく情報を一望できます。出版社のサイトに紙面のサンプルがありますので、購入前に確認されるとよいでしょう。

ただし本書は HTML の体系的な学習に使えません。HTML には複数の仕様があり、主要部分は共通しているものの、少なからぬ要素・属性が一部の仕様だけに規定されている他、仕様間には規定内容の差異もあります。これは HTML の仕様を改善する過程で必然的に生じた問題であり、無意味な複雑さとは異なります。にもかかわらず本書は、いずれかの仕様で規定されている要素・属性はみな W3C 勧告の範囲内としています。

例えば XHTML1.1 では ruby 関連の要素が規定され、frame などが削除されましたが、本書からその事実を感得するのは、ほぼ不可能でしょう。各要素の内容(包含要素)を示すなど、よい試みがあるだけに残念です。

「実務に役立つ」という編集基準の曖昧さのため、本書の「解説の対象と範囲」は良くも悪くも「適当」です。したがって学習用途には正統派の「詳解HTML&XHTML&CSS辞典」を強くお勧めしますが、実務領域では「HTML+CSS Handbook」と同様、本書も便利な1冊です。なお初心者には「プチリファレンスHTML」をご紹介しておきます。

こんなに簡単楽しいブログ

ライブドアブログ公認の入門書です。従来、ライブドアブログの解説書には「超図解 ウェブログでつくるホームページ入門」と「ウェブログ超入門!」がありましたが、ユーザが増えた昨今、ライブドアブログ専門の初心者向けガイドが待望されていました。

ライブドアの公式サイトには、まずまず充実した入門ガイドが用意されていますが、やはり初心者には(少しだけ)敷居の高いものでした。それでも何とかなる……わけですけれども、初心者なら、あればあったで損しない1冊です。トラックバック? RSS? アフィリエイト? ブログの世界には、新しい言葉がたくさんあります。でも大丈夫、全部で96ページの解説をきちんと読めば全て解決。

なお、はてなユーザには「はてなの本」、JUGEM ユーザには「できるブログ」、ココログユーザには「ブログでできる簡単ホームページ作り」、goo ブログユーザには「はじめてのウェブログ」、Doblog ユーザには「ウェブログ・ビギナーズ」をお勧めします。初心者は、自分が利用しているサービスの解説書を選ぶべきです。

また本書はあくまでも初心者向けなので、ある程度のパソコン経験やネット経験がある方にはつまらないでしょう。そうした方には、「ウェブログをどう使うか」を重視した「ウェブログ超入門!」「超簡単!ブログ入門」「ブログの力」「ブログ・ビジネス」など縦書きの入門書を検討されるとよいでしょう。

超簡単!ブログ入門―たった2時間で自分のホームページが持てる

タイトル通りのウェブログ入門書。前世紀末にホームページがブームになった頃、「ホームページ作りの勧め」は新書になったけれども、「ホームページの作り方」はとうとうビジネスパースン向けの新書になりませんでした。HTML だのサーバの確保だの、勉強すべきことが多すぎたからです。

一昨年から国内でレンタルブログサービスが次々に立ち上がり、ほとんど何も勉強せずにホームページを持てる状況が整いました。こうして「インターネット」「メール」「メルマガ」に続いてようやく「ホームページ」もビジネスパースン向けの新書となったわけで、感慨深いものがあります。

本書の内容に特記すべき点はなく、体裁だけが特徴のブログ入門といってよいでしょう。しかしこれがなかなかバカになりません。低価格はもちろん、持ち運びのしやすさ、どこでも読める気軽さは新書ならでは。そしてビジネスパースンの気を引く記事もうまく織り交ぜられており、迷う背中を優しく押してくれます。

なお、新書版に多くを期待しても仕方ないのであって、より深く広い話題を押えたい方には「ウェブログ超入門!」をご紹介しておきます。ブログを個人のホームページ以外にも使えないか? とお考えの方には「ブログ・ビジネス」も参考になるでしょう。ただ、ブログに過大な期待は禁物。乗せられやすい方は要注意。

ブログ・ビジネス―ビジネスで活かせるブログの始めかた

ブログの活用方法を探究した初・中級の解説書です。本書にはいろいろなアイデアが示されています。あくまでも「アイデア」であって「実例」ではないので要注意。実際に素晴らしい効果がありました、という話がないわけじゃありませんが、ほんの少しです。このあたりの難しさは、実践してみればお分かりいただけるはず。

とはいえ、パソコン、メール、ワープロ、プレゼンだって、使いこなしている人は少ない。まだブログは普及の途上にあり、これから少しずつ事例が蓄積されていくのです。今はまだ、様々なアイデアに挑戦していく段階です。著者はブログを闇雲に絶賛していません。グループウェアを置き換えた場合「安かろう悪かろう」となる面があることや、様々な実践時の障害についても触れています。きちんと読み込めば、過大な期待を抱く危険も避けられるのではないでしょうか。

最後に、本書があまり強調していない問題について、指摘しておきます。しばしばネット投票で異常な結果が出て話題になりますが、ネットでは偏った客層が突然押し寄せることがあります。ネットには空間の制約がなく、リンクひとつで閲覧者が移動できるため、大勢の人が集まっている場所にリンクが張られると、とんだ騒動になることが少なくありません。

日本のネット社会の顕著な特徴のひとつは、誉めるより貶す方が優勢である、ということです。よい方向で騒動になることは滅多になく、たいてい悪い方向で騒動になります。「第2章 『閲覧者』としてどこを活かすか」「第3章 プロモーションツールとして活かす」は、この点に留意して読まれるとよいでしょう。

2005-02-18

だれが「音楽」を殺すのか?

ネットに音楽論壇のような世界があることは、一般にはあまり知られていません。本書はその中心的ウェブサイトである音楽配信メモ(http://xtc.bz/)の著者が、最近の主要な論点「レコード輸入権」「CCCD」「違法コピーとファイル交換」「音楽配信」についてまとめたものです。

本書が優れているのは、幅広い立場の意見をきちんと集めていることです。著者は一通り論点を書き出した上で、「私はこう思う」と述べています。意見に賛同するかどうかは別として、議論を俯瞰したい方には重宝します。また著者の提言はたいてい推量形か疑問形で結ばれます。消費者の権利拡大による音楽文化の発展は、業界の被害と同様に不明確だからです。これもまた著者の誠実さを示していると思います。

生産者と消費者では後者の方が圧倒的に多いので、ふつうは消費者寄りの発言が受けます。著者は消費者なので、当然本書も大筋で消費者寄りなのですが、無理筋の生産者批判への反論も多々織り込まれています。あとがきにも「業界を批判する前に勉強すべき」との主張がありますが、都合のいいところだけ拾い読みするのではなく、じっくり読み込むことを勧めます。

カセットテープは庶民の盛り場から生演奏を駆逐しました。音楽がパッケージを失いデータとして流通していく今後、生業としての音楽の道はいっそう狭まります。価格破壊で「市場」が縮小していく経済状況の中、音楽業界のサバイバルから目が離せません。

ブログではじめる!ノーリスク起業法のすべて―あなたの日記をお金に換える法

本書を読む前に、「本を書いて起業」「ミニコミを発行して起業」「ホームページで起業」「メルマガで起業」という連綿と続く起業指南の流れが存在することを知っておいてください。なぜ起業のプロセスにブログ(本/ミニコミ/ホームページ/メルマガ)を取り入れるとリスクを軽減できるのか? それは、起業前に顧客・ファンを確保できるからです。つまり、マスメディアに広告を出せない起業の初期段階において、最も効率的な宣伝手段は何か、という話なのです。

期待を高め、人を集めておいて、スタートダッシュで事業を軌道に乗せる。そううまくいくわけがないと、ふつうは思うでしょう。けれども、うまくいってしまうケースがあるのです。とはいえ、読者は冷静に考えねばなりません。著書刊行がリスキーであることは十分知れ渡りましたので、最近は話題になりません。ミニコミも同様。一方、ホームページとメルマガとブログには資金が不要なので、「私にもできるかも」と思わされます。危ない、危ない。資金は不要でも、時間と手間はかかります。

本書の副題は誤解を招きかねません。起業の「種」を既に持っている人が、その宣伝戦略に日記を組み込むのです。話を逆にしてはいけません。

また、ブログはよい「種」が評価されやすいシステム……ということは、そもそも手持ちの「種」がダメならブログでも宣伝に失敗することを意味します。このあたり、「本を書いて起業」の頃から変化ありません。こうした起業指南本の基本構造に注意しながら読めば、参考になる1冊だと思います。

時代はブログる!

「ブログに興味がある人」を「ブログユーザ」へステップアップさせようとする本。だから明るい話が非常に強調されています。また「人気者になる」ことに力点を置いている(だから著名人へのインタビューもある)点がブログ紹介書としては特徴的です。

内容の半分は、かつて何冊も書かれた「ホームページの勧め」や「メルマガの勧め」と本質的に同じです。独自の情報を発信して人気者になろう、ということです。自費出版などと比べ、資金が不要だからあなたにもできる、という能書きは5年前と何ら変わりありません。

残る半分は、ブログの何が新しいか、という話。ホームページもメルマガも、簡単、簡単といって、じつは簡単でない面がありました。ホームページを作るのは面倒くさい、メルマガで人気者になるのは簡単じゃない。ブログなら(コツさえつかめば)簡単に人気者になれる、いろんな人と楽しく交流できる、と著者は主張します。

本書はブログにハマっている方が友人・知人を誘うのに便利な1冊です。しかし現実に誰もが簡単に人気者になれるはずもなく、見知らぬ他人との交流にも光と影があります。冷静に状況を見極めたい方には「ウェブログ超入門!」をお勧めします。

ウケるブログ―Webで文章を“読ませる”ための100のコツ

新しい媒体・ツールが登場すると、必ず文章読本が発刊されます。ワープロ、ホームページ、メルマガ……本書もそうした1冊。

文章が「スキャンされる」のはウェブに限りません。雑誌や広告の世界では常識です。だから、雑誌で連載されることが多いコラムやエッセイの文章読本(多数ある)は本書と内容が重なります。著者は「インターネットの文章ならでは」をしばしば強調しますが、実際にはそうでもありません。

とはいえ、ブログ運営の参考にするなら、ブログに的を絞った本の方が便利です。また本書の独自性の薄さは、先達の文章読本をよく参考にしていることの裏返しでもあり、堅実で安心できる内容ともいえます。文章の書き方に悩みがちな方にはお勧めします。

ひとつ注意すべきことがあります。本書を読んでも、ブログの人気は変化しないだろうと思います。本書の「コツ」を無視した人気ブログはたいへん多い。過剰な期待はガッカリのもと。「自分で自分の文章に自信を持てるようになるために読む」のがよいでしょう。

即実践!ブログ徹底カスタマイズ術 Movable Typeで自分好みに!

Movable Type の初級解説書です。タイトルは中級書のようですが、内容は初級です。もっとも、MT はユーザ自身がサーバを用意(レンタルで可)して設置しなければならい点で敷居が高く、ウェブサイト運営の初心者には手が出ないのでご注意ください。

本書の対象読者層は「MT の設置に必要な最低限の知識・経験はあるが、HTML の知識は少しだけ、スタイルシートや MT のテンプレートの仕組みは全然分からない」方々です。第1章で MT の設定を再点検し、第2章でテンプレートを一部の記述を差し替える形でカスタマイズ、第3章でスタイルシートを学習・実践し、第4章ではオマケの機能を追加します。巻末の第5章は MT のインストールガイド。これは確認用であって、基本的に第5章を「必要」とする方が本書を読むのは少しつらいと思います。

本書の解説が初級にとどまるのは、HTML の知識をほとんど必要としない範囲に内容を絞り込んでいるためです。カスタマイズは一部は差替にとどまり、全体構造はデフォルトテンプレートを残します。この制約は大きく、限界が見えています。しかしこの割切りのため、本書は多くの方にとって読みやすい本となっています。

徹底カスタマイズに興味のある方には「Movable Typeスタイル&コンテンツデザインガイド」をお勧めしますが、同書には HTML や CSS の解説はありませんので、「HTMLとスタイルシートによる最新Webサイト作成術」で基礎を、「スタイルシート スタンダード・デザインガイド」で応用を学ぶ、といった前段階の学習が必要です。徹底カスタマイズは簡単ではありません。

2005-03-16

電波男

恋愛をテーマとした易しい社会評論+生き方本です。

電車男」はアキバ系男子が脱オタクして負け犬と恋愛関係を結ぶ物語。このような物語が礼賛されるのは、現代日本の支配的価値体系が恋愛資本主義だからだ。20年余の恋愛資本主義体制は幸せなモテと不幸な非モテの2極化した社会を現出した……この世界観を前提とし、非モテが幸せになる方法を示すのが本書「電波男」です。

著者の主張は、非モテはオタクになって価値の基準軸を「萌え」に置け、というもの。結論先行で筆が走っており、反対者の意見を覆すには力不足。しかし反対者にも一読を勧めます。賛同は無理でも、オタクになる非モテのメンタリティを理解し、無体な差別を止める契機となる一冊だからです。

本書は十分なページ数を確保して議論の土台となる情報をきちんと紹介していますが、負け犬本ベストセラー「負け犬の遠吠え」「だめんず・うぉ〜か〜」が既読なら、いっそう楽しめます。また岡田斗司夫の「ぼくたちの洗脳社会」「フロン」「30独身女、どうよ!?」「結婚ってどうよ!?」を参照すると、大いに理解が深まります。

なお、本書の文体は冗長で癖が強く、いわゆるオタク文化を反映したフレーズが頻出します。異文化の文体に不安のある方は、購入前に著者のウェブサイト「しろはた」をチェックされるとよいでしょう。

はじめてのウェブログ (Weblog入門編)

goo BLOG の入門書です。誰でもすぐにはじめられるのがウェブログのいいところ、といわれますが、ネット初心者には少し難しいのが実際のところだと思います。

本書はウェブログの開設・基本設定・記事投稿・運営管理などを網羅的に解説しており、「ウェブログにはAという機能があり、これを利用するにはBすればよい」という図解記事が200ページ続きます。図解の都合上、特定のレンタルブログサービスを例に挙げているのですが、項目ごとに紹介されるサービスが違っているので、読者は困ってしまいます。唯一 goo BLOG は、ほぼ全項目について例が示されているので、本書を購入された初心者は、必ず goo BLOG で最初のウェブログを作成してください。

フルカラーの紙面は美しく、端的な解説はわかりやすいです。部分のアップを極力避け、画面全体の様子を示すことにこだわった図解は、細かい文字が苦にならない方にとっては混乱しにくく便利でしょう。

なお、キーボードを使って日本語の文字入力ができる、デジカメで撮影した画像を自分のパソコンに保存・管理(+簡単な加工も)できる、といった技能が本書の前提知識となっています。これらパソコンの基本操作に不安のある方は、「ぜったいデキます! ホームページ作り」など、より簡単な解説書をご検討ください。

進歩し続けるWebデザイナーの考え方―Web designer 2.0

Web デザインのトレンドについてまとめた中級解説書。レイアウトなどのビジュアル面(=最もユーザに近い部分)や、サーバサイドの技術(=完全な黒子・裏側の部分)にはほとんど触れず、中間の領域である HTML や CSS 周辺に焦点を当てています。実務者向けの内容であり、趣味レベルで手を出す本ではないでしょう。

HTML や CSS の周辺で最近のトレンドといえば概ね話は決まっており、本書も概論部分は既存書籍と同内容です。ただし「モダンブラウザの普及」がCSSデザイン推進の理由に挙がるのは、やはり不思議です。IE6 が登場した4年前、既にIE5以降の「モダンブラウザ」が約9割のシェアを有していました。

では「なぜ今、CSSデザインなのか」といえば、Webデザイン業界の需要が一巡し、淘汰の時代に入ったからです。製作側はむしろ手間が増えるCSSデザインですが、値段の叩き合いを避け競争に勝つため、(理念はともかく現実には)サーバの負荷低減程度しか発注側に利益がないとしても、導入が必要な時期なのでしょう。

概論部分は前世紀末に刊行された先端的な書籍群と同じですが、「CMS の導入により素人の顧客がサイトを更新するが、コーディング規則を維持するにはどうしたらよいか」など実践的な各論の数々は、たしかに2005年の解説。現場の方々には興味深い一冊だと思います。

封印された『電車男』

新潮社版「電車男」の型式で原本の 2ch ログを印刷すると約5000ページになります。新潮社版ではじつに93%が捨てられているのです。本書は新潮社版(およびその底本となったまとめサイト)が削除した主な記述を列挙し、編集の意図を読み解きます。

新潮社版の刊行を契機として、ネットでは 2ch を中心に「電車男」否定論が噴出しました。著者は新潮社版の分析を通して、それら否定論の根拠をていねいに拾っていきます。しかしむしろ本書を通して浮かび上がるのは、新潮社版が文芸書として周到に編集されている事実です。

電車男」には通常の文芸書では考えられない量のノイズが残っています。話の展開を阻害するような発言まであります。それらはライブ感を伝えるため選択的に収録されたものなのでした。この絶妙な匙加減が「電車男」の大ヒットを生んだことは間違いありません。

本書は126ページの小さな本で、全ログ収録の CD 付録もありません。著者も取捨選択の必要性は認めており、「新潮社版はきれい過ぎるので、物語の不完全さを示す発言をもっと残すべきだった」と主張しているのです。結局、新潮社版と本書の併読により、著者に近い感性を持つ読者の希望は満たされるでしょう。

なお、著者は「善意の書込みで金儲けするな」というネットで最も反復強調された否定論を(当然ながら)重視していません。「電車男」否定論のまとめ本としても読める本書ですが、その点だけは要注意。

ブログの達人がこっそり教える おカネの儲け方

ネットショップ構築の初級解説書です。商品がよく売れるネットショップとはどのようなものかを説明し、ブログを使えば目指すべきスタイルを簡単に実現できることを示します。

著者は従来のホームページとブログは全然違う、と強調されていますが、少々疑問です。高級な作成ソフトは以前からテンプレートによるサイト内全ページの出力制御機能を有していました。あるいはデータベースソフトに適当なスクリプトを組み合わせれば、より柔軟で応用範囲の広いデータ・出力管理ができます。サーバにインストールするタイプのシステムも高機能化が進んでおり、ブログはむしろ簡易なCMSに分類されます。

さて、著者の主張はシンプルです。「よいホームページを作り、人の集まっているところで宣伝すれば、商品は売れる。よいホームページを作るのにブログは便利であり、宣伝には人が大勢集まっている人気レンタルブログサービスのポータルを活用するのが最も効率がよい」……なるほど、と思われた方は、本書で詳細をご確認ください。懐疑派の方には面白くない本だと思います。

ちなみに昨年、楽天市場のアフィリエイトで一番稼いだのは、一見凡庸なブログでした。作り込まれたアフィリエイトサイトを押しのけての栄冠です。本書の解説は、あながち外れていないように思います。ただ、どんな成功事例も、一般化できる部分だけ抽出すればつまらなく見えるものでしょう。

2005-03-17

ありがとう!電車男―50万人が涙した純愛

電車男」のファンブックです。ネットで否定論が渦巻いている状況については、竹熊健太郎さんのエッセイの中で僅かに触れられるのみ。素直な読者のための、素直に編集された素敵アイテムです。ヘビーなネットユーザには、あまり魅力のない商品でしょう。

新潮社版は文芸書らしく本文以外の情報を敢えて省略しており、いうなれば不親切な本となっています。簡単な用語集さえカバーを外さなければ読めない徹底ぶり。それはそれでよい効果を上げていると思いますが、エルメスのティーカップやベノアティーがどんなものか知らない多くの読者にとって、もどかしい気分が残ったことは否めません。

そこで本書の出番です。電車男とまとめサイトの「中の人」へのインタビュー、写真やイラストも駆使したわかりやすい基礎知識の解説記事(物語の舞台となった場所の紹介や、登場した各種小物の写真、ファッションの図解、他)、各界の著名人による分析記事、マンガ版の情報など、よくまとまっています。そして親切なことに「電車男」のあらすじも紹介しているので、映画版だけに興味のある方の予習にも便利。

なお、「電車男」を生んだ 2ch の文化に興味のある方には「電車男は誰なのか」を、様々な否定論を知りたい方には「封印された『電車男』」を勧めます。

ケータイブログのはじめ方・遊び方―livedoorではじめるモブログ

携帯電話からブログを利用する方法についての初級解説書です。利用するサービスを livedoor blog に絞ったことがよかったのか、モノクロの地味な本ながら、図解を多用したていねいな解説はたいへんわかりやすく、好感が持てます。

簡単操作が売りのブログだけに、ちょっと始めるだけなら、解説書を必要としない方が多いだろうと思います。しかしながら、豊富な機能を使いこなそうと思ったら、結局のところ1冊きちんと読み通すのが理解の近道。

「ちょっと試してみたい」だけならもったいない本ですが、さあ勉強するぞ! ということであれば、お勧めできます。

Movable Type標準ハンドブック

Movable Type 3.1 の入門書です。MT は定評あるウェブログツールですが、サーバを用意し自分で設置する必要があるため、第一歩を踏み出すための敷居は低くありません。しかし少々のウェブサイト運営経験があれば心配無用です。本書は MT の設置に必要なサーバの知識、CGI 設置の初歩をシンプルに、わかりやすく解説します。

標準的なユーザマニュアルというコンセプトに忠実な本書は、基本的な機能をひとつひとつていねいに紹介していきます。マニュアルらしい律儀さ、図解の的確さと同時に、一気読みの難しさも備えています。性格にもよりますが、基本的には、無事にウェブログを開設できたら残りのページは必要になってから読めばよいでしょう。

本書は入門書です。カスタマイズの記事などもあるのですが、既に MT を導入してウェブログを運営されている方が本書を購入しても、得るところは少ないでしょう。MT 付属のヘルプを参照して初歩的なトラブルを解決するスキルがある方には、初級解説書「即実践!ブログ徹底カスタマイズ術」や中級解説書「Movable Typeスタイル&コンテンツデザインガイド」をお勧めします。

逆にネット初心者が MT を設置するのは、本書を買っても簡単ではありません。初めてのウェブログなら、レンタルブログサービスを勧めます。「はじめよう! みんなのブログ」などウェブログの入門書をご検討ください。

Basic of Web Design―誰も教えてくれなかったWebデザインの基本

Web デザインの中級解説書です。駆け出しのプロが、きちんと素人に差をつけるためのテクニック集であり、基本的には趣味レベルで手を出すような内容ではありません。

タイトルは「誰も教えてくれなかったWebデザインの基本」となっていますが、もちろんこれは売り文句。HTML や CSS や Perl を勉強するだけでは見えてこない領域について扱っているわけですが、じつは本書が解説しているのは、紙ベースのデザインと共通する領域のテクニックと、雑誌の記事では珍しくないけれど書籍にはあまりまとまっていないテクニックなのです。

趣味の延長上で Web デザイナーになってしまった場合、従来のデザイナーの素養や常識がスッポリ抜け落ちていることがあります。専門学校の標準カリキュラムに取り入れられているようなことも、案外、就職したら教えてもらえない。そのあたりに本書の価値があるのかな、と思います。

ところで、下流工程はもちろん大切なのですが、本当の「Webデザインの基本」は上流工程ではないでしょうか。「速習WebデザインWebデザイン基礎」「標準Webデザイン講座 基礎編」などが解説する領域を知らずに、本書の紹介するテクニックばかり覚えても、先行きは暗いように思われます。学習項目の優先順位に要注意。

ホームページで伝わる日本語―アクセスアップのためのやさしいWeb文章入門

コピーや広報テキストを書かねばならない素人のための入門書です。プロのライターや趣味の個人サイト運営者は基本的に対象外なので、注意してください。

一昔前であれば、コピーはコピーライターの領分でした。パンフの広報テキストだって、慣れた人が手を入れたり、デザイン会社に文章の調整も頼んでいたものです。ところがウェブでは、極端な予算不足のために素人がウェブサイトを作ったり、デザイン会社が関わるのは最初だけで更新作業は素人任せだったり。そうして、なし崩し的に素人の文章がそのまま公開される時代となりました。

プロが一枚噛む大企業のウェブサイトの文章は、さすがにしっかりしています。けれども中小企業(あるいは個人商店など)のウェブサイトは、呆れるほどひどいケースが少なくない。心当たりのある方、ぜひ本書をご一読ください。何に気をつけながら文章を書くべきか、スッキリ理解できます。