レビューまとめ読みはこれまで、書いた順番が古いものが上、新しいものを下として整理してきました。しかしこのファイルからは、Amazonにレビューが登録された順番を基準として、新着順で並べています。
日本国内での食糧増産を提言する本です。現時点では少数派に属する著者の主張が強く前面に出ており、初心者の「1冊目」としてはお勧めできません。初心者の「1冊目」は、網羅的な構成を有し、幅広い意見を落ち着いた筆致で紹介する本が望ましく、例えば末松広行「食料自給率のなぜ」がその条件を満たすと思います。
本書は一般向けにわかりやすく書かれています。「世界的に食料の需要が増える一方、供給は頭打ちとなっており、食料価格の高騰は続く、日本は減反をやめ食糧を増産すべき」という論理が一貫しており、リズムよくすらすら読めます。裏付けとなるデータも豊富です。
ただ、本書には著者が自明と考えて説明していない「前提」がいくつかあることに注意してください。そしてじつは、その「前提」が実際には必ずしも自明ではないために、政府が食糧の増産を「目指す」ことに消極的な意見、反対する意見が出てくるのです。
著者の主張の特色は、「今すぐ」食料の増産を目指すべき、とする点にあります。その理由は、農業従事者の平均年齢が高く、近未来に農業人口が急減すること。しかしこの議論には、「農業技術の継承には非常に時間がかかる」「農業への新規参入は難しい」といった前提が隠れています。いずれも手強い反論がある事項です。
より根本的には、著者は「社会を予め調整して状況の変化に備える」計画経済と同様の考え方を採り、自由経済の「価格による調整」を忌避しています。資源配分の歪みを嫌う市場重視の立場とは対立する考え方です。
海外の食料価格が高騰した現在も、国産品価格とは3~8割の価格差があります。強引に食料自給率を上げれば、税金による補助と合算した真の食料費は激増します。著者の提案は国民の大きな負担を伴うものだけに、著者の議論の「前提」は絶対ではなく、様々な異論がありうることに注意しながら読んでください。
本書はDS「テイルズ オブ ハーツ」のストーリー、サブイベント、各種データ、設定資料をまとめた1冊です。アニメ版、CG版の両方に対応。A5版、フルカラー、並製。初心者から上級者までカバーします。内容はシステム・キャラクタ・ソーマ・ストーリー・サブイベント・データ・エクストラの全7章構成、索引付です。
第1章:説明書の拡大版。様々なルールや計算式、確率などを具体的な数字入りで紹介しています。冒険を有利に進めるのに役立つ情報が満載なので、既に1周した方も一度は目を通してみてください。
第2章、第3章:術技、称号、ソーマのデータが表形式でまとまっています。
第4章、第5章:第4章はストーリー進行に沿って、チャート、マップ、冒険のヒント、出現する敵の簡易データ表、宝箱、マテリアルポイント、ボス攻略などをまとめています。初心者は第4章だけ読めば大丈夫です。なおサブイベントはチャートの中で発生ポイントが示され、詳細は第5章のP***を参照するように、と案内されます。称号集めを頑張る方は見逃さないように。
第6章:敵、アイテム、合成、ショップ、フェイスチャットのデータが表形式でまとまっています。
第7章:設定画、インタビュー、用語集。
本書は一見、薄く見えますが、じつはアビスとデスティニー(PS2)以外の全てのテイルズ公式コンプリートガイドよりもページ数が多いです。また1ページあたりの情報量も多く、とても通読できる本ではありません。第1章は必読だと思いますが、他は必要に応じて参照されることを勧めます。
なお、カットインとフェイスチャット表情集はあちこちのページの穴埋めに使われています。設定画の小ささなどと同様、不満な方も多いでしょうが、大きな発行部数が見込めないためデータの網羅とページ数抑制の両立に苦労している本なので、これは仕方ないと私は思います。
食料自給率を上げるべき様々な理由をまとめた入門書です。食料自給率に関して、新聞やテレビ番組などに登場する意見(トンデモを除く)はほとんど拾われており、生活レベルでは必要十分な内容だと思います。
堅い内容ながら、ですます体の語り口調で30ページ程度のお話6本を講演録のようにまとめており、抵抗なくスルスルと読めます。ただ、学習参考書のように要点を箇条書きでまとめるといった工夫はなく、後で参照するには向きません。学習用途であれば、ノートなどに論点を整理しながら読むことを勧めます。
これは自給率向上派の主張がサッと読めるよい本ですが、逆に自給率の向上を「目指す」ことに反対する意見については、体系的な説明がありません。雑多な論点のそれぞれに対する批判などは紹介していますが、主に経済学の分野から提起されている根本的な批判には(一部しか)応えていないので注意が必要です。
行政に携わる著者は、国民の「常識」および日本の経済・財政の枠組から外れた政策を検討できる立場にありません。国民のドメスティック・バイアスを解消する方法はなく、平気で輸入品を買いつつ自給率向上を望む身勝手も改善不可能。関税障壁の撤廃+所得保障型の補助金方式への完全転換も予算の問題で非常に難しい。
過激な意見の飛び交う自給率問題の渦中で、穏当な着地点を探る著者の姿勢は評価したい。自由貿易に依拠して繁栄する日本が自給率を高める道は、消費者が国産品志向を強める他ない、との結論には納得できます。
ところで本書は食料価格が高騰した時期に書かれ、発展途上の食料輸出国で暴動が発生し輸出制限に至ったことから、食料貿易に否定的です。しかしその後の食料価格低下は食料輸出国の厚生を低下させました。病死や餓死を減らすには経済発展が必要です。先進国が食料自給率を高め、食料貿易の大半を先進国間の取引が占める現状に対する経済学者の批判は、今も有効です。
マクロ経済学の視点で経済を見る目を養うのに適した一般向けの入門書です。20ページほどにまとまった「わかりやすい話」7本に序章と付論を添えて、連作短編のようにまとめられています。ですます体の語り口調で書かれており、比較的短時間で読み通せるでしょう。
細切れの知識を提供することに主眼を置いた本ではないので、一連の文章の展開に重きが置かれ、図解はほとんどありません。また事実の提示から論を起こす本でもないため、主張の裏付けとなる事実を示すグラフの数も絞り込まれています。キーワードはゴチック体で強調されているものの、索引はありません。
本書は通読して理解を深める読み方に最適化されており、つまみ食いをしたり、後で調べ物に役立つようには書かれていません。どちらかといえば漠然とした「景気」への興味を満たす本といえます。以下、本書の内容を簡単にご紹介しますので、知りたいことが書かれているかどうかの参考にしてください。
序章:マクロの景気とは国内総生産の変化である。
第1章:景気変動の最大要因は設備投資である。
第2章:最近の景気・金利・価格・外需の動向などに基づく将来の予想が設備投資を決める。
第3章:海外の経済成長と日本の輸出増(=設備投資増)には相関がある
第4章:海外直接投資の増加により企業の業績と実質賃金は直結しなくなった。
第5章:資産価格の低下は(バブルから正常への復帰でも)設備投資を減らす。
第6章:主な需要不足対策は財政支出:需要補填、減税:消費促進、金融政策:設備環境整備。
第7章:需要超過による過度のインフレは景気を悪化させるため金融政策で需要を抑制する。
付論:著者流の景気動向指数の見方を紹介。
今後、限定品市場や中古市場で入手を検討される方のために、特典DVDの内容を一部ご紹介します。
A.オリジナルサウンドトラック 32:39
曲目は以下の通り。全10曲、物語の展開に準拠した曲順です。音楽の背景はCGムービーから切り出した静止画で、1枚1分程度と表示時間が長いスライドショー形式です。
01 今ここにある世界
02 スピリア消失
03 あたたかな故郷
04 誰がために戦うか
05 スピリアに希望を!
06 まだ見ぬ地へと
07 絆の翼リアンハイト
08 TALES OF HEARTS
09 緋色の髪の魔王
10 触れ合う心と絆
B.設定資料集 7:48
主要キャラクターとソーマの設定画、イメージイラストを紹介しています。ゲームの雰囲気を知るには十分ですが、絵の枚数は限られており、資料として過度の期待は禁物。
その他、主役2人の担当声優インタビュー、OPムービー(CG)、バンダイナムコ新作ゲームの販促映像などが収録されています。
まとめますと、定価に差をつけないオマケ特典らしい内容だと思います。サントラは全曲入りのCDが既に発売されていますし、設定資料集は攻略本に収録されるでしょうが、一般のプレーヤーならこのDVDで十分に満足できそうです。テイルズの従来からのファン向けにはアニメ版があり、濃い特典DVDが付属しています。新規向けのCG版の特典DVDの内容がおとなしいのは理解できます。
限定品市場・中古市場における特典なし版との価格差の妥当性については、よくよくご検討の上、判断されることを勧めます。なお星は特典DVDの評価です。ゲーム本体の感想は特典なし版とアニメ版の方に書きました。
本書はDS「ワールド・デストラクション」を本編ラストとサブクエストまで解説し、各種データをまとめた1冊です。A5版、フルカラー、並製。初心者から上級者までカバーします。内容はキャラクター・システム・シナリオ・マップ・データ・設定原画の全6章構成です。
第1章は敵味方の主要キャラクターをイラスト付で紹介し、世界観についても簡単に解説しています。
第2章は説明書の拡大版。様々なルールや計算式、パラメータ成長表など、理詰めで攻略手順を考える際に参考になる資料が豊富です。とくに武器の合成とスキルのカスタムはルールが複雑なので、興味のある方は先に一読されることを勧めます。その他「アレッ!?」と思ったときに読み返すと、いろいろ発見があります。
第3章、第4章はシナリオ攻略とマップの紹介です。WDはダンジョンの難易度が高く、回避不能の落とし穴、進行に必須の落下地点、ワープゾーン、中身がランダムの宝箱など、トライ&エラーで解く他ない仕掛けが満載です。また雑魚と比較してボスが妙に強い場所には必ず遠回りを促す小イベントや宝箱があるのですが、気付きにくい。本書の出番は多いでしょう。
第5章はデータ集です。ほとんどのデータが網羅されています。ただ、アイテムからの販売店逆引きが弱いこと、スキル強化の詳細がないことは残念です。とくに後者、複雑すぎて網羅する紙幅がないのはわかりますが、攻撃上昇と命中低下、効果上昇と消費SP増加、などの関係式は(もしあるなら)知りたかったです。
第6章は設定原画集。全10頁でオマケ程度の内容。開発者のインタビューなどはありません。
なお、本書に記載のないゲームクリア時の「システムデータ保存」ですが、New Game した際、敵が強く、獲得経験値が低くなります。引き継ぎなし。ゲームの内容に変化はありません。
Amazonの新品が売り切れると、限定品市場・中古市場では特典の有無で価格差が開きそうです。そこで参考情報として、特典の内容を簡単にご紹介したいと思います。
1.ノスタルジオの風 設定集
A5版、フルカラー50頁、並製、カバーなしの小冊子です。人物、モンスター、飛空船、世界の順に膨大なイラストを収録、細かいものを含めれば200点以上になります。美術のコンセプト、クリエーターのコメント、初期のキャラ設定や構想段階のイメージカットなど、ここでしか見られない(?)資料もあります。構想12年、その万感の思いが伺える設定集です。
2.サウンドトラックCD
設定集の裏表紙の内側(表3)に貼り付けられたビニールケースに収められています。ピクチャーレーベル仕様。収録曲は以下の10曲、総収録時間は29分16秒です。物語の展開に沿った曲順となっており、コンパクトなサントラCDとして、しっかり聞けます。
1.メインテーマ 2:19
2.バベルの塔 2:34
3.パーティバトル 4:05
4.ロンドン 3:39
5.冒険者協会 3:10
6.空のテーマ~第一階層~ 2:50
7.飛空船バトル 2:53
8.メルヴェイユ村 2:49
9.パーティバトル~ボス戦~ 3:20
10.オープニングテーマ 1:37
全体として、特典なし版と価格差のないオマケ特典とは思えないくらい、充実した内容だと思います。無論、特典がなくともゲームを楽しむのに支障はありません。唯一の攻略本に設定資料集や製作者インタビューがない、サントラCDは発売予定がない、など特典の内容には希少性がありますが、価格差についてはよく検討されることを勧めます。
星は特典の満足度です。ゲームの内容については、特典なし版の方に書きました。そちらもご覧いただければ幸いです。
全てを「砂」に帰すデストラクトの能力に目覚めた主人公キリエは、狂った恋人に盲従し、故郷・恩人・貴族・聖獣を次々葬り去る。水は淀み、光は消え、風もやむ。世界中の人々の笑顔が失われてゆく……。
明るい演出と裏腹に、物語は陰惨です。主人公が異様な判断を重ねる理由は最終決戦で明かされます。プレーヤーが主人公に感情移入できないのは仕様なので、そこは割り切って遊んでください。
ほぼ固定視点の3Dマップ+2DキャラのオーソドックスRPG、パーティーメンバーは6人、戦闘メンバーは3人で戦闘中の入替不可、個人ターン制(素早さが高いとターンが多く回る)のコマンド入力式バトル、BP・ラッシュ・ブロウ・連撃・連結・追撃など独特の戦闘システムあり、アウトフィールドなし。
見た目は今風ですが、高いエンカウント率・レベル重視の戦闘バランス・高いダンジョン難易度・などなど、ファミコン時代を思い出す調整となっており、若い人は面食らうかもしれません。
敵味方双方が連鎖攻撃で1ターンキルを狙う戦闘に違和感を持つ人は多いでしょうが、これは現実の真剣勝負に寄せたシステム。テーブルトークRPGでは防御or回避失敗=直撃=敗北というルールは珍しくありません。ただ、コンピュータRPGでは初期に淘汰されました。本作の再挑戦も成功とは言い難いように思います。
昔風の調整とは逆に今風の箇所も要改善。術技の育成に自由度がありますが、ラッシュで命中を育てず、特性強化を選ばず連結しないのは制限プレイに等しい。個性的なカスタマイズのメリットが薄いため、戦闘経由のSPは自動配分、奥義書経由のみ自由配分の方が親切。その他、音声付のシーンで会話を読み飛ばせないのもつらい。
本作の難点を多々書きましたが、市場による淘汰で大作RPGの金太郎飴化が進んだ昨今、1年に10作品以上遊ぶ方なら、この個性派RPGは意外と面白いと思います。
本書は「金利を上げて景気回復」といった主張が選挙で通用してしまう日本の現状を憂う高橋洋一さんが、金融緩和派の主張をサッと読める形でまとめたものです。「世界一簡単な金融政策の入門書」と謳っていますが、「円高」「円安」「中央銀行」「財政政策」「金融引き締め」といった言葉は説明なしに登場しますからご注意ください。
本書の主張は以下の通りです。
・金融政策は遅れて効く。
・重要なのは名目金利ではなく実質金利。
・金融緩和を伴わない財政政策は無効。
・為替の安定、貿易・資本移動の自由、金融政策の独立性の3つを同時に達成することはできない。為替の安定を諦め、経済厚生の損失を最小化する金融政策を行うべき。
・景気の好不況に強く影響するのは個別物価ではなく一般物価。
・物価の上方バイアスに留意すると日本はデフレ継続中。
・日本銀行は適切な物価水準の目標を設定し、デフレを脱すべき。
・バブルを金融引き締めで予防するのは困難。事後の対応に十全を尽くせ。
・金融緩和を伴わない為替介入は無効。
・為替は金融政策による緩やかなコントロールが望ましい。
【高橋さんの提言】
需要の急速な減退により深刻な不況が生じている現在、欧米と同様、大胆な金融緩和を行う必要がある。また財政再建は増税ではなく景気回復による増収を考えよ。量的緩和と政府通貨の発行を行うべし。
私は高橋さんの主張に概ね賛成するのですが、異論の持ち主(日銀など)に対して「無能だから」「無責任だから」「私的な利害を優先しているから」といった類の説明をしているのはいただけません。実際には「議論の前提が異なるから結論が違う」のです。例えば国際金融のトリレンマについて「金融政策の自由度より固定的な為替相場を選択する」など。中傷を避け、ていねいに議論の前提を争ってほしいと思います。
天涯孤独の身となった主人公が、砕け散った少女の心の欠片を探して世界を駆け巡るRPG。
私はアニメ版の方をプレイしていますが、CG版も触れる機会がありましたので少しだけ。アニメ版とCG版の違いはムービーのみで、ゲームの内容はアニメ版がベースとなっています。たとえばフェイスチャットやステータス画面、秘奥義カットインのキャラ画像などは、全てアニメ版の絵柄そのままなのです。
ゲーム制作費高騰の流れが止まらない中、とくに高コストなRPGは海外市場を意識せざるをえなくなってきています。ドラゴンクエストがよく売れる日本国内と異なり、海外では低頭身のアニメ風キャラクターはビジュアル的に入り口で拒絶されがち。テイルズがリアル志向の3D表現を採用したこと自体に多くの批判が出ていますが、チャレンジの意図は理解できます。
しかしムービーよりチャットの方が接する回数も時間も遥かに多いわけです。ときどき出てくるムービーだけリアル志向でも、アニメ表現を受け付けない人はやっぱり投げ出すのではないでしょうか。ムービーのみの差し替えは安直に思えます。
CGの出来についても批判的な意見が多いようです。たしかにヒロインの顔などは、日本人にはあまりウケそうにありませんが、北米のゲームと見比べるとあまり違和感がありません。北米市場を狙うにせよ、テイルズは今後も国内販売が主となることが予想されます。アニメ版で保険をかけたTOHは、日本市場の許容範囲を見定める意図で、あえて挑戦的な調整を行ったのかもしれません。
結論として、アニメ表現に忌避感がないなら、ふつうのユーザーにはアニメ版の方が統一感があってよさそうです。でもテイルズの新しい可能性に強い興味があるなら、CG版も悪くありません。とくに風景や光の表現は美しいです。
今後、限定品市場や中古市場で特典DVDの入手を検討される方のために、「ドラマチックDVD」こと「ビバ ハート フル! テイルズ オブ DVD ーハーツチャンネル編ー」の内容についてご紹介します。
1.チャットドラマ「あつまれ!テイルズパーク」27:02
TOHの主役2人、その担当声優2人(実写)、TOVの主人公の計5人(3人)によるトークの間に様々な企画を挟むというもの。企画を列挙すると、TOA・TOS-R・TOI・TOHのキャラが登場するコント風のフェイスチャット3本立「はなさかおにいさん」「ともだちひゃくにんできるかな?!」「大きな森のテイルズオブようちえん」、TOSの藤林しいなとコリンをモチーフにした歌「だいすきな、きみへ」、TOD2のバルバトスが指導する「たいそうコーナー」、そして「おたよりコーナー」となっています。
この予約特典はシリーズのファン向けに作られており、旧作キャラはみな説明なしで登場。TOHが初テイルズという方は呆然とする他ない。最低限TOAは既プレイ推奨です。
2.テイルズ オブ フェスティバル 2008「TOHステージ映像」22:23
映画のDVDによく入っている「特典映像」っぽいコンテンツ。イベントでTOHを紹介した際の様子で、プロデューサーがあれこれ語っています。
3.TOH OP(アニメ) 2:02
4.「Next Tales of」PV 0:52
5.バイダイナムコゲームス最新情報 2:40
特典DVDの内容は以上です。原作の深刻な場面をネタに転化するなど、倫理的に受け付けない人もいそうですが、ツボにはまる人には最高の特典かもしれません。
特典なし版との価格差の妥当性については、よくよくご検討の上、判断されることを勧めます。なお星は特典DVDの評価です。ゲーム本体の感想は特典無し版の方に書きました。
心の闇に入り込み問題を解決する技能が存在する世界。両親を亡くし祖父と暮らす主人公シングは、魔導師に追われ村の浜辺に漂着した兄妹、ヒスイとコハクを発見する。シングは兄妹を助けるべく奮闘するが、魔導師に祖父を殺されて我を失い、コハクの精神の源を破壊してしまう。世界に飛散したコハクの心を集めるため、シングたちの旅が始まった……。
テイルズオブシリーズ伝統の手数の多い戦闘システムを継承しつつ、DS作品らしい調整が随所に見られます。固定視点の3Dマップ、2Dキャラクター。パーティーメンバーは6人、戦闘メンバーは3人で戦闘中の入替不可。シンボルエンカウント。術技は戦闘中常に高速で回復し続けるEGを消費する方式、不連続なら使い放題。上画面メイン、下画面はマップ・操作。ボタンで完結。タッチ操作も一部で可能。マップは宝箱の位置なども表示される親切な仕様。
画面構成はキャラが大きく描かれ見やすい。2Dキャラの多彩な表情も楽しい。またイベントがボイス付、しかもカスタムでセリフを自動送りできるのは便利。ただ、変化に富んだ構図の3Dマップの中で、2Dキャラゆえ8方向にしか移動できないのは少し不便です。
序盤のていねいなチュートリアル、今すべきことが明確、最小限の操作はシンプル、レベルを上げればゴリ押しも可、などなどRPG初級者を意識した工夫は豊富です。変更可能な装備品はアクセサリーのみ、料理を廃止し治癒石システムに再編、隊列の設定は1次元、など伝統のシステムをシンプルに改定。
収集した素材の消費によるスキル習得、素材の合成によるアクセサリーの作成など、自由度を増し複雑化した部分もありますが、遊びやすい作品に仕上がっていると思います。主要人物の設定年齢はDSテイルズの過去2作とほぼ同じですが、外観・脚本・演出ともに少し高年齢化した印象。物語は長大なので、ゆっくりお楽しみください。
失踪した父を追って冒険家となった少年が、父の残した飛空挺に乗って大空を翔け、謎の秘密結社と対決するRPGです。上画面がメインで固定視点の3D、下画面は2Dマップ、ボタン操作中心、タッチ操作は2Dマップのスクロールのみ、メニューは全画面切替式、パーティーのメインキャラクターは4人、ゲストは6人、パーティー参加=戦闘にも参加、全滅=ゲームオーバー。
わかりやすく作り込まれた作品で、敵の存在、主人公の動機付け、世界観の提示、ゲームシステムの紹介まで、説明書なしでも困惑することがないよう、物語の展開が工夫されています。メインキャラは男女2人ずつ、その他、物語に関わる人々の属性もバランスが取れています。画面切替は一瞬。読込時間を意識させられません。戦闘のテンポもいい。
戦闘では素早ければ行動順が多く早く回る方式を採用。戦闘メニューには予定行動順が常に表示されており、素早さ上昇のスキルを使用すると、味方の行動順が増える様子が如実にわかって面白いです。意外性を減らし「不運」で負けるストレスを排除したのは本作らしい割り切りです。
ビジュアル面では、マップもキャラも3Dで描かれ、イベントシーンとシームレスでつながるのが、私には心地よく思えました。背景は細かく描き込まれており、イベントシーンで拡大されても十分きれい。なおプリレンダリングのムービーやボイスはありません。
編集を駆使する映画などと異なり、冒険の全行程を体験するのがコンピュータRPGの特徴です。それゆえ演出者が省略の美学を持たないと、どんどん長くクドくなってしまう。本作はゲームらしいゲームを目指し、気持ちよく遊べる工夫を満載した、素晴らしい作品だと思います。お勧めします。
唯一、残念なのは、ひらがなモードがないことです。本来ならポケモン世代でも楽しめる作品だけに、漢字の壁ゆえに小学生に勧めにくいのはもったいないです。
本書はDS「ノスタルジオの風」を本編・サブストーリー・おまけダンジョンまで解説し、各種データをまとめた1冊です。初心者から上級者までカバーします。内容は知識編・冒険編・資料編からなりますので、順に解説します。
知識編は説明書の拡大版。クリティカル発生率の計算式などゲーム中の説明では曖昧な表現となっている箇所を具体的な数字で示していますので、きっちり戦略を立てたい方はぜひ一読されることを勧めます。
冒険編はストーリーの進行に合わせてマップとポイント解説をセットで並べる形式。ネタばれなしでマップだけ見たい、詳細チャートだけサッと確認したい、といった需要には対応しませんが、過半数の読者にとっては、参照すべきページが固定され都合がいいのではないでしょうか。冒険家への依頼「クエスト」と宝探し「ワールドトレジャー」は、冒険編の末尾にまとめられています。本編攻略のページにクエスト発生の案内が記載されていないのが少し残念。
資料編は装備品・アイテム・モンスターのデータをまとめています。アイテムの入手方法、ガジェットの未鑑定時の名称、おまけボスを含む全モンスターのパラメータまで、私の知りたい情報は全て書かれていました。
ところで、「ノスタルジオの風」では3D画面の視界の狭さを補うため、下画面に簡略化された2Dマップが表示されます。本書のマップは、この下画面のマップをベースとしています。DSの低い解像度そのままなので、一見、手抜きのようですが、これが使いやすい。
フルカラーの紙面は美しく、落ち着いた雰囲気。ゲームの世界観に寄り添った、ていねいな編集がなされています。攻略本としてお勧めできます。なお「設定原画集」や「製作者インタビュー」などはありません。
勇気ある少年たちが、時空を縦横無尽に駆け巡り、世界を破滅の運命から救うRPGです。FF型のオーソドックスRPG、2Dマップ、パーティーメンバーは6-7人、概ねシンボルエンカウント、バトル空間はシームレス、コマンド選択式、戦闘メンバーは3人でバトル中の交替は不可、アクティブタイムバトル(ウェイト選択可)、全滅=ゲームオーバー。
SFC版、PS版のほぼ忠実な移植ですが、上画面をメイン、下画面をマップとメニューに割り振って、スッキリ見やすい操作感を実現しています。マップは足を踏み入れた建物・部屋・通路のみ表示される親切設計です(宝箱の取り忘れなどが生じにくい)。タッチペンとボタンに両対応。旧来の画面形式「クラシック」も選択可能(ただしタッチ操作不可)。
読込はSFC版と同等以上の速さ。PS版とは段違いです。PS版で追加されたイベントムービーはカット可能。一度はムービーを見てみることを勧めますが、ムービーの内容は本編のイベントと重複しますので、肌に合わなければカットして何の支障もありません。
DS版はSFC版と異なりバッテリー切れでセーブデータが消えてしまうことがないので、DS本体さえ大切に使い続ければ、末永く楽しめると思います。携帯ゲーム機で手軽に遊べるのは社会人にはとてもありがたい。リメイクの希望も理解できますが、DSへの移植に私は感謝しています。
「クロノ・トリガー」は歴史を超えて愛されるゲームですから、親子で楽しみたいという方も多いでしょう。その際、DS版ではSFC版と異なり小学生には難しい漢字がたくさん使われていることに注意してください。とくに技の名前は難しいです。残念ながら「ひらがなモード」は用意されていません。
DS版「クロノ・トリガー」がSFC版のほぼ忠実な移植作品であるため、ゲームと同時発売の攻略ガイドとしては珍しく、エンディングまでの全行程を解説しています。
ラスボスの攻略法、13通りのエンディングの発生条件、さらにEND1とEND2の中の小分岐まで、本編に攻略に関しては手取り足取り詳細に記載。それでいて過度のネタバレを抑制しているのが本書の特徴です。例えば「裁判」イベントでは、判決の段階で「あの時こうしていれば無罪になった」と説明します。これを不親切と感じるか、1周目のワクワク感を損なわない素晴らしい編集と受け取るかは、読者次第でしょう。
なおDS版の追加要素については、簡単なガイドのみです。追加要素にのみ登場する新アイテム、新モンスターは秘密扱いなので、注意してください。
本書の構成は V JUMP BOOKS らしいオールドスタイル。ストーリーに沿って街やダンジョンのマップを紹介し、注記の形で攻略のポイントを示します。1ページ目から順に読み進めていくことができ、面倒がありません。その反面、近年の「完全攻略」系のガイドブックに多い、地図・物語・各種データなどを個別に整理した本と比べ「ストーリーのネタバレなしでボスの攻略法のみ知りたい」「アイテム収集のためマップだけ見たい」といった様々な需要にきめ細かく対応することはできません。またページのあちこちにいろいろなことが書かれているので、一部の情報を見落としかねません。
最後になりますが、DS版「クロノ・トリガー」では小学生には読めない漢字がたくさん使われています。とくに「催眠音波」など技の名前は難しい。本書は全ての漢字にルビをふっており、固有名詞だけでなく、ゲームのせりふに使われている漢字もほとんどフォローしています。小学生のお子さんにDS版「クロノ・トリガー」を勧めたいお父様、お母様は、ぜひ本書をセットにしてください。
今後、中古などで予約特典CD「CHRONO TRIGGER ORCHESTRA EXTRA SOUNDTRACK」の入手を検討される方のために、その内容を簡単に紹介します。まず収録曲は2曲です。
1.クロノ・トリガー ~Orchestra Version~ 2:07
2.クロノ・トリガー・メドレー ~Orchestra Version~ 4:11
メドレーは「予感」「ガルディア王国千年祭」「風の憧憬」「カエルのテーマ」「魔王決戦」「エピローグ~親しき仲間へ~」「遥かなる時の彼方へ」から構成されています。
CDはピクチャーレーベル仕様で、説明書のキャラクター紹介イラストが配されています。紙製のパッケージは最も単純で簡素な袋状、CDは裸で収められ、同封されている二つ折りのカードに光田さんの感謝のメッセージとスタッフ一覧が記載されています。
作曲はもちろん光田康典さん。
オーケストレーション(管弦楽への編曲)は亀岡夏海さんです。亀岡さんは劇伴(映画・演劇などのために書き下ろされた楽曲)のオーケストレーションを中心に活躍されている新鋭の音楽家です。
指揮はハイ(*)島公二さん、演奏は今野ストリングス、録音はSound City、編集スタジオはWONDERSTATION、マスタリングスタジオはH2masteringです。*草冠に配
本来この特典CDは、早い段階で予約をしたファンのために、通常版との価格差なしで提供されたものです。それゆえ収録時間も短く、あえて原曲に忠実な編曲をしています。予約特典としては充実した素晴らしいものですが、限定品市場や中古市場における通常版との価格差が妥当なものかどうかは、よくよく検討されることを勧めます。
私はこの特典CDが気に入ったので、1時間くらいじっくり聞けるオーケストラ版サントラCDの発売を期待しています。
世界の多くの国では、話し言葉を中心とする言葉と、叡智を記す書き言葉が異なり、知的エリート=二重言語者となっています。著者はこれを「現地語」「普遍語」と呼び、普遍語となった現地語を「国語」と定義します。
高度情報化社会の進展により世界的な普遍語としての英語の力が強まり、学術論文のような叡智の粋のみならず、広く文学の領域まで、英語が進出してきつつある。その結果、国語としての日本語は亡び、現地語に逆戻りするだろう。それは日本の文化、日本人の叡智が英語の「図書館」の中に消えていくことを意味する。これは大変だ、というのが著者の問題意識です。
しかし1章の末尾で著者が断っている通り、一生日本から出るつもりがなく人類の叡智にもミーハー以上の関心を持たない、私のような庶民には、遠い話です。
もし今、夏目漱石のような文学の才にあふれた二重言語者がいたなら、英語で作品を発表するのではないか……なるほど、そうかもしれません。でも東野圭吾さんや宮部みゆきさんが、英語で作品を書くでしょうか。文化商品としての小説で大満足の私は、今後も読む本に困りそうもない。「文学なんて読まないし、英語で書きたければご勝手に」が私の素朴な感想。
庶民はエリートに無関心ですが、エリートは庶民の「文化」水準が下がると食いっぱぐれる。本書も例によって最終章を教育提言に割き、古典教育の重要性を説いています。アタマのいい人はご苦労様、です。
Windows Vista の入門書です。パソコンとはそもそも何か、各部の名称、起動のさせ方、といったパソコンの本当の第一歩から説明しているのが本書の特徴です。そのため初めてのパソコンに自分一人で取り組まねばならない方に、たいへんお勧めです。
「超図解ビギナーズ」シリーズらしい美しく目に優しいレイアウトは本書でも健在、大きな図解を余裕のある紙面に配して見やすく分かりやすいので、スイスイ読み進めることができるでしょう。薄い本でもありますし、順番に読み飛ばすことなく着実に進むことが大切です。
大判で薄く安価な入門書は何冊もありますが、本書ほど敷居の低い本は多くありません。しかし全ページの2割弱を非常に初歩的な内容に充てた結果、その他の基本操作の解説が薄いのも事実です。本書読了後、間もなく「もっと知りたい」ということになるでしょう。さりとて本書読了レベルでは、やはり200ページ超の本は敷居が高い。結局、入門書をもう1冊、となりそうです。
ほんの30分ほどでいいのです、パソコンの経験者がフォローしてくれる環境にいるならば、「超図解ビギナーズ ウィンドウズ ビスタ」など一般的なレベルの入門書を最初から選択できるのですが。
Windows Vista の初級解説書です。「Z式マスター」シリーズ伝統の1ページに6枚の画面写真を収めるレイアウトは本書でも踏襲され、全操作手順を確実に追いながら学習を進めることができます。
他の多くの入門書や初級解説書は、画面写真を大きくし、枚数を絞り込みます。それでいてページ数・内容ともにZ式と同等クラスとするのですが、その秘訣は部分図の活用にあります。画面全体の写真をあまり使わない。逆にいえばZ式は全体図にこだわるので紙面が窮屈に見えるわけです。これは非常に個性的な選択です。実際に紙面をご覧になって、自分に向いているかどうか、事前に確認されるべきでしょう。
ただし1ページあたりの情報量についていえば、雑誌などでは1ページに10を超える画面写真を並べることも珍しくありません。しかもステップ図解を用いるのは難所のみで、大半の解説はポイントとなる画面写真と文章解説のみというシンプルな構成。じつは「何でもていねいが一番」というのは間違いで、わかりきったことをもたもた解説されるとイライラするのが読者の現実なのです。
解説書は自分のレベルに合わせて買うことが大切です。初心者の方には「超図解ビギナーズ」シリーズなど安価で薄い入門書を、細かい図解はかえって煩わしいという中級者寄りの方には「ひと目でわかる」シリーズを勧めます。
乗り換えユーザ向けに書かれた Windows Vista の初級解説書です。Vista の大雑把な紹介、乗り換えの注意点、基本操作周りの新機能と変更点およびカスタマイズについて説明するまでが前半戦、後半戦はウェブ閲覧/メールの送受信/画像・映像の管理・鑑賞/ネットワーク活用/システム管理について主要項目を解説します。
「Z式マスター」シリーズの特徴は1ページに6枚の画面写真を収める情報密度の高さにあります。ある程度のまとまりのある作業項目を見開き2ページもしくは4ページで説明できるのが「Z式マスター」シリーズの優位点です。
大きな図版は見やすくわかりやすいのですが、実力がついてくると、最終的には代表的な1~2枚の画面写真と文章による作業手順説明のみ、というコンパクトなスタイルが一番便利に思えるようになります。本書はその中間に位置します。
出版社のウェブサイトに本文サンプル(PDF)が公開されているので、実力に不安のある方は事前に確認されるとよいでしょう。その結果、自分には難しそうだと思われた方には「超図解Windows Vista新機能ガイド」を、レベルはちょうどいいが OS のインストールなどの情報もほしいという方には「Windows Vistaスタートアップ」を、簡単過ぎると思われた方には「Windows100% Vista!」を勧めます。
なお本書は Vista 搭載パソコンを買った方向けに「操作手順を解説」する内容です。Vista の導入検討ならば「新機能や変更点を紹介」する「これ1冊で完全理解Windows Vista」のような本を勧めます。
乗り換えユーザ向けに書かれた Windows Vista の初級解説書です。Vista になって機能が増え、設計が変更された箇所はたくさんありますが、大半の作業手順は XP と共通しています。本書は XP から大幅に操作方法が変化した部分に的を絞り、乗り換えユーザが知りたい部分だけを「超図解」シリーズが長年磨きをかけてきた美しいステップ図解によって解説します。
乗り換えユーザ向けの書籍は多々ありますが、本書は入門レベル寄りです。Vista への移行は OS のアップグレードではなく Vista 導入済のパソコンを買うことにしたい、XP をしばらく使ってきたけれど「パソコンに詳しい」と他人にいう自信はない、そういった方々はぜひ本書をご検討ください。大きな画面写真と小さな躓きをていねいにフォローした解説が助けになるはずです。
ただし大きな図版やていねいな解説は、冗長さや一覧性の低さを伴っており、自分の実力と到達したいレベル、学習に使える時間などを勘案して、最適な1冊を選択してください。
本書は簡単過ぎると思われるなら、原則1項目1ページの「ひと目でわかるMicrosoft Windows Vista」や1ページに画面写真6枚を配置などコンパクトにまとまった解説書をご検討ください。OS のインストールなどにも挑戦しようという方には「Windows Vistaスタートアップ」があります。ステップ図解など不要という中級寄りの方には「Windows100% Vista!」「これ1冊で完全理解Windows Vista」のように多くの新機能を「紹介」する雑誌の別冊系ムック本を勧めます。
Windows Vista の初級解説書です。Vista 発売の4ヶ月も前に発売されたのが本書最大のセールスポイントであり、Vista 導入の検討材料として多くの人の助けになった1冊です。
Vista が実際に完成したのは11月であり、著者はベータ版を元に本書を執筆しています。ただし Vista に搭載される全機能は2005年末までに Windows に組み込まれ、以降の1年間は安定性とパフォーマンスの向上、様々な修正のために費やされてきたという経緯があり、Vista の新機能や XP からの変更点を紹介するという本書の内容において、大きな問題は見当たりません。(本書に紹介されている機能が製品版では削除されている、といった事例は見当たらない)
本書の特徴は、Vista と XP を比較的ていねいに比較していることです。1月30日の Vista 発売前後に Vista を紹介する本はたくさん刊行されましたが、XP でどうであったかということは自明とされがちです。Vista を知るには実際それで困らないのですが、XP との差分は曖昧になりがちです。本書においても曖昧さや比較情報の欠落はあるものの、著者の意識が本書にささやかな個性を与えているように思います。
正直なところ、今買うならふつうの人は「いますぐわかるWindows Vista & Office2007」のような安価で薄い本で十分なのではないでしょうか。Vista の導入手順も既に製品版を元にした解説が出ているわけですから、本書は半ば役割を終えているように感じます。
初級の Windows Vista の解説ムックです。表紙には「Vista を買ったすべてのユーザが最初に読む本」とありますが、本書は初めてパソコンに触れるような方ではなく WinXP からの乗り換えユーザ向けに書かれています。また本書に収められた記事の一部は「Vista を買う前」に読むべき内容だったりします。
本書はこの手のムック本としては珍しく、操作手順のステップ図解に重きを置いているのが特徴です。Vista の新機能を紹介する序盤はいかにも雑誌の特集記事のようですが、中盤以降は百科事典的な初級解説書のスタイルを採用しています。「これ1冊で完全理解Windows Vista」「Windows100% Vista!」など雑誌系のムック本の多くは代表的な少数の図版+文章で1項目の解説を済ませ、少ないページに多くの情報を詰め込んでいます。それは詳細な図解をうるさく感じる熟練者への配慮でもありますが、本書のステップ図解が嬉しい方も多いはず。
当然、本書は扱う内容を絞り込んでいますが、逆にこうした本だからこそ解説される内容もあります。その一例がインターネット接続ウィザードのステップ図解。WinXP から見た目以外の変化がないのだから、説明不要とも考えられますが、ふつう年に1回もお目にかからないものだけに操作方法を忘れている人も多い。しかしクリーンインストール後には再設定が必要。本書はこうした、パソコン経験者だけどレベルはそこそこ、という人々のかゆいところによく気がつく編集となっています。
本書と同様、乗り換えユーザ向けに製作された初級解説書が「超図解Windows Vista新機能ガイド」です。雑誌の別冊と初級解説書の特別版、出自は違えど目指したところは同じ。比較検討を勧めます。今後、こうした雑誌と解説書の中間に位置する本が増えていくと面白いですね。
Windows Vista の入門書です。マウスやキーボードの基本操作からはじまり、ファイルの作成と管理など、初歩的な操作方法を学ぶ内容となっています。
「こんなに簡単」シリーズ伝統の大きな紙面に大きな画面写真、内容を絞り込んでスッキリとまとめられた文字も記号も矢印も少ない紙面構成は本書でも踏襲されており、入門者でもスイスイ読み進めることが可能です。
本書の特徴は、インターネットとメールについて記述がないことです。それでよい、という方以外は「こんなに簡単パソコン入門 Windows Vista対応」「超図解ビギナーズ パソコン入門 Windows Vista対応」などネットやメールの操作も解説する入門書をご検討ください。似たようなタイトルの本はみなネットとメールの解説をしているだけに、勘違いしやすいので注意してください。
ところで本書が紹介するレベルの操作方法は XP とほぼ同じです。乗り換えユーザは(たとえ入門レベルであっても)もう少し広い範囲を扱った初級解説書(例えば「Z式マスター」など)でなければ物足りないでしょう。
Windows Vista の入門書です。余裕のある大きく美しい紙面に大きな図解。読み飛ばさなければ、操作に迷うことはほとんどないでしょう。基本操作と文字入力についてまず説明し、続いてネット、メール、デジカメ画像管理の基本を紹介。スッキリ読める薄い本ですが、入門者のPC活用ニーズはバッチリ満たされるはずです。
なお同シリーズの「超図解ビギナーズ パソコン入門 Windows Vista対応」と異なり、「パソコンとは?」というレベルは基本的にフォローしていないことに注意が必要です。パソコンの起動のさせ方、マウスの使い方などは、最初に30分くらい経験者が教えれば足りる領域ですが、全くの独習となると、これが案外難しいものです。
したがって経験者の支援がゼロなら「パソコン入門」がお勧めです。しかしそうでなければ、本書の方がよいと思います。なぜなら入門書としてページ数を絞り込む「超図解ビギナーズ」シリーズの制約のため、「パソコン入門」は初心者でもすぐに物足りなく感じるレベルまでしか解説していないからです。
Windows Vista の入門書です。マウスやキーボードの基本操作からはじまり、インターネットやメールの初歩的な利用法までを幅広く学ぶ内容となっています。
「こんなに簡単」シリーズ伝統の大きな紙面に大きな画面写真、内容を絞り込んでスッキリとまとめられた文字も記号も矢印も少ない紙面構成は本書でも踏襲されており、入門者でもスイスイ読み進めることが可能です。
同シリーズの「こんなに簡単ウィンドウズVista」と比較すれば、たしかにファイル操作などの解説が薄いのですが、やはりインターネットとメールまで1冊で学べるのが本書のいいところ。ほぼ同内容の大判で薄く安価な入門書として「超図解ビギナーズ パソコン入門」があります。比較検討されるとよいでしょう。
最短1日で読破できる本書ですが、3~4日かけてじっくり取り組みたい場合は「できる入門 今日からはじめるパソコン Windows Vista 対応」の方がよいかもしれません。また WinXP からの乗り換えユーザなら本書のような入門書は簡単すぎますので、初級解説書を検討してください。
Windows Vista でウェブを利用しメールのやり取りを行う方法の初級解説書です。本書は「超図解ビギナーズ」シリーズの1冊ですが、決して入門書ではありません。Windows Vista の基本操作は説明せず、112ページ全てを費やして IE7 と Windows メールの活用方法を紹介しています。分厚い Vista 解説書でもネットとメールについては50~70ページしか書いていないわけで、初級解説書としては現時点でトップクラスの詳しさです。
入門書レベルなら立ち読みで十分だ、しかしネットとメールの章しか読まないのに数百ページもある総合解説書を買うのも馬鹿馬鹿しい、とはいえ「速効!図解インターネット&メール 総合版―Windows Vista対応」のようにネットとメールの解説だけで400ページを超える本もオーバースペックである、そんな人にお勧めします。初級者には入門者向けの紙面構成は情報スカスカに見え、もったいなく思われるかもしれませんが、定価550円ですから、「IE7 と Windows メールの特集記事を目当てに雑誌を買う」気分で手に取ってみてください。
なお WinXP の利用者が「どうせネットとメールをするだけだから」と安直にこの本だけで Vista 対応を済ませようとするのは危険です。Vista の設計は XP からかなり変更されており、「Windows100% Vista!」「超図解Windows Vista新機能ガイド」「Windows Vistaスタートアップ」など乗り換えユーザ向けのまとめ本を、読み流す程度で結構ですから、一度は見ておくべきなのです。
Windows Vista と Office2007 を、それぞれ WinXP および Office2003 と比較しながら「紹介」するムック本です。雑誌の特集記事を拡充し、単独で1冊にしたような構成・内容であり、新しい Windows と Office への乗り換えユーザを対象としています。
タイトルが勘違いを誘いますが、いわゆる初心者向けの内容は全くないといってよく、初めてパソコンに触れる方は「超図解ビギナーズ パソコン入門 Windows Vista対応」「こんなに簡単パソコン入門 Windows Vista対応」など他書をご利用ください。
本書は用途さえ間違わなければ安価にまとまった情報を入手できる、ありがたい1冊です。大きな図版を駆使し、「これだけ理解しておけばとりあえず大丈夫」という線を狙います。旧バージョンと見た目の大きく変わった Windows と Office ですが、その変化には一定のパターンがあり、ポイントさえ掴めば過去の経験を援用してたいてい何とかなります。そのポイントとちょっと想像を超えた変化をしている箇所を紹介するのが本書です。
100ページに大きな図版を貼り込み Vista と Office の両方を紹介してしまうのですから、読み手にも割り切りが必要でしょう。しかし実際に読んでみて、これくらいのお勉強で十分というユーザは少なくないのではないか、と私は思いました。
初級の Windows Vista 解説書です。マウス、キーボードの初歩的な操作方法や、パソコンの基本的な GUI の作法がわからない全くの初心者には読めません。またシステム管理者などに資する内容も範囲外。あくまでクライアントとしてウィンドウズ PC を利用する初級ユーザ(Vista 利用者の大多数)を対象とした内容です。
本書「ビジネス編」は Business と Enterprise に対応した内容なので、Home Basic および Home Premium のユーザは「ホーム編」をご利用ください。各
さてビジネスユーザの利用を想定する Business と Enterprise の両
「ひと目でわかる」シリーズ伝統の、1ページを縦2つに割り、左側に箇条書きでまとめられた操作手順、右側に画面写真+箇条書きに対応する丸数字を配置したシンプルな構成は本書でも健在。解説項目は公式解説書らしく開発者の意図が自然と見えてくるよう配慮されています。1ページ目から順に全て目を通すことを勧めますが、百科事典的な利用にも適した構成ですから、様々な用途で役立つでしょう。
本書は Vista の全機能を紹介する本でもなければ、XP からの変更点に絞った乗り換え解説でもありません。あくまで初級の総合解説書ですからご注意を。
初級の Windows Vista 解説書です。マウス、キーボードの初歩的な操作方法や、パソコンの基本的な GUI の作法をご存知の方に向けて書かれておりますので、全くの初心者は要注意。
本書「ホーム編」は Home Basic および Home Premium に対応した内容ですから、Business と Enterprise のユーザは「ビジネス編」をご利用ください。各
本書はマイクロソフトの公式解説書でもあります。Win2000 以前は図解も解説本文もこなれておらず、とっつきにくい印象がありましたが、WinXP 登場以降「ひと目でわかる」シリーズは着実に進歩を重ねてきました。現在では入門者向けの「紙面がうるさい」書籍群と一線を画した、「スマートで読みやすい」解説書として確固たる地位を築いています。
1ページを縦2つに割り、左側に箇条書きでまとめられた操作手順、右側に画面写真+箇条書きに対応する丸数字を配置したシンプルな構成は本書でも健在。解説項目は公式解説書らしく開発者の意図が自然と見えてくるように並べられています。解説は丁寧ですが、見せ方がコンパクトなので、他の初級解説書と比較してページが少ない割に解説項目は最も多い1冊となっています。
スッキリ読めてコンパクトな本書は素晴らしい解説書ですが、背伸びをして買わないことが大切です。パソコンに苦手意識のある方は「できる」「超図解」「速効!図解」など初心者対応の本を優先的にご検討ください。逆に中級以上のユーザは雑誌などで主な新機能の情報を仕入れるだけでよく、(ていねいに操作手順を紹介する)本書は不要かもしれません。
「日経PC21」「日経PCビギナーズ」「日経ベストPC+デジタル」もしくは同系統の雑誌の読者にお勧めの Windows Vista 解説書です。内容は初級ですが、Windows XP の利用経験を前提として各記事が構成されていますので、パソコン自体初めてという方が手を出してはいけません。
ページ構成をはじめ記事のスタイルも紙質も初級者向けパソコン雑誌のそれを踏襲しているのが本書の特徴です。「Vista の解説書」ではなく「1冊丸ごと Vista 特集の雑誌」という形式を貫き、価格も雑誌と同等となっています。Vista 搭載 PC の最新情報などニュース的な話題が豊富ですが、索引がなく目次も雑誌風なので、マニュアルや百科事典のような使い方には向きません。ふだんパソコン雑誌を購読していないが Vista 特集には興味のある方、雑誌を講読しているが Vista 特集だけコレクションしたい方に、本書は最適です。
なお「Windows100%」「PC GIGA」「ネットランナー」などカジュアルクラック系パソコン雑誌の購読者の方には「Windows100% Vista!」をお勧めします。また「Vista の解説書」をお求めの乗り換えユーザは「Z式マスター Windows Vista 乗換編」を、パソコン自体初めてという方は「できるWindows Vista」をご検討ください。
初級ないし中級の Windows Vista 解説ムックです。素晴らしい書籍ですが、ファイル共有や DVD のバックアップなどに PC を用いるカジュアルクラッカー御用達の雑誌 Windows100% の別冊ですから、パソコンの初心者には決してお勧めできません。
1月中に発売された Vista 解説ムックの大半が大雑把な紹介もしくは入門レベルの内容にとどまっている中、実践的な「使える」記事を豊富に取り揃えた本書は、趣味系の乗り換えユーザにとって唯一無二の選択肢といっても過言ではない仕上がりです。Vista を軽快に動作させる方法、主要フリーソフトの Vista 対応調査、Intel Mac への Vista インストールの詳細な解説、いずれも通り一遍の内容ではありません。ライターたちが直面したトラブルとその解決策が随所に紹介され、読み応えがあります。
類書と比較して少々高価ですが、価格差以上に内容が充実しており、「Vista でも DVD をコピーしたい」といった方なら満足されるはず。なお、ウェブでフリーソフトを探したり P2P を試したことがない一般の乗り換えユーザには「Z式マスター Windows Vista 乗換編」のような乗り換えユーザ向け入門解説書、もしくは「いますぐわかるWindows Vista & Office2007」のような安価なムックが無難です。
本書は著者が2004年に刊行した「日本の景気―復活の兆しはここにある!」のアップデート版といえます。今日に至る長期の景気拡大を予測した著者は、予想の実現を背景に、いっそうの自信を持って執筆されています。
景気循環の考え方に基づく予測は、しばしば経験則に過ぎないとして軽視されます。実際、機械的に景気循環が生じることはありません。では循環論は無力かといえば、さにあらず。著者が豊富なデータを循環論の立場から再整理する手際は見事であり、循環論が経済指標の読み解き方として帰納的に一定の説得力を持つことが示されます。
ただし当然ながら未来のデータは手元になく、景気の展望予測は演繹に頼る他ない。今のところ景気循環は「結果的に観察される」ものでしかないという限界を踏まえ、未来に関して著者は誠実に筆致を抑えています。ゆえに本書を凡庸・期待外れと感じる読者もいるでしょうが、私は著者の慎重な姿勢を評価します。
2006年にいざなぎ越えを迎えることとなった長期の景気回復。景気循環論の立場から、2004年の時点で今回の景気回復が長く続くことを予測していたのが本書です。
景気が循環すること自体は演繹法で説明できますが、「いつ、どのような規模で」を予測可能な理屈は発見されていません。そこで本書の中核をなす実践的な循環論は帰納法で導かれた経験則の集積となっています。しかしこの経験則、再現性の確実さに乏しいのです。とくに景気の転換点を予測するのは非常に難しい。
では本書の未来予測における著者の自信はどこから来ているか。それはITバブル崩壊後の不況が底入れしているというデータです。転換点を過ぎたので、問題は景気回復の持続期間に絞られます。すると、ちょうど今後の日本がキチン・ジュグラー・クズネッツ・コンドラチェフの4サイクル全てが上向きの時期に当っていることことに気づかされる……。
政府・日銀の経済運営も大きな景気のうねりのパーツに過ぎないとして捨象する考え方は、あまりに運命論的、ではあります。ただ、こうした未来予測も、頭の片隅に入れておくのは悪いことではない、と思います。
シャマラン映画の基本構造は明快です。まず「***は存在するか?」と問いを立てる。続いて観客の想像をかきたてるエピソードを描く。そして衝撃的なまでに率直な形で回答を示すのです。
本作のテーマは、「超人ヒーローは存在するのか?」です。悲惨な列車事故をただ一人、生き残った主人公。彼の前に現れ「君こそが超人だ」と告げる虚弱体質の男。「そうかもしれない」「いや、そんなはずはない」気持ちの揺れる主人公に、超人の存在を信じたい幼い息子が銃を向けるシーンの緊迫感はたまらない。
アメコミの現実化をモチーフにした本作のもうひとつのテーマは、「対になった存在」です。強力なヒーローには、打倒すべき最悪の敵がいるはず。警察が対処できるような悪党しかいない世界では、ヒーローの存在意義が問われます。
鳥山明は「ドラゴンボール」で主人公に「強いヒーローが強い悪者を呼ぶ、だから自分が生き返らない方が世界は平和になる」と語らせました。ドラゴンボールの世界とは異なり、アメコミでは巨悪の犠牲者は甦らない。最後に正義の味方が勝てばいいのか? ラスト、主人公の悲しみに考えさせられました。
アメコミを実写化した映画に食傷気味の方に向けて書かれた脚本です。一般受けする内容ではありません。ご注意を。
シャマラン監督の方法論は、メジャー第1作にして既に完成しています。シャマラン映画の基本構造は全て同じといってもよい。まず「***は存在するか?」と問いを立てる。続いて観客の想像をかきたてるエピソードを描く。そして衝撃的なまでに率直な形で回答を示すのです。
堂々と***を画面に映し出してしまうのが、シャマラン映画の特徴。通常ならB級映画にしかなりえないところ、A級の演出によって傑作となってしまう。シャマラン・マジックです。
本作のテーマは、「神は存在するのか?」です。主人公はキリスト教系小学校の5年生。第1章「疑問」はジョシュア少年の旅の始まり。最愛の祖父を失った少年は神の存在を確かめようとする。第2章「予感」は少年の苦悩と挑戦を描く。神の存在を信じられない少年の心の叫びは天に通じるか? 第3章「回答」は奇跡を描く。少年が大いなる目覚めを自覚したとき……。
「シックス・センス」以降のシャマラン作品では、当初の問いへの答えが示された後、「したがって世界はこうなる」と展開していく。しかし本作では1年間の少年の成長と神様探しの答えが見事に収束します。キリスト教の世界を描いた作品ですが、内容には普遍性があると思う。1時間27分の心温まる物語。感動しました。
外務省の「外交に関する世論調査」によれば、日本では数十年来、嫌韓派が親韓派に対し優勢でした。親韓が多数派となったのはサッカー日韓W杯の開催前夜からです。最近ではマスコミが親韓優勢なので、嫌韓の中心地はウェブへ移動しています。
従来、嫌韓派には様々な主義・主張がありましたが、ウェブ上で匿名・仮名で情報発信している嫌韓派の意見は概ね本書に集約されています。「最近ネットで流行っている嫌韓について知りたい」という方々には便利な1冊です。「韓国に誇れる文化はほとんどない」と断言するなど正直な心情吐露が随所に見受けられ、嫌韓派の性格と、彼らが何に注目して韓国を嫌うのかが、よくわかる内容・構成となっています。
ただし本書は韓国入門でも日韓関係論入門でもありません。日韓の文化摩擦事案を網羅し、ウェブに集う嫌韓派の主張を整理・紹介する内容なのです。したがって韓国の地理・歴史・文化の基礎知識や、日韓関係の順調な部分は記述の外です。韓国を総合的に理解したい方は、「ハンドブック韓国入門」など網羅的な入門書を別途読まれることを勧めます。
本書には4人の有識者が寄稿されています。それぞれに興味深いのですが、とくに大月隆寛さんの「自虐と嫌韓――嫌韓厨・考」は本書の解説として秀逸。いずれにせよ、嫌韓流で盛り上がっているのは高々300万人。日本人の数%に過ぎません。韓流だって1000万人。そうしたことも頭の片隅においてご覧ください。
タイトルは「中国入門」ですが、ごく狭い領域にフォーカスした内容+雑多な構成なので要注意。一般的な基礎知識を「手にとるように中国のことがわかる本」で学び、網羅的な嫌中論要点集の「いま嫌いな国中国」で全体像を掴んでから本書を手に取ることをお勧めします。
中国嫌いの日本人は、(各種調査では常に少数派ながら)昔から相当数、存在しました。本書は中国嫌いの人々の世界観を内側の視点から紹介し、「なぜ中国を嫌うのか?」という問いに答えます。たいへん主観的に書かれており、小さな事実を想像で膨らませた表現が目立ちます。中国人でも食人は非常識だ、といったことは現地へ行けばわかります。ただ、そうした反論は虚しい。嫌中派の正直な自己紹介として読むことを勧めます。
なお、本書の表現技法には多くの難点があります。例えば、著名人を実名で登場させ、当人の実際の発言と無関係な著者の主張を代弁させているのは誤解を招く危険が大きく、通常ならば反則です。長年この芸風でやってきたジョージ秋山さんだから杞憂なのかもしれませんが、本書が「入門」を謳うのは、やはり不穏です。
また、本書は1ページ平均3コマ程度で、紙面の「白さ」が目立ちます。大判で分厚くページも多いのですが、「マンガ嫌韓流」の半分強の時間で読めるでしょう。
ビジネスブログの初中級解説書です。企業がブログを始める際に考え準備しなければならない事柄を、具体的かつ実践的に解説しています。もちろんブログツールの使い方解説などは本書の範囲外です。ブログツールをいかに活用するか、その際に生じうる問題と対処法まで、きちんと目配りしています。
ただし、本書がタイトルに冠した「最新マーケティング手法」には注意が必要です。ブログの双方向コミュニケーションシステムに着目し、これなら顧客の声を直接聞くことができるというのですが、現実は厳しい。せっかく記事を書いても無反応というケースが少なくないのです。意見集約の場を設定することと、実際に意見が寄せられることとの間には断絶が存在します。また、ウェブにはネガティブな情報を増幅する性質もあります。
著者は諸問題に無警戒ではないものの、全般にブログを過大評価しているように思われます。毎週のように記事を更新して、月間でわずか数十の意見を収集できたとして、費用に見合った効果といえるのでしょうか。
よそが成功してから後を追うのでは遅い、と著者はいいます。けれども、「ホームページ」と同様、作っても得をしないが、一人だけ取り残されれば損をする、それが大多数の企業にとってのブログの本質だと私は思います。早く始めても得するわけではなく、率先して取り組む意味は薄いように思うのです。
ウェブログの入門書です。楽天広場とライブドアブログのはじめ方と活用法を、詳細かつていねいなステップ図解で示します。とはいえ100ページ足らずで2サービスを図解で紹介するだけに、到達レベルは高くありません。あくまでも入門書です。
「裏技で儲かる!仲間ができる!」と謳う本書ですが、内容はきわめてベーシックです。楽天アフィリエイトや livedoor デパートの広告を自分のブログに取り込む方法などの解説が多くのページを占めています。アクセスアップのマル秘テクニックと称して各種ツールやサービスなどを紹介していますが、これは気休めです。
目標がハッキリしているので解説によどみがなく、すっきり読み通すことができます。初心者が第一歩を踏み出す際には、便利な1冊です。ご利用の際には、解説の手順通りに実際に作業を進めて、最初のブログを作成されることを勧めます。
ハイソなお嬢様に恋したオタク男がウェブの掲示板住民らに励まされつつ奮闘する物語。2ch のログをまとめ刊行され大ヒットした新潮社・刊の書籍を原作としていますが、映画版は全体の構成に重大な改変を加え、素晴らしい作品となっています。書籍版に憤激した方にこそお勧めします。
監督は本作で真実を追及しています。この映画に「ウソっぽさ」を感じる方は多いでしょう。電車男の気持ちには感情移入できても、とくにエルメスの描かれ方はあまりに非現実的です。とくに原作と大きく異なる終盤の展開は、あまりにも電車男に都合がいい。これらは、全てひとつの真実を指し示しています。
ラスト、電車男の「物語」に勇気を希望をもらい、それぞれの人生を少しずつ前進させていく掲示板の住人たち。そして唐突に挿入される回想シーン、そこに描かれる電車男とエルメスの本当の出会い。……この瞬間、エルメスが電車に乗り遅れる冒頭シーンの意味、そしてこの物語の真実と虚構の全てが明かされます。
「物語」に感動し、冒頭と結末のシーンの意味を深く考えないのも大いに結構。笑いあり、涙ありのエンターテインメント映画ですから。ただ、本作はそれだけの映画ではありません。考えオチの好きな方は、ぜひ DVD で繰り返し鑑賞なさってください。商業的成功と玄人志向を両立させた傑作。
mixi の入門書です。イラストが豊富に用意されており、文章も簡単で読みやすい。短時間で読了できるでしょう。もともと mixi は簡単なシステムなので、操作手順などは本書で足ります。肝心なのはコミュニティの活用ですが、第一歩を踏み出すところまではきちんとフォローされています。
気楽に読めますが、安直に「楽しい!安全!」と書いているあたり、一抹の不安を感じないでもありません。最近は匿名の利用者が急増していますので……。いずれにせよ、とりあえず mixi に勧誘したい友人がいる方には便利な1冊。逆に、既に mixi を楽しんでいる方自身が読むにはいささか物足りない内容なのでご注意を。
SNS の入門書です。「SNS とは何か」「各種 SNS サービスの紹介」「mixi の操作方法」「mixi コミュニティの活用」の4部構成。SNS の一般ユーザが知っておきたい情報は一通りまとまっています。
またカラー紙面の SNS 入門書は他にないので、図解がモノクロだと読む気がしない方は他に選択肢がありません。mixi の操作方法解説はとくにレイアウトが工夫されており、多くの類書と比較しても最もわかりやすいのではないでしょうか。
mixi に特化した書籍と異なり、本書は SNS 界隈を俯瞰する話題をきちんとまとめています。誰からもどこからも SNS に招待されていない方であっても、それなりに読める本となっています。「早わかり 図解&実例 よくわかる!ソーシャル・ネットワーキング」と比較してユーザ視点寄りで書かれているのも特徴です。
本書では「SNS 楽しいよ」という論調が強く前面に押し出されています。一歩引いた視点からの解説がほしい方には、類書「SNSを深~く知って長~く楽しむための本。」をお勧めします。SNS 解説書もずいぶん増えているので、自分の性格にあった本を選択されるとよいでしょう。
SNS の入門書です。高度な話題に深入りすることを避けつつ、豊富な図解を添えてそつなくまとめています。本書は教養としての SNS 解説に特化しており、「最近話題の SNS を私もやってみようかな?」という一般の SNS ユーザには向きません。この点、よく注意してください。
SNS について何かを語る際、本書の内容は「常識」として押えておかねばなりません。しかし SNS の一般利用者には無用の知識が大半です。ユーザ視点で重要なことは、操作方法などの解説と、コミュニティをトラブルなしで楽しく活用するコツです。本書はそこが弱いのです。
社内の情報共有に SNS を導入する予定があるなど、仕事で SNS について他人に説明しなければならない方にはお勧めの1冊です。仕事と無関係ならば、もう少しユーザ寄りの視点で書かれた後発書籍「ソーシャル・ネットワーキング・サービス 縁(えん)の手帖」を勧めます。
mixi の入門書です。mixi とは何か、どのように楽しむサービスか、ということをていねいに紹介します。ていねいに紹介しているのに新書版189ページに収まっているのは、mixi が比較的簡素なサービスであり、カスタマイズなどの余地に乏しいからです。
mixi は招待制のサービスなので、本書を読んでも mixi に招待されなければ意味がありません。本書は既に mixi に入っていて使い方がよくわからない方向けの1冊です。数ある mixi 解説書の中でも最もまじめな雰囲気に仕上がっており、面白みには欠けますが安心して読めるのが特徴です。
なお、mixi の真価は日記を書く、といったことではなく、コミュニティの選択と活用にあります。本書は操作方法の解説がメインであり、その先の活用については抽象的な説明にとどまっています。操作方法の解説はいらないのであれば、「mixiで友達の輪が広がった!」「mixiでこんなことまでできた!」をご検討ください。
アフィリエイトの初級解説書です。本書の特徴は、ウソがないこと。したがって、夢のような話は載っていません。
著者はアフィリエイトの成功者たちに話を聞いて回りますが、彼女らの語る成功法則はことごとく個人的体験に基づく思いつきばかり。「学問」どころか「論」のレベルにも達していないのが現実です。彼女らが成功したのは事実ですが、振り回されるのは考えもの。彼女らは自らの言葉を裏切ることをしばしばやってもいるのです。
結局のところ、誰もが成功することはありえません。アフィリエイト収入とはカタログ屋の収入に他ならず、もともと販売額の数%しか入ってこない仕組みです。自分自身の消費行動を考えればわかる通り、そもそもブログ経由の経済活動は微々たるもの。その一部を手にするだけで誰も彼もがウハウハの収入を得られるはずもない。
「こうしたらよいのでは?」というアイデアは出尽くしているが、魔法のような「正解」はない……というのが本書の結論となりましょう。ぎっしり内容が詰まった1冊。現実の重さを感じます。
mixi の初級案内書です。従来の解説書と異なり、ぶっちゃけた内容が楽しい1冊。
内容の多くは mixi のコミュニティのログです。基本的に馬鹿馬鹿しい内容ばかり。類書が基本的に「まとも」なコミュニティを紹介しているだけに、本書の特異性は際立っています。脱力系のテキストが延々と続きますから、パラパラと立ち読みするだけでは、mixi の解説書には見えないでしょう。
本書は mixi の機能などについてはほとんど解説しません。実際、mixi を使うのは簡単です。ほとんどの人は解説書を必要としないでしょう。多くの mixi ユーザにとって、最大の問題は「mixi をどう活用するか」です。オフ会には興味ない、日記も書く気がない……。そんなあなたでも大丈夫、こう使ったら mixi は楽しいよ、と本書は訴えます。
著者の趣味が強く出た本なので、掲載されている内容には偏りがあります。「なんじゃこりゃ」と思う方も多いでしょう。けれども、センスの合う方には最高の mixi 案内となります。mixi ユーザでなくとも楽しく読めるページが多いので、友人に mixi を勧める際にも活躍しそうですね。
mixi の初級解説書です。mixi コミュニティの紹介と活用方法の解説に特化しているのが特徴。コンパクトで読みやすく、簡単に読めてすぐに役立ちます。
mixi は日記と掲示板とメールが統合されたツールですが、自由度の低い設計となっているため、操作方法のひとつひとつは決して難しくありません。問題は、その先にあります。
招待されて mixi に登録しても、それだけでは何も起きません。一人で日記を書き続けていても、自分を招待してくれた人でさえ読みにこないことは少なくありません。これではちっとも面白くない。じつは mixi の真骨頂はコミュニティ機能にあるのです。
検索エンジン経由で知らない人が自分の文章を読みにくるウェブの世界と異なり、mixi はオフラインの世界に近いシステムとなっています。積極的に人の輪の中に入っていかないと、世界が広がりません。そんなことをいわれても、どうしたらいいのかピンとこない……という方に、本書は最適です。
ウェブログ文化の解説書です。教育用の学内 LAN に構築されたブログや企業内コミュニケーション用のイントラブログは対象外。いわゆるビジネスブログもほぼ捨象され、趣味としてウェブログに関わってきた一般ユーザの視点から、ウェブログ界隈の文化と歴史を総覧する内容となっています。
著者は一人称を「オレ」に設定しています。このことから想像がつくように、本書は著者個人の見解からなります。客観データなどは登場しません。そして実際、著者の個性が強く反映された記述が多々あります。しかしそれゆえに、本書は地に足のついた現実のウェブログの姿を活写することに成功しています。
思えばレベッカ・ブラッドの「ウェブログ・ハンドブック」も私的見解をまとめた内容でした。少々整理が行き届かない部分があるとはいえ、本書は日本版「ウェブログ・ハンドブック」ともいえる1冊。
本書はまだウェブログの運営経験のない方をも対象読者としていますが、少なくとも一定のウェブログ閲覧経験は要します。またウェブで情報発信した経験が一切ない方にも、あまりお勧めはできません。全くの初心者は「はじめよう!みんなのブログ Vol.3」「全部無料(タダ)でつくるはじめてのブログ」など他書をご検討ください。
私が最も本書をお勧めしたいのは、ウェブログをしばらく運営してきて、界隈の文化について疑問を感じたり、歴史に関心を抱くようになった方です。第3章あたりまではお勉強になるので面白くないかもしれませんが、第4章以降は日頃の問題意識と重なってきて興味深く読めるのではないでしょうか。