C-0041 ソフトシンセ聴き比べ!
- 1999/10/19
- 1999/10/23
- 1999/10/25
- 1999/10/26
- 2000/11/24
※ここに掲載している情報は間違っている可能性が非常に高いので、信用してはならない。これらの情報を信用してアナタが不利益を被ったとしても、それは全てアナタの責任である。
- はじめに
- 比較対象のソフトシンセのリスト
- SPEC 比較
- 視聴による音質比較
- データ提供について
- 関連リンク:恐怖の音源チェック!(非常に多くの MIDI 音源の聴き比べレポートが掲載されています)
はじめに
ソフトウェアシンセサイザー(いわゆるソフトウェア MIDI 音源(以下、ソフトシンセ))とは、特別な音源モジュール(外部ハードウェア音源(以下、外部音源)・サウンドカード内蔵の WaveTable 音源(以下、内臓音源))を用いずに CPU の演算のみで MIDI を再現するソフトウェアのことです。
一般的には「内蔵音源 < ソフトシンセ < 外部音源」という順に音質が良いと言われています……が、実際のところ各音源のグレードもピンキリで、上等なソフトシンセの方が安物の外部音源より音が良いなんてこともたまにあるようです。
外部音源・内蔵音源の音質比較については、音源を所有していないので (^^;) できません…… というわけで、ソフトシンセの間のみに絞って機能比較・音質比較をしてみました。音質については MP3 ファイルで実際の演奏を試聴できるようにしてみましたので、導入の際の参考にでもしてください。
なお、ウチの環境は以下の通りです。
- CPU : PentiumⅡ 266MHz
- Mem : 128MB
- OS : Windows 98
なお、文章中で「処理が重い」などの表現がありますが、最近では低価格のエントリーマシンでも僕の環境を遥かに上回るパフォーマンスを持っていますので (^^;) 、処理速度に関しての評価はここではあまりアテにならないかもしれません。(音質については、一応大丈夫と思います……)
比較対象のソフトシンセ
- Roland VSC-88H
外部音源でも有名な Roland 社の販売するソフトシンセ。定価7800円(税別)。比較に使用したのは Ver.2.1a です。
- Roland VSC3.0 ( VSC-88H3 )
VSC-88H の最新版。定価7800円(税別)。 GM2 規格に対応し、 SC-88Pro 互換の900以上の音色を搭載……とのことですが、これについては VSC-88H に新しい音色を追加しただけのようです。
元は「 VSC-88H3 」という名前でしたが、発売前後に「 VSC3.0 」と名称を変更されたようです。
- YAMAHA S-YXG100 plus
比較には無料配布の体験版を使用。定価14800円(税別)。「 VL 音源(管楽器を構造から空気の流れまでシミュレートする)」、「 SG 音源(日本語で歌う)」といった特殊な機能を搭載しています。
- WinGroove
あざらし氏制作のシェアウェア。登録料は2000円。処理が軽く、ファイルも小さいです。音色には SC-88 系のものを使っているとか。
- FPD98
(有)ラットが販売しているシェアウェア。登録料は3800円。 MS-DOS 時代に開発された FM 音源のソフトシンセ「 FPD 」の直系の子孫で、外部音源で有名な KORG から音色データの提供を受けています。
ただ、プレーヤーの使い勝手だけは最悪です(泣)。
- TiMidity++
GNU という形態で開発が進められているフリーウェア。「 TiMidity 」の発展型。 Linux 、 Mac などにも移植されています。ちなみに、別項で Windows での導入手順を解説してます。
他のソフトシンセとは異なり、音色を自分自身で自由に設定できるため、設定次第では GS ・ XG の音色配列に近づけることが可能。ちなみに、エフェクト等の対応状況は GS をベースにしているそうです。
ちなみに、音色セットには SoundBlaster Live! 用のサウンドフォントを使うこともできます。
- TiMidiDR
TiMidity をもとに開発された、ソフトウェア工房乾の WindowsNT ドライバ組み込み専用ソフトシンセ。シェアウェアで、登録料は3000円。 TiMidity++ 同様音色の設定を自由に変更でき、 TiMidity の設定を流用することが出来るそうです。
SPEC 比較
各項目の意味
- 音質
対応する最大のサンプリングレート。 44.1kHz ・ 16bit ステレオで CD 並の音質です。ただし、サンプルレートの高さは処理の重さに正比例するので、低速な CPU ではあまり高い値は設定できません。
- 発音数
同時に発音可能な音の最大数。世界標準の GM 規格では最低16音以上と規定されています。ちなみに、ここの値は設計上の「最大」で、低速な CPU では最大発音数は少なくなります。
- パート
同時に演奏できる楽器のパート数。これが多いと、よりゴージャスな演奏が可能になります。
- 音源規格
性能的・拡張性的には、 GM < GS 、 GM < XG という風な関係です。 GS ・ XG は GM 規格をそれぞれ内包しており、 GS と XG の間で互換性はありません。 GM ・ GS の上位で GM2 という規格もありますが、これについてはよく知らないのでノーコメント。
SC-88 ( GS )専用に作られたデータを MU100 ( XG )上で演奏させるなど、互いに互換性のない音源設定の場合や、各音源に依存した作り方をされたデータの場合、多くはマトモな演奏は期待できません。 SMF ナイフなどである程度の音量バランス・楽器音色等の補正は可能ですが、基本的に GS 用のデータを XG で、 XG 用のデータを GS で演奏するのは無謀な行為と言えます。
- 音色数
搭載している音色(楽器)の数。「 DS 」はドラムセットのことです。 GM 規格では128音色が規定されています。ちなみに、 MIDI データ中で指定された音色がない場合、発音されないか、似た音色で代用されます。
TiMidity 系は音色を自由に設定できるため、特に「音色数」というものは無いようです。
- エフェクト
対応しているエフェクト。「リバーブ」は残響音を、「コーラス」と「サラウンド」は音に厚み(深み)を、「ディレイ」はエコーのような効果を付加します。「バリエーション」はリバーブ、コーラス、ディレイ、ディストーションなどの効果を使い分けることができます。「 TVF 」は、音色の変化を自然に行う効果があるようです。
リバーブ・コーラスについてはここに挙げたソフトシンセは全て対応しているようなので、あえて表記していません。
- 組込
他のアプリ(ゲームなど)から「 MIDI 音源」として利用できるかどうか。この機能がない場合、純粋に MIDI ファイルを演奏・鑑賞する用途にしか使えません。
- WAV
演奏結果を WAVE ファイルとして出力できるかどうか。ソフトシンセはによる演奏を「オーケストラの生演奏」に例えるなら、 WAVE ファイルは「 CD 」にあたります。
低速な CPU だと高品質の生演奏ができませんが、「最高のクオリティで、ジックリと時間をかけて」 CD を制作すれば、低速な CPU でも最高品質の演奏を聴くことができる……といった感じでしょうか。
名称 | サンプリングレート | 最大同時発音数 | パート数 | 音源規格 | 音色数 | エフェクト | 組込 | WAV |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
VSC-88H | 44.1kHz | 128 | 16 | GM ・ GS | 546+DS15 | ディレイ TVF |
○ | × |
VSC3.0 ( VSC-88H3 ) | 44.1kHz | 128 | 16 | GM ・ GS ・ GM2 | 902+DS26 | ディレイ TVF |
○ | ○ |
S-YXG100 | 44.1kHz | 128 | 16 | GM ・ XG | 676+DS21 | バリエーション | ○ | × |
WinGroove | 44.1kHz | 128 | 16 | GM (一部 GS ) | 128+DS10 | ○ | ○ | |
FPD98 | 44.1kHz | 128 | 16 | GM ? | 690(含 DS ) | × | ○ | |
TiMidity++ | 48.0kHz | 256 | 32 | GS 系(不明) | 不定 | サラウンド | × | ○ |
TiMidiDR | 44.1kHz | 256 | 16 | (不明) | 不定 | ○ | × |
SPEC 表・備考
- VSC-88H
プレーヤーの起動が遅い。動作が糞重い。
外部音源「 SC-88 」「 SC-55 」互換の音色搭載とのことだが、「 SC-88 を完全再現という謳い文句は詐欺同然」というのが大方の見解(楽器数が全然少ない、 etc )。
- VSC3.0 ( VSC-88H3 )
動作が重いのは相変わらず。外部音源「 SC-88Pro 」「 SC-88 」「 SC-55 」互換の音色を装備(しかし、実態は VSC-88 と大して変わらなそう……)。 VSC-88H とは異なり、音源ウィンドウとプレーヤーウィンドウが独立しているが、音源ウィンドウを閉じるとプレーヤーも閉じる(何の意味があるんだ……)。
VSC-88H より細かい設定ができる。また、面白い機能として、テンポやキーを変更した状態のまま WAVE 変換ができる機能がある。
- S-YXG100
今回の比較対象中、唯一の XG 音源。
VL 音源は PentiumⅡ 以上、 SG 音源は MMX Pentium 以上でないと動作できないらしい。 VL 音源については、 PentiumⅡ 専用の最大8音同時発音可能なモジュールが無料でダウンロード可能( S-YXG100 搭載のものは最大1音)。
- WinGroove
処理が軽い。きめ細かな設定が可能。音が大きくなった際に音割れが起こるのを防ぐ「コンプレッサ」機能を搭載。曲の再生中、好きな位置に一発でジャンプできるのは非常に便利。
- FPD98
プレーヤーの起動が遅い。プレーヤーが超絶使いづらい(早送り・巻き戻しができない、 MIDI ファイルが D&D 不可)。発声遅延時間の設定ができない。
演奏中は WAVE デバイスを占有する。
- TiMidity++
発声遅延の設定が出来ないが、あっても意味は無いか。開発途上のため、安定性に難あり。手動インストールのため、導入に手間がかかる。演奏中は WAVE デバイスを占有する。
処理が軽い。音色さえ揃えれば、外部音源どころか通信カラオケにも劣らない演奏が可能だとか……
WinGroove 同様、曲の任意の位置にジャンプ可能なのは便利。
- TiMidiDR
NT 専用という点が痛い。 Windows 95/98 にも対応してもらいたいところ。
TiMidity++ 同様、音色の揃え方がカギ。
試聴による音質比較
- CPU : PentiumⅡ 266MHz
- Mem : 128MB
- OS : Windows 98
上記環境で、それぞれ 44kHz ・ 16bit ステレオ・エフェクト全て ON で演奏しています。
なるべく、ヘッドホン or 性能のいいスピーカーで試聴してください。ヘボいスピーカーだと、差が判りません (^^;) 僕はコンポ内蔵のアンプを経由して密閉型ヘッドホンで聴いてます。
各演奏サンプルは、 MPEG1 Audio Layer-Ⅱ ( MP3 )形式で作成されています。再生には、 SCMPX などの MP3 プレーヤーをあらかじめインストールしておいて下さい。
尚、選曲は個人的趣味です(爆)
- ファイルが 500KB 〜 800KB と大きいですが、ご容赦下さい。ダウンロード時には ReGet や Iria をご利用いただくことをお薦めします。
- VSC-88H ・ VSC-88H3 については音質に差異がありませんでしたので、まとめて「 VSC-88H/H3 」としています(演奏サンプルは VSC-88H のものです)。
- TiMidity++ は、別項の導入手順解説でインストールした 33MB の音色 patch と、SoundFont 「 Fluid ReleaseⅠ Bank 」を使用しました。音色はあくまでユーザー側で自由に差し替えが可能ですので、「それらの音色セットと聴き比べる」程度に考えてください。
- 楽曲ファイルは、配布されているものをそのまま演奏しています。 SMF ナイフで各音源用に補正したり、 TMIDI Player のエミュレーションを利用するなどした場合、演奏結果が異なる場合があります。(ただし、その場合でも、完全に制作者の意図したとおりに演奏されるわけではありません……あくまで「とりあえず」ということです。)
- Windows 98 なので、 TiMidiDR は試せませんでした……(爆)
- パソコン内蔵の小型スピーカーや省スペースパソコン付属の薄型スピーカーなどは、一般にかなり音質が悪いです。「音楽鑑賞」をしようと思ったら、最低でも、しっかりしたアンプの付いているスピーカーを用意した方がいいです。また、イヤホン・ヘッドホンで聴く場合も、パソコンの Phone 出力に直接繋ぐより、 LINE-OUT からコンポやスピーカー内蔵のアンプなどを経由した方が遥かにいい音で聴けます。
サンプル1:フュージョン
“ Introvent ” [SC-55mkⅠ(GS)] (C)1998 Jun Miyagi
→ MIDI ファイル
S-YXG100 などのプレーヤーにはイコライザ機能(特定の音域を強調したりする機能)があるものもありますが、全てオフの状態で演奏させています。
- VSC-88H/H3 ( 491KB )
- S-YXG100 ( 487KB )
- WinGroove ( 501KB )
- FPD98 ( 502KB )
- TiMidity++/33MB Patch ( 479KB )
- TiMidity++/Fluid ReleaseⅠ SF ( 554KB )
サンプル2:ファンク
“ Poured Out ” [GM 汎用 ] (C)1998 Yuzuru Honda
→ MIDI ファイル
主旋律をとるピアノとギターですが、各ソフトシンセでかなり音色が違います。
余談ですが、実はこの曲は、知る人ぞ知るあの「 Project WIVERN 」で、 BGM として使用されていたものです……
- VSC-88H/H3 ( 647KB )
- S-YXG100 ( 660KB )
- WinGroove ( 668KB )
- FPD98 ( 677KB )
- TiMidity++/33MB Patch ( 869KB )
- TiMidity++/Fluid ReleaseⅠ SF ( 715KB )
サンプル3:クラシック
M.Ravel “ Bolero ” [GM 汎用 ] (C)1998 Fukuzawa Justmeet Yukichi
→ MIDI ファイル
サンプルでは瞬間最大発音128を超えるラスト部分を抜粋。リアルタイム演奏しかできないものでは、音切れを起こしてしまいました。
リアルタイム演奏では、 S-YXG100 はマシン全体の動作が重くなるもののなんとか100音を発音。 TiMidity++ と WinGroove は他のアプリに大きな影響を与えることなく100音以上を確保していました。 VSC-88H は音切れが起こるだけでなく、マシン全体の動作がかなり重くなりました。
- VSC-88H/H3 ( 778KB )
- S-YXG100 ( 782KB )
- WinGroove ( 775KB )
- FPD98 ( 757KB )
- TiMidity++/33MB Patch ( 774KB )
- TiMidity++/Fluid ReleaseⅠ SF ( 817KB )
3つのサンプルにおける Piro 的感想(音色についてのみ)
- VSC-88H/H3
ベーシックな音、といった印象。ある意味とてもコンピュータ的な、のっぺりした音という感じ。
- S-YXG100
自然っぽい、ゴージャスな音という印象。深みがあるとでも言おうか。
- WinGroove
多少荒い音色ではあるが、音に厚みがある。力強いというかなんというか。
- FPD98
音質はクリア。が、厚みに欠ける。良く言うと透明感のある、悪く言うと薄っぺらい音、という印象。
- TiMidity++
33MB Patch:
プレーヤー( TiMidity++ )自体の特性か、使用している音色のせいか、一部の音色で音の「のび」がやや合成音的な印象。
Fluid Release Ⅰ Bank SoundFont:
ギター系が貧弱なのが難。また、ダウンロードファイルが 60MB 以上というのも辛い。しかし音質は群を抜いて良く、かなり自然な音が出る。
データ提供について
ソフトウェア音源・ハードウェア音源を問わず、ここまでで比較した音源以外でデータを提供いただける場合、 Piro までご連絡下さい。再生サンプルは以下の要領でお願いします。
-
- サンプル1: 00:30 〜 01:05
- サンプル2: 01:55 〜 02:40
- サンプル3: 14:00 〜 14:48 (最後まで)
- SCMPX や午後のこ〜だなどで「 128kbps ・ジョイントステレオ・ MPEG1 Audio Layer-Ⅱ 」形式に変換する
- ホームページエリアなどにファイルを転送する(※メールで送らないで下さい (^^;) )
- アップロードしたファイルの位置をメールで連絡してください。僕がダウンロードした後、こちらのサーバーに再アップいたします。
ご協力をお待ちしています。