6 : 19 ISO 2382 認定ハッカー

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ISOとJISによる「ハッカー」の正式な定義

2005年 2月19日
記事ID d50219

標準規格を定めるISOや日本のJISでは「ハッカー」という言葉の意味も定義されている。

JIS X 0001:1994

日本の規格では、JIS X 0001:1994 「情報処理用語 ― 基本用語」の中で、 次のように定義されているという。

01.07 計算機の安全保護

01.07.03 (1)ハッカー 高度の技術をもった計算機のマニア。

01.07.04 (2)ハッカー 高度の技術をもった計算機のマニアであって,知識と手段を駆使して,保護された資源に権限を持たずにアクセスする人。

ISO/IEC 2382-1:1993

ISOではどうなっているのか。 対応する規格は ISO/IEC 2382-1:1993 だが、 お金を払ってダウンロードしないと読めないようになっている。 hacker の定義だけでも誰かが抜粋してないかな、と検索してもなかなかヒットしない。 しつこく調べると、エストニアにこの規格書をエストニア語対訳しているページがあるので、 そこから引用する。

ISO/IEC 2382-1:1993 Information technology -- Vocabulary -- Part 1: Fundamental terms

01
Fundamental terms
(基本用語)

(中略)

01.07
Computer security
(コンピュータ・セキュリティ)

(中略)

01.07.03
hacker (1)
A technically sophisticated computer enthusiast.
(高度の技術を持ちコンピュータに熱中する者)

01.07.04
hacker (2)
A technically sophisticated computer enthusiast who uses his or her knowledge and means to gain unauthorized access to protected resources.
(高度の技術を持ちコンピュータに熱中する者のうち、 その知識と手法をプロテクトされたリソースへの無権限アクセスのために用いる者)

見るからにJISの元ネタで、番号まで同じだが、微妙に違いがある:

元ネタでは enthusiast (熱中する人)という価値的に中立な言葉になっている。 そこそこ意味は強いものの(大好き・夢中・没頭)、異常に・例外的に、とまでは行かない。 せいぜいぎりぎり「熱狂的」に届くか、という程度だろう。 必ずしも悪い語感ではなく、むしろ「非常に熱心」という褒め言葉にも使える。 これに対して、JISでは「マニア」というややネガティブな用語になっている。 マニアといったら、文脈によっては褒め言葉にもなるかも知れないが、 一般的には「変人」というイメージだろう。 夢中・熱中を通り越して「極端、病的」「普通の人はやらない」「異常な興味」というニュアンスだ。

さらに、元ネタでは単に uses 「使って」とあっさり流しているところもJISでは「駆使して」とこってりしている。 つまり、規格上、日本の「ハッカー」はISOの「hacker」より意味が強い。 うがった見方をすれば、hacker にとって「普通に熱中」「普通に使用」のことが、 ハッカー文化としては一応やっぱり後進国の日本から見ると「異常な熱狂」「手段を駆使」なのかもしれない。

ISO的に言えば、「高度の技術」と言っても「極端に」とか「例外的に」とか「異常に」高度である必要はなく、 technically sophisticated だから、それなりに洗練された技術を持っていればあてはまる。 さらに computer enthusiast は、マニアまでいく必要なく、趣味でコンピュータに夢中というレベルでも当てはまる語感だ。 ということは…
ISO的にはあなたも hacker ではありませんか(笑)

「いや違う」? と言っても、国際標準化機構で公式に決めた定義に照らしてあてはまるのだから、 仕方ない。国際規格には逆らえませんぜw

いずれにしても、ハッカーの公式な定義は「技術的に優れている者」というのが標準で、 第二義(狭義)として、「そのなかでその技術を不正アクセスに使うもの」ということになる。

つまり「ハッカー」を一般的に「コンピュータ犯罪者」のような意味で使うことは、JISやISOの定義に反している。 特に、ページを書き換えたり、システムを破壊したり…といった行動は、ハッキングの定義と関係ない。 狭義(第二義)においても、 ハッカーのやることはガードを破ってアクセス・利用するところまでで、その先の行動はハックの本質ではない、ということになる。

結び

コンピュータ技術用語なのだから、 やはりそれぞれの標準規格で定められている定義にしたがって、正しく使うべきだ、と、 一応建前としては、そういう結論。ただ、このメモは、言葉は正しく使いましょうみたいな意味ではなく、 単に「ハッカー」が正式に定義されているのはおもしろい、というネタ止まりだ。 あと、国際標準のような権威に弱い日本人をおちょくる…というのも入ってるかな。

ISO 2382 認定ハッカーとか言われると、おっ!?と思うでしょw
単にそれなりの技術があってコンピュータが好きなら全員当てはまるんですが…

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ヒマワリをふてくされさせる実験

2005年 2月20日
記事ID d50220

お花はとってもデリケート。

向日性についての思考実験

1. 若いヒマワリのような、向日性の強い植物を、白夜の北極圏で平原に置くとどうなるか。 太陽を追って向きを変えていくと、茎がねじれてしまうのでは?

「太陽たん、太陽たん、くるくるくるくる…。あ゛ーこれ以上、首が回らないっ!!!」

2. 鉢を回転させて、常に植物にとっての見かけの太陽が同じ角度にあるようにする。 同時に、太陽と同等の光を発する光源二つを、別の角度から浴びせる。 向日性植物は三つの光のうち本物の太陽を選択できるか?

「なにこれ~? 太陽がいっぱいある~~?!?!」

3. 室内で、太陽と同等の光源二つA, Bを植物から見て正反対の位置に設置する。 Aを点灯し、植物がAを向いたとたん、Aを消灯Bを点灯する。 このような意地悪を繰り返すと、最後にはどうなるか。

ふてくされて「もういい。どっちも向かない。しゃがんでひざをかかえて下を向いてやる」

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