Afghanistan 5

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2000.12.14

[af]ラディンTシャツ登場:パキスタン

Bin Laden t-shirt enrages Nike:パキスタンでラディンTシャツが登場(こっちに見やすい写真があります)。ナイキ社のロゴを勝手に使ってるらしい(「ナイキ」は、ギリシャ神話のニーケー=勝利の女神)。アフガニスタンの地図の横に立てかけてある銃の絵は、カラシニコフ(AK47)でしょう。パキスタンではラディン氏は特に人気があって、子どもにオサマ(ウサマ)という名まえをつける親も非常に多いそうです。関連リンク、カブールノートAfghan Pirates Selling Bin Laden-Nike Shirts(ABC)

サウディ出身のラディン氏は世界に反米闘争(ジハード)を呼びかけてますが、アフガニスタンの内戦は、反米闘争(ジハード)では、ないです。決してアフガニスタンが反米闘争を主張してるのでは、ありませんし、ラディン氏が特にアフガニスタンに呼びかけているわけでもありません。また、当たり前のことですが、アラブ世界のすべてがラディン氏を支持してるわけでもありませんし、そもそも、アフガニスタンは、いわゆるアラブ諸国でもありません。このへん、勘違いしないでください。

Travel Nixed to Sudan, Afghanistan:さて、アメリカですが、13日、スーダンとアフガニスタンへの渡航自粛を勧告しました(アメリカがミサイルを撃ち込んだ両国)。もともと、アフガニスタンにはアメリカ国籍のスタッフは、今ひとりもいないはずですが、アメリカ人でない国連スタッフ複数(決して全員では、ない)も、すでに国外に退避しています(写真をどうぞ:引き上げる国連の車両、BBCより)。国連やNGOのスタッフは、もし安保理の追加制裁があれば、何の効果もないばかりか状況がいっそう悪化するとして、米ロの制裁案に反対してますが(Proposed Taliban Sanctions Worry UNAid Workers Fear New Sanctions on Afghanistanほか同趣旨の記事多数)、もしあればというより、あるかもという話だけで通貨が暴落して小麦粉などが値上がりし、一般市民を圧迫してます。しかしアメリカ側は「この制裁はタリバン政権だけを対象にしたもので、一般市民を対象にしたものではないのだから、一般市民に影響が出ないようにするのはタリバンの責任だ」などと、寝ぼけたことを言ってます。

制裁案ですが、繰り返しお伝えしているように、「タリバン側への武器供与を禁止する一方、反タリバン(ムジャヒディン)側には武器供与を続ける」という変なものです。現状は95対5で圧倒的にタリバン側優勢なので、米ロの考えていることは、敗勢のほうに大量輸血しよう、ということ。そんなことすれば内戦が長引くに決まってるし、せめて50対50にでも盛り返して和平交渉を有利に進めたいという気持ちも分かりますけど、第一にそうなるまでの遅延がたえがたいし、第二に50対50の状態では和平会談にならない、どちらかが一方的に負けて初めて停戦交渉になるのは歴史の鉄則であって(二次大戦の日本もそうでしたが)、米ロの思惑通りにするには、ムジャヒディン95対タリバン5くらいまで逆転しなければいけないでしょう……。いくらなんでもそれは非現実なので、とにかくタリバンに勝たせなければいい、このまま長引かせればそのうちまた「なにか」ある、と踏んでいるのでしょう。

国際テロがなんとかでだから制裁するとか言ってますが、国際テロにかかわってるいわゆる「アフガン・ベテラン」は、タリバン側というより、どっちかといえばムジャヒディン諸勢力の側の出身でしょう。「アフガン・ベテラン」といっても実体がアフガニスタン人じゃないのは、「ベトナム帰り」がベトナム人じゃないのと同じ。

一方、中国のほうですが、パキスタン駐在のル・シュリン大使が12日、カンダハルでムッラー・モハンマド・オマル(タリバンの最高指導者)と会談したもようです。オマル氏がイスラム教徒以外の「ふつう」の人と会うのは、少なくとも公式には初めてのようです。安保理で米ロのごり押しに拒否権を使える立場にある他の常任理事国は、イギリス、フランス、中国なのですが、中国の大使とタリバンのあいだでどんなことが話し合われたのかは明らかになっていません。人民日報(People's Daily)サイトを見ても、会談があったという事実すら出てません。


[af]中国も制裁に賛成の見通し

アフガニスタンのニュースです。

初めに、国連安保理による制裁決議案の問題で、拒否権を行使する可能性があると見られていた中国ですが、どうやら拒否どころか賛成のようです。シンホワ(新華)社が China Calls for Early Solution to Afghan Issue として伝えたペキン発14日の記事によると、駐パキスタン中国大使ル・シュリン氏のアフガニスタン訪問に関連して、中国外務省の報道官がコメントしました。いわく「我が中国は、国連安保理による決議に期待しており、決議はアフガン問題の早期解決と地域平和の促進に役立つ」うんぬん……とのことで、積極的に賛成っぽいです。拒否権を使わないまでも制裁決議採択への投票を棄権するのでは、との見方もありましたが、米ロ中国、意見が一致しちゃってるようです。あと安保理の常任理事国は英仏ですから、来週にも採択されるでしょう。扇風機にケリを入れるとホントに桶屋(カシミール、チェチェン)が静かになるか、現在進行形の歴史を見守るしかなさそうです。

余談ですが、中国もあちこちで「民族問題」をかかえており、シンチアン・ウイグル自治区の分離独立的な動きは、カシミールや中央アジア旧ソ連諸国での紛争と、似ています。ウイグル人の大半はスンニーですが、決してスンニーだから(イスラムだから)闘争的なんじゃなく、当たり前ですが、先に抑圧や政策的虐待があって、それに抗議してる現地住民が、たまたまイスラム教徒だということ。何教徒だって無宗教だって、あまりひどい目にあえば反発するでしょう。

物事には原因があって結果があるのであって、強引な政策(その結果としての貧困や、精神的虐待)が先で、その結果として抗議運動が起きるわけです。同じ宗教の信徒だとか同じ民族だということは、抗議運動の団結や(事後的な)意味づけの一要素にすぎません。しかし、政治の責任者の側からみれば、「宗教問題」とか「民族問題」にしちゃうほうがつごういいでしょう(自分たちのせいじゃなく、宗教の違いや民族の違いのせいでもめてることにしちゃう)。中国やロシアが、自国やその周辺での宗教的な動きをことごとく禁止すれば「民族紛争」が下火になると、ホンキでそう信じてるのかは分かりませんけれど、少なくとも、歴史が示すところによれば、こういう政策は、ほとんど常に逆効果です。人間には、頭ごなしに弾圧されると、かえって意固地になる傾向があって、そのときは黙っても、のちにきっかけがあると、不満が爆発するものだからです。

国連 vs 国連安保理

国連(UN)は、ご存知、いちおう国際機関です。国連安全保障理事会(UNSC)は、形式的には国連の一機関ですが、簡単にいえば、アメリカのことです。しかし、UNSCが勝手にやることでも、やられたほうから見ればUNがやったことになってしまいます。北欧諸国などが米ロの(UNSCの)やり方に反対でも、UNSCの常任理事国でないので、UNSCの決議にはタッチできないわけです。もちろんこのシステムには、前から反対意見も多いのですが……。

UN expresses concern over fresh sanctions on TalibanU.N. discusses negative impact of Afghan sanctions(UPI):国連発、14日。国連は、米ロが提案しているアフガニスタンへの追加制裁について、とても心配だと言いました。すでに深刻な国内状況にさらに重大な影響を与えるうえ、和平会談の障害になるとしています。現在アフガニスタンの95%を支配しているタリバン政権ですが、もし追加の経済制裁が実施されたら、国連の仲介による反タリバン側との和平交渉をボイコットする、と言っています。UNSCがタリバン側だけに制裁を課して、反タリバン側へは武器提供を容認するなら――紛争をやめさせる意思がないどころか、国連として、事実上、紛争当事者の一方に武力援助してあおるつもりなら――もはやUN主導の和平交渉など不可能だ、と、これは当然の反応でしょう。

また、20年間さんざん痛めつけられたうえに、さらに国連の追加制裁が実行されたら、民衆が暴動を起こすのではないか、善意で現地にいる国連の支援スタッフまでも標的にされるのではないか、との心配も、もっともです。すでに国連の名のもとに経済制裁が行われており、さらに今年は何十年に一度という異常な日照り続きで、とほうもないダブルパンチをくらっています。そのうえに追加制裁などやったら、もう我慢も限界ではないか、ということ。国連の報道官が、「追加制裁をやれば、現地スタッフや国連施設への危険が増すだろう」と正式にコメントしました(※これまでも、匿名を条件に、国連職員がそう言っていました)。「もしそうなれば、国連の支援活動も制限される」とこの報道官は言っています。(※実際に、今回の制裁案がらみで、もう引き上げてしまったスタッフもいます)

もっとも国連としてスタッフにアフガニスタンからの引き上げを指示するつもりはなく、タリバン側も国連スタッフの安全は保証すると述べているようです。

Taliban wants dialogue with Bush(UPI):一方、アメリカの新大統領決定との関連ですが、タリバンは、ブッシュ大統領と話しあいたいと言っています。クリントン大統領は話しあいより武力行使を好み強圧的な態度だったが(いきなりミサイルを79発、撃ち込んだ)、ブッシュ大統領には、そういうのはやめて、話しあいに応じてほしいと言っています。なお、先週、公表されたアメリカ国務省のファクトシート「Questions and Answers About the New UNSC Resolution Targeted at the Taliban」には、「コール爆破事件の調査は引き続き進行中であり、これまでも繰り返し述べてきたように、事件とラディン氏の関係がつかめた場合については、いかなるな対応の可能性も否定しない」と書いてあるそうです。ちなみに、国連憲章などによって「仕返しの空爆」は禁じられているので、やるときは「予防的な、自衛のための空爆」と称するらしいです。そもそも「仕返し」と言っても、アフガニスタンが犯人じゃないんですけど。

"Life...Gutter...Beauty...Afghanistan"

2000.12.17

[af]制裁案めぐって国連内に対立

米ロ主導の制裁案の件ですが、パキスタンの Dawn が16日「Security Council split on anti-Taliban resolution 」として伝えたところによると、国連内で意見の対立が広がっています。ただ、Dawn には書いてないけれど、パキスタンはアフガニスタンへの主要な輸出国なので、アフガニスタンが武器禁輸などの経済制裁を受けると、パキスタン自身が困る(主要な取引先との取引を禁じられるので)という事情、また、政治的にパキスタンはタリバン政権を支持しているということもあり、パキスタンのメディアの親アフガン的な論調は、少し割り引いて読む必要があります。とは言え以下の記事は、それ自体としては客観的事実でしょう。いわく――

中国、マレーシアなどの国連安保理・理事国が、アメリカとロシアが提案しているアフガン追加制裁案――タリバン政権に厳しい制裁を課す一方、反タリバン北部同盟を支援する内容――について留保を表明した。

密室審議が行われているなかで、多くの安保理理事国が決議案を差別的であるとして、制裁をするならアフガン紛争当事者すべてに対して制裁を行うべきだと述べている。我がパキスタンを含め国連加盟国の過半数が同意見である。

米ロの提出した決議案は、「タリバンはオサマ・ビン・ラディン氏の引き渡しを求めた決議1267号に従え」という内容。タリバン側は、ラディン氏が犯罪に関与したという証拠が示されるなら、引き渡しに応じるとしている。

安保理理事国の多くは、「アメリカだけの思惑で性急な決断をすべきでなく、国連のベンドレル特使の仲介による和平交渉の結果を待つべきだ」としている。また、国連・人道問題調整事務所(OCHA)も「すでに経済制裁で打ちひしがれているアフガン人に、これ以上の追加制裁を課すことは、ゆるされない。すでに多数のアフガン人が食糧、医薬品、必需品の欠乏で深刻な状況にある」と警告している。

決議案について、パキスタンのアフマド国連大使は、「議案の目的は、アフガン紛争終結なのか。残念ながら、これでは、まったく逆効果だ」とコメントした。マレーシアの大使も、「このまま可決されても(アフガニスタン向け輸出禁止には)従わない」というパキスタン大使の言葉に同調している。さらに中国も、決議案に対して「深い留保」を表明しており、採決を棄権すると見られる(※という話が前からあるのですが、最近の中国発のニュースによると、中国は賛成にまわるという雰囲気です)。

国連の外交筋のあいだでは、「この制裁決議は米ロだけの欲望で、決して満場一致の支持は得られない」との見方が一般的だ。

注:国連安保理(あんぽり:安全保障理事会)のメンバーは、5大国の常任理事国と、10か国の非常任理事国(任期2年)で、5大国とは、もちろん二次大戦に勝った連中(米ロ中英仏)、非常任のほうは現在は、アルゼンティン、バングラディシュ、カナダ、ジャマイカ、マレーシア、マリ、ナミビア、オランダ、テュニジア、ウクライナ。実質的な決議を採択するには、常任理事国5か国すべてを含む9か国以上の賛成が必要。言い換えれば、5大国のひとつでも反対すれば、決議を成立させられない(5大国の拒否権):棄権や投票不参加は、拒否にあたらない慣例なので、「中国が棄権するのでは」という話は「制裁案の成立を黙認するが、積極的な賛成票は投じない」という観測。――なお、理論上は、5大国が賛成しても、非常任理事国が4か国以上、賛成しないと、議案は成立しないが、米ロの影響力をもってすれば、10ある非常任理事国のうちどれか4か国に賛成票を投じさせることは通常、容易。

そのほかの動き

アメリカは最近、「この制裁措置は、一般のアフガン人に影響しない」と繰り返し弁解していますが、現地スタッフからみれば「さらなる制裁が実施されるかもしれない」という噂(とアメリカが空爆をちらつかせていることの影響)だけで、すでに通貨が下がって深刻な影響が出ているのは明らか。現地にひとりもスタッフを派遣していないアメリカが「影響は、ありません。このわたしが言うのだから間違いない」という態度なのが、おかしい。いつものことだが……。というか、追加制裁をしなくても、現状の経済制裁だけで、すでに一般市民に重大な影響が及んでいる、という詳細な国連の調査報告書が出てるのに、現地に一歩も足を踏み入れてないアメリカの主張(参考:Impact of U.N. Sanctions on Afghan People Due to Taliban Actions, US Department of State Fact Sheet)のほうが大きくとりあげられてしまうところに、マスコミ戦略の恐ろしさを感じる。

その一方で、未確認の情報だが、アメリカとパキスタンが組んで、タリバンに変わる「第三の」新政権を発足させようとしているという話があり、こっちにホンネが現れている。なんでも、ヘズベ・イスラミのヘクマティアル氏に政権を担当させるという「案」が検討されているとか。ラバニは、もう現地での支持が低すぎるようだし、アメリカとしては「ラバニ」には意味がなく、「自分があやつれる政権」ならだれでも(どんな人道状況になろうと)かまわないというのがホンネだろう。

れいによって「内戦による無秩序のため、世界のテロリストや麻薬業者の隠れ家になっている」というイメージ作りにやっきになっているが、本当にそれを解決したいなら、まず内戦を止めて国内の取り締まりを回復させる方向で考えるだろうし、制裁で内戦を止めようとするオプションもアリだけど、だったら、内戦をやってる両陣営に対して武器禁輸なりの「水をさす」措置をするのが当たり前。けんかしている一方の手足をおさえつけて、他方には武器を渡すような「制裁」で、内戦が止まるわけない。

プーティンですが、「テロリストの関係者に人権はない」と言い切ったようです。「関係者」としてひとくくりにするところは、日本の警察なみのでたらめさ。もともとラディン氏は、裁判で有罪確定したのが脱走したとかじゃなく、単なる容疑者……ただ、「犯罪容疑者に人権などない」というロシアのほうが、たしかに筋は通ってます。たぶん犯人だろうというだけでラディン氏めがけていきなりミサイルを撃ち込んだアメリカ、そのくせ人権がどうこう言いがかりをつけて別方面からも干渉してくるアメリカの二枚舌に比べたら。


2000.12.19

[af]縛られた手の祈り

アフガニスタンの18日のニュースですが、反タリバン・親米的傾向の強いAOPまでが、米ロの一方的な制裁案を非難する記事を多数、収録しています。もともと親タリバン的なパキスタンの Dawn 紙は、非常にしんらつな社説を掲載しました。

Afghans fear new UN sanctions will increase their misery

KABUL, Dec 17 (AFP) - アフガニスタンの首都カブールの住民は、追加制裁はタリバン政府だけを対象にしたものだというアメリカの主張を信じていない。内戦の傷跡もなまなましい今の生活の窮状が、さらに悪化するだろうと考えている。

近く国連安全保障理事会によって実行される見通しの制裁措置だが、それがまだ実施されていないうちから、通貨アフガニは暴落を始め、カブールでは必需品の物価が10%値上がりした。「だれか安保理の連中に教えてやらなきゃだめだよ」現地のジャーナリスト、モハンマド・ハシブさんは言う。「実施する前からもうこれだ。実際に制裁措置が実行に移されたら、どうなることか」

「追加制裁、それは、住民の困窮が追加されるということです」小売店をいとなむグラム・サヒさんは、ぼろぼろの傘をさして、言う。「この状況をうまく利用して儲ける企業もあるんだろうけど、どっちにせよ住民の生活は、経済制裁によって悪化する。直接であれ間接であれ、政府に圧力をかけるのは、国民に圧力をかけることでしょう」

米ロが主導する制裁措置は、タリバン政府にラディン氏の引き渡しなどを要求してのものだが、この目的が達せられると考える者は、ほとんどない。効果がなく、副作用ばかり深刻な、ばかげた「制裁」だ。

そもそも制裁の内容もおかしい。内戦の当事者の片側(タリバン側)にだけを厳しく押さえつけ、反タリバン側には、なんの措置もとらない。

アメリカ合衆国のカール・インダーファース次官補は金曜、タリバンを「国際社会」への脅威と称し、「制裁措置は民兵組織の指導者のみを対象としたもので、一般のアフガン人を対象としたものではない」と述べた。「ぜひともはっきりさせておきたいのですが、制裁案はタリバン指導者だけをターゲットとしたもので、市民に悪影響を与えないように注意深く検討されています」

しかし、支援スタッフは、経済制裁は市民生活に深刻な影響を及ぼすと、警告している。カブールでは、以前の内戦で都市の三分の二が廃墟と化し、住民の四分の一は援助に頼って生きている。残りの住民を含めて、人口の大半は最低限ぎりぎりの食糧しか入手できないでいる。――だが、首都カブール以外の状況は、さらにずっと悪い。

1999年夏の北東部の戦闘で、二十万人以上が「国内難民」になった(※住まいを失ったが、国内にとどまっているという意味)。それにくわえて、三十年来の最悪の干ばつにみまわれ、国全体があえいでいる。

国連は、国際的な緊急援助がなければ、最大百万人が餓死すると警告した。

アフガニスタンの大部分を支配しているタリバン政権は、たとえ状況がさらに悪化してもラディン氏を引き渡さないだろう、というのが、地元の見方だ。

住民は、国連の悪口を言って、仕返しに救援活動を止められたら、と恐れている。「制裁は、不公正です」ある住民が、ぽつりとつぶやき、またすぐに、くちをつぐんだ。

「国連スタッフが去ったらどうなるか、だれにも分からない」べつのカブール住民が言った。国連が運営するパン屋から、毎日、パンを5つ受け取っているという。「国連には、わたしたちを苦しめるのでなく、なにかもっと実際的なことをしてほしい」

NGOs oppose new sanctions on Afghanistan

Monday, 18 December, 2000 ISLAMABAD (NNI): NGO諸団体が、アフガニスタンに対する追加制裁はアフガニスタン国民に対して人道上、許されない影響を及ぼすとして、反対を表明した。

スイスのモントルーでの、アフガニスタン・サポート・グループ(ASG)の会合でNGO(非政府組織)各団体代表が「追加制裁は、経済をまひさせるもので、一般のアフガン人の生活が犠牲になる」との声明を読み上げた。

アフガニスタンでは、現在もすでに国連による経済制裁が実施され、そのため市民生活に深刻な影響が生じている。米ロが共同で国連安保理に提出した制裁案は、この国にさらなる圧迫を加える。米ロ双方が、この制裁はタリバン政府だけをターゲットにしたものだと主張しているが、一般には、制裁は市民を直撃するだろうと考えられている。

声明は、「アフガニスタンで人道的援助を行うのは、今でも困難がある。もし追加制裁が実施させれば、状況は、いっそう困難になる。制裁への抗議行動がアフガニスタン国内であれば、現地人スタッフおよび国際スタッフの双方が危険にさらされる」として、「少なくとも、追加制裁は、国連スタッフとNGOスタッフの一部の引き上げを余儀なくさせる。その結果、人道的援助プログラムの継続が困難になる。三十年間で最悪の干ばつに見舞われ最悪の食糧事情となっているこの時期に援助がとどこおれば、不可避的に、餓死者が増加することになる」と、非人道的な追加制裁案を厳しく批判している。

NGO代表はまた、タリバン側だけを押さえつけて反タリバン側には何もしない偏った制裁が実施されれば、国連の中立的立場が損なわれ、せっかく芽生えた国連主導による和平交渉のきざしも水泡に帰すと指摘している。

さらにまた、このような制裁が実施されれば、(政治的立場や主義思想などを問わず)「人道的な立場から」平等に行うという国連援助の重要な役割と矛盾する結果になる。「タリバン政府関係者だけをターゲットにしぼって、どんなに追加制裁をうまくやったとしても、アフガニスタン国民が、国際社会は一般のアフガン市民の基本的人権を踏みにじっているという印象をいだくことは避けられない。制裁は、生存権という人権の最たるものを無視するのみならず、すでに二十年に渡る内戦でもみくちゃにされてきた一般市民のこころに、さらなる不信感や心的外傷の爪あとを残すだろう。アフガニスタンの人々は、決してテロ活動など支持しておらず、人権侵害にくみしているわけでもない。だれよりも内戦の終結と平和を渇望しているのが、この人々ではないか。いったいいかなる理由で、打たれねばならないのか」

Dawn 社説より

Taliban bashing by another name By Shameem Akhtar:パキスタンは、もともとタリバンを支持しており、したがって、その立場からあれこれ言うことは割り引いて読む必要があるのですが、それにしても、この記事は、いつになくしんらつで、しかも、冷静にみて、もっともな見解を含んでいます。ちなみに「テロリスト・アメリカ」というのは、イスラム圏では、ごく一般的な感じ方のひとつで、決して「イデオロギー」でなく、現地の人の素朴な実感であろうことは、歴史を読めばすぐ分かるでしょう。

長いので全部は紹介しませんが、まず、反タリバン北部同盟には軍事援助を続けながら、タリバン側だけ厳しく弾圧することの問題を説いています。なんか訳すのが面倒になってきたので、そのまま貼り付けちゃうと「While the Security Council will be tightening the noose around the Taliban, the world body will allow the rebel northern alliance regime to equip itself with the weapons supplied by Russia, Kazakhstan, Uzbekistan, Iran and India and finally invade Kabul. This policy contradicts the professed UN efforts to broker peace and reconciliation between the Afghan government and the Northern Alliance. 」と言っておいてから、じつは国連は、もともと中立の立場でないのだ、と、いまだにラバニ政権を承認している非現実な態度を批判。また、制裁案のうちの、タリバン政府関係者の国外旅行禁止というのも、問題だ、と指摘。実際、諸国と協調しての非公式な和平努力(つまりタリバンが例えばスイスに行って、非公式な会談をもつとか)まで禁止されちゃうという点、もうだいぶ前からEU代表も首をかしげていた部分です。

また、ラディン氏が関与しているテロ基地があると言い張っている米ロですが、よくよく考えてみれば、国際的な正式な査察団などが基地の存在を報告したわけでない、ということも指摘されています。(ただアメリカは、自分でCIAに基地を作らせたのだから、あるはずだと信じるのは当然でしょう。自分で作ったんだから)

要するに、「The joint American-Russian move against Kabul runs counter to the UN peace efforts」、まあ、前からの構図です。

It is indeed surprising that Russia, China, India and central Asian states should be fearful of the Taliban believing them to be an expansionist force. One may ask: whether they feel threatened by the army and the arsenal of the Taliban, or is it their obscurantist ideology that is making inroads into those states? If it is the ideology, then it should be resisted by a superior ideology and not the gun. と切り込んでます。実際、内戦だけで手一杯のタリバンがテロ活動などで領土拡大をもくろんでいるなどというのは非現実な話で、ロシアが恐れているのは「イスラム・ピューリタニズム」というイデオロギーでしょう。これは正しい指摘だと思います。そして「であってみれば、イデオロギーの対立には、それよりもっと優れた思想を提示することによって戦うのが筋で、言論思想を、ちからまかせに弾圧するな」と言ってます。たぶんチェチェンのことなどにおわせているのでしょう。

タジキスタンは、タリバンがゲリラ兵をあやつってると主張しているが、タジキスタン国内でのイスラム教徒の抗議運動はタリバンなどというのが出現する前からの話、タリバン運動が飛び火したなんて、歴史的事実と矛盾している……。たしかに、タリバンが直接、軍事的に協力しなくたって、タジキスタン国内の状況を改善しない限り抗議は続くでしょう。が一方、もしタリバン政権が確立されれば(それこそイラン革命と同じで)ほかの国の同様な思想家にとって精神的な支えになるのも確実。ロシアがそれを恐れているのは分かります。ただ、これは、あくまで精神的な影響にすぎず、ドーンが指摘してるように、タジキスタン国内で「イスラム・ピューリタンを弾圧する我々政府のほうが正しいのだよ。なぜならこれこれよ」と思想的に相手を納得させない限り、問題は解決しないでしょう。もちろん、そんな強引な弾圧自体、理屈のつけようがないわけで、だから、間違ってるのはどっちか、無理を通しつづけて道理をひっこませまくってるのはどっちか、といのは、あまり議論の余地がないところです。

さらにこの社説は、ラディン氏の引き渡し問題にふれ、アフガニスタンとアメリカのあいだには犯罪容疑者の引き渡しに関する協定が結ばれていない以上、国際法上、引き渡しの義務はないのでは……というようなことも指摘してます。実際、引き渡し協定がなくてどうしょもない、というのは、時々あるパターンでしょう(引き渡さないからミサイルを撃ち込む、は、少し珍しいとしても)。まあ、しかし、パキスタン国民にとってラディン氏はヒーローなので、このへんの弁護には少し強引なふしも入っています。

そして、これ。「Taliban have been victims of terrorism themselves as manifested in the cruise missile attack by the US on August 20, 1998...」アラブの人と話すと、必ずでる「どっちがテロリストだよ」の話。ほかにアフガニスタン国内でもタリバンに対する反政府運動の爆弾テロなども起きていて、アメリカの幼稚な絵では「タリバンが中心になって、あの国は、みんな腹黒いことをしている」なんだけど、実際には、加害者どころか、国外からの、そして国内でのテロの被害にあっているタリバン政府……この見方も、一面の真実をついていると思われます。

If the UN really wants to bring peace to Afghanistan, it cannot do so by ostracizing the Taliban, the only stable government in the country, which can be expected to meet its international obligations. It should be given its rightful place in the world organization. (もし国連が真にアフガニスタンに平和をもたらしたいのなら、この波瀾万丈の国でまがりなりにも唯一安定しているタリバン政府を追放してしまうなどという過激でアナーキーな手段に訴えず、むしろタリバン政府を承認して、タリバン指導者たちを通じて改善すべき国内問題を改善していくのが筋であろう)と、記事は結ばれています。……タリバンも本質的には、そんなに高い国内支持があるとは思えないけれど、わけの分からない制裁で他国の国民をなぶりものにし、かろうじてできた政府をさえ破壊しようとする米ロの試みにまゆをひそめるのは、当然の反応でしょう。それに比べりゃ、タリバンの問題なんて、よくある「独善的な国内政治」(東のハテから西のハテまで、地球上どこでもある)の一例にすぎません。

タリバン政府にも問題は多いけれど、アメリカ&ムジャヒディン連合軍の蛮行をやめさせた功績のほうがずっと大きい、少なくとも北部同盟が政権担当するよりは百倍いい。じつは、アメリカのプロパガンダ「タリバンは悪い」には同意できる部分もあるんだけど、それも、「ただしアメリカの支持するムジャヒディン側は、その一万倍、不適切」という大前提の上でのことです。


2000.12.20

[af]制裁決議が成立

New Sanctions Against Taliban Split United Nations(国連発ロイター)、Taleban call off peace talks(BBC)ほか:問題の制裁決議が可決されました。賛成13、反対0、棄権2(中国、マレーシア)でした。現地時間の19日、火曜日のことです。

国連のコフィー・アナン事務総長は制裁に反対して、"It is not going to facilitate peace efforts, nor is it going to facilitate our humanitarian work."(和平努力に役立つものでも、人道的活動に役立つものでもない)と言っていましたが(Afghanistan faces new sanctions)、ガーナのアナンが騒いでも安保理に影響できるはずもありません。

アメリカの担当官も、個人的見解としては、制裁の効果に疑問があると表明しているのが、おかしなところです(U.S. officials skeptical about Taliban sanctions)。安保理でアメリカとロシアが全面的に同意するのも珍しいことでした。

from BBC

国連のベンドレル特使の和平努力も、これでおしまいです。


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