Afghanistan 6

page 5page 7

2000.12.22

[af]アフガニスタン:これだけは知ってほしい

1 人権

米ロの宣伝 → 「アフガニスタンで平和に人々が暮らしているところに、とつぜんタリバンという悪者が現れて軍政をしき、国民の人権を弾圧した」

事実 → ベトナムと同じ。ソ連とアメリカが楽しい代理戦争ゲームに熱中。コマにされたアフガン人は大迷惑。ソ連から戦車が来れば、アメリカは武器をばらまきゲリラを訓練、ほら戦え戦え。アナーキーな状態はソ連撤退後も続いた。略奪、殺人、銃撃……この人権以前のひどいありさまを嘆き、治安を回復させた学生たちがタリバン。だから、タリバンに批判的なアフガン人でも「彼らは、たしかに平和をもたらしましたが、しかし……」という言い方をすることが多い。「人権状況」に関しては、あくまで相対的にはだが、むしろタリバンの出現で大幅に改善された。

現地の国連職員、千田悦子さんからのメールもお読みください。「タリバンは女性を抑圧するが反タリバン(Mujahideen)は女性を守る」と信じていたかたへ。アムネスティの公式ページなら信用しますか?
Women in Afghanistan: a human rights catastrophe, Amnesty International, London, 1995.
これはアメリカが支援する「反タリバン北部同盟」(旧:ムジャヒディン)の行ったことです。タリバンこそが、こうした女性への暴行をやめさせた、という意外な一面もあるのです。

2 女性の地位

米ロの宣伝 → 「アフガニスタンで平和に人々が暮らしているところに、とつぜんタリバンという悪者が現れて女性の権利を侵害しました」

事実 → 無秩序状態のなかで、女性に対する強姦、虐殺が行われていた。それをタリバンがやめさせ、女性たちを(さしあたっては)安心させた。

現在、「反タリバン」勢力として米ロの支援を受けている「ムジャヒディン」諸派は、かつて女性に対する強姦などの無法の限りをつくした。それをやめさせたのがタリバンであるから、これも相対的にはだけれど、タリバンは女性を保護し、最低限度の人権を回復させたと言うべきだ。

現状、地球上のすべての国でそうであるように、中央アジアの伝統文化にもジェンダー文法(あるべき男性像、女性像)の制約がからんでいる。例えば、アフガニスタン最北部のバダフシャン県は、現在、タリバンの支配を受けていないが、バダフシャンのテレビ局には、女性職員がひとりもいない。なにもタリバンが禁止しなくても、文化的に勝手にそうなっている。また、日本でもそうだけれど、男性も女性も、まだ自由な服装をすることが(タリバン支配地域でも、それ以外の地域でも)文化的にゆるされていない。

(どっちもどっちだけれど)細かいせんさくすれば、タリバンのほうが、確かに保守的で厳しい。しかし、反タリバン側地域でも少しも男女同権などではない以上、タリバンだけが悪いとは言えない。

女性に対して抑圧的な政策(就学禁止など)は、タリバン出現以前のムジャヒディンの時代からあったことで、決してタリバンが始めたわけではない。地球上のほかの多くの地域と同様、女性には教育(とくに高等教育)は必要ないという社会的な意識・無意識が関係している(日本でも進学率に性差があるし、男子校や女子校がある)。

法律上の女性の権利だけを考えるなら、むしろソ連占領下の共産主義体制のときが、いちばん良かったであろう。しかし、女性の地位というのは、さまざまな問題、一般的な人間の幸福のうちの、一要素にすぎず、女性の地位だけ高くすれば、なんでもゆるされるということには、決してならないし、女性の地位を最優先するためには、ほかのすべてを犠牲にしていいというわけでもない。

女性の地位という米ロの口実が、ある人々(とくに現地でNGO活動に従事する外国人女性)にとってはいかに切実な真実であるにせよ、だからといって、餓死者を増やすような「制裁」や、軍事介入や、空爆が正当化されるわけでは、ない。女性としての立場から言っても、そんなことで米ロの軍事侵攻や経済封鎖が正当化され、自分自身を含め数百万の人々の生存がおびやかされるくらいなら、とりあえずは教育を受ける権利くらい、こっちから放棄したいほどだからだ。「わたしにも教育を受ける権利が、ある。でも、それは、その権利を守ってあげると称する人々の人殺しを正当化するためのものでは、ない」からだ。

「女性の権利」は、「先進国」でもまだモダンな問題で、「プロパガンダのポピュラライズ」による世論の扇動には、欠かせない道具となっている。世の中には、まじめに絶滅危機種のことを心配している人もいれば、べつにくじらなどどうでもいいと思いつつ「捕鯨問題」を政治的な道具に利用する人もいるだろう。

広い意味でアメリカ寄り考えられるBBCですら、反タリバン側がタリバン側に対して残虐行為を行っていることも報じていました。もちろん、タリバン側も反タリバン側に対して残虐なことをやってるようです。戦争なのだから、互いに相当ひどいことをやってきているのはある程度、仕方ないとしても、問題は、一方が他方にやったことだけが針小棒大に報じられ、逆の事例はなかなかメディアに乗らないということです。

3 麻薬

米ロの宣伝 → 「タリバンたちは麻薬を作って大儲けし、テロ活動の資金にしている」

事実 → かつてアメリカ&ムジャヒディン連合は麻薬を売って資金を得ていたらしいが、タリバンは、けしの栽培を禁止した。最近、タリバンの支配が国土の大半に及んだため、けしの生産量は激減している。

かつては、けしの一大産地だった一帯も、タリバンが出現して(少なくとも部分的には)けしの栽培を禁止してから、状況が変わってきた。2000年春くらいから、国連の麻薬問題担当者もタリバンの努力を評価し始めている。最近では、「タリバンの努力で今年から麻薬生産量は激減に向かうだろう」というコメントもある(UN predicts colossal drop in poppy cultivation in Afghanistan)。なお、アフガニスタンの農民は、たとえ(非合法市場では高い価値があるはずの)けしを栽培しても、食べてゆけないくらい貧しい、という事実も覚えておいてほしい。

現在ではケシ畑がなくなったことが国連によって確認されています。国連の公式報告にも「The global supply of heroin declined in 2000, mainly because of the decline in opium production in Afghanistan.」と明記されています。
http://www.odccp.org/pdf/document_2000-12-21_1.pdf
2001年6月の、国連DCPによるニュースレター「Afghanistan ends opium poppy cultivation」もごらんください。

4 テロ

例えば、タジキスタン。住民の過半数はイスラム教徒(タジク人)だが、1991年までの旧ソ連時代には宗教が弾圧され、モスクは閉鎖、自由な宗教活動は認められなかった。独立後も、非民主的な旧共産党政権が、イスラム民主主義を求める野党を非合法化し、迫害した。――このような長年の弾圧に対して、一般住民の抗議活動が始まったとして、なぜそれがアフガニスタンの責任なのか。タジキスタンの国内問題でしょう。

アフガニスタンと周辺諸国の位置関係(8kb)

中央アジア各地の紛争(内戦と呼ぶにせよ、反政府テロと呼ぶにせよ)は、チェチェンでも、カシミールでも、それぞれの地域の長年のゆがみが原因であることは明白。抗議行動(政府側にいわせれば「テロ」)が起きるのは、それほどまでに弾圧され我慢の限界を超えたからにほかならず、政府の政策が極端に悪いからだ。それをたなにあげて、「アフガニスタンにテロ基地があるから各地でテロが起きるのだ」などと寝ぼけたことを言うのは、やめてほしい。

タジキスタンのイスラム民主主義グループが激しい弾圧にあい紛争にまで発展した時期(1992年〜)には、アフガニスタンの「タリバーン」など、まだ誕生してもいない。言い換えれば、タリバンがあろうがなかろうが、タジキスタンの国内問題には変わりない。

解説

アフガニスタンに追加制裁を行えば、一般のアフガン人が苦しむばかりであることは、国連も非政府団体も繰り返し警告してきた。

穏健なアナン事務総長でさえあんなに反対したのは、米ロがやろうとしていることが、例えば餓死者を増やすなど、基本的人権の最も基本にあたる生存権、生命の安全をいちじるしくおびやかすものだからだ。内戦に関しても、平和(内戦終結)に役立つどころか、むしろその正反対の方向性をもった制裁だ(戦っているふたりのうち、ひとりだけをみんなで押さえつけて、もうひとりのほうには武器を手渡すという「制裁」)。

一部メディアや、なまはんかな「情報通」の人々は、「国連安保理がアフガン追加制裁を行ったのはタリバンが人権を抑圧しているから罰を与えたのだ」などと寝ぼけたことを言っている。安保理各国も本当は反対なのに、米ロのごり押し(ロビー運動)で無理やり成立させた決議、それをみて、「国連が制裁を決定したということは、やはりアフガニスタンは悪い国なのだろう」などと逆に理解してしまう人が多いようだ。事実は、決して悪い国だから制裁決議を受けたのじゃなく、むしろ悪い国(だから空爆しちゃえ)というイメージを作るために強引に(国連の全般的反対を押し切って米ロが)制裁決議にもっていったのだ。

べつに「良い、悪い」などというのは、どうでもいいのだが、国際世論の支持をとりつけるため問題をポピュラライズするのはプロパガンダの鉄則で、アフガン問題でいえば、そのようなポピュラライズのネタとして「人権、女性の地位、麻薬、テロ」が使われている。――むろん裏にある真意は、資源の権益、国際的影響力の保持、軍需産業の権益などで、本当は、そっちを論じるべきなのだが、ここではポピュラライズされたネタのほうを、こっちもポピュラーな文脈で、ごく簡単に整理しておいた。

繰り返すが、タリバンたちの神学的・哲学的・禁欲的な態度は、いくら「思想」や「生き方」として真剣であっても、現実の「政治」としてみる場合、長期的には修正を迫られると思う(つまり、タリバンたちの考え方には、現実的にうまくいかない部分があると思う)。この点については、ここでは詳しくは書かない。ともかく、わたしはタリバンの立場を支持しているわけでも批判しているわけでもなく(そもそも、特にアフガニスタンに関心があるわけでもなく)、単に、タリバンに対する米ロの干渉やプロパガンダについてコメントしている。タリバンと反タリバンの内戦についていえば、べつにタリバンが滅んでマスードの側が勝利したってかまわないというか、長期的にみれば、結果は同じようなものだと思う。それと、ひとりひとりのアメリカ人なりロシア人なりアフガン人を好きか嫌いかといった問題とは、まったく無関係であることも強調しておく。

最近、なぜか問い合わせが増えているので、以上、ごくおおざっぱだがまとめておきました。


2000.12.23

[af]麻薬問題、正しく認識して:国連

Britain fought to block UN sanctions against Taliban:イギリスは安保理の追加制裁決議に反対で直前まで阻止しようとしていた、という話。米ロへの外交的配慮で結局は賛成票。反対は反対だけれど大国とケンカしてまで反対するほどの利害じゃないってな。

China opposed to sanctions on Taliban:中国も反対だった。投票では棄権。本当に反対なら拒否権つかえよ。米ロがアフガンにひどいことをやったあとのほうが、 中国はタリバンにすり寄りやすいからな。「わたしだけは、みかたです」と言って。

Pakistan-Rabbani-sanctions:もちろん大喜びの北部同盟。もっとタリバンに厳しい制裁をしろなんて言ってるが、ラバニのやつ、パキスタンにも国連の制裁をなんて、言い出したらしい。

UN funding hole threatens refugees(BBC)、この記事は下のほうを見てほしい。国連の麻薬取り締まり担当が、嘆いている。せっかくタリバン政権が麻薬取り締まりの成果をあげているのに、そのタリバンたちを、麻薬で儲けているかのように非難するとは。前からときどき思うんだけど、アメリカってホントは麻薬(やテロ)が増えてほしいんじゃないの? タリバンが麻薬を禁止したから制裁してるんじゃないの? ICRCは撤退しないところみると、空爆はないのかな。追加リンク:Afghan sanctions ignore Taliban ban on drugs: UNDCP(AFP)


2000.12.24

[af]国連職員、早ければ日曜にも復帰

UN sending back staff to Kabul:米ロごり押し制裁に対する住民の激しい抗議行動をおそれ、一時、撤退していた国連スタッフですが、アフガニスタン国内の反応が穏やかなのをうけて、職員を再入国させる見通し。タリバンは「抗議行動をしても米ロは聞く耳を持たない」として、住民に自制を呼びかけた。食糧、医療などの人道的援助活動の停止、という最悪の事態は回避されるもよう。なお、ごり押し制裁への非暴力の抗議として、タリバンたちは「今後は国連主導の和平会談を拒否する」としている。国連が中立性をいちじるしく欠く行動をとった以上――北部同盟へのみ武器援助をつづけ、タリバン側にのみ禁輸措置――、国連に仲介をまかせたら不平等な交渉しかできない、と、タリバンたちが疑ってしまうのは、やむを得ないことで、前から見えていた結果。けれど、現実的には、国連(国際社会)全般がタリバン政権を弾圧しているというより、アメリカなど一部の国々が(自国の権益のために)音頭をとっているにすぎない。

政治的なおもわくに影響されアフガニスタンから出たり戻ったりしている「人道的」な国連スタッフと違って、初めから政治的中立性を前提にしている国際赤十字(ICRC)は、この期間もずっとアフガニスタンにとどまって活動を続けていることに注目。

国境なき医師団(MSF:Medicines Sans Frontiers)も、アフガニスタンにとどまったのみならず、国連スタッフの引き上げの穴を埋めるためにメンバーを増員したという。

ところで一方、ロシアは、アメリカ合衆国と同じく「今回の制裁はタリバンのみを対象にしたもので、アフガン人民の生活には影響しない」などと言っている。ロシア外務省の報道官が記者会見で述べた。


2000.12.25

[af]国連職員、アフガンに戻る

UN staff return to Afghanistan (こっちは速報版か→UN workers return to Afghanistan)(BBC)

安保理追加制裁への住民の抗議行動をおそれて一時アフガニスタンから撤退していた国連スタッフ約60名ですが、BBCほかのメディアが報じているところによると、アフガニスタンの国内状況が落ち着いているのをうけて、24日、日曜日に、第一陣がアフガニスタンに戻りました。残りのメンバーも追ってすぐ戻る予定です。全員の帰還は、来週、すなわち2001年1月の第一週になる予定です。

無謀な安保理制裁について、もちろん現地では反感があるでしょうが、アフガニスタンのほぼ全土を治めているタリバン政権は、デモなどの抗議行動を禁止し、自制を呼びかけました。これによって、厳冬期に人道的援助活動が難しくなるという最悪の事態は回避されました。

これらの国連職員は、外国人(非アフガン人)であって、具体的には、 世界食糧計画(WFP:World Food Programme)の職員(食糧援助)、 国連人間居住センター(Habitat:Untied Nations Centre for Human Settlements)の職員(住部門)、 そして地雷除去作業のスタッフなど。滞在場所ですが、アフガニスタンの3都市、 カブール(Kabul、首都)、ヘラート(Herat、西部、イラン国境近く)、マザーリシャリーフ(Mazar-e-Sharif、北部の国境近く、Mazar-i-Sharifとも綴る) だそうです。

png, map, 7kb

2000.12.28

[af]ロシア国防相、イラン訪問

Russian and Iranian defense ministers meet in Tehran:両国は反タリバンで一致。アメリカ、ロシア、イランそれぞれの様々な思惑のなかで、ロシアとイランのあいだで一定の協定が結ばれたもよう。


2000.12.31

[af]北部同盟、反撃に出る

戦況図

一部報道によると、図のように、反タリバン側の反攻が広がり、中部アフガニスタンのバミアン県までが一部、反タリバン側に奪回されたともいう。一時は「タハル県までとられ、バダフシャン県しか残っていない、95%はタリバン支配下」という雰囲気だったら、れいの米ロのごり押し制裁決議でマスード軍の志気が高まっているようだ。ただしタリバン側は、反タリバンの攻撃を退けたと発表している。


2001.01.03

反タリバン北部同盟の反攻が押し気味。反タリバン側代表が訪米。アフガン国内で郵便代が値上げ。インフレのため。

2001.01.08

Tajikistan firm on refugees:タジキスタンは、ひとりの難民も越境させないかまえ。

Heavy fighting in Afghanistan:ヤカウラン奪回をめぐって激戦か。情報が錯綜。

2001.01.10

さて「ラディン・リンク」。確認されたら報復するとアメリカがすごんでいたやつが「確認」されたと。

Female education a distant possibility in Afghanistan:「Afghanistan's fundamentalist Taliban regime may allow female education but only once it has secured control of the entire country, a senior official said Tuesday.」 ある意味、当然のことなんですね。一方において、アメリカはタリバン政府を「政府」と認めない。 では、他方において、なぜタリバンに「女性の権利」について指図するのか。 アフガニスタンのことは、アフガニスタンの政府に言っては、いかがですか(笑)?

Seven Afghan children freeze to death:吹きさらしの難民「キャンプ」で凍死者。毛布とテントを要求。BBCも。

結局、ヤカウランはタリバンが固めたもよう

2001.01.15

北部では再び激戦のようだ。タジキスタンと北部同盟の補給路にあたる要所。 他方、カブールからは三月いっぱいで赤十字が引き上げるという。 カブールはもはや自分たちの援助を必要としないというのだが……。

www.faireal.net <webmaster@faireal.net>