趣味Web 小説 2004-04-18

謀略説の地平

1週間ぶりの更新ですね。ここ1ヶ月ほど、ちょっと更新しては数日休むという繰り返しです。たしかに更新したらそれなりに読まれるのですが、休んでも不思議と客足が落ちないんですよね。たまたま、そういう記事を書いてきたということもあるのでしょうが、とにかくここしばらく、やたらとリンクされることが多い。で、たいていリンクされるのは休む直前の日の更新なんです。記事をバリバリ書いて、どんどん過去ログ送りにするってのは効率悪いかなー、と思ったり。

でもまあ、この備忘録は書きたいことがあれば、そして書ける状態にあれば書くという方針なので、いったん書き始めたら算段なんて吹っ飛ぶわけですけれども。

何はともあれ、イラクで誘拐された邦人がみな解放されたことには安心しました。これで皆さんも安心してあれこれ書けますね。寝覚めの悪い展開は、おそらくもうありえないわけですから。

ところで、前回の更新どこのサイトだったか忘れてしまったのだけれど、「今回の事件はイラクから真実を伝える NGO やフリージャーナリストを追い出すための謀略」という意見を読んで目から鱗が落ちた。自作自演説の反対側に、そういったモノの見方があるわけだ。なるほど、と感心する。と書いたのが注目されて、たくさんリンクされましたが、オリジナルの筆者に申し訳ない気分。ただ、いったんそういう目で情報を捉えなおしてみると、情報不足の一般人が陰謀論を語る虚しさみたいなものを感じずにはいられませんでした。

今回の事件、私が最初に疑ったのは自作自演でした。けれども、よくよく考えてみると、それは私にとって一番都合がいいんですね。自作自演なら、人質は安全なんです。政府(またはアメリカ)の謀略だったとしても同じです。あるいは、どうせ「被害者」なんてのはどうなろうと自業自得、って意見はそれはそれで理解できるけれども、そればかりいうとすれば、自衛隊派遣を支持した人間として都合が良すぎませんかね。

私はフセインがひどい独裁者だったとしても、そんなことを理由に侵攻して政権を倒してしまうことには反対でした。ビンラディンがアフガンにいて、アメリカが復讐のためにこれをやっつけるというのはよくわかる。ビンラディンをかばうからタリバンもやっつけてしまう、これもわかる。で、ビンラディンを支援していた証拠のないイラクをなぜやっつけなきゃいかんのか。イラクが大量破壊兵器を持っていて、しかも金さえ出すならどんな相手にも売ってしまうのだ、みたいな話があった。つまり、イラクの大量破壊兵器は、全世界の脅威である、と。そして、フセイン政権を打倒しない限り、この状況は変化しないらしい。……であれば、戦争やむなしと私は思いました。でも、結論からいえば大量破壊兵器は出てこないし、ということはつまり、フセイン政権が世界の脅威ではなかったことになりますね。

フセイン政権を打倒してイラク国内をボロボロにしちゃったものは、今更どうしようもなくて、自衛隊をイラクに派遣して復興支援することには賛成せざるを得ない。けれども、後ろ向きでしか、賛同できないんです。で、そういう状況下で邦人誘拐事件が起きました。

仕方ない、仕方ないといってここまで進んできたけれども、本当でそれでいいのか、と、立ち止まって考えるきっかけになりうる事件でした。けれども、事件発覚の直後から、これはもう自演説で決まりでしょ、と思わされる情報がたくさん出てきて、すっかり考えるのが面倒くさくなってきてしまいました。いくら真剣に考えて覚悟を決めたって、どうせ人質は無事に解放されるんでしょ、って。で、逆方向の政府謀略説には目をひかれたけれども、結局それも「人質は無事に解放されるよね」と弛緩してしまう材料にしかならなかった。

そうやって、考えないまま事件が無事解放という展開を迎えて、私は相変わらずモラトリアムの中に生きているわけですよ。きっと、人質が惨殺されたって、私は自衛隊は(少なくとも今すぐには)撤退するな、という結論を選んだろうと思います。それは予想できるのだけれど、そういう方向性を支持するってことについて、自分の中でもう少し、何らかの覚悟みたいなものが形成されていたんじゃないか。

なんかですね、余計なことに気を取られて、最初に悩んでいたことについて、なーんにも考えないまま緊張が解けてしまって、こんなんでよかったんだろうか……と思っているわけですよ、私は。

おまけ

いつものように反論ページが作られていたので、興味のある方はどうぞ。あの、あんまり市民団体系の方の行動パターンをご存じない方に説明しておきますと、けっこう、こうしてお勉強なさっているんですよ、市民団体のまじめな方ってのは。南京事件とかですね、原発とか、いろいろ典型的な話題ってのはあるわけなんですけれども、末端のおばちゃん達とかがまるっきり無知で感情論を唱えているだけなのとは対照的に、ちゃんとお勉強を担当されてる方がいるんです。役職とかではなくて、天分として。

ざっと読んだところ、興味深い内容ですが「自作自演ではない」と証明するものでもありませんでした。しかしモノの見方もいろいろあるのだなあ、と勉強になります。

いずれも芸風が定まっているサイトですから、読む前から何が書いてあるかわかるんですね。でもまあそれはどうでもよくって、読者としてどう考えていくかが問われているのだと思います(無意味な結論)。

泣き言を書くと、フセインが亡命すれば侵略しないよとアメリカはいったのだから、フセインがその提案を受け入れていればバース党を主体とする行政組織もイラク軍も崩壊しなかったわけで、イラクの復興なんていうつまらない仕事は必要にならなかったはず。ありえないシナリオながら、その奇跡が実現していたらなあ、と思ってしまうのでありました。

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