趣味Web 小説 2004-08-17

Advice311 LEGACY

再開したアドバイスの1件目。

ご依頼人と Web サイトのご紹介

古典的なフォントいじりのテキストサイト。リンク集のトップが庵~iori~というのは、あまりにもそのまんまという感じがします。あなたのロリコン度チェック120%というハイスコアを叩き出す典型的な痛い系管理人、その表の顔は島根の高校生、16歳。

島根の高校は18日から始業式なのだとか。山陰は夏涼しく、冬寒いですからねぇ。夏暑く冬寒い盆地よりはマシとはいえ、山陰の冬はなめてかかるととんでもないので注意が必要ですよ、って誰にいっているんだか。その点、南関東は素晴らしいですね。冬に雪が積もらず、夏も耐えられない暑さでない。一時期、首都移転が話題になりましたが、よりによって候補地が長野と栃木。冬のことを考えてないでしょう、あなた、と。

さて、世の中にはけっこう、テキストサイトの管理人をやるために生まれてきたような人間がいて、この方もその一人。飽きるまでは頑張ってほしいところです。

ご相談の内容

サイト批評をお願いします。日記と文章がメインのサイトです。リピーター数、アクセス数が伸びず悩んでいます。

アドバイスいろいろ

私もこれまでにずいぶんたくさんの相談に乗ってきたわけですが、やはり管理人の悩みとして1番多いのが、アクセスの伸び悩みです。この点について、私の意見はここ数年ほとんど変化ありません。

アクセス向上を考える
  1. 初級篇[2002.09.22]
  2. 企画篇[2002.11.07]
  3. 計測篇[2002.11.18]

お暇な方は2年前の拙論をご覧いただきたいと思いますが、端的にいって、ふつうの人が、自分の書きたいことを自分の書きたいペースで書いている限り、人気サイトは作れません。Web サイト運営の成功者がしばしば他の方面ではとくに成功していないことから、平凡な人でも何とかなるものだ、という誤解が未だにあります。しかしなるべく早い段階で目を覚ました方が、傷が小さくてすむでしょう。

私のサイト「趣味の Web デザイン」についているカウンターの数字は、先日、500万を越えました。これは当サイトだけでなく、私の管理する多種多様なコンテンツの6割超でカウンターを共有していることに注意していただきたいのですが、まあ何にせよ約3年で500万という数字に達したわけです。これって凄いのか? というと全然そんなことはありません。

スポニチアネックスは1日270万ページビュー(Web Design 2004)ですから、その2日分にもなりません。ちなみにZAKZAKは1日1000万ページビューで、sanspo.comは1日900万ページビュー(ともに Web Design 2003)。余談ですがasahi.comは月間2億ページビュー(Web Design 2004)ですから、ZAKZAKに負けています。

WWW は出版業界に似ています。どれほど人気のある Web サイトも(インフラ的な役割を担う検索エンジン大手やプロバイダのポータルサイト、楽天広場などを例外とします)、圧倒的多数に無視されているのです。本が100万部売れたら大ベストセラーですが、よく考えてみれば、日本人の99%以上はその本を読んでいないわけです。

音楽なら、知らない内にどこかで聞いていることもありえましょう。しかし本には、それがありません。Web サイトも同様です。閲覧者の能動的なクリックなくして Web サイトが読まれることはないのです。それゆえに、先述の超人気サイト群でさえ、やはりネットユーザの大半は読んでいません。

月間1億7000万ページビュー(Web Design 2004)のYOMIURI ON-LINEのユニークオーディエンスは2002年3月時点で195万人、パソコンから WWW を利用する層の8.57%だけが利用しています(Nielsen/NetRatings 調べ/利用率は月に1回以上閲覧したかどうかで計測)。面白いことに同じデータでasahi.comの利用者は158万人で利用率は6.94%だとか。サイトのページビューは自己申告なので水増しがあるのかもしれません。

とにかく、私の3年分を1日や2日で追い越す(=当サイトの1000~10000倍凄い)ような Web サイトでさえ、その程度の人気しかないわけです。9割以上の人は、YOMIURI ON-LINE なんて月に1度も見てないわけです。こうした状況を押えずにアクセス向上を語るのは、ウソです。

敢えてわかりやすさを優先してモノをいうならば、1日100人の訪問客を得るのが目標なのであれば、日本のネットユーザ7000万人の無関心を恐れる必要はありません。0.00015%の支持があれば、望みは実現できます。

アクセス向上指南サイトの多くは、見た目の改善を求めます。しかしそれは間違いです。ちょっと探せばすぐに、とんでもなくひどい見た目であっても大人気の Web サイトが見つかります。無数に、です。1日100人とか1000人が訪問する程度でよければ、それこそ腐るほど実例があります。逆に、見た目はいいけど人気のない Web サイトも無数にあることに気付かれるでしょう。

よほど高い目標を掲げない限り、「嫌われない」アプローチは虚しいのです。これはもう、断言していい。

以前、カプセルプラレールのファンサイトからアクセス向上の相談を受けました。どこでも配置モードで写真を貼りまくったひどいひどい作りのサイトで、やたらめったら表示が重いし、画像オフにしたら何も表示されないし、ナビゲーションも適当だし、「何だこれは」という感じでしたが、じつはこれがジャンルで圧倒的にトップの地位を占めるサイトでした。

他のサイトがほとんど写真を載せない中、そのサイトだけが、たくさんのレールをつなぎ、ひろい部屋でたくさんのカププラを走らせていました。派手な大量の写真が惜しげもなくアップされ、ファンがそれを見に押し寄せていました。総天然色の絢爛なデザインは、ファンの夢の王国を体現していたのです。

そして管理人氏はレギュラーシリーズをほぼコンプリート、レアアイテムも執念でゲットしたのです。整理されたデータベースこそ作りませんでしたが、きっちりアルバムをアップしたのですから、需要があるのも当然でした。

強烈な欠点を無数に抱えたサイトでしたが、すべて美点の前にかすみました。そうだから、お上品な他サイトの10倍もの閲覧者数を誇っていたのです。

見た目の改善が無意味だというわけではありません。それでお客さんが2倍や3倍に増えることはありえます(たいていは効果ありませんが)。けれども、せいぜ2倍、3倍なんです。10倍、100倍にはなりませんよ。大切なのは「嫌われない」ことじゃないんです。いかにコアな読者層の「需要」を捉まえるか、なんです。

emeth さんの Web サイトは面白いと思います。頑張って書いていらっしゃる。でも4ヶ月で1500しかカウンターが回らない。それで悩んでいらっしゃる。

人気がないのだとすれば、その理由はひとつしかありません。現在 emeth さんのサイトの需要が、それだけしかないのです。よそのサイトを見て、「あんなつまらないのが何でウチより人気あるんだ」と思っても無意味です。どちらのサイトも日本人の99%以上が読む価値を見出さない路傍の石に過ぎません。そのことに気付けば、世の中のほとんどの人気サイトが自分から見てつまらないのは何故か、得心されるはずです。

emeth さんにとってはどうあれ、人気サイトにはそれなりの需要があります。ではどうしたらいいのか。

これほど長い文章を読まされて、こんな答えでは怒られるかもしれませんけれども、私はこう申し上げます。「売れる本の書き方がわかっているなら、出版社が倒産するはずがない」と。問題点がわかったところで、結局、どうしようもありません。ウソにだまされて無駄な苦労をせずにすむだけです。

もし、人気さえ出るなら何でもやる、といことなら簡単です。才能頼りのテキストサイトなんかやめてしまえばいいのです。書店で専用コーナが作られているようなジャンルのハウツー本をたくさん買ってきて、お勉強の成果をどんどんサイトに書いていく。需要が大きく役に立つ情報を無料で提供すれば、当然のように人気が出るものです。

でも、そんなことをするつもりはないわけでしょう。であれば、ここで発想を転換した方がよいだろうと思うのです。

「正法眼蔵随聞記」には、こうあります。

切に思うことは必ずとぐるなり

ただしこの言葉には裏があります。何を思い、何をすればよいのか? その答えは「少欲」「知足」「精進」の3語に集約されます。何でもかんでも願い望めば叶うわけではありません。欲を少なくし、足るを知り、なおかつ精進することなしに物事を成すことはできないのです。

私は、現状に満足されることが、幸せへの道だと考えます。しかしだからといって、なーんだ、これだけしかお客さんが来ないなら更新頻度も半分でいいや……とやってしまうと、現状の維持さえできません。少欲、知足に続けて精進が欠かせない所以です。

がっかりされるかもしれませんが、これで私のアドバイスは終わります。

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