趣味Web 小説 2004-10-24

Advice319 SurFace

急なサーバの移転があった関係でアドバイスの順番が前後し、たいへん長らくお待たせしました。

ご依頼人と Web サイトのご紹介

忍たま乱太郎」のドリーム小説をメインコンテンツとした、いわゆる同人系サイトです。管理人の潮路さんは埼玉在住の高校生の女の子(だと思います)。趣味のWebデザインはおじさんおばさん向けのつもりで運営しているのですが、このところアドバイスを依頼される方の平均年齢が若くって……。日記などを読んでいると、なんだか眩しいです。羨ましいとも思わないし、昔に戻りたいとも思わない。ただ、眩しいです。

潮路さんは忍たまのキャラクターでは土井先生のファンで、きり丸もいい、ということのようで、趣味はメジャー路線です。7月にスタートしたばかりの割には手馴れた印象があるので、最近の高校生は凄いなと思っていたのですが、7月13日の日記を拝見したところずーっと前に飽きて閉鎖したHP引っ張り出してちょぉーっといじっただけだけど・・(TOPのタイトルとか・・あはv)だそうで、なるほど納得。

夏休みを費やして急速にコンテンツを充実させ、2学期が始まってからもハイペースで飛ばしています。ご紹介はこれくらいにして、アドバイスに参りましょう。

ご相談の内容

アクセスがいまいち伸びません。掲示板への書き込みやWEB拍手も少ないのでよろしかったら何かアドバイスして欲しいと思っています。他の人から見た私のサイトの悪いところ、あわよくばいいところも知りたいと思っているのです。

アドバイスいろいろ
「忍たま乱太郎」とは?

「忍たま乱太郎」は NHK で放送されているアニメ作品です。忍たまとは「忍者のたまご」の略で、主人公の乱太郎たち3人組は忍術学園一年は組の生徒です。設定年齢は10歳、現代の小学4生。いちおう、番組の主要な視聴層も小学生くらい、ということになっているようです。

ヒラ忍者の家に生まれた落ちこぼれの忍たまたちが、よき指導者(?)に恵まれ楽しい毎日を過ごしながらも、次々に起きる問題に向き合いながら次第に成長していくという物語。といっても、青春感動もの路線ではなく、駄洒落満載のギャグテイストの強い軽く楽しめる娯楽作品です。主人公が3人組であることから、「ズッコケ三人組」シリーズと対比して語られることも少なくありません。ただし主人公がハカセで、ハチベエが脇役に回っているのが、本作のひとつの特徴です。

アニメ作品を最も多く放送しているのがテレビ東京系列であるため、アニメのファンサイト管理人の所在には、多くの場合、かなりの地域差があります。その点、「忍たま乱太郎」の放送局は NHK なので、地域差の問題がなく、全国にファンのいる作品です。既に10年以上も放送が続いており、先日 DVD-BOX Vol.1 が発売されました。原作は朝日小学生新聞に尼子騒兵衛先生が連載中の「落第忍者乱太郎」で、10月16日に第36巻が発売予定。

小学生新聞といえば、私も昔、1年くらい毎日小学生新聞をとってもらったことがありました。結局、大人向けの普通の新聞の方が読みどころが多いので、購読をやめてしまったことを覚えています。

忍たま系サイトのアクセス状況

有名ディレクトリに登録されているサイトを見ると、案外、アクセスがないことに気付きます。最高でも20万アクセス程度。何人かの方にご協力いただいて、登録外の人気サイトを探していただいたのですが、晴天百景が20万アクセスを突破しているくらいで、100万アクセス達成サイトなどは見当たらないようです。「忍たま乱太郎」の同人系サイトという時点で、少々厳しいものがあるようです。

当サイトへのご相談が多い同人系サイトに限った話ではなく、やはり多くの管理人にとって「アクセスを増やしたい」が最大の悩みなのだと思います。私がアドバイスの再開に当たり、相談の内容を明記していただくようお願いしたのは、本当に知りたいこと、アドバイスがほしいことはいったい何なのかを教えていただきたかったからです。結果的に、現代のサイト管理人にとって一番メジャーな関心事は何か、明らかになったと思います。

しかし残念なことに、今回もまたアクセス増の秘策はありません。サイトの構成を組み替えても Yahoo 登録は難しそうですし、同人系サイトは通常の検索エンジンで上位に登場してもあまり意味がない(そういった方面からくる人がそもそもそれほど多くない)。小説とイラストがメインコンテンツですから、需要をドカンと増やすアイデアも出てきません。面白い小説の書き方、なんて簡単に定式化できるものではありませんから。

しばらく悩んでみたのですが、やはり私ではあまりお力になれそうもありません。以下、きちんとまとめられなかった、とりとめのない話をいくつか。

同人系検索エンジンへの登録

通常の検索エンジンでは意外と引っかかってこない同人系サイト。なぜかと思ったら、わざと検索されないように工夫されている方が多いのですね。でもそれじゃ不便だろう……という疑問に答えるのが、同人系サイト専門の検索エンジンなのでした。乱立気味の業界ですが、総合系では上記の2サービスがトップ2のようです。おまじない程度ではあっても、登録する価値はあるのではないかと思います。

同人系検索エンジンで上位に表示されれば、アクセス向上に結びつくだろうと考えたのですが、ご紹介できるような方法を見つけられませんでした。残念。

現在登録されている忍たま専門の検索エンジンも拝見しましたが、どれも凄いですね。とくに NRN のシステムと落楽リンクの人気には驚かされました。

コミュニケーション

アクセス数が少ないのは仕方ないとして、掲示板やメールフォームへの投稿を増やすにはどうしたらいいか、ということを考えます。

「趣味の Web デザイン」は1日2000ページビュー程度のアクセスがあります。しかしメールはそれほどいただきません。平均して週2くらいです。以前、掲示板を用意していた時期もございましたが、こちらへの書き込みも、集中するときに集中して、ふだんは半月以上も間が開くなど珍しくもありませんでした。

私はもともと、メールも掲示板への書き込みも歓迎してきませんでしたから、当然の状況なのかもしれません。しかし、メールをほしがっているサイトでも、しばしばアクセス数の割にコミュニケーションが乏しいケースがあります。つまり、アクセスを増やしても、掲示板やメールフォームへの投稿が増える保証もありません。

一般論を述べますと、まず自分が多くの方とコミュニケーションをとろうとすることが成功の秘訣です。よそのサイトで面白い小説を読んだら、必ず Web 拍手をクリックしたり、掲示板かメールで感想を伝えます。つまらないのにお世辞で誉めるのは、お勧めできません。無理は続かないからです。

これは不毛な作業に思えるかもしれません。Web 拍手した相手には、誰が拍手したのかはわからないわけです。掲示板に感想を書いたって、それを読んだ相手が、自分のサイトの掲示板に顔を出してくれる可能性はそんなに高くありません(自分の行動を思い起こしてみればお分かりの通り)。見返りの保証なく、一方的に与え続けるわけです。しかし、自分がサイトのお客さんに何を望んでいたのか、ということを再確認する意味で、この体験は重要です。

ここで確認・反省したことは、多くの場合、何らかのよい結果をもたらします。まず、ひとつひとつの書き込みや拍手やメールに、これまでよりもっと感謝できるようになります。また、自分が拍手しやすかったのはどんなケースだったか? といった「気付き」が、自分のサイトの改善につながります。そして運がよければ、自分が感動した作品の作者の方が、掲示板やメールで一言くださるかもしれません。少なくとも、自分のことを知ってくれる人が何人かは増えているはずです。

コミュニケーションを欲するならば、まず自分が与えること。これは Web での交流に限った話ではないだろうと思います。

数字だけ見れば、毎日20人も30人もお客さんが来ているのなら、一人くらい掲示板に挨拶していってくれたっていいじゃない、と思ってしまったりするものです。けれども、自分が毎日どれだけのサイトを見ているか、そしてどれだけ掲示板に書き込んだりしているのかということを考えれば、勘違いがあったことに気付かれるはずです。最後はもちろん、人柄の問題になって、収支が黒字になる人も赤字になる人もいます。でもそれは、やることをやってみてから、考えるべきことだろうと思います。

今、こうである、という背景には、多くの場合、何らかの事情があります。「事情」を乗り越え「変化」するためには、相応のエネルギーが必要になるものです。潮路さんが今、よそのサイトの掲示板に全然顔を出していない、などというつもりはありません。ただ、明日は今日の続きです。今日と同じ生き方をすれば、明日も今日と変わりばえのしない一日になるでしょう。

補記:一言メールフォームに日記できちんとレスしているのは、よいことだと思います。

小説について

潮路さんの書くドリーム小説の多くは、主人公の女の子がいろんなシチュエーションでカッコいい男性(例えば土井先生)と仲良くなって幸せ(な気分)になるというハッピーな内容です。キャラクターの死が物語の核となっている作品はひとつだけ。現在のこうした明るく楽しい方向性を、私は支持したいと思います。

……といっても内容のよしあしに踏み込むつもりはなくて、デザイン関連のことを少々。

以前、日記で憤慨されていた改行の多さの件、正直、一部の作品については私も、ちょっと改行が多過ぎやしないかという気持ちはあります。1文で段落を改め、段落間に10をはるかに超える連続改行を入れるとなると、ちょっと読みにくい。一部に特別な効果を狙っているのではなく、全編そうなっているとなると、さすがに。けれども、これも一概によくないとはいえないのではないか、と思うのです。

私は、詩集や画集の類を除けば(つまり文章中心の本では)、そのようなレイアウトの採用例を目にしたことがないのですが、それは商業出版というメディアの特性が、それを許さなかっただけではないかという気がします。コストとの兼ね合い、そして少数派向けと多数派向けに2種類の本を出すのは難しいという制約など。

段落間に大量の改行を挟む手法は、個人サイトでは意外によく目にします。作者はそれを、見難いなんて思っていない。むしろ、そういうのが見やすいと思っている。ときどき、変な配色のサイトを見かけるのですが、それも同様で、作者はそれがいいと思ってそうしているわけです。長らく、少数派の感覚は、少数派ゆえに世の中に出てくることがありませんでした。ひとつだけ選ぶなら、多数派の意見に沿った無難なものになってしまう。

WWW は商業出版の世界以上に、一部の成功者がごっそりアクセスを持っていく世界なのですが、その一方で、少数派だからといって潰されることもないという特性を持っています。これまで、段落間に10以上の連続改行があった方が読みやすいというセンスの持ち主は、書店で何冊開いてみても、読みにくい本しか見つけられませんでした。けれども WWW なら、探せば自分にぴったりの体裁の作品が見つかるわけです。

私は仲春如月に収録されている最近の作品の方が読みやすいと思いますが、あまりそういったことにこだわる必要はないと思います。私のサイトだって、文章が長くて画面の端から端まで文字ばかり、多くの Web デザイン指南サイトでダメだといわれていることをやっていますが、そういう指南役より私のサイトの方が人気あります。そうなる理由について、以前、大多数がどうだとか、そんなことを気にするようなご身分なのか? という記事を書きました。参考にしてください。

とにかく、もっと自信を持っていいと思います。つまらない意見に過剰反応せず、鷹揚に構えてみてはいかがでしょう。「ふつう」なんて、相対的なものです。改行いっぱいの小説は、案外、あちこちで見かけます。仮に過半数の人が読みにくいと思っているとしても、そう思わない人が1000万人はいるのではないでしょうか。潮路さんに近いセンスの持ち主は絶対に(割合はともかく人数は)たくさんいるのですから、そういった方に向けて情報発信していけばよいのだと思います。

デザインのよいところ

デザインがきっちり統一されているのは、高校生の個人サイトにはちょっと珍しくて、目を引きました。

よく、小説ごとにデザインを変える方がいらっしゃるわけです。その作品にとって一番ぴったりのデザインにするんだ、ということらしい。そういう発想も一概に否定はできませんが「そもそも多くの読者にとって、あなたのサイト自体が、夜空に浮かぶ星のひとつに過ぎないことを失念していないか」とも思います。作者にとっては自分のサイトは小宇宙、それぞれのページに個性を持たせたいと思う気持ちはわかります。でも、それは作者の独りよがりではないか。

とはいえ、過去に何度も書いてきた通り、サイト内では大筋でデザインに統一感を持たせた方が印象はよくなる傾向にあるものの、デザインをよくしたからといってサイトの人気が急上昇することはありません。たかだか2倍、3倍にしかならない。人気サイトと平凡なサイトでは100倍、1000倍の差があるわけで、デザインはその差を埋める武器にはならないのです。その意味で、デザインなんかどうでもいい、というのもひとつの正論です。

けれども、逆にいえば、こだわりがないなら、一般によいとされるやり方を真似た方がいいでしょう。サイト内でデザインを統一するのは、お勧めのデザイン方針です。今後もぜひ継続されることを勧めます。

ところで、気になったのがスタイルシートの使い方。同じデザインにするのだから、スタイルシートも一緒でいいわけで、それなら、ひとつのスタイルシートを全部のページで使いまわすのがお勧めです。たぶんそのやり方をご存じないのだろうと思いましたので、解説ページをご紹介しておきます。お勉強は面倒くさいと思われるでしょうけれども、これだけは勉強した方が絶対に得だと断言できます。

リニューアルするときの手間を想像してください。現在のやり方では、全部の文書に手を入れなければなりません。しかし、ひとつのスタイルシートを全部のページで使いまわす方法なら、各文書から呼び出されるスタイルシートひとつを書き換えればよいのです。……なんて書いてみても、イメージがわかないかもしれません。そんなに難しい話ではないので、こちらの解説をさらっと読み流してみてください。

全部、読む必要はありません。CSSのつかいかたまで、順番に読み進めていただければと思います。

イラストについて

とくに上手だとは思いませんが、小説と同様、幸せ感にあふれているのが好印象。まったく個人的な意見になりますが、陰惨なイラストよりは、明るく楽しいイラストの方が、私は好きです。

線が力強く、ベタ塗り中心というスタイルにも賛否両論ありましょうが、少なくとも WWW では映えるように思います。私は支持したいですね。

あと、最近はあまり日記に絵が登場しませんが、初期は絵日記のような感じでしたよね。簡単に描いたものだからイラストコーナには収録しない、という考えなのかもしれませんけれども、せっかくだから日記用のイラストも、ときどきイラストコーナへ転載するといいんじゃないかと思いました。

日記ついでに余談(?)をひとつ

最初の日記に添えられたイラストが、とても印象に残っています。自分にもこんな時期があったかというと、なかったんですけれども、羨ましいというか何というか。Web サイトをはじめた喜びを、これほど素直に表現したイラストもそうそうなくて、これをみて私も勇気づけられたというか、柄にもなく感動したというか、とにかく「こういうの、いいなあ」と思いました。

というわけで

結局、大したことは何も書けませんでした。ずいぶんお待たせしたのに、申し訳ありません。

これからも楽しいサイト運営を続けてください。あと、お勉強はネットを禁止されない程度には頑張った方がいいと思います。いや、今、頑張っていないというつもりはないのですが、赤点の不安があるのはどうかなー、と。余計なお世話でごめんなさい。

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