BLOGAWARD のgooブログ推薦ブロガー第2位にも選出されている高円寺の女をまとめた本。
高円寺の女はgooブログのアクセスランキングでは150位前後に位置しており、1日350~600人程度の訪問者数といいますから、中堅テキストサイトですよね。通常であれば、本を出すなんて無理なのです。
ここで思い出すのが辛酸なめ子さん。なめ子さんもウェブサイトの方は特別に人気があったわけじゃないけど、作家としては大成功。芸能人ブログで眞鍋かをりさんが大人気ですが、テレビでの人気はそれほどじゃないのは、みなさんご存知の通り。タダ読みウェブコンテンツでの成功と他のジャンルでの成功とは必ずしもリンクしていない。ウェブサイトと書籍なんて、非常に近いようでいて、じつはそうでもない。
「高円寺の女」は非常に癖のある内容であり、さして売れないだろうと思います。けれども、ブログの1日平均読者数よりはたくさん売れるような気がします。というか、そうでなければ大赤字。紙面がカラーなので、1000部は刷らなきゃ、1000円で出せないと思う。さて編集者の眼力やいかに。
1日100人を集めるくらいならあなたにも不可能ではないという話は書いたけれども、たった100人だから「不可能ではない」のであって、1000人とか10000人となると、狙って成功できるのは稀でしょう? ということになるのだと思う。真鍋さんの大成功を誰が真似できるか。古田敦也さんは大成功、あれもよくわからない。その古田さんがリンクした木佐彩子さんのブログには相変わらず過疎地の雰囲気が漂う。内容は悪くないと思うのだけれど。
「アクセス数が多いからって面白いとは限らない」とは、昔からテキストサイト界隈で言われ続けてきたこと。「それはそうだろう、宇多田ひかるの CD だって9割の日本人は買わないのだし」が私の回答だったのだけれども、いいものはいい(はずだ)といった信仰は尽きない。
「このブログがすごい!2005」は「このミス」同様、人気サイトのランキングとは一線を画したランキングを発表されています。
宝島社のムック本だけに、人気ブログを紹介しつつも、ベストセラーなら何でもいいという路線は採用していないのでご注意ください。「このミス」が西村京太郎やパトリシア・コーンウェルを無視しているのと同様に、本書も多くの人気ブログを無視しています。自分の好きなブログが宮部みゆき(ランキング常連組)か内田康夫(無視され組)か判断できない方は、購入前に立ち読みされることを勧めます。
Amazon にこんな書評を寄せたのだけれども、私は自分自身がメジャー路線を好むこともあって、「売れた者勝ち」だと思っています。「なぜあんなブログが大人気なんだ! 許せない!」と怒っても無意味で、それは例えば「もっと、生きたい…」に感動している人に他の本を勧めてみればわかることです。つらいことだけれど、よいサイトが不人気だとすれば、それはたいてい宣伝の問題ではなくて、本質的な不人気なのです。
自分たちの好きなサイトを選んで、価値観を共有する仲間の間だけで顕彰して満足するしかない。「このミス」は西村京太郎の悪口を(基本的に)書きません。そんなことをしたって、このミスが推す作家の売上は伸びないのだから。私のテロ活動が成功したのは、ジャンルの特性ゆえです。
「あたしナツコ。高円寺の女」の刊行を私は祝福したい。ただ、一般人がこれを希望の星か何かと勘違いするのは不幸の素でしょう。