趣味Web 小説 2005-05-13

SNS のトレンドは「交流はオープン、情報はクローズ」

しかし、「mixi人口が1000万人になれば」って言うけどさ、そんなに猫も杓子もmixiに入ってしまえば、そこはもう「選ばれた者たちの別世界」ではありえないわけで。そして、実際にmixiをやっている人は、どんどんオープンになっていく人と、どんどんクローズになっていく人の両極に分かれていっているような印象もある。

それにしても、これだけ「個人情報保護」が叫ばれている御時勢なのに、一方では、「mixi」のような、自分の個人情報をオープンにして、日頃接点が無さそうな人に、ダイレクトに繋がれる(可能性があるだけで、実際には必ずしもそうではないのだが)ツールが流行しているというのは、不思議な気もしなくはない。

最近、mixi の中をあちこち見て回っているのだけれど、予想以上に本名を出していない人が多いです。WWW で公開しているプロフィールと全く同じ内容の人もいるくらい。多分、実際に会って話したことのない相手とかをどんどん呼び入れている人がたくさんいるのでしょう。

この記事において、私が「SNS は閉鎖的な世界だから参加者が信用できる」と書かなかったのは、こうした現状を踏まえてのこと。「人づてでないと参加できない」ルールは、参加者の質を直接保証するものではなく、「連帯責任のような形で、ひとつの抑止力になる」というのが私の考え。

mixi 日記の多くが「全体に公開」となっている現実は、SNS が「本来の使い方」をされていないことを意味しているのでしょう。コミュニティだって、大半は「全体に公開」されています。つまり、SNS にもかかわらず、意外な出会いとか不思議な人の縁を信じている、期待しているのです。そのような面に注目すれば、まさに mixi は WWW へどんどん近づきつつあるわけです。

では結局、mixi は WWW と同じになってしまうのか。それはありえないだろうと思うのですね。

日記にアクセスが集中したとき、相当知識の足りない会員であっても、自分で日記の公開レベルを変更できるのが mixi です。自力では無理でも、招待してくれた友人にでも頼めば、方法を教えてもらえるわけです。そして荒らしに襲われたときも、別にスーパーハカーじゃなくたって、犯人を特定して運営者へ通報できてしまう。さらに mixi でできることは限られているから、表面的な差異化は不可能となり、結果的に人間そのものがクローズアップされてくる。

事実上、実名情報を隠匿して参加できてしまう mixi は、SNS の枠からズれて、「もうひとつの WWW」になっていくでしょう。しかし決して「小さな WWW」にはならないはずです。

どんどんオープンになっていく人と、どんどんクローズになっていく人の両極に分かれていっているような印象は、私も共感します。ただ、それはfujiponさんが心配されているような方向性ではなく、別の形で解決されると予想します。

すなわち、「オンライン属性のみで参加し、オフライン情報を隠匿することでオープンになっていく人」と、「オフラインの人間関係をオンラインに持ち込む代わり、オンラインでは閉鎖的サークルを作っていく人」に分かれていくのではないか。そして今、急速に増えているのは前者であり、今後もその傾向は変わらないような気がします。すると最終的に mixi は、匿名が排除され、実名は不可視領域へ退避した、仮名ばかりの世界、つまり大勢が夢見てきた「安全ないんたーねっと」に近いものとなっていくのではないか。

補足

当初、人々が思い描いた SNS が GREE の失速により先行き不透明となった最大の理由は、日本のネットユーザの大半が、ネット人格と日常生活のキャラクターを別々に有していたことだと思う。本名でネットに参加しても、そもそも友人・知人間のやり取りは携帯電話のメールで済んでいるので、オフラインの人間関係を SNS へ持ち込む理由がない。だから、SNS で展開されるのは、結局のところネット者同士のコミュニケーション。それなら、むしろ仮名の方がよい。

本名なんか登録するのは、非常に危ない。なぜかって? だって、SNS でネット者同士のコミュニケーションをしている様子を、オフラインの知人に知られたくない(方が少なくない)でしょう。本名で登録していたら、偶然、同じ SNS に知人が入っていた場合、まずいことになりかねません。お互いに本名で登録しているなら秘密を握り合うこともできるけれど、向こうが仮名で登録していたら一方的に情報を抜かれるだけです。最悪。

というわけで、ネットでも実名でコミュニケーションを取り合っていたような人々以外、例えば「ネット? Yahoo!ニュースを見てるくらいだよ」というフリをして生きてるような人々が SNS の主役となったとき、GREE が伸び悩んだのは半ば必然だったように思います。

参考

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