はてなでは、誹謗中傷を禁じている。しかし実際には、はてなブックマークとはてなダイアリーを通じて中国の7色に輝く河川と食品のような扇動的かつ内容の怪しい記事が堂々と広められている。
もちろんこれは、はてなに特異な問題ではない。ゲーム脳という与太話がマスコミで喧伝され、短期間に日本人の常識となってしまったことは記憶に新しい。所詮、ウェブもマスコミ報道も、多数派にウケればたいていのことは許される世界なのだ。むしろ「ゲーム脳の恐怖」が絶版にでもなれば業界の陰謀といわれるのだろうし、はてなが根拠の怪しい中国の悪口を排除しても大騒ぎになるだろう。(実際、はてなが株式会社ウェディングに対する誹謗中傷を削除したら大問題となってしまった→関連記事)
誹謗中傷は禁止だと規約に書かれていても、法律で定められていても、実際にはなかなか機能しない。チェック能力の問題もあるが、何より多数派の意に反した行動をとるのは難しいということなのだ。
怒り爆発している方がたくさんいる。しかし彼らは社会の少数派だろう。そしてまた、彼らの内の何割が「中国の7色に輝く河川と食品」に不信感を覚えるだろうか。人は信じたいものを信じる。「意外」かどうかは問題ではない。報道機関だって商売なのだから、ウケる映像を作るだけの話だ。
信じたくないものは信じない、という日本人の傾向がよく現れている。衆議院や参議院の議事録よりマスコミ報道が好きなのだ。愛・蔵太さんの提言が、一部で話題になっただけで、いつまでたってもメジャーにならないのも無理はない。
必読の日記。最近話題の、姉歯建築士の構造計算書偽造により、震度5強で倒壊の恐れありと判明したマンションの住人が率直に思うところを語っている。なお、注意点がひとつ。著者周辺の住人は理性的なようだが、著者も断っている通り、他の棟や他の地区では様子が違う可能性がある。だいたい、バカはバカ同士で集まる。慎重に読んでほしい。
最近ではそごう問題や議員年金問題、古くは住専処理への過剰反応が招いた金融危機などと同様、近視眼的な衆愚の暴論に屈しない冷静さを保つ戦いを私は応援したい。公的融資を入れて建て替えを行い、長期間で負債を返していく提案が通らず、一括買取を強要する主張が支配的になると、マンションを販売したヒューザーは倒産してしまう。全員が損をする。ところが報道は買取希望者に同情的なのだ。被害者の損は公金で賄えばよいとの考えらしい。(関連記事)
マスコミは事実を報道するのではなく、報道したい事実を探し出して報道する。そのことに疑問を持つ被取材者は多いし、「賢い」視聴者・読者は、昔からおかしいと思ってきた。最近では一部のマジメなブログが、そうしたマスコミの欺瞞を攻撃している。しかし、繰り返しになるが、彼らは少数派だ。ヒューザーの社長の言い分に(僅かな許容範囲を超えて)理解など示したら、苦情が殺到する。理性的ではマスコミは務まらない。報道の姿勢は、消費者のレベルを示しているに過ぎない。
情報の非対称性という問題は無視できないが、マスコミさえ改心すれば世の中よくなる、と考えるのは非現実的だ。日刊ゲンダイに配属された記者は、当人の意思と関係なく反政権路線で記事を書くしかない。政治家と官僚と金持ちは全員ド悪党で愚劣だと言い募る他ない。そういう記事を読みたい読者がいるから、そういう記事が書かれる。仮にゲンダイが路線変更すれば、他の会社がそのジャンルに進出するだけだ。
悲観論は活力を奪うが、理想主義に燃えるばかりでは、マスコミ報道とは別の意味で現実無視の陥穽に落ちる。この戦いには、永久闘争の覚悟が要る。
1950年には池田勇人蔵相(当時)が「貧乏人は麦を食え」と言ったと言われていたわけですが、(中略)本当は何と言っていたのか知りたい人は、1950年12月7日の参院予算委員会を、「国会会議録検索システム」を使って見るといいです
調べた結果は以下の通り。日本社会党の木村禧八郎参院議員の質問に、池田勇人大蔵大臣が答弁している箇所(の後半部)を抜粋しました。
たいへん読みにくいので、まず簡単に状況を説明します。
1945年に戦争が終わり、日銀引受の公債による復興が図られた結果、日本経済は劇的な物価高騰に見舞われます。1948年、GHQ は経済安定9原則を指令、1949年のドッジ=ライン施行によって物価は安定したものの、徴税強化と通貨供給量の減少により安定恐慌に陥ります。そして1950年、朝鮮戦争が勃発。再びインフレが加速しつつある中、景気好転の兆しが現れます。よって政府財政の大幅な改善が見込まれ、減税が計画されます。
一方、インフレの暴風から庶民の最低限の生活を守るため、1950年当時、政府は米価の統制を行っていました。その結果、日本米の価格は諸外国と比較して異常に安価となっていたのです。一方、もとより安価な小麦・大麦の価格は、概ね諸外国と同等でした。こうした価格統制の結果、各自の収入に関係なく国民の米・麦消費比率が一定となっていました。米価統制は農民に大きな負担となっており、また生産者価格のみ引き上げて消費者価格を据え置けば政府の負担が大きい。
そこで、経済が好転してきた機会を捉え、政府は減税の実施とともに米価の段階的引き上げを画策します。これに対し、日本社会党は米価引き上げに異議を唱えていくことになります。
- 木村禧八郎君
- どうも大蔵大臣は朝鮮動乱の影響について、勤労者の生活が楽になるというようなお考え方をしておるようですが、そこが根本的に我我の考えと違うのでして、只今イギリス、西ヨーロッパ等の国における再軍備費の増加ということをお話になりましたが、西ヨーロツパとかイギリスにおいて問題になつておるのは、再軍備と国民生活の調整をどうするか。これが大きな問題になつておるわけです。そこでどうしても再軍備をやらなければならないのなら、国民生活を余り圧迫しては困るから、やるのならアメリカからたくさん金を貸してくれということを交渉しておるわけです。問題は国民生活をどう維持して行くか。この再軍備の段階において、西ヨーロッパなどにおいてはそれが非常な悩みの種になつておる。折角消費水準が上つて来ておる、生産が復興して来る。ところが再軍備が起つて来て国民生活が低下するようになつた。これをどうするか、そのためには、再軍備のために国民生活が低下しない形においてやるのには、アメリカに援助をたくさん頼まなければならない、こういうことになつて来ておると思います。日本におきましても、世界的な再軍備の段階に入つて、日本経済がその一環として利用されるようになつて来ておる段階においては、国民生活をどう防衛するかというのが大きな問題である。大蔵大臣が言われるように国民生活が楽になつて来るという考えでやつて行かれたのでは、考え方が非常に甘いと思う。そこが根本的に考え方が違うのでありまして、大蔵大臣は何か朝鮮動乱が起つて滯貨が一掃された、特需が起つた、輸出が殖えた。それで何か経済が順調に行つておると、こういうような甘い考えだと思うのです。これは国民生活にどういう影響を及ぼしておるか、又今後どういう影響を及ぼして行くかが大きな問題であつて、この観点から、我々はもう戦争をしないのでありますから、例えば生産がどんどん殖えても、その生産力が軍備その他に使われるならば、軍需品生産に使われるならば、又軍需品の消費に使われるならば、幾ら生産が殖えても我々の生活水準は高くならないのです。我々は今後民主化された日本においては、又平和化された日本においては、国民の消費水準をどうして高めるかということが経済政策の一番大きな目標でなければならない。そういう方向にやや向いて来たわけです。それで大蔵大臣のおつしやる通り、動乱が起る前までは確かに消費水準は上つて来ております。ところが動乱が起つて来てから下つて来ているということは重大な問題で、これは單に期間の問題ではないと思う。私はこの問題についてまだ大蔵大臣に具体的にお伺いしたいことがあるのですが、農林大臣がいらつしやいますから、その関連においての質問に移りますが、大蔵大臣にお伺いしたいのは五千五百二十九円という米価、これは国際的な米価に鞘寄せする、そういうところからそういう生産者米価をお考えになつたのかどうか。
- 国務大臣(池田勇人君)
- 木村さん、昨年に比べて今年はよくなつたということはお認めになりましよう。而して朝鮮動乱後ちよつと今物価が上つて、そうして政府の減税その他の施策が来年の一月から行われる、この八、九月から十二月までのピークというものは私は認めます。併し減税をし、給與を上げた場合において一月からどうなるかというのが今の問題である。だから私は来年からは減税もするし、公務員につきましては給與の引上げもやろう、而して民間の生産は徐々に上つて行く。成るほど八、九月のちよつとぐらいのピークは私は認めます。併し全体として昨年よりも今年はよくなつている。だからこの施策をやつて行けばよくなる。このピークの八、九月だけをとつての議論は私は取らない、こう言つておるのであります。然るに五千五百二十九円の生産者米価は国際価格に鞘寄せしたかという、こういう御質問でありますが、私は国際価格に徐々に鞘寄せすると、こう言つておるのであります。国際価格は、朝鮮米は百四十二ドルでございます。日本の港につく価格が石当り百四十二ドルでございますから、七千六百円ばかりになります。而してタイ米とか或いはビルマ米は予算では百四十ドルに見ておりますが、最近は百二十九ドル、或いは百三十二ドルで来ておりますから、大体は七千円程度であるのであります。而して今回の本年産米の分は五千五百二十九円で、国際価格にまだ鞘寄せというところまで行つておりません。我々の計画では、来年は一九五パリテイに或る程度の加算をいたしまして、六千百円余りを見込んでおるのであります。これは一度に国際価格に鞘寄せするということは非常に危險であり、労賃、生計費その他に及ぼす影響……、併し何と申しましても日本の経済は世界の経済に継がつて来つつある。世界の経済市場に乗り出しておるのでありますから、好むと好まざるとにかかわらずこれは国際市場に鞘寄せせらるべき運命を持つておる。これを如何なる程度で、如何なる時期においてやるかということが非常な経済問題、政治問題であるのであります。私は日本の経済の安定は、主食が国際価格に鞘寄せせられ、それに応じて一般の労賃が定められるときを以て終止符を打つべきだと、こう考えておるのでありますが、まだ只今のところ国際価格に米のほうが鞘寄せされておりません。麦のほうはどうなるかと申しますと、麦は今年三千七百五十円であります。大体六十八、九ドルになることになります。今小麦協定は七十一ドルが最低のあれでございますので、麦の価格は大体国際価格に鞘寄せされて来たと申し得られましよう、小麦協定に入つた場合の……。そこで問題は米と麦との比価の問題になつて来る。これは麦は御承知のように配給いたしましても、小麦を田舎へ配給しますと配給辞退が起る。で日本人には小麦よりも大麦のほうが割に買われやすい。而して又麦と米との価格は、米に対して小麦が九十五では日本人には合いません。そこで私は米の値を上げることによつて国際価格に徐々に鞘寄せをして、そうして米と麦との差を多くすることが日本人の食生活に合う。こういう考え方で麦の値は消費者価格を据え置きましてそうして米の値段を上げて行こう、こういうことに考えて進んでおるのであります。この点は農林大臣、安本長官も同意見だと私は思うのであります。
- 木村禧八郎君
- そうしますと、生産者米価を五千五百二十九円に上げたのは、米価を国際価格に鞘寄せしたというわけではないのでありますけれども、そういう意図からせられたということを承わつたのですが、併しこれについては相当問題があるわけでして、公聴会におきましても、日経連の堀越氏から、米価引上げについては反対であるという意見がある。その論拠として日本の米の輸入の量は国全体で生産せられる米の量、或いは消費者の米の量に対して極めて僅かである。そういうふうな点、そうして僅かである輸入食糧の引上げによつてもつと大きな消費量のほうに影響を及ぼさせ、そうして国民生活に大きな影響を與えることには反対だ。堀越氏の意見はそれが賃金の引上げに影響するから……、こういう御意見だと思うのですが、私は生産者価格についてはあえて反対するものではないですけれども、それによる消費者価格の引上げ、これが国民生活に及ぼす影響を大蔵大臣はどう考えるか。これは大蔵大臣がインフレを抑制しようという考えと、矛盾するものだと思う。政府はインベントリー・フアイナンスで一般会計から繰入れた。そういうような形で財政経理面からインフレを抑えることに努力しつつありながら一方米価を引上げた場合、税金を納めていない人は何によつてカバーするですか。米価の引上げの影響、この点どうですか。
- 国務大臣(池田勇人君)
- お考えになつておる点が三つあると思います。米の生産者価格を引上げろ、消費者価格は上げるな。これは米価審議会の答申もそうであつたかと漏れ承わつておりますが、これは無理なことでございます。それだけ政府が税金を取つて補給金を出さなければならん、こういうことになるのであります。その政策は私はとりたくない。これが一点。第二点は、大蔵大臣は米の値を上げて行こう……、そうすれば賃金も上るじやないか、これはインフレ政策ではないか、こう言われる。それは一応インフレ経済を本然の姿に持つて行くことです。ですからそれは一遍にはできません。国際価格に鞘寄せするというので、生産者価格を朝鮮米の七千六百円に持つて行く、そうして賃金をそれに応じて一遍に上げてしまうということはこれはいけませんから、私は徐々にインフレを抑えながら、本然の姿に持つて行こうとしておるのであります。だから国際価格に徐々に鞘寄せして行く、こういうことで御了承願いたいと思います。而して第三の税金を納めない人はどうするかという問題、併し税金を納めない人がどれだけありますか。生活保護法その他で政府の給與を受けておる人はこれは別でございましよう。併し我々の見るところを以てすれば、殆んど全部の勤労階級は税金を納めております。そうでしよう。基礎控除二万五千円では月給取りは殆んど納める。こういう状態になつておるのであります。そこでこれは税金を納めない人は苦しいじやないか、こういう人は例外的にはあると思いますが、全体の施策としては私は税金をまけることだ、而して又間接税その他についてまけることが一番いい国の政策だと考えるのであります。
- 〔委員長退席、理事藤野繁雄君委員長席に着く〕
- 理事(藤野繁雄君)
- 木村さんに御相談しますが、衆議院から大蔵大臣は呼ばれておるそうですから、一つできるだけ簡單に願います。
- 木村禧八郎君
- どうも大蔵大臣の御答弁は非常に部分的な理論を以て一般を律するようなんです。例えば税金を納めない人なんかないじやないか。成るほど消費税は納めます。併しだんだん基礎控除を上げたり何かするのは、やはり低額所得者を擁護しようというのでだんだん失格者が多くなつて来るわけであります。その点の御答弁は余り極端だと思うのであります。そういう点は議論になりますからやめます。インフレを防止しつつ日本経済を再建すると言つておりますが、インフレを防止しつつ日本経済を再建するという根本の対策は、やはり実質賃金を高めるということが根本の対策と思うのでありますが、それにはやはり名目賃金を上げるよりも食糧の値段を安くするということ、或いは衣料の配給を豊冨にし、それを安くする。米の配給の量を多くし、それを安くするということ、こういうことが最も効果的だと思うのであります。米価の引上げが諸物価に影響を及ぼすということは大蔵大臣も御承知の通りでありまして、従つて消費者米価を軽々に上げるということは、これはやはり負担の公平から言つても問題でありまして、私はまあ税金を取つてこれは消費者価格を下げる、而もその税金の取り方は最近特需とか何とかで非常にあぶく的に儲けた方面から取る。あとで御質問いたしたいのでありますが、法人税なんかの取り方は実は少な過ぎるのであります。その見積りなんかも……、その方面で非常にたくさん税金が取れるのであります。そういうところから取つて消費者価格を下げるのです。それこそが本当の公平な経済政策のやり方なんですが、その点は大蔵大臣は、何か米価を国際的水準にまで持つて行くと経済が安定するのだ。そういうような前からのお話ですが、大蔵大臣は何かそういう既成の観念に捉われて、何でも米価を国際的の水準に持つて行けばそれが経済安定したメルクマールになる、こうしたどうも既成的な考え方から無理やりに国際水準に米価を持つて行こうとして、そうして日本経済全体の諸影響を考慮して、又国民生活に及ぼす影響、その他を考えて米価というものを考えていないと思うのであります。少し無理をしておるのである。そうして大蔵大臣の考えでは早く米価を国際水準に持つて行つて統制を外す、デコントロールをやるのだ、そういうことに捉われて、さつき経済を自然本然の姿に持つて行くと言いましたが、今の日本の姿は自然本然の姿で動いておりますか、動き得ると思いますか。今後輸入についても、昨日安本長官は、これは民間だけでは困難であるし、政府もよほど考えなければならないと……、やはり統制というものを加味しなければやつて行けない段階であります。従いましてそういうような自然本然の姿にするために、米価を特にわざわざ国際的水準にまで持つて行くと、こういうのはおかしいと思います。そのほかに理由があるのじやないですか。大蔵大臣としては米の値段を特に上げて行くということについては、米食の習慣その他いろいろ考えて、大蔵大臣は何かそういう国際的水準まで米価を高くして行く。それにはたださつきお話になつたようなことでなくて他にも重要な理由があるのじやないですか。米価を特に上げる、併し麦とか何とかは余り上げない。こういう食糧の価格体系について大蔵大臣には、何かほかに重要な理由があるのではなかろうか。この点をお伺いしたいと思います。
- 国務大臣(池田勇人君)
- 日本の経済を国際的に見まして立派なものにしたいというのが私の念願であるのであります。別に他意はございません。米と麦との価格の問題につきましても、日本古来の習慣に合つたようなやり方をして行きたい。お百姓さんに小麦を食え、而も米の一〇〇に対して九五の小麦を食えと言つてもお百姓さんはなかなか食わぬ。都会の人は別であります。そういうことを考えて日本の経済を本然の姿に持つて行くには、米と麦の差も大きくしなければならないというのでやつているのであります。別に他意はございません。そうして日本の経済はどうしても国際的に成り立つて行かないという考えは誤りであります。どうしても国際的に見て正常な姿に持つて行かなければ長い競争はできない。これは他面から申しますと、農民に対しても非常に低い米価でやるということはよくない。各国の農業政策を御覧になりましても、アメリカは二十数億の農産物の補給金を生産者に対して出している。イギリスなんかも馬鈴薯を非常に高価に政府が買入れている。日本はその逆で農民から非常に安い米価で買つて補給金を出している。世界の農業政策からいつて逆なんです。この面からいつても米の値段を無理やりに抑えて行くのはよくない。麦は大体国際価格になつている。米を何としても値段を上げて、それが日本経済再建のマイナスにならないように、徐々に上げて行きたいというのが私の念願であります。ほかに他意はございません。私は衆議院の大蔵委員会に約束しておりますから、ちよつと……、又来ますから……。
- 木村禧八郎君
- それじや一言だけ……、只今日本の古来の考え方に従つてやるのだという、その点はどういう意味なんですか。
- 国務大臣(池田勇人君)
- 御承知の通りに戰争前は、米一〇〇に対しまして麦は六四%ぐらいの。パーセンテージであります。それが今は米一〇〇に対して小麦は九五、大麦は八五ということになつております。そうして日本の国民全体の、上から下と言つては何でございますが、大所得者も小所得者も同じような米麦の比率でやつております。これは完全な統制であります。私は所得に応じて、所得の少い人は麦を多く食う、所得の多い人は米を食うというような、経済の原則に副つたほうへ持つて行きたいというのが、私の念願であります。
この質疑は木村議員の勝ちというべきでしょう。結局のところ池田大臣は、米価上昇は減税で相殺されるという主張を一部において崩し、低所得層にとって米価引き上げが米食抑制と麦食推進の効果を持つこと、政府の狙いの一つがその点にあることを認めたのでした。
「貧乏人は麦を食え」という報道は乱暴でしたが、本筋において全くの誤りとはいえません。本来、米は高価なものであり、まだ戦前の経済規模を回復していなかった1950年当時の日本において、誰もがおなかいっぱい食べられるようなものではないはずであった、しかし庶民はその現実を認めず、政府が何とかするべきだと考えていた、そういった状況が、池田蔵相に対する苛烈な攻撃となって現れたのでした。