昨年末にも紹介しましたが、「構造改革」は多数派世論に支持され続けている、という本書の世論調査分析には相当な説得力があります。半ば常識として流布している政論とは異なる意見なので、違和感のある人が多いかもしれない。しかし、本書刊行後の各種世論調査は、本書の見立ての正しさを傍証していると思う。
民主党は現在、国民新党、社民党と連立を組んでいます。約4ヶ月の推移を見るに、鳩山政権の支持率低下を招いているのは、主に国民新党。重要政策のキーマンに元官僚を起用し、景気対策のため大規模な財政出動を求める亀井代表(郵政民営化・金融担当大臣)は、多数派世論と対立する存在。民主党は2010年の参院選に勝ちたい。亀井さんのゴリ押しをアピールして、連立解消を期待する票を集める作戦かもしれない。
しかし予算拡大の最終決断を繰り返しているのは鳩山総理なのだから、連立政権が続く限り、民主党のイメージ低下は免れません。ここに自民党復活の余地がありそうです。つまりは自民党新理念・綱領(2005-11-22)に示された考え方・基本政策へ立ち返り、その徹底を図るのが支持率回復への道です。ところが、谷垣総裁は新しい理念・綱領を制定するという。
……事業仕分けに反対したり、公共事業の意義を強調したり、その発言内容の妥当性はともかく、谷垣自民党は政権奪回を本気で目指しているのかどうか。民主党への批判票を集めれば勝てる、というのは万年野党の発想でしょう。日本では多数派世論の求める政策に多くの選択肢はないので、国民の期待する政策の実現可能性が高いという印象を勝ち得た政党が、選挙に勝つ。
まだ政権を失ったばかりだし、麻生内閣の財政出動の後だからいいにくいことだろうけれども、「自民党ならもっと厳しく予算を縮減できた」「官僚出身者の跋扈は許せない」「国の公共事業は減らす(地方に税源を委譲し、地方の責任で立案・実施する公共事業を増やす)」などと主張した方がマシなんじゃないか。
民主党は「マニフェスト選挙」で大勝したはずなのに、多くの注目を浴びた政策には人気がない。新聞の政治面ではミステリー扱いされているけれども、そもそも前提が間違っているわけです。