趣味Web 小説 2010-10-02

memo:経済雑感 #2869

島国大和さんから、以前の記事(ゲーム産業の保護はダメな政策ここがその「楽園」です。たぶん。幼稚産業の保護は中国でも失敗している)への返信をいただきました。その内容を受けてド畜生掲示板に投稿した内容を転載します。追記は島国さんの返信について、追記2は★さんの返信についての記述です。

web産業従事者の雇用を、web産業の保護によって確保するのは間違っている、という話です。デフレギャップを縮小する財政・金融政策によって全体の失業率を低下させることだけが重要なのであって、web産業そのものは国内から消えてもいい。小麦や大豆の生産農家、繊維産業の大半は、日本国内から消えました。それは正しい選択だったと私は思います。

これに対して中国は、特定の産業を保護することに熱心です。中国は労働人口の増加と技術的なキャッチアップで高度経済成長を実現しているため、いまは問題が隠れています。でもじつは、産業保護をやらなければ、中国人はもっと幸福になれたはずだ、と経済学者は分析しているわけです。

【追記】

「世界全体で成長する産業」と「自国で成長する産業」は違います。小麦や生糸だって、世界的には市場が拡大しています。日本は競争に敗れましたが、オーストラリアやニュージーランドは1次産業を柱としたまま先進国になりました。「web開発」のような「新しい」産業を伸ばすことではなく、「自国でやって儲かること」をやるのが大切なんです。日本では、繊維、造船、製鉄などなど、政府が支援してもしなくても、得意になった産業は発展し、時が移って苦手になれば必死の支援も虚しく滅びました。労働者は常に苦手産業から得意産業へ移動し続け、そうして日本の経済成長は実現されてきたんです。だから失業率の抑制と自由な市場競争(+国際分業体制)の発展に力を注ぐことを「国家の戦略」とすべきなのであって、特定の産業を保護するのは間違いなんです。市場任せより政府の肩入れの方が打率は低いというのが過去の実績です。これは平均するとパッシブな投資信託がアクティブな投資信託より成績がいい(手数料を考慮すると明らかにパッシブ型が有利)という事実にも対応する話です。政府がゲーム産業を保護すれば日本で『GTA』や『CoD』が開発され得たのでしょうか。私は「No」だと思います。得意な産業は支援があろうとなかろうと勝手に伸びるし、苦手な産業は投入された税金を回収できない。多くの経済学者の実証研究の結論は、「web開発」や「ゲーム開発」にも当てはまると考えるのが自然です。

【追記2】

説得は難しそうなので、これで一区切りにさせてください。もちろん反論は拝読します。ただ、私の反論は所詮、教科書の引き写しですし、基本的な考え方は既に繰り返し書きましたので、これ以上は堂々巡りかな、と。

  • 政府の支援にも成功例、失敗例があります。平均すると割が悪い、ということです。
  • アダム・スミス以来の経済学は、市場の動きを予測することは「できない」ことを示し、それゆえ政府は「先を見通した政策」ではなく、市場が十全に機能する環境を作ること(だけ)に注力すべし、と説きました。強制的に徴税できる政府より、自己責任の民間だけが「投資」をする方が打率が高い。公共財への投資、外部不経済への対処などは政府の仕事ですが、それは産業保護とは異なる話です。
  • 豪州の一次産業に政府の保護は入っていますが、日本で同等の保護をしても勝ち目がないことは明らかです。また、政府の保護にも「生存者バイアス」があり、継続されている保護事例だけみても全体の傾向はわかりません。

島国さんのコメントを引用。

web産業従事者の雇用を、web産業の保護によって確保するのは間違っている

雇用を守るのが目的ではないですね。
「今後まだまだ成長が期待される産業を国外へも競争力を持つレベルで維持した」
こちら。
これが出来なければ今後数十年の食い扶持を放棄したことになる。

産業保護をやらなければ、中国人はもっと幸福になれたはずだ

その分析があってるのか間違ってるのかはわかりませんが、もっと不幸になるシナリオもいくらでもあります。

★さんのコメントも引用。

政府がゲーム産業を保護すれば日本で『GTA』や『CoD』が開発され得たのでしょうか。

例えば、政府が保護したから出てきたものとして、AION、TERA、完美世界などがあります。
外貨獲得手段としてネットゲームは非常に優秀な成績を収めていますね。

経済学者を例に出した所で、未だかつて経済学者が市場動向を当てた事はありませんから、自説の優位にはつながりません。
比較優位のデヴィッド・リカードなんて何年前に死んだことやら。
すでに、その考えは古いものとされています。

政府の保護による成功例と、その偏りによる市場の荒れ方を無視して、保護は良くない。というのは、片手落ちでしょう。

失業率の抑制と自由な市場競争(+国際分業体制)の発展に力を注ぐことを「国家の戦略」とすべきなのであって、特定の産業を保護するのは間違いなんです。

そんな事が出来るというのは、ある種の夢想です。
現実のプレイヤーを見た上で、日本がどういう手段でそれを実現出来るというのでしょう。

特定の産業保護が行けないというのも幻想です。

オーストラリアやニュージーランドは1次産業を柱としたまま先進国に

オーストラリア、ニュージーランドが一次産業を保護して無いとでも思っていますか?

blog主の発言も随分大雑把で荒いものですが、比較優位はさらに理想論でしかなく見えます。

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