趣味Web 小説 2011-09-04

「自分の頭で考える」問題

1.

こうした記事を読んで、「もっと勉強しないと」と考える人がいる。

私も、つまらない情報に振り回されないためのコツを身につける努力はする価値があると思う。でも、素人が片手間に勉強してNATROMさんのような考察ができるようになるというのは、現実的な話ではない。「勉強」したつもりで、断片的な知識を場当たり的に吸収するだけに終ることは目に見えている。

2.

素人が「自分でも何かがわかる」という勘違いをしているために余計な問題が増える、という事例がたくさんある。「**は犯人に決まっている」と決めつけて、裁判の結果を待たずに社会的制裁をする、とかね。

「自分の頭で考える」には問題がある。人には、判断を他人に任せて痛い目に遭うと、自分で考えて理解し(たつもりになっ)てやったことで失敗した場合より、損害を何倍も大きく見積もる傾向があるらしい。自然な感情に従うと、このバイアスに振り回される。だから、意識して対処する必要がある。

ところが世の中には、「判断を他人任せにすると失敗したときのダメージが大きいから自分で考えるんだ」という人がたくさんいる。バイアスを変更不可能なものとみなして、バイアスを与件としてライフハックを考えているわけだ。

社会について考えるなら、「人間って、そういうものだよね」と考えざるを得ないが、自分の人生くらい自分で制御する気概を持ちたい。人生が有限である以上、世の中には「自分の頭で考えない方がいい」ことがたくさんある。主観の歪みに振り回されて不幸になっては、つまらない。私は、そう考えている。

3.

私が実践しているのは、例えば……病気になって医者にかかったら、その指示とか、薬の用法などはきちんと守ること。きちんという通りにしてもダメだったら、他の医者にかかる。患者は、客観的に症状が改善されているかどうかだけを見つめる。自分の頭で考えて治療法をアレンジしない。

「医者の指示に忠実に従う」は、「自分の頭で考えない」の効果がすぐに実感できることのひとつ。それでも、何やかや自分で理屈をつけて、指示通りにしていない人がたくさんいる。私の中でも、この誘惑はとても強く、ときどき屈服する。その結果はデコボコだけど、平均すれば分が悪いよ。

この、「平均すれば分が悪い」という事実を直視することが大切なんだ。これがなかったら、いつまで経っても「経験的には、自分の頭で考えた方がいい」という結論は揺るがない。人は自分の頭で考えた結果について、成功を大きく、失敗を小さく認識するのだから、よほど不運でなければ、当然そうなるんだよ。

個別の事例を見れば、「医者のいう通りにしなかったけど問題なかった」ということはある。医者の指示は必ずしもベストじゃないから、自分で考えて、もっといい方法に到達することだってあるのかもね。でも、10回、20回と事例を積み重ねていけば、医者の方が分がよくなってくる。

何せ、自分の頭の程度は変わらないが、担当医は交代できる。これまで医者との縁に恵まれなかった人も、先の人生が長ければ、いずれ「医者の指示に従う」方が成績がよくなってくる。

お疑いの向きも、まずは実験として、やってみてほしい。3ヶ月くらいやってみて、自分の頭で考えて医者の指示を適当に崩していた頃と比較してどうか、写真とか、検査の数値とか、なるべく客観的に検討できる部分で比較してみてほしい。

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