以前の記事に付け加えたい内容はとくにないのだけれど、以前とは少しスタイルを変えて書いてみる。
なぜベーシック・インカムは1人当たり月額7万円でよいのか。私が何冊かの本を読んだ限りでは、国民の合意が得られる可能性がある最大の税率からの逆算で7万円という数字が出てきているので、全ては後付けかもしれない。が、そうだとしても、「高々月額7万円のBIを、なぜ支持できるのか」という問いは成り立つ。
若年層では少し話が違ってくる。1.では「子どもが2人以上いれば……」という親の皮算用を書いたが、現実に起きることは、子どもの自立の促進だろう。中卒の若者が3~4人集まれば遊び暮らせるので、義務教育を終えるや「これ幸い」と家を飛び出す子どもがどんどん増えるのではないか。
補習塾にいた頃、親には叱られてばかりの中学生を覆っていたのは、「家を出ても生きていけない」という絶望感だった。月額7万円のBIは、彼らを解放するには十分な金額である。とはいえ、彼らもいずれ7万円では不足を感じるようになり、労働を始めることになると思う。
現在は高学歴の人材が余っているから、企業は学歴で足切りする。だが学歴で選抜したら人手不足になる状況なら、学歴要件は緩和されるはずだ。進学率が大幅に低下すれば、低学歴の人にも就職の門戸が開かれる。社員の基礎教育をタダで外注したいという企業側の身勝手に政府が耳を傾けなければ、我が子にだけはいい思いをさせたいと願う親たちが生み出した無意味な進学競争は、終息に向かうと私は考えている。
うるさい親のもとを離れてBIで自活してみて、それでも進学したいと思う人だけが進学するようになれば、高校や大学というのも、もう少しまともな場所になりそうだ。
あるいは、「中学卒業と同時に子どもに出て行かれないための親学」みたいなものが流行るかもしれない。子どものご機嫌をとるか、赤の他人と一緒に暮らすか、働くか、死ぬか。親の選択肢は、けっこう増える。「上の子が出て行ってしまい経済的に困窮した親子同士が一緒に暮らす家」なんかも、各地にできるかもね。