私の勤務先(民間の製造業です)では、提出書類と面接「だけ」で合否を判断している。本当は違うかもしれないが、社内教育では、そのように習った。とくに「ネットで名前を検索する」ことは、禁止事項として明確に示された。
ある人物を採用するかどうかは、「仕事に必要な能力」だけを提出書類と面接によって収拾し、公平に判断しなければならない。「家族の犯罪歴が判明した」から落とすとか、そういうことがあってはいけない。「親族が取引先の関係者だとわかった」ので採用する、ということもあってはならない。
面接では限られた時間で能力を見極めなければならないので、質問事項はあらかじめホワイトリスト方式で限定されている。ブラックリスト方式ではない。社内の第三者にも「採用面接が適切に実施されているか」をチェックできるようにするためには、質問事項を揃える必要がある。
なぜAさんを合格させ、Bさんを不合格としたのか。質問と回答の要旨をまとめた面接記録によって、相互比較が可能になっている。非正規のネット検索で、そうした公正さを担保できるわけがない。Aさんにはデータがあり、Bさんにはないならば、比較は不可能だ。
性同一性障害については、「職務に影響する事柄ではない」として、事前には質問していない。内定を出してから事実の申し出を受け、粛々と受入態勢を構築した。
知る必要があることは、「提出書類と面接」によってのみ、知るようにすべきである。非正規の方法で情報収集して合否を出すような非文明的なことを、私達はすべきではないし、社会的にも許すべきではない。「調べたくなるのが人情」だから、私の勤務先では明確に禁止し、社内教育を行って周知徹底した。どこの会社でも、同様にすべきではないか。
非正規の方法で収集した情報の扱いは、非正規であるがゆえに、きちんと体系立てられていないだろう。個々の担当者の恣意的な判断が、各段階で行われてしまうだろう。
私の勤務先は性同一性障害の内定者に対して公正な対応を貫くことができた(と私は思っている)が、もし採用担当者が事前に一人でその事実を知ったなら、受入コストを忖度して個人の裁量の範囲内でマイナス評点を付けてしまった可能性もある。その採用担当者が「障害がネック」と書けばさすがに上司が「なにバカなこといってるんだ?」と気付くが、「コミュニケーション能力が低い」などと偽装されればチェックが働かない。
面接には必ず複数の部署から合計3人以上が出席するが、それは個人の誤った判断を防ぐためである。非正規のネット調査で、そうした体制を構築できるとは思えない。
おおもとの内定ゼロでフリーランスになる件については、「愚かな判断」だと私は思う。なるほど、fut573さんの勤務先のような企業では、「採用されない水準」の方なのだろう。でも、どこにも拾われないような方には見えない。他人にもきちんと内容の伝わる文章を書けるのは、高度な能力のひとつだ。
ただ、目線を下げて就職活動をする場合、そこで視界に入ってくる企業の少なからずは、フリーランスに挑戦して失敗してからでも入ることができる。フリーランスは難しい、むしろ企業での経験や人脈なしには成功しない、と言われても、今は心に響かないのだろう。リスクは承知の上なら、やるだけやって失敗して、それからでもいい。運よく成功したら、とっても素敵だ。
とはいえ、たいていの「就活の苦労」はニセモノだと思う。「こんなに頑張ってもダメだった」という認識に、疑いを持ってもいいのではないか。私も就活に苦労した「つもり」の学生だった。就活を諦めるのは、「正しい努力」をしてからでもいいのではないか……と未練がましく思ったりもする。