趣味Web 小説 2004-08-26

バカな閲覧者は勝手に不幸になればいい

1.リンクの target 指定問題

他サイトへのリンクを新しいタブで開きたいとは考えない人が現にいるにもかかわらず、target="_blank" とすると、閲覧者は選択の余地なく新しいウィンドウを開かされてしまう。これが target="_blank" が嫌われる唯一無二の理由です。

そもそも新しいウィンドウという発想のないブラウザを利用している場合、target="_blank" は無視されます。テキストブラウザの大半とか、携帯電話に搭載されているブラウザとか。W3C が target 属性を排除する方向で HTML の改訂を進めてきたのは、target 属性に汎用性がないからです。リンク先を新しいウィンドウで開くとか、新しいタブで開くといった機能は特定環境でしか意味がないのだから、HTML 文書ではなくブラウザが対処すべき課題なのです。

現に、Firefox の拡張プラグインには、リンク元文書と別ドメインの URI へのリンクを自動で新タブで開く機能を有するものがあります。他サイトへのリンクは新タブで開きたいと考える閲覧者にとって、これは最もスマートな解決策です。この拡張プラグインさえあれば、製作者に何も期待する必要がありません。

つまり、本来、他サイトへのリンクは新タブで開くとか開かないといったことは、ブラウザの設定をいじって閲覧者自身が決めればいいことです。HTML 文書の製作者が、他サイトへのリンクは絶対に新タブで開きなさいと指定するべきではない。少なくともそれは、全員が幸せになれる方法ではないわけです。

しかしながら現状、IE にそうした機能は用意されていないし、多くの IE コンポーネントのタブブラウザにもそうした機能は用意されていません。ただし、右のダブルクリックを「新タブで開く」に割り当てられるとか、「新タブで開く」マウスジェスチャーを用意している、といったタブブラウザは無数にあります。でも大半の閲覧者が、それを面倒くさがります。にもかかわらず、他サイトへのリンクは新タブ(または新窓)で開きたいと考えているのです。

2.ガールズサイトのデザイン事情

仮に、(大半の)読者に努力を強いないことを是とするならば、文字サイズを小さくすることにも理があります。

当サイトは、運営開始後しばらくはアドバイスしかしていませんでした。他人にアドバイスするばかりで、自分のところはどう見られているんだろう? という疑問はいつもあって、2002年の上期には、結構たくさんのサイトに意見を伺いました。当時、サイト批評サイトの大半はガールズサイトで、その管理人は10代から20代の女性が多かったのです。

いただいた評価の中で目立った批判的内容を並べると以下の通りです。

  1. 文字が多い(幅を固定し1行の文字数を制限すべき/ページが縦に長い/etc.)
  2. 文字サイズが大きい
  3. フレームを使ってはどうか(全頁に上位のナビゲーションを添えるべき/etc.)

幅固定の是非とリッチなナビゲーションの問題はさておき、「文字サイズが大きい」という感想に注目していただきたいのです。

女子中高生のサイトには、文字の小さなサイトが多くあります。それはなぜでしょうか?

じつは私も小さな文字が好きです。12px がベストで、10px が許容できる最小値。IE で文字サイズ「最小」を選択しますと、サイズ無指定の文字がちょうど 12px となります。私は常に文字サイズ「最小」でウェブを閲覧しているので、小さな文字サイズを指定されると小さく表示され過ぎるのが不満です。小さな文字が好きな人は IEの表示設定で「小」「最小」を選べばよく、作者が小さな文字を好きだからといって、文字サイズ「中」で文字が小さく見える必要はないのではないか、と私は考えていました。

しかし、私の主張は説得力を持っていませんでした。

(多くの)女子中高生は、小さな字を好みます。そして、意識的に字の小さなサイトを選び、ひいきにします。つまり、自分は小さな字が好きだから、どのサイトも小さな字で読もう、とは考えない。もともと字が小さいサイトを選ぶのです。印象的な言葉があります。「字の大きなサイトに、共感できたことがないんです。センスも、生き方も違うんですよ、大きな字でも平気でいられる人とは。だから、私は字の小さなサイトを選ぶし、自分もそうするんです」メールで出した質問への、ていねいな回答の一部です。

彼女たちには、「標準より小さな文字サイズ」が意味を持っていました。表示設定で「小」「最小」を選べばいい、といった問題ではなかった。自分とセンスの近い客層を期待する彼女たちにとって、小さな文字は、世界観を共有できない訪問者を排除するフィルターでもあったのでした。実際、彼女らのサイトの読者の9割以上は、文字サイズ「中」で小さく表示される文字を好ましく思う人々だったに違いありません。

したがって、次のような主張は否定されます。

もちろん閲覧者が無知であることを助長するようなことになったら問題だとは思いますが、しかし「ページを見ていただく」という立場から考えるなら「様々なブラウズ環境にある閲覧者に対して、できるかぎりこちらの意図がストレートに伝わり、しかも相手にとって見やすい/閲覧可能であるページ作成を心がけるべきである」という点ははずせないと思います。もちろん100%対応などはハナから無理ですが(当サイトもunicode未対応ならつらいでしょうし、Netscape4.xは切り捨てています)、できるだけ多くの方に自分のサイトを「読んでいただく」というのであれば(少なくとも主張サイトはそうあるべきでしょう)「読者に努力を強いない」というのは一つの条件と思われます。

なぜなら、読者が最初から努力を強いられるなら、そのサイトはそもそも読まれません。となると、自分の啓蒙したいことすら伝えられないのです。

女子中高生が思いを伝えたい相手は、自分とセンスの近い読者です。そして彼女らは「文字が小さいサイトしか、読む気になれない」と思っています。様々なブラウズ環境にある閲覧者に対応するために、主な読者層を逃しては本末転倒です。読んでほしい人に読まれるために、彼女らは文字を小さくする以外の選択肢を持ちません。

3.

ガールズサイトの文字サイズ問題は、target="_blank" 問題とまったく同じ構造を持っています。

原則論を貫けば怠惰な閲覧者に「ユーザビリティが低い」と罵られ、現実論で突き進んでも理論派に「ユーザビリティが低い」と批判されます。絶望的な状況です。趣味でやっている製作者は、純粋に自分の好きな方を選べばいいと思う。私は原則論を重視したい。だから、こういう。

バカな閲覧者は勝手に不幸になればいい。

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