趣味Web 小説 2007-02-28

タミフル報道の陰影

ブログの炎上などに眉をひそめるマスコミ関係者が「彼らはワイドショーの真似をしているだけでしょ」みたいな反応(参考)に不快感を覚えるのは、わかる感じがする。「似たようなもの」という意見もわからないではないけれど、記者さんたちには「自分たちは倫理観を持って仕事をしている」という自負があって、実際いろいろそれで配慮をしているんだ、と。

ここ数日ではインフルエンザ治療薬タミフルの問題ですかね。

また中学生がタミフル服用後に自殺して、親が非常に怒っているという。第一報は怒る遺族に寄り添った報道だったんだけど、次第にトーンダウンしつつある様子。なぜかと思っていたら今朝の Sankei Express にこんな記事が。

厚労省研究班の横田俊平主任研究者の話
昨年公表した調査でもタミフルを服用した子供と服用していない子供で異常行動をする確率は変わらず、タミフルと異常行動には直接的な関係はないと考えられる。基本的にインフルエンザは48時間以内に高熱が出る。タミフルの服用にかかわらず、48時間以内はインフルエンザによる神経症状が出やすいので注意が必要だ。今回のケースも異常行動を起こす前に男子生徒には異変があったのではないか。
国立病院機構三重病院の神谷斉名誉院長の話
インフルエンザに伴う異常行動の例はタミフル登場前にもあったが、これだけ事例が増えると、因果関係を再検討すべき時期に来たのではないか。インフルエンザに特有の脳症など異常な神経症状を増強する作用がタミフルにあるのかもしれないが、有効な治療薬でもあり処方をやめるべきだとは思わない。医師は処方の差異に保護者に異常行動などのリスクを説明し、服用後は子供の様子を見守るよう助言すべきだ。

ようするに、異常行動の真因はインフルエンザだというのだ。ところがインフルエンザの症状として高熱は知られていても、異常行動の誘発は一般に知られていなかった。だから子を失った親は薬のせいだと決め付け、医師が説明を怠ったといって怒った。

ちなみに薬害に詳しい医薬ビジランスセンター理事長の浜六郎医師は「研究班はデータの取り方に問題がある。服用直後に限定すれば、異常行動を起こす割合は約4倍になる」と指摘しているそうだ。タミフルはいずれ起きる異常行動を早期発現させる効果を持つのだろうか。

研究班は現在、服用からの経過時間を明確にした上で、新たに1万人を対象とする調査を実施している。「タミフルとの因果関係をしっかり見極めたい」と主任研究者の横田俊平・横浜市立大大学院教授。結果は秋にもまとまる予定だ。

マスコミがこうした事例において、怒る人々を説得しようとせず、単に報道をフェードアウトしていくのは「ひとつの知恵かもしれない」と私は思うようになった。遺族の主張を全否定するに足る情報が揃うまでは、軽々には扱えない。さりとて医師と製薬会社を責めるのも理不尽だ。いきおい口をつぐむ他ない。

新聞は小さな記事まできちんと読みたい

先日、日銀が政策金利を上げた。早速、上昇したのが銀行株。利上げで利益が増大すると予想されているためだ、と産経新聞は伝えていた。経済面の隅っこの小さな記事だった。ゼロ金利で銀行はボロ儲けしているという話はどこへいった? それは嘘だよ、と経済学者はいい続けていた。

新聞は庶民感情を大切にする。そのために経済記者の良心さえ曲げることもあろう。それでも記者さんらは少しでも正しいことを伝えようと努力されているのだと思う。こんな小さな記事まで読んでくれる読者ならわかってくれるはずだ、そんな心の声を聞いたような気がした。新聞は小さな記事まできちんと読みたい。

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