趣味Web 小説 2009-03-11

子どもに自信を与える方法

0.

これは子どもの問題ではなく大人の問題だと思う。

1.

子どもの言動で気に入らないことがあると、とかく「しつけ」で何とかしようとする方が多いでしょう。叱りつけたりせず、自然に子どもを動かすにはどうしたらいいか、もっと知恵を絞ってほしいと思う。

親が居間でテレビを見て笑っているのに、子どもが喜んで学校の宿題などしたがるわけがない。当たり前の話でしょう? 宿題+漢字ドリル+計算ドリルなんて、親子で取り組めば1~2時間で終るもの。たったそれだけの時間を一緒に過ごすことを厭う親に育てられる子が、自分の価値を信じられるでしょうか。

家事のお手伝いだってそう。子どもだけが家事をやっている時間があると、つらい。母が夕食の準備をしているとき、子どもが風呂を掃除し、父がトイレを掃除する……といった「家族みんなで家事をやる時間」という見立てを導入することで、子どもも自分の役割をきちんと果たすようになります。

曜日で担当を変更するなどして、子が風呂掃除をした日には「お風呂がピカピカで疲れがスーッと取れるね」といい、子がフローリングの空拭き掃除をした日には「廊下がピカピカで新築の頃を思い出すね」といい、子が料理をした日には「これはおいしい! 元気が出るね」という。これを10年くらい続けると、ようやく子は親のありがたさに気付く。

「勉強しなさい」「お手伝いしなさい」そんなことを口でいくらいってもダメなのに、十年一日のごとくずーっと子どもを叱り続ける方が少なくないという。子どもだって「お勉強しよう」「進んでお手伝いできるいい子になりたい」と思っている。思っているのにできないから、「自分はダメだ」と自信を失くす。

子どもを褒めたい親は多いと思う。ならば子どもが自動的に成功する仕組みを作りましょう!

2.

私が3歳の頃、父が仕事で忙しかったので、弟を出産してダウンした母を助けるため、母方の祖父が初めて家へやってきました。祖父と一緒に湯船に浸かっていた私は、急に手洗いへ行きたくなりますが、祖父が楽しそうに話をしているので我慢、我慢、我慢。しかしとうとう限界を超え、ウンチをしてしまう。

しょんぼりしている私を、祖父は「おおっ! 立派なウンチをするようになったな! 偉いぞ!」といって褒めたという。虚弱体質で下痢の多かった私が、しっかり形を保ったままプッカリ湯船に浮かぶ便をしたのが、本当に嬉しかったのだそうです。

家族が私の過去の失敗を蒸し返すことはなく、私はそんなことがあったことをすっかり忘れて成長しました。そんなある日、祖父が急死したとの報せが飛び込みます。祖父の家へ向かう新幹線の車中で、母が教えてくれたのが、このエピソードでした。

祖父は酒飲みで、母や祖母ら家族を心配させ続けました。酔った祖父の後始末で家族が恥ずかしい思いをしたことは、一度や二度ではないと母はいいます。その母が祖父に一番感謝していること、それは、私が一番悲しい思いをしているときに腹の底から褒めてくれたことだ、というのでした。

親がどんなに素晴らしくても、子が立派に育つわけではない。それは自分を見ればわかります。ただ、私は幸せに育ちました。それは十分に意味のあることだったと思うのです。

3.

日本の子どもも、幼稚園児くらいまでは楽しい。笑った、手を振った、喋った、歩いた、何もかもが賞賛の対象となります。その後、どういうわけか、親の要求水準が急上昇していく。

子どもの自信が年齢を重ねるにつれ失われていくのは、親が子を褒めなくなるからだと思う。世間の親御さんらの冷たさを思えば、教師はまだしも生徒を褒めようという努力をしているように見えます。個別指導の補修塾には、親には叱られてばかり、家には帰りたくない、という生徒がたくさんいました。

「連立方程式が解けるようになったよ!」「すごい! お前は賢い子だね!」これが当たり前でしょう? どうしてテストの点数なんかを最初に気にする親が多いのか、私は不思議でなりません。授業のない日も塾の自習室に生徒が集まるのは、当然のことでした。

成績などの相対評価ばかり気にする大人が多い中、個人の成長が素直に評価される場は貴重なのです。

「堆積岩の種類を覚えたよ。えっと、礫岩、砂岩、泥岩、凝灰岩、石灰岩、チャート!」「すごい! よく覚えたね」「3日もかかったけど」「いいんだよ、人生は70年もあるんだからね。よく頑張ったね」数日後にテストすると、2個くらい出てこない。「えらいね! 4個も覚えてるなんて」まず、こういう。

東京都の取り組みはピント外れだと思いますが、保護者教育が非現実的である以上、他に手がないのでしょうね。よい結果が得られることを期待します。

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