趣味Web 小説 2010-04-01

memo:労働環境の改善は人手不足から

経済成長の続く中国で、ようやく人手不足が実現しつつあるのだという。リンク先記事は中国人を雇う日本企業経営者の視点で書かれているので、なんだかネガティブな書き様になっています。しかしこれは、たいへんよいことだと思う。

チャイナ・アズ・ナンバーワン

チャイナ・アズ・ナンバーワン』で関志雄さんが示されている通り、中国は長らく比較優位にある労働集約産業に十分に力を入れず、先進国っぽいイメージを追い求めて(?)資本集約型産業の発展を目指してきました。その結果が、年率10%近い経済成長にもかかわらず膨大な失業者を抱え続ける歪な経済状況でした。労働者の使い捨てがまかり通ったのは、失業者があふれていたからです。

社会主義国といえど、労働市場の基礎条件を改善しない限り、こうした状況は改善できないことは歴史が教える通りです(賃金規制、雇用規制などは補助的にしか効果を発揮しない)。高度成長期の日本と同様、労働者を救うのは、何よりもまず人手不足です。

余談:

久々に『チャイナ・アズ・ナンバーワン』のAmazonページを見たのだけれど、こんな堅い本でさえイデオロギッシュなレビュー合戦の対象になっていることに、少し驚きました。

自在に国内株式市場を操作する、為替を国内物価のインフレなしで元安に固定する、最低賃金を失業率の悪化を伴わずに強制的に上げる、他国とFTAを結べば自国だけに利益をもたらす、そんな経済学無視の魔法が使える中国政府なのに、地価のバブル的な高騰にだけは対処する術を持たず破局と隣り合わせ?

中国政府の統計を信頼に値しないと切り捨てる慎重さを持つなら、自分の直感にも疑いの目を向けるべきだと思う。私も関さんの意見には賛同できないところが多々ありますが、海外できちんと評価を得た中国人エコノミストを政府の代弁者と「非難」するようなレビューが「参考になった」票を集めるのは悲しい。

しかも、ちゃんと読んでレビューを書いているみたいなんだよね。2ちゃんねらーが「中国叩きができれば何でもいいや」とばかりに適当なタイトルを検索して叩きレビューを投稿している風ではない。こういう本を読む層でさえ、こんなレビューを書くのか、と。

まあね、私だって、もっと「わかってる」人からは同じように思われているのでしょうけどね。

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