1 : 27 ブルキナファソの女の子

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こんにちは、わたしマリアム、12歳

2000年12月31日

学校の昼休みに、日かげで友だちに髪をゆってもらってるわたし。日なたは暑いぞ。

完成した髪型。えへへ、おしゃれでしょ? ごくごく。水を飲んでます。

こんにちは、わたしマリアム、12歳。ブルキナ・ファソの女の子です。お母さんのアワ、9歳上の姉サリといっしょに、一部屋の家に住んでいます。お父さんのブレイマは、近くに自分の家を持っています。わたしは、レルホ小学校の五年生です。学校までは歩いて約1時間かかります。家ではビサ語を話しますが、学校の授業は、ぜんぶフランス語です。

ところでみなさん! ブルキナファソって、ニジェールのとなりの国ですよ。知ってました?

わたしはブルキナファソの、シグイン・ブッセという村に住んでいます。学校があるレルホまでは歩いて約1時間かかります……って、それは、もう言いましたね。村の名前「シグイン・ブッセ」は、「まぁ座って、のんびりしてってよ」という意味です。そうそう、ブルキナファソの首都は「ワガドゥーグー」といいます。これは「わたしの家にようこそ!」って意味なんですよ。へへへ、ブルキナファソの地名って楽しいでしょ?

朝、起きるのって、つらいよね

朝は、ママに起こされます。ふとんのなかは気持ちよくて、起きるのがつらい。外は寒いので、ショールをはおって顔を洗いにいきます。顔を洗ったら、庭でお祈りします。

ママが火をおこしたら、わたしは、ゆうべのウーの残りを暖めて(ウーは、穀物やとうもろこしの粉で作る白いおかゆ。水気は少ない)、朝ごはんにします。学校には制服はないけど、学校に行くとき用の服は決めてます。朝6時に家を出ます。まだ暗いです。

いちばんなかがいい友だちはアジェラト。いっしょに歩いて登校します。遊ぶときもいっしょで、なにか困ったことがあったときは、いつも彼女が助けてくれます。いい友だちって、相手の言うことをちゃんと聞いて、まじめに考えてくれるでしょ? もしふたりのどちらかが飲み水がいるときは、もうひとりが分けてあげたりします。

学校に早めについたときは、わたしたちは、教室のそうじと、水くみを手伝います。水は、昼食の料理、皿洗い、そして黒板をふくのに使います。一時間目が体育のときもあります。朝7時半から始まります。先生は全教科同じ人で、わたしは理科が好きです。いちばん得意なのも理科です。

井戸から水をくむわたし。よっこらせっと!

12時に昼食をとります。クスクスです。いつもクスクスなので、みんな食べ飽きています。昼には、みんなでたきぎを集めます。料理のまきに使うのです。しかし、今年は、学校の木がすごく伸びたので、それを切ってまきにしました。

昼休みは、たっぷりあるので、学校の近くに住んでる子たちのなかには、いったん家に戻る子もいます。わたしたちは家が遠いので学校にいます。遊んだり、本を読んだりして昼休みをすごします。昼には、とても暑くなるので、あまり長くは遊びません。木の下か、学校の前の影のなかに座って、本を読みます。友だちと髪をゆいあったりすることもあります。いろんなゆいかたがあるんですよ!

学校にいるときが、いちばん楽しいです。なにか特別って感じがします。学校に初めて行ったときのことを、今でも覚えてます。レルホまで歩いてゆくのは冒険でした。ガランゴの中学校に行ってナースになりたいと思っています。わたしたちの村シグイン・ブッセにはナースがいません。どこで働くことになるか分かりませんが、できたら勤務地は遠くでなく、シグイン・ブッセでナースをしたいです。友だちも家族もみんなここにいますし、住み慣れているからです。

写真

シグイン・ブッセの村の様子☆

男の子が料理するのもOK

学校は午後5時に終わります。下校前のホームルームでは、みんなでフランス語の歌を歌います。急いで家に帰る必要はないので、途中で遊んだりします。走っていって、甘い果物をつんで食べたりします。家に帰るのは6時すぎです。

わたしは家が好きです。家にいるときが、いちばん落ち着きます。持ち物のなかでいちばん好きなのは、緑のドレスです。ママがラマダンに買ってくれました。大切な服なので、特別なときにだけ着ます。

家に帰ったら、一休みします。ママが料理しているときは、皿洗いを手伝うこともあります。一日の最後のお祈りは午後8時にします。食事は、みんなでいっしょに食べます――わたしと、サリ姉ちゃんと、お母さんです。ほとんどいつもウーを食べますが、味付けをいろいろ変えて食べます。わたしがいちばん好きなのは、クルドゥ(おくら)ソースのウーです。ほかに、いろんなハーブや花からソースを作ります。カラドゥ、バフルドゥ、グリドゥ、ホルレドゥ……などなど。

学校に行かないときは、たくさん料理を手伝います。男の子は、あまりそういうことをしません。女の子ばかりです。でも、もし男の子が料理をするとしても、わたしは、いけないとは思いません。男の子は、そういうことをするべきじゃないって思ってる人もいますけどね。

ヨーロッパの子どもたちのことは、ぜんぜん知りません。きっと、わたしと同じように、読み書きを習っていると思います。でもビサ語は通じないでしょうね! それにクロワ・クロワ(ピーナッツのお菓子)の作り方や、ウーの作り方は知らないと思います。ヨーロッパでも、もちろん、なにか畑で作っていると思いますが、なにを作っているのかよく分かりません……。

一日の最後に、ゆかをそうじして、寝床をととのえます。眠る前、ふとんのなかで、ママに話しかけることもあります。でもママのほうが先に寝ちゃうときもあります。近所の友だちのところに遊びに行ったりするので、寝る時間は、まちまちです。わたしは親友のアジェラトのところに、よくおしゃべりに行きます。時々、物語を聞かせあうこともあります。おとなの人が話してくれることもあります。ここでは、だれでも物語を話せます。わたしも話せます。いちばんいい物語は、笑える話です。

以上の記事は、On the Line -- daily life in Burkina Faso をもとにしています。写真もそこから引用しました(キャプションは筆者がつけたもの)。原文には、もっとたくさんの写真が挿入されていて楽しいので、良ければごらんください。一部、創作的に順序を入れ替えたり、モノローグを足しています。(マリアムが語った文字通りの言葉は、たぶん、フランス語版の、la vie au quotidien以下。)

現地の音を聞いてみよう

ブルキナ・ファソの民謡を聞いてみてください。正確にいうとマリアムさんが住んでいるシグイン・ブッセ(Siguin Vousse)の様子で、たぶんビサ族の民謡ということになると思います。Children Singing のほうは「サラーマレイコン」と聞こえるので、アラビア語の影響が入ってるのが分かります。

また、storytellingのページでは、物語を子どもたちに話して聞かせている様子の録音を聞くこともできます。(聴き手の子どもたちの笑い声も入っています)

ブルキナ・ファソ、豆知識

ヨーロッパからみると、サハラ砂漠を越えた向こう側にある国。砂漠ではないけれど、砂漠にすぐ隣接する丘陵地帯で、水は貴重です。かつてのフランス領西アフリカの一部。おおざっぱに、面積は日本と同じくらいで、人口は一千万。45の県に分かれています。公用語(国全体の共通語)はフランス語ですが、日常生活では、各部族ごとにいろんな言語が使われています(たくさんの言語があって、旧宗主国のことばが公用語になっている、というのは、アフリカの国では、よくあるパターン)。首都ワガドゥグ(ワガドゥーグー)を中心に人口の約半数450万人ほどの人が、モシ語(Mòoré, Mossi)を第一言語としています(マリアムさんのビサ語(Bissa)は、話者50万程度の少数言語のひとつだそうです)。

モシ語のあいさつ(Greetings in more than 655 languagesより。残念ながらオーディオ・クリップは見つかりませんでした……):

ブルキナ・ファソは、いわゆる農業国です。経済的には世界最下位のほうで(だから何?)、平均寿命は45歳くらいだそうです。他方、例えば、野生のゾウの生息数では、ブルキナファソは上位でしょう(だから何?)。……西洋的な意味での文化についても、フェスパコ映画祭の中心になったりしてますが、固有の文化についても、いろいろと考えさせる要素を持っているかもしれません。

小学校は義務教育ですが、就学率は3分の1程度だそうです。中学校に進みたい、というマリアムさんの夢は、けっこう「大きな夢」なわけです。

文化(宗教)

現代ユーラシアの「わたしは○○教徒である/でない」というアイデンティティ、「宗教」ないし「信仰」という概念(とくに三大宗教に見られる教典&教義論のシステム)を用いて、アフリカの古来からの「民話、伝説、神話」をとらえるのは、必ずしも適切では、ないようです。つまり「ブルキナファソの宗教は、伝統宗教の信者が6割、イスラム教徒が3割、キリスト教徒が1割」というような統計のことですが、むしろ次のように表現するのが、わりと実情にあってるかもしれません――「ブルキナファソの人は、各民族ごとの伝説をもっていて、そのなかには自然宗教とでもいうべき要素もある。また、それとは別に、人工的に整理・体系化された近代宗教をとりいれた者も多く、全人口の2~3割がイスラム教の礼拝を行い、1割はカトリック教会に所属している」

「アフリカの伝統宗教」なるものを、イスラム教やキリスト教と並べるのは、必ずしも適切では、ないように思います――決して「世界宗教」に比べて「土着(未開)」で劣っているという意味でも、人工的な世界宗教が「自然発生的な、自然への畏敬の念」に比べて間違っているという意味でもなく、単にジャンルが違うということ(重なる部分もあるが、大部分は重ならない)。これはフィンランド人ならすぐ分かると思うのですが、我々はクリスチャンでペイガンではない、と言っても、森(タピオ)に対する想いは、またべつのもので、タピオを「森の神」と訳し「タピオ信仰、タピオ教」などと言われたら、たしかに異端のようですけど、実際問題、キリスト教の神とタピオは、ぜんぜん対立するものじゃなく、決して「キリストかタピオか」という二者択一では、ないわけです。実際、キリスト教国であることと、学校の国語の授業でカレワラを習うというのは、両立しているのであって、キリスト教とフェアリーテイルの関係です(もちろんどの国にも熱心な信徒がいて、子どもがシンデレラを読むことすら嫌がる人もいるでしょうが、それはそれ)。

村の家々を背景とした写真で、マリアムさんは自然な様子に見えます。西洋近代文明の尺度しか知らないと、「なんだか未開な、ぼろい家」に見えるかもしれないし、実際、そういう尺度のせいで、ひくつな態度をとるアフリカ人もいるでしょうけれど……。

同様に、キリスト教徒は、ほかの文化(宗教)をなにかと理由をつけて批判することがありますが、「正しい」ということは、「ほかが間違っているから自分は正しい」のでないことに気をつけてください。例えば、算数の計算をするとして、あなたがAさんの計算に計算間違いを発見したとします! そしてそれを指摘したとします! そのことは、あなたの計算が間違っていないことの証明には、なりません。実際にAさんが計算間違いをしていたにせよ、しないにせよ、あなたは、別のところで計算間違いをしているかもしれません。それに、あなたが正しい計算法だと思ったのと違った式を立てて計算しているAさんも、最後に出る答は、あなたと同じかもしれませんよ! 「切り口で争わず」ということです。追求の仕方、計算の仕方なんかは、ひとつだけが正しいわけじゃありませんから。

インターネット上のブルキナ・ファソ

cctld は .bf です。あなたの端末から、西アフリカのサーバを直接、呼べるか、ためしてみるのも、おもしろいかもしれません。次のURLは、どうでしょう?

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