趣味Web 小説 2005-06-06

Advice335 sweet Lolita

ご依頼人と Web サイトのご紹介

CLAMP ファンの中学1年生、雪花さんのウェブサイト。CLAMP は息の長い漫画家ですね。いまだに若い読者を獲得し続けているというのは凄(すご)い。

「sweet Lolita」イラストと交流がメインなのだそう。「交流がメイン」ってどういうこと? と疑問に思われる方は少なくないでしょうけれども、これは実際にサイトを訪問してみればすぐにわかります。用意されているコンテンツの大半がレンタル掲示板やレンタル投票システムの類(たぐい)なのです。なるほど、納得(なっとく)。

ちなみに雪花さんというのは本名なのだとか。北海道在住でテニス部に所属する中1の女の子で名前が雪花さん……と、これだけ情報が揃(そろ)うと、知り合いなら「あの子かな」とわかるでしょうね。するとお節介な人がいて、情報はもっと隠(かく)さないとダメ! とかいい出したりする。でも考えてみると、例えば本名も住所もわかってる芸能人はいくらでもいて、彼女らがみな不幸な目にあっているかというとそうではない。

ネットショップを開設している方は商法の規定に基(もと)づき本名、住所、電話番号を明かしているわけで、「ネットで個人情報を明かしたら恐ろしいことがおきる」というのは都市伝説といっていい。もちろんネットで調べた情報を元に犯罪を行う人はいるでしょう。ネットがなければ起きなかった犯罪もあるかもしれない。しかし個人情報の保護は程度の問題であって、完全に隠せるものではありません。以下、関連記事です。(注:これは常連読者向けの案内。雪花さんは以下の関連記事を読む必要ありません)

アドバイスのご依頼を受けた時点ではまだ小6だった雪花さんですが、ずっとお待たせしている間にランドセルを卒業して中学生に……。入学おめでとうございます。そして、たいへんお待たせしました。

注:当サイトは教育上よくない内容を含んでいるらしく、キッズgooに嫌われています。そこで本稿では、私が塾で中学生に国語を教えていた頃、多くの生徒が読めなかった漢字について振り仮名を付しました。雪花さんは日記などで難しい漢字を使っておいでなので、「国語が得意」と仮定しています。ふつうの中学1年生は「依頼」の読みがわかりません。正解はもちろん「いらい」。え? 「依頼」の意味? そんなの辞書で調べてくださいな

ご相談の内容

私のHPは毎日2~30人くらい来てるようなのですが、掲示板などの書き込みなどがとても少ないです。デザインが悪いのでしょうか?? 私はまだ小6なので知識があまりありません・・・。なのでご指摘よろしくお願いします!!!

アドバイスいろいろ
1.重要なのは人柄

まずウェブサイト運営について正しい認識を持つことが必要です。毎日20~30人が訪問する一般のウェブサイトにおいて、掲示板に毎日1件以上の書き込みがあるケースは稀(まれ)です。それは、雪花さんがどこかのウェブサイトのカウンターを20~30くらい回しても、一度も掲示板に書き込みをしないことと同様です。「表紙→日記→表紙→掲示板(見るだけ)→表紙」という閲覧経路(えつらんけいろ)を辿(たど)った場合、表紙のカウンターは3つ回ります。同じことを10回やれば30回ですよね。

一度、数取器(は持っていないでしょうから万歩計でも可)で1日の閲覧ページ数をチェックしてみてください。30分間に10~120ページくらい見て回ったろうと思います。さて、雪花さんは毎日どこかの掲示板に書き込んでいらっしゃいますか? おそらく、そんなことはないだろうと思いますが、いかがでしょう。

ネットだけで仲のよい相手がいれば、その人のところには毎日何か書き込むかもしれません。何人かそういう相手がいれば、一人くらいは「お返し」をしたがる人がいるもので、雪花さんのところの掲示板も少しにぎわってくるものです。

掲示板に人が集まるかどうかを決めるのは人柄です。同じデザインのウェブサイトであっても、日記などあちこちに性格は現れるもの。自然と掲示板に人が集まるサイトとそうでないサイトの差が生まれてきます。これは必ずしも学校で友達が多いかどうかとは対応しません。ただし、緩(ゆる)やかな相関はあります。

一昔前まで「学校で一番人気がある人はネットとか興味ない」のがふつうでした。ところが最近は、携帯電話からウェブサイトを更新し、掲示板への書き込みに対応できるサービスが十分に増えたので、状況が変化してきました。その結果、明らかになりつつあるのは、どうやら暇を作ろうと思えばいくらでも作れる(帰宅部が多い)女子高生などの場合、やっぱり携帯電話にたくさん番号を入れている人が、ネットでも人気者になりやすいのかな、ということ。

端的(たんてき)にいえば、「メールをもらったら必ず返す、借りを作らない性格」「相手のノリにうまくあわせることができ、場を白(しら)けさせない」「空気を読むことに長けている」「ネアカで自然と周囲の人を元気付ける」など、当たり前といえば当たり前な条件が整っていれば、やっぱりふつうに掲示板の書き込みも増えるようです。結局、頑張って人気者を演じるならともかく、それほどやる気がない場合には、自然体で条件を満たしてしまう相手には勝てませんよね。

2.デザインは問題ではない

デザインがまずいので書込みがないのではないか、と心配されているようですが、そんな問題ではないと思いますね。

たしかに雪花さんのサイトの現在の表紙画像は重すぎます。544KB はさすがにひどい。他の画像もやたらと重たくて、全部で 800KB を超えてしまうのです。しかもそれらの画像があちこちのサーバへの直リンク。その一部に回線の細いサーバがあるらしく、一部の画像がなかなか表示されない。これはさすがにいかがなものかといわざるをえません。

しかしながら現在のネットユーザの大半はブロードバンド回線の利用者です。人数だけを見れば、ナローバンド(ダイヤルアップとか AirH" とか ISDN 回線)ユーザが4割くらいいます。でも彼らはネットに接続している時間が短いし、しかもナローバンドなので各ページの表示がゆっくりです。速度が遅くて利用時間も短い4割のネットユーザを切り捨てても、人気サイトを作ることはできます。Naver ブログも Yahoo ブログも、だから人気があるわけです。

雪花さんのサイト程度の重さなら、ブロードバンドユーザには苦痛ではないわけで、不人気には直結(ちょっけつ)しません。(参考:大多数がどうだとか、そんなことを気にするようなご身分なのか?

……と断言してもよいのですが、ナローバンドユーザには口うるさいのがいたりしますので、画像を軽くする方法について簡単に説明しておきます。

  1. まずお勧めツールの導入手順を参考に +Lhaca と ViX を導入してください。
  2. 次にあちこちのサーバへ直リンクしている画像を全部ダウンロードして、自分のサーバから呼び出すようにします。
  3. 仕上げにグラデーションやぼかしの効果が使われている PNG 形式のイラストを、ViX を用いて JPEG 形式に変換。
3.改善案

重たいサイトに対して厳しい意見をいう人も(ギリギリなんとか)納得してくれるであろう改善案を作成してみました。

やはり表紙の巨大イラストが最難関。PNG 形式から JPEG 形式に変換するだけで 544KB が 100KB になりますが、AirH" 利用者の私の感覚でいうと、まだ重い。結局「441×640 という版型がそもそも大きすぎるのだ」という結論に至り、300×435 に縮小。ようやく 64KB まで圧縮成功。画質さえ譲(ゆず)れば 40KB 前後にまで落とせますが、今回はここで決着としました。

改善案ではレイアウトなども大幅に変更しています。コンテンツの大半がレンタル CGI で、作者の手になる HTML 文書はフレーム定義を含めてわずかに3ページでしかありません。だから、自作部分だけでデザインの統一性確保を目指しても虚しいのは事実ですけれども、それでも一定の方向性を示すことはできるのではないか、と考えてやってみました。

ちぃのイラストがオレンジ系、ちょうどメニューフレームの背景にオレンジの写真が使用されていたので、このあたりから着想を得てリニューアルしています。緑色は原本でも各所に用いられていますし、目立つところではカウンターの画像が緑色で、これは私が他の色に変更することができないんですね。そういったわけで、一見、かなり異なるデザインに見えますけれども、基本的には原本に対する「改善」案となっていることがご理解いただけるだろうと思います。

原本はデザインが非常にガチャガチャして見えます。たいてい中学生くらいの女の子の作るウェブサイトはこんな感じなので、ことによるとそういうのが彼女らの年代では一番素晴らしいデザインなのかもしれません。けれども、私から見ると、とにかくあまりうまくないような気がします。

何でもかんでも中寄せでまとめてしまっているのが癌(がん)なのです。

そこで改善案では、左寄せを基本として作り直しました。すると main ページの右側に余白ができましたので、2段組を採用。ランキング・同盟・ウェブリングの画像もバッサリ削り、一覧性を高めています。画像を表示しないと規約違反になるのかもしれませんが、正直いって、テキストだけの方がわかりやすいと思いますよ。

メニューフレームは写真に文字を重ねて読みにくかったので、まず画像を加工。ついでに main ページのタイトル画像にも流用し、サイトのイメージシンボルとして活用しています。

また、メニューが英語ばかりなのも問題。雪花さんのウェブサイトの閲覧者は 99% 以上が日本語を母語とする人々でしょう。彼女らにとって、パッと見るだけで「読もう」としなくても意味が理解できるのはやはり日本語。メニューを分類するラベルには日本語を採用し、またメニューの一部を整理し直しています。「表紙に戻る」と「ウェブ拍手(はくしゅ)」の画像は削除し、テキストにしました。やはりこれも、テキストの方がわかりやすいと思いますね。

4.デザインで気をつけるべきこと

デザインはどうでもいい、と書いておきながら何ですけれども、もう少しだけ続けさせてください。

  1. 各ページのデザインを何らかの形で揃える。
  2. 中寄せはなるべく使わない。
  3. 文字の読みにくくないか、気にする。

この3点を頭においてデザインしていくと、スッキリとした結果が得られます。

一番重要なのは「各ページのデザインを何らかの形で揃える」こと。自然と「デザインルール」について考えることになります。あまりにも複雑なルールでは覚えきれないので、「色をたくさん使いすぎる」失敗など、思いつきで適当にデザインしていった場合に陥(おちい)りやすい罠(わな)を避(さ)けることができます。

例えば私の改善案では、「リンクは緑」「見出しや項目名などは茶色」「強調は太字」といったルールが用意されています。緑と茶色を選んだのは「表紙のイラストがオレンジと緑からなる絵」で、しかも「デザインのモチーフにオレンジの画像が用いられている」から。オレンジと茶色は仲間の色ですね。このように、あれこれ理由を考えながら作業していくと、わかりやすいデザインとなりやすいのです。

なお、改善案では自作 HTML 文書だけしか手を、加えていませんが、もし可能であればレンタル CGI の見た目もカスタマイズして、パッと見て「同じサイトのコンテンツなんだな」とわかるような雰囲気を作った方がよいでしょう。現在はレンタル CGI の見た目が基本的に青系統の配色になっており、白とオレンジの印象が強いサイトデザインといまひとつマッチしないように思います。

次に、中寄せは初心者に大人気なのですが、とりあえずこれをやめましょう。絶対に、何が何でも、とは申しません。ただ、できる限り避けようと努力する。すると、実力が一歩上がります。

最後に、完成したデザインのよしあしを判断するポイントはたくさんあるのですが、ひとつだけ挙げるなら、文字の読みやすさですね。「読みやすいかどうか」をあまり気にするとデザインできなくなってしまうので、「読みにくくないか」を考えるようにしてください。あまりにひどすぎなければ、「まあいいか」としてかまいません。

5.書込みを増やすには

ようやく本題。

本題なのに最後に持ってきて、しかも分量が少ないことには理由があります。というか、単に書くことがない。ぶっちゃけた話は、最初に書きました。正直、管理人がいてもいなくても勝手ににぎわっている掲示板はあって、それはサイト運営の上昇期に管理人の人柄が掲示板の核となる人物を大勢呼び寄せた結果なのですけれども、それを真似しろといっても無理ですね。無理だと思った方がいいです。では、他に何をアドバイスできるのか。

「溺れる者は藁(わら)をもつかむ」といいますが、その藁をひとつ提示しましょう。

ふつう、ウェブサイトを運営していても、誰がサイトを見てくれたのかはわかりません。ところが、これがハッキリわかる世界が存在します。どうしても書込みを増やしたければ、そういった場所へウェブサイトを移転されることを勧めます。あるいは、日記だけ移転してもよいでしょう。

これらのサービスを利用してウェブサイト(ブログといってもいいです)を作りますと、訪問者の記録が残ります。誰が何時何分にやってきたか、わかるんですね。で、訪問者が会員の場合、訪問者のウェブサイトが判明します。FC2 はちょっと例外としまして、他のサービスの場合、たいていの訪問者が同サービスの利用者です。なので、サイトにやってきたのに掲示板やコメント欄に書込みをしなかったのが誰なのか、かなりの確率でわかります。

ただし、そのことを責めたって誰も友達にはなってくれません。「うるさいことをいわれるなら、訪問するのをやめよう」となってしまうだけです。

だからどうしたらいいのかというと、雪花さんが訪問者のサイトに行って、何かコメントすればいいのです。だいたいマメにあちこちに書込みしていれば、それなりにレスポンスがあるものです。お互いの行動が(ほんの一部であれ)ばれていると、そうひどいことはできないものです。嫌われてしまったら仕方ありませんが、ふつうにウェブサイトを運営するよりはずっと確実にレスポンスが返ってきます。

もちろん、訪問者のサイトへ行ってみてですね、「この人とは仲良くしたくないな」と思ったら、書き込みはしないでもいいわけですよ。仲良くしたい相手とだけ仲良くすればよろしい。

まあこういった場所でウェブサイトを運営するといろいろ便利ではありますけれども、当然、いいことばっかりじゃありません。

誰が訪問したかわかるのは、相手も同じですからね。雪花さんがお友達のサイトをずっと訪問せずにいれば、当然、相手は気付きます。「いや、忙しくて書込みはしてなかったけど、いつも見てたよ」ってイイワケしても、それは嘘だとばれてしまう。面倒くさいですね。

6.結論というか

ここで話は最初に戻りますけれども、訪問者が掲示板に書込みしてくれないのは、雪花さんがよその掲示板に書き込みしてあげないのと同じ理由のはずです。ようするに面倒くさい。あなたが面倒だと思っていることは、訪問者だって面倒くさいと思ってる。この壁(かべ)を突き崩す(つきくずす)には、まずあなたの行動が必要です。それは CURURU や Yahoo ブログを使っても同じこと。

お互いに「読むだけで書込みはしません」という関係になってお終い、というケースは多い。というか、たいていそうなっちゃうのです。でも雪花さんだって、訪問するサイト全部に書き込みしろっていわれたら嫌でしょうし、自分がされても「こんなの本当に望んでいたんだっけ?」と思うことになるんじゃないでしょうか。30人訪問してきたら30個の新規書込みがあって……というのも、きついですよ。

おそらく、1回更新したら、2~3人くらい、何か反応してくれたらいいな、ってことなんじゃないでしょうか。そうであれば、5~10人くらい、仲のいい閲覧者がいれば何とかなるわけで、それくらいなら無茶な話ではないだろう、と。で、誰が仲良くしてくれるのかを探りながらあちこちにコメントを書き込んでいくために、CURURU などの機能はありがたいですね、という話。

CURURU とかを使えば簡単に友達が増えますとかいっているわけじゃないので要注意。最初の一歩は雪花さんが踏み出さなければいけないし、仲良くしてくれる相手に辿りつくまでには一定のコストがかかります。そして関係を維持するためにもコストがかかる。

で、今、雪花さんは部活が楽しくて、ネットをやる時間もないわけですよね。ちょっとそうしますとね、やっぱり無茶をおっしゃっているんじゃないかなあ、と思うのです。入院したのに誰もお見舞いに来なくて悲しくなったけど、よく考えてみたら自分も誰かのお見舞いとかしていない、みたいな話なんですよね。一部の人は、何もしなくても見舞い客がたくさんきたりしますけれども、それは真似できるものではないのです。

アドバイスは以上です。っていうか、あんまりアドバイスになってなくてすみません(その割に文章長すぎ)。

余談・アフターサービス

Information

注意書き