出席者は近藤淳也さん、村上敬亮さん、井庭崇さん、楠正憲さん、八田真行さん、東浩紀さん、鈴木健さんの合計7名。
今回の講演者は近藤淳也さんで、「なめらかな企業組織」がテーマ。講演と共同討議の両方を聴きました。今回も追って議事録が公開されますので、私が気になったことだけ記します。
「(小さな会社では)社内の情報共有にブログを用いると、メールによるコミュニケーションの問題をスッキリ解消できる」という近藤さんの主張について、村上さんから反論があって面白かったです。
簡単にいうと、社長が全てに目配りできる大きさの組織ならそれでいいのだけれども、組織が巨大化すると、プロジェクトを止める権限を有する人々が無数に存在することになり、情報を適当に隠すことがどうしても必要になってくる、という話。以前は経済産業省では長らく「総務」が情報の集約組織となっていたが、情報管理機構をフラット化してメールを中心とした有機的な組織へ改変した結果、メールで連絡を取り合う(仲良し)グループのスタンドプレーが続発して統制が取れなくなっているのだという。
もちろん、それも良し悪しなんだろうけれども、同じことを組織のあっちとこっちで考えているなら、それをうまくつなげていく仕組みがほしいですよね。誰がどんな情報を持っているかもわかる仕組みが望ましい。かといって、1000人のブログをみんな読むような世界もダメ。じゃあどうしたらいいのか、という話。
鈴木健さんがはてなグループを経済産業省で導入してもらってはどうか? と水を向けていたけれども、現状のはてなグループは、情報集約の点でも情報コントロールの点でも機能不足が明らかだと思う。
ised の討議(倫理研+設計研)に刺激を受け構想した新世代 SNS の概要メモ。(注:以下の内容は全て私の個人的なアイデアです)
大手プロバイダは、SNS のステージを上げる潜在能力を持っています。特定のプロバイダの利用者しか閲覧できない SNS を作るのです。これなら全参加者の本名・住所・電話番号などの情報を管理者側が把握できるので、招待制を採用する必要もありません。現在は家族で1アカウントがふつうだけれども、将来的には家族全員分のアカウントを作り、ネットに接続する際にわかりやすい確認画面が出て、アカウントを選択してから接続するようになる……。
AOL は失敗したじゃないか、という意見がありましょうが、AOL は世界を単純に捉えすぎていました。あまりに簡単な仕組みだったので、現実の複雑な需要を捉えきれずに没落していったのだと考えています。
私のイメージは次の通りです。
このような仕組みであれば、「会社の同僚」または「高校時代の同窓生」には情報を公開するが「女性」は除く……といった公開指定が可能となります。現在の mixi やその他の SNS は人物に対する属性指定が単純すぎます。公式タグにより、タグ付け地獄もある程度解消できます。とくに公式タグは「全会員」向けに公開している日記で効力を発揮します。記事毎に読者を限定したい場合に「男性」「20代」のみ、などと公開範囲を指定すればよいわけです。
繰り返しますが、これはスタート時点から数百万人の会員とその個人情報を有しているプロバイダだけが実現可能な SNS サービスです。タグ付けの面倒を公式タグで緩和できる他、荒らし対策もバッチリ。だって IP アドレスから会員を簡単に逆引きできるわけですから、会員単位で排除可能。そして最大の効果は、実名コミュニケーション空間を作れること。これがたぶん、一番大きいと思う。
新世代 SNS の構想において、情報コントロールのキーとなっているのは「人物にタグ付けする」というアイデアです。プロバイダ云々は倫理研の話題に絡めていく場合には非常に重要なポイントだと思っていますが、ここでは割愛。
社内 SNS を考える場合には、プロバイダ云々は捨てて、タグ付けの部分にフィーチャーしてカスタマイズしていけば、うまくいきそうな気がします。具体的には、以下の通り。
ポイントはタグの付与・削除権限。これにより、繊細な情報コントロールが可能となります。その一方で、上司に情報を隠すことは困難な仕組みとなっています(自分自身に「削除権限」を与えることは不可)。
なんだかしち面倒くさい仕様に見えるでしょうけれども、インターフェースとしては、はてなブックマークがそのまま使えるはずなのです。ただしタグの種類と階層構造が膨大なので、うまく整理する必要があります。
タグ一覧の表示が問題。まず、メタ構造で整理される場合には上位のタグが初期表示されます。ログインユーザが使用可能タグは青表示、使用不可タグはグレー表示でメタ構造の展開も不可。ただし毎回、深くタグを掘っていくのも面倒なので、最近使ったタグは最初から表示され、マウスオーバーでそのタグのメタ情報が表示される。
人物検索は名前またはタグ情報から。
……長くなったけれども、これくらいの人物情報管理システムがあれば、巨大組織でもブログで情報共有できるのではないでしょうか。
あ、ひとつ書き忘れてました。各タグには説明のページを与えて、そのあたりにはてなのキーワードシステムを使ったらいいんじゃないかなあ!
というわけで、d:id:jkondo さん、いかがでしょうか? 懇親会では席が近かったのにほとんどお話できなくて、今頃後悔しています。というか、アイデアの原型は現場で思いついていたのですが、お話しするところまできちんとまとまっていなかったんですよ。惜しい。いうだけはタダですし。