趣味Web 小説 2006-01-28

Advice354 半月石

ご依頼人と Web サイトのご紹介

彩炎さんが運営するWJ中心の夢小説サイトですWJとは週刊少年ジャンプのことで、WJ中心とは週刊少年ジャンプに掲載されている作品の二次創作を主としていることを意味しています。現在は「NARUTO」「BLEACH」「SAMURAI DEEPER KYO」の夢小説を公開中。「SAMURAI DEEPER KYO」は原作とアニメ版で物語が異なるのですが、私はどちらも知らないので、彩炎さんの小説がどちらを基にしているのかは分かりませんでした。

ところで彩炎さんは黒豆茶がお好きなのだとか。麦茶や黒豆茶は低エネルギー飲料なので、たくさん飲んでも太りません(豆をたくさん食べれば太る)。夏場はたくさん水分を補給して、どんどん循環させていった方が健康にいいそうなので、安心して水分補給されることを勧めます。水分の取りすぎでむくむことと、太ることとは別問題です。ま、年を取ると(?)水分補給をする気力もなくなります。たくさんお茶を飲めるのも今の内なので、好きなだけ飲むといいと思う。

ご相談の内容

所々にMIDIを使っているので、人によっては気分を害してしまうかも、と思っています。サイト全体で直すべきポイントがありましたら教えて頂きたいです。

アドバイスいろいろ
0.

3ヶ月以上もお待たせして申し訳ありません。

新年を迎えてサイトのリニューアルをされましたが、おそらくその作業の前にアドバイスがほしかったのだろうと思います。ごめんなさい。

1.

MIDI の件について。

ご心配の通り、音楽を勝手に鳴らさないでほしいと思う方は、結構いらっしゃるようです。けれども、特定のサイトでは音が鳴ってもよく、他ではダメだということは滅多にないでしょう。したがって、例えば Windows 版 IE をご利用になっている方であれば、「ツール→インターネットオプション→詳細設定→Web ページのサウンドを再生する(のチェックを外す)」という手順で自己防衛に努めるのが筋ではないかと私は考えています。

とはいえ、そのような設定をきちんとやっている人は非常に少なく、自分の不勉強を棚に上げて、「勝手に音楽を鳴らす」サイトの管理人を逆恨みするわけです。彼らには反省する気がありませんから、管理人の側が頭を使うしかないのが現実です。

2.

よくウェブデザイン指南の本やサイトに書かれているのは、「プレイヤーを表示させて閲覧者が再生ボタンをクリックした場合だけ音楽を流すようにしましょう」みたいなアドバイスです。なぜだかよく分かりませんが、アドバイザーの人たちは一様に自動再生がお嫌いの様子。自動再生を不愉快に思う方が当然で、音楽を流したい人なんて僅かでしかないと決めてかかっているのですね。だから bgsound 要素なんか使ってはいけない、という。

私は、bgsound 要素を使っていいと思っています。たしかに、それを嫌がる人はいるのでしょう。でも、別にそんなことは気にしないでいいのです。勝手に音楽が流れても、1日1万人以上が訪問するウェブサイトはあります。

断言してもいいけれど、音楽を流すのをやめたって、閲覧者数は増えません。1~3割程度は、まあ、増えないとも限らない。けれども、BLEACH の夢小説を発表しているサイトで人気のあるところは、1日1000人以上が訪問しているわけですよね。1日200人弱から3割増えたって、追いつかないわけです。人気サイトが音楽を流してアクセスが半分に落ちたって(そんなに落ちるわけないと思いますが、仮に)、彩炎さんのサイトの数倍のお客さんが訪問し続けていることに変わりはない。

映画のプロモーションサイトなどでは、FLASH で映像と音楽(あるいは効果音)を勝手に流す事例が少なくありません。職場などからのアクセスが主と予想されるようなビジネス系のサイトならともかく、自宅からのアクセスがメインと予想されるサイトなら、音楽くらい、流したければ流せばいい。そんなことで「こんなサイトにはもう二度と来ないからな!」なんて怒っている人とは、どうせ仲良くなんてできないのです。お引取り願って正解なんです。

3.

bgsound 要素の特徴は、自動再生だということです。これは悪いばかりではなくて、よいことでもあるのです。

例えば私は、クリックしなければ再生されない音楽を再生することは滅多にありません。面倒くさいからです。けれども、音楽が流れること自体は、決して嫌いではない。テレビドラマも音楽がなければ興が削がれます。ニュース番組でさえ、(番組の演出としては)静かな NHK より BGM のある民放の方が私は好きです。内容は NHK の方が好みなんですけれども。

わざわざ再生ボタンを押したいとは思わないけれど、音楽が流れることが嫌いなわけじゃない、むしろ歓迎する……そういう人は、世の中に結構いると思う。個人が趣味でやっているウェブサイトくらい、多数派じゃなくて自分に似た少数の人々に向けて作ったっていいんじゃないかな。少数といったって、全国には数百万人、あるいは数千万人くらいいるのかもしれないのだし。単に過半数でないというだけで、彼らにとって一番望ましい形態のサイトが世界から排除されるのはおかしいよ。

小説に音楽をつけられるのは、ウェブの「いいところ」なんじゃないかな。たいていのブラウザには音楽再生の可否を決める設定が用意されています。製作者の意図にしたがって、「デフォルトで音楽を流す」演出をすることを、一方的に禁じ手と決め付けるのは間違いではないでしょうか。

現在、彩炎さんのサイトで音楽が流れるのは夢小説の作品別の目次ページだけですよね。だったら、夢小説の大目次に、こんな注意書きをされてはいかがでしょうか?

リンク先のページでは音楽が自動で再生されます。音楽が流れては困る方は、ブラウザのオプション設定で音楽の再生を止めてください。IE6 では「ツール→インターネットオプション→詳細設定→Web ページのサウンドを再生する(のチェックを外す)」という手順になります。

検索エンジン除けをしていること、表紙以外へのリンクを遠慮していることから、ほとんどの閲覧者はこの注意書きを目にしてから先へ進むはず。目に入ることと読むこととは別なのだけれど、とりあえず、言い訳程度に注意書きをしておくと、万が一トラブルになっても少しだけ強気に出られるのではないかな。

4.

bgsound 要素の利用については、次のような批判もあります。

bgsound 要素は HTML の事実上の仕様となっている W3C の勧告書に登場しない要素で、そのためかどうか Firefox というブラウザでは(少なくとも私の環境では)音楽が再生されないのですけれども、「それって問題?」という感じはします。ちなみに Opera8.5 ではふつうに再生されました。W3C の勧告書から排除されているので、ひょっとすると将来、IE も bgsound 要素のサポートを終了するかもしれません。

けれども、ようするに、上記のような問題を知った上で使う分には問題ないような気がします。だって、音楽が流れなくても、多分、読者は困らないのです。作者がさみしい気持ちになるだけ。bgsound 要素にできることは全部、object 要素でも実現可能なのかもしれない。けれども、これは単に私が不勉強なだけ……ではあるのですが、W3C の勧告書の object 要素の説明を読んでも、具体的にどうやったら bgsound 要素の挙動を再現できるのか分かりませんでした。

<bgsound balance="0" src="seisei.mid" volume="-600" loop="infinite">

バランス、音量、ループの設定を簡単に指定できる bgsound 要素は、なるほど音楽専用で汎用性がなくて、閲覧者が随意に再生を止めたりできない欠点を持っているのでしょうけれども、シンプルで使い勝手のいい要素なんじゃないかと私は思います。object 要素は、汎用的にいろいろ使えるようですけれども、音量やループの設定はどうやればいいのやら……。

IE6 と Opera8.5 以外のブラウザで音楽が再生されるかどうか、私には確認する術がありません。ただ、bgsound 要素では音楽が再生されないこともあると作者が認識していれば、それでいいように思います。トーキー映画で音が出なかったら致命的ですけれども、映画だって無声映画の時代がありました。ましてや彩炎さんのサイトのコンテンツは小説です。基本的には文字だけで勝負できると思う。

5.

現在、MIDI が流れるのは目次だけなんですよね。これが、ちょっと私にはよく分からないところです。

各小説へのリンクをクリックすると、同じフレームの中に開かれるので、音楽は終ってしまうわけです。「target="_blank" を使わない」という思想的立場(参考記事「target 属性と信念の選択」「リンクの target 指定」「バカな閲覧者は勝手に不幸になればいい」)なのかと思ったら、夢小説の大目次から「その他」をクリックすると新しいウィンドウが開くので、target="_blank" 自体を嫌っているわけでもなさそうなので、分からなくなりました。

ふつう、目次で時間を使わないと思うのですね。ぱっぱとリンクを選択して、クリック。曲を聴く暇なんてないような気がします。

曲を聴きながら小説を読みたい方は右クリックから「新しいウィンドウで開く」を選択してくださいね、ということであれば、そういった案内があるといいのかなあ、と思いました。それくらい勝手に気付けよ、バカ、みたいな感じなのかもしれませんが。

もうひとつの方向性としては、目次から個別の小説へのリンクには全部、target 属性をつけるという手があります。まあ、これは(これも)賛否両論あるでしょうね。音楽の自動再生と同様、新しいウィンドウを開くことにも根強い批判がありますので(先に紹介した参考記事などをご覧ください)。

6.

そのほかに気になったこと、というわけでひとつだけ。

メニューフレームの top.html のデザインには少々難があるかな、と。

どう問題があるかといいますと、行の高さが 20pt と大きいのに行数が多く、しかもスクロールバーが消されているのですね。

<frame src="http://saien.nobody.jp/top.html" name="menu" scrolling="no">

画面の大きなパソコンを使っていればよいのでしょうが、まだ約半数のウェブユーザは 1024×768 以下のモニタを使っています。するとどうなるかというと、始まりの地は消えない。が見えるか見えないか、という表示結果となります。

文字サイズを小さくするか、スクロールバーを表示して、スタイルシートで三角印だけ見せるか、あるいは他の方法でもいいのですが、とにかく気になりました。(注:スクロールバーの表示をスタイルシートで制御できるのは基本的には IE だけですが、彩炎さんは IE ユーザでしょうし、IE のシェアは約9割なので、まあ、そのこと自体は大した問題ではないでしょう)

もちろん、大きなモニタを使っていない人(主にノートパソコンのユーザ)のことなんて知ったことではないと判断されるなら、それはそれでかまいません。

7.

MIDI の件も target 属性の問題もそうなのですが、ようは彩炎さんが、何をどこまで気にするかという話に過ぎません。

何も知らずに、無邪気に他者に犠牲を強いるのは残酷なことだとは思いますが、それだって、何でもかんでも十全に想像力を発揮し、問題の地平を見通すなんてことはできるものではない。せいぜい、「私の理解の及ばないところで問題が起きている可能性」に留意する程度が関の山でしょう。そしてまた、認識している問題について、誰もが満足する解決策が存在するとは限らないのです。

音楽の自動再生は閲覧者の自由を奪うのでよくない、みたいな主張はあるわけですけれども、例えばスタイルシートを使っているページがあるとしてですね、いちいち「製作者のスタイルシートを適用しますか? Yes/No」なんて選択させられたらたまらないわけでしょう。あるいは文字サイズとかの装飾でもいいです。そういったものをですね、ほとんどの人が「よいもの」と認識しているであろうという判断があって、ブラウザは自動でそれらを適用するわけです。

じつは Windows 版 IE には製作者による文字サイズや文字色の指定を無効化するオプションがあります。「ツール→インターネットオプション→ユーザ補助」の手順で設定できるわけですが、まあ、無効化したいと思う人が少ないという予想があって、こういう面倒なことになっているのだと私は理解しています。

音楽の自動再生の場合は、それを嫌う人が無視できない人数いるので、問題視されているだけの話で、ようするに人数が多いか少ないかが重要なんですね。文字サイズや文字の色だって、ときどき滅茶苦茶な指定をする人がいるわけですよ。それで全然、文章が読めなかったりして、こりゃあひどいなあ、と思うこともある。もし世の中にそういう人がやたらと多かったら、ブラウザにはいちいち「製作者の用意した文字装飾を利用しますか?」ってダイアログボックスが出ていたかもしれない。

彩炎さんのサイトを問題なく表示できるサイズのモニタを使っている人は、ウェブユーザの3~4割です。じつはそれほど少なくない。target="_blank" を嫌がる人の割合よりは多い。

無論、単純に人数とか割合だけで決められるものでもなくて、「これは重要だ」と思ったら、8割、9割の方がそこそこ納得できるラインで決着させるべきでしょうし、瑣末なことなら狭いところを狙ってもよいでしょう。例えばサイトのテーマ色などですね。どの色が好きな人も過半数にならないのですが、「青いサイトは絶対に許せません!」なんて人は滅多にいないので、サイトのテーマ色は赤でも青でも白でも何でもいいのです。

さて、私は MIDI は OK で target="_blank" もあまり気にしないけれど、1024×768 のモニタに収まらない(しかもスクロールバーを消している)デザインは気になる、と書きました。どれもおそらく、「それはちょっと嫌だなあ」と思う人の割合は大差ないと思う。だから矛盾といえば矛盾なんですよね。ようは私の価値判断において、各項目の重要度に差があるということなんですけれども……。

以上、ひとつの議論を紹介しましたが、結論を出さずに閉じようと思います。本音を書けば、「いろいろな意見があることを知った上での結論であれば、何でもいい」と思います。

8.

スタイルシートを多くのページで利用されているわけですが、各文書に記述するのは面倒だと思うのですよ。だから、外部スタイルシートファイルを利用される方がよいのではないでしょうか。

外部スタイルシートファイルって何? という場合には、以下のリンク先の解説を読んでみてください。まず基礎知識編は必読で、時間とやる気に余裕があればぜひ制作実習編LV1までは目を通していただきたいです。

お勉強したらすぐに修正するべし、なんてことはいいません。次回、リニューアルされるときに、外部スタイルシートファイルの利用を検討していただければ結構です。じゃあ、お勉強もそのときでいい? そうは思いませんね。お勉強は、するなら今すぐにでも、なさった方がいい。

完璧な理解は無用なので、「少しわかった」くらいの読み込みで、まずは一読されると世界が開けると思います。HTML についても、いろいろ考え方が変わってくるのではないか、と期待しています。いわゆる「手打ち」でサイトを作成されているようなので、HTML や CSS のお勉強することは、先々、作品を書くことに集中できる環境(更新が楽な環境)を作っていくのに必ず役立つものと私は確信します。

アドバイスは以上です。

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