はてなブックマークの個別ページにデフォルトで表示されているコメント一覧が、その一覧性ゆえに暴力装置となる件について。現在のはてブユーザーの中では少数派の意見かもしれませんが、何年も前から指摘され続けている問題であり、個人的には以下の対応策の実現をはてな運営に望みます。
ブコメ一覧が炎上状態になっていた場合(既に存在する通報システムの規約を改定し、通報の対象を拡大すれば把握可能ではないか)、はてな運営の判断でコメント一覧を個別に非表示とする。
現状はとくにひどいコメントの削除とか暴言の多いアカウントのプライベート化といった対応しかなく、有罪か無罪か、みたいな極端さ。コメント一覧ははてなが管理しているのだから、はてな運営の価値判断において「行き過ぎ」と考えるなら、通常のブログのコメント欄と同様、サクッとコメント一覧を非表示にしていけばいいと思うのです。
はてなブックマークの場合、被ブクマURIの個別ページのコメント一覧が非表示になっても、ブクマ者の個人ページは公開状態なので、発言の封殺には当たらないでしょう。だから、これは、コメントの一覧表示が必然的に生み出す「コミュニティ」を、はてな運営がどう管理していくか、という問題だと私は認識しています。
サイトの管理者が非表示を望むなら対応します、という今のやり方も、ひとつの回答としては理解できます。しかし過去の幾多のトラブルを見る限り、泣き寝入りして悔しがっている人が少なくない。はてなブックマークがユーザーをどんどん増やしていくつもりならば、運営が積極的にコミュニティに関与していく方が、最終的には社会的な摩擦が小さくなると予想します。
「炎上」というのは、ある「場」における多数派が自らの正義を確信して少数派を容赦なく叩いている状態だから、これを規制すると短期的にははてな運営に批判が集中するでしょう。
しかし、はてなブックマークというコミュニティで多数派の「正義」が圧勝したところで、社会から「悪」が消えるわけもない。また、相手が侮辱と感じるような言葉での「説得」は困難であり、仮に特定の人物を黙らせたところで、ほとんど無意味です。数の暴力で萎縮させただけに過ぎない。そうして何度でも同じような正義の暴走は起こり、炎上を放置するはてな運営を恨む人は増える一方でしょう。
自らの「正義」を信ずる多数派は、「悪」に批判が集中している様子が可視化されている状態を好みます。それゆえ、炎上したコメント欄の閉鎖やはてブのコメント一覧非表示化などに対し、「逃げるな」と批判します。批判者はブログ主のプライドを刺激して「炎上の放置=逃げない=かっこいい」と批判者に都合のいいように洗脳するので、泣き寝入りはなくなりません。
相手が「悪」なら礼儀を欠いても暴言で傷付けても構わないと考えるような人々の言動は、本題の主張の正しさとは関係なく問題だと私は思います。
池田信夫さんのはてな批判は長らく私にはよく理解できなかったのだけれども、1年半ほど前、ようやくストンと胸に落ちました。ようは、コメント一覧の非表示を「したければどうぞ」というのは話が逆だろう、と。
かつてのニコニコ動画に多くの権利者が憤慨した理由のひとつは、ニコ動運営の「削除ツールを提供するから自分で監視して削除してください」という態度でした。ふざけるな、とくに許可が出ていない限り全部ダメに決まっているのだから、ニコ動の運営が自主的に削除するのが筋だ、と。これはもっともな話なので、もうずいぶん前から、テレビ番組の丸ごとアップは運営が即削除するようになっています。(CDシングルの丸ごとアップは、なぜか放置気味……)
はてな運営の「基本は放置」というのもひとつの見識として理解はできるのだけれども、私は、そういうのはアングラ系と世間に目されている場でだけ実現されれば十分なものと考えています。
マジコンの普及とゲーム業界の危機が謳われて久しいですが、日本国内の累計販売数は100万個に満たないのだという。「えっ!?」という感じ。意外と「アングラ扱いされると普及に枷がつけられる」ようなんです。そしてはてなは、既に世間的にはアングラ系と化しつつあるのではないでしょうか。
私が思うには、正義が悪に批判の集中砲火を浴びせるショーを許容する運営方針ではメジャーたりえない。はてな運営は蛮勇を奮ってコミュニティに関与し、炎上を不可視にしてほしい。つまり、「被ブクマページ管理者の要望があれば非表示」ではなく「要望があれば非表示解除」としてほしい。
あるいは、finalventさんが主張されていたように、全てのブックマークページについてデフォルトでコメント一覧を非表示として、クリックか何かをしないと展開されない、というような障害を置くのも一案だとは思う(個人的には嫌ですが)。はてなにログインしていないとコメント一覧は非表示、という案もありました。
こんな記事はお節介かもしれないけれども、はてなブックマークほど被ブクマ側に便利な仕組みを多々用意しているオンラインブックマークサービスは他になく、唯一無二の存在といっていい。そしてガンガン利用している公開ユーザーの人数は、おそらくYahoo!ブックマークをしのいで日本一でしょう。
例えばdeliciousのような、被ブクマ側にとって面白くないサービスに天下を取られては困る。はてブには壁を乗り越えて表の世界で磐石の地位を築いていってほしいのです。