不景気の影響がいよいよ我が身に降りかかってきて、何か書かずにはいられない。でも、これ以上、同じことを何度も書くのは嫌だな……。来年まで、この話はもう書かないことにしようと思う。
ドル安が進み、アメリカへ輸出して稼ぐ企業の多い日本経済はいよいよ青息吐息。メーカー勤務の会社員として、自分自身の将来不安が次第に現実化しつつあります。先日、入社8年目にして初の年収減が確定しました。3年前の給料に逆戻り。悲しい。気分としては、3年間の積み重ねをゼロ査定されたようなものです。
日銀の経済・物価情勢の展望を読むと、頭がクラクラします。2009年も2010年も2011年もデフレが続くという。「日本銀行としては、わ が国経済が物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰していくことを粘り強く支援していく考え」だそうです。デフレで安定されてはたまらない。海外の物価上昇率はプラスだから、趨勢的に円高は続きます。
自民党政権もデフレ対策には冷淡でしたが(総裁人事こそ揉めたものの、現在の日銀の審議委員はみな自民党が推薦した方々です)、政権奪取前の民主党はもっとひどく、デフレ下で利上げを求めたほど。でも今となっては、野党時代の主張を次々撤回している民主党の「いい加減さ」に期待するしかない。
民主党は日銀の審議委員に宮尾龍蔵さんを推しました。宮尾さんは著書を読む限り金融政策の効果に懐疑的なので、「3年後までデフレが続くのは仕方がない」という意見に同調されそう。最近の金融政策決定会合は総裁・副総裁・審議委員の全員一致が続いています。今こそ中原伸之さんのようなハト派(=金融緩和派)の闘士が必要なのに……。
残念です。民主党政権は金融政策でも君子豹変してほしい!
円高ということで、為替介入をするかしないかが話題になっています。でも、為替の変動は金融政策の反映なので、為替介入それ自体にはあまり意味がありません。
ごく単純に考えてみてください。いま日本は需要不足によるデフレを放置しているので、100円で買えるモノが毎日少しずつ増えています。逆にアメリカは大胆な金融政策で緩やかなインフレを何とか維持しており、1ドルで買えるモノが少しずつ減っています。……となれば、円高にならない方が不思議です。
ただし、円で買えるのは、ほぼ日本国内で買えるモノやサービスに限られています。円を売買する人々にとって、円で買えるものの価値がデフレを上回る勢いで下がれば、デフレと円安が同時に起きます。
多くのサービスは非貿易財です。天然資源の他に売り物のないアフリカの某国で散髪が100円でも、そのために某国へ行く外国人はいません。だから某国でデフレが起きて散髪料が90円になっても、某国の通貨の人気は上がりません。そして某国の鉱山が掘り尽くされたなら、某国の通貨は諸外国の需要を失い、安くなります。
このように、インフレだから通貨安、デフレだから通貨高、と単純にはいえませんが、それでも基本的には物価上昇率の違いが長期的な為替の傾向として現れるのです。
たいへんなデフレ下、日銀は何もしない。ならば政府が、単独で金融緩和に踏み出してほしい。例えば造幣局が1兆円硬貨を数百枚発行して日銀に預け入れ、その口座から満期になった国債を「緩やかなインフレが実現されるまで」どんどん償還するのです。こうして借換債がゼロになれば、市場に約100兆円が残ります。
「政府貨幣による国債の償還は手段であり、物価の安定が目標である」という政府の説明と、日銀の「物価が異常な上昇を示したら即座に利上げで対抗する」という宣言があれば、「租税によらない国債の償還それ自体が通貨への信認を崩壊させることはない」と私は考えます。
「国債に流れるのは安全資金。償還しても実物投資や消費に回るお金は僅か。だから増税で消費を抑制して国債を償還するのはバカバカしい」という意見は全くその通りだと思う。でも政府貨幣で償還するなら問題はない。むしろ緩やかなインフレの実現までに国債残高を劇的に減らせる可能性に期待できます。
デフレが解消され、国債残高が減り、円安になれば、次第に消費は増え、景気が回復し、将来不安も減少するでしょう。「ある日突然、大インフレになり、しかも政府と日銀がそれを抑制できないまま経済が破綻する」可能性はきわめて低い、と私は考えます。政府貨幣で国債残高を減らすべし。
庶民の将来不安の元凶である国債残高を叩いてデフレを退治する一挙両得の政策……リスクはありますが、突如として経済秩序が崩壊するという意見には根拠がなく、物価を注視しつつ実行する限り危機の予防は可能です。十分に勝算はあるので、ぜひ実行してほしい!
なお、政府貨幣を福祉や公共事業など具体的な政策の財源に使うのは大反対。そんなことをしたら途中で止められない。国債の償還に用途を限ればこそ、物価をモニターしながら、いつでも貨幣量の増大を中止して借換債に戻せるのです。