「偽善? 違うね そもそも万物に善悪の区別などない」
2001.09.21 日本時間 0:45 BBC News FBI probes hijackers' identities: ハイジャック事件の実行犯とされていた人物複数が、どれも実際には人違いで、現に生きている可能性があることが分かり、米捜査当局の内部では混乱が大きくなっています。このような状況において、首謀者を特定したり、あやふやな推測にもとづき「報復先」に取り返しのつかない処置をとることについては、首を傾げざるを得ません。
名指しにこそしないものの、あたかもアフガン政府が事件を首謀したかのように世論を導く報道がなされていますが、アフガン政府(タリバン政権)まわりにあれだけの組織力・行動力があれば、まずは自国領土のわずか数パーセントを支配するにすぎない「北部同盟」(タリバン政権からみると反政府ゲリラ)を叩いて壊滅させているのではないか、との疑問を感じます。
これまで、アフガン政府から派遣された若者が英語をしゃべっただけで、ニュースになってたくらいなのに、それほど(悪く言えば)「ださい、無知で、田舎者で、単純で、近視眼的で、堅物な」タリブたちなのに、こんな「洗練された、独創的な」ことができるのでしょうか。あくまで単なる推測ですが、これほどのことができるくらいなら、とっくにタジキスタンあたりのぼろいプロペラ機かヘリコプターでも乗っ取って、フェイザーバード(なにもハイジャックなんかしなくてもやりたい放題の自国領内)のラバニ氏(反タリバンの象徴的元首)の上に大きな石か、しゅりけんか、手製爆弾でも落としてると思うのですが(ラバニの住む建物に特攻してもいいし‥‥)。こっちはホンモノの戦争なのだから、できるなら遠慮なくやってるはずですが。政府がアメリカに好意を持っていないのは、国連のごり押し制裁などの経緯を考えても明白ですが、それにしても、もし何かするなら、目の前の内戦の敵を叩くのが先だと思われ、なんとも釈然としない報道です。変なたとえで恐縮ですが、矢吹ジョーと力石徹が宿命のライバルとして決戦を前ににらみあってるという場面で、「力石は、その日の夜中、思想的に合わないという理由で海原雄山の家にしのびこみ、部屋を荒らしました」というような、とんちんかんな感じがするのです。それだけのパワーがあるなら、まず内戦にケリをつけろよーというか。
絶対にあり得ない話ではないけれど、あんまりありそうにない話。まして捜査当局が実行犯の特定さえ混乱してるし。アラブ人の(ある意味で)代表であるラディン氏に罪を着せたいのか、それともアラブでない、ローカルなアフガン政府に罪を着せたいのか、はたまたアラブのパレスティナ人のせいにしたいのか、なんか、まぜこぜで、判然としません。
ここで「ある意味で」というのは、「かつてトルコ、そして英仏、そして米ロ、さらにイスラエルに繰り返し踏みにじられてきたアラブ世界の人々の気持ち的としては、ラディン氏の行動は、象徴的な意味で分からないでもない」という気持ちの意味であって、実際の行動として、アラブ圏の人々全員がそうだという意味では、ありません。どっちにせよ、アフガンはアラブでなく、アフガンの普通の人々にとって、ラディン氏はあくまで滞在している外国人である、ということもご注意ください。
また、アフガン政府のオマル師でなく、滞在中のラディン氏のパワーだとしても、本当にこれほどなら、とっくに北部同盟をつぶして、自分が望むような国家を作り上げていたのでは、ないでしょうか。
ついでに言えば「イスラム原理主義」という言葉が一人歩きしているようですが、アメリカが支援している北部同盟側もイスラム国家建設を目指す「原理主義者」だということをお忘れなく。そもそも反タリバン側のムジャヒディーンという名前自体、ジハッド(聖戦)を戦う者たち、という意味の動名詞で、ある意味「カゲキ」ですが、これはアメリカ自身が(東西冷戦時代の「世界秩序構築」の名目のもとに)組織し、訓練し、武器援助をしてきた反政府グループです。
海上自衛隊が護衛することの是非はさておき、護衛する相手がよりにもよって「キティホーク」末代までのネタだ。
> 2000年のアフガニスタンに対する国連の動きなどを見ると、 > 今回のテロが解りやすくなるかも♪
それは「アフガニスタン」が「仕返し」をした犯人だということですか? もし万一そうだとして、「アフガニスタン」という言葉で何を意味しているのですか? 日本より広大な山国、そこに住む二千万人の多様な民族、さらには難民としてパキスタンにいる人々を意味しておられるのですか。
何の捜査もしないうちから、一体何を根拠にこんなにも簡単に、パレスチナやオサマ・ビン・ラビンの名前を大々的に報道できるのだろうか。そしてこの軽率な報道がアフガンの国内に生活をを営む大多数のアフガンの普通市民、人道援助に来ているNGO(非政治組織)NPOや国連職員の生命を脅かしていることを全く考慮していない。報道のたびに「アメリカはミサイルを既に発射したのではないか。」という不安が募る。アフガニスタンに住む全市民は、毎夜この爆撃の不安の中で日々を過ごしていかなくてはいけないのだ。米国内でこれだけ高度に飛行システムを操りテロリスト事件を起こせるというのは大変な技術である。なぜ、アメリカ国内の勢力や、日本やヨーロッパのテロリストのグループ名は一切あがらないのだろうか。アフガンから脱出できる我々国連職員はラッキーだ。不運続きのアフガンの人々のことを考えると、心が本当に痛む。
from http://www.mewmew.f2s.com/new4_jap.html
国連「このままでは国際的支援活動が行えず、弾を一発も撃たなくても数百万人のアフガン人が餓死する」という趣旨の警告。
Bush builds front against terrorism: 世界各国はアメリカの軍事侵攻を基本的には支持する方向で一致している(させられている)が、「我が国は派兵はしない」「どこが『報復先』なのか、きちんとした証拠を示すのが先だ」といった意見も多く、足並みは揃っていない。
Taleban demand proof on Bin Laden: アフガン政府、「ラディン氏の身柄を要求するなら、まず事件にかかわっているという証拠を見せてほしい」――内部の話し合いが断続的に続けられ、ラディン氏を引き渡す可能性もあったが、その途中で米「問題はラディン氏だけでない。たとえ引き渡されても攻撃する」と無茶すぎる発言。
しかしこのホンネは、オブザーバーにとっては、むしろ納得がいくもので、一般にはラディン氏引き渡しが問題の焦点だと見られていた段階で、すでにアメリカの軍事専門家が「ラディン氏になど興味ない」と発言していた(アドレナリン全開でハイになりすぎて、ついホンネが出てしまったのか)。
2001.09.20 NOTE: 「事態は信じられんぐらアホらしい方向に暴走しとるな」: 著書を宣伝する商用サイトらしいので扇情的な書き方は仕方ないとは思うが、アメリカに対するこの筋違いの嘲笑もまた、アフガンへの遠さ(一般社会からの)を感じさせて、せつなくなる。特に上記のページにうらみがあるわけでなく、たまたまたどりついたよく知らないサイトだが、どうやらありがちな誤解のようなので、ネタにさせてもらって、簡単に事実関係を整理しておこう。
アメリカ政府は、そんなまぬけではない。大統領個人の人格攻撃などするのは同じレベルのケンカで時間のムダだし、攻撃内容もあまり正しくないと思う――大統領のブレインたちは、すべて知り尽くした上で、「アジテーションを見抜く者も出る」こともじゅうじゅう承知の上で、過半数を扇動できれば充分と冷徹に決定したと見るべき。「ブッシュ、やられてキレてやんの、ばかじゃない」みたいな単純すぎる見方になぜなるのかというと、たぶん、「今回のことがきっかけでラディン叩きを始めた、アフガンだけが目的」という認識だからだろう。そうではない。前から中央アジアの複数の国にまたがる権益をにらみ、そのために、いちばん利用しやすいアフガニスタンに目をつけて巧妙なトリックプレイを重ねてきた。前大統領の時代から、すでにアフガン侵攻をするかしないか、微妙に揺れていて、最終的にブッシュにゆだねるという決定になった。そこへ、この絶好の機会。これ以上ないほど完璧な口実のネタ。大統領という「表面的なシンボル」が人間としてどうかなどどーでもよく、その背後には、多数の切れ者がひかえているに決まっている。実際に政策を決定するのは大統領個人ばかりでなかろう。
ここ一週間に起きた現象だけに基礎を置く「にわか論」かどうかは、イージス艦 Cole の事件に言及しているかどうかで見分けられるだろう。――イージス艦でもアメリカ国民は激怒したが、いざ侵攻して世界の注目が集まり、あれこれ吟味されると「ゴムボートにやられるほうもあほう。何が神の盾イージスだ」とのツッコミをまぬかれず、少々恥ずかしいという計算もあったろう。――アフガン問題のオブザーバーなら誰でも、事件を聞いた瞬間「またぞろコール。でラディンって言い出すんでしょ、アメリカさん。とほほ」という反応だったろう。そう反応することが特に鋭いとか賢いとか洞察力があるとかでなく、単にアフガン問題での「ごり押しの常識」、アフガンニュースの世界では「選挙→自民党がカネばらまく」というのと同じくらい当たり前なのが「アメリカ施設爆破→ラディンにかこつけアフガン介入」だ。
にわか論からみると、「多国籍軍、土曜に侵攻開始との未確認情報」「アメリカの報復テロにおびえる住民」といった記事に去年(2000年)の日付がついているのが不思議だろう。フレッシュな話のように思えるだろう。
オブザーバーにとっては、去年、コールが爆破されたという第一報でも、米政府が容疑者を公表しないうちから「あ、アフガンにまたミサイルか」という連想になる。確かに「風が吹けば桶屋が儲かる」みたいな変な思考回路だと思うが、それが『押しつけられてきている』論理だ。今回ほどの規模になれば、なおさらだ。しかし規模の違いなどどーでも良く、歴史の構造としては前回とそっくりそのまま、同じことが起きただけなので、記事を書く気もしなかったが、自分の身にも火の粉がふりかかりそうになって人々が関心をもってくれたので、去年書いたのと同じことをまた書いているのだ。まあ去年はたとえに「大田区」を使ったけど今年は「西脇市」を使ったとか、つまらんところをちょっと変えているが、じつは去年書いた記事をコピペして使いまわし可能なくらいだ。
ただ、ひとつ本質的に違うのは、お気づきのかたも多いと思うけれど、これまでは口実のラディンだけが現実にも目標だったのに対し、今回はラディンを「口実」にアフガニスタンそのものが目標にされた点。この点は、これまでのロジックをぶっ越えていて、「アフガン問題の常識」を知らなかった人のほうが、むしろスンナリ納得できたかもしれない。「アフガン問題の常識」を知っているつもりのオブザーバーのほうが、かえって「そういうロジックもありなわけ?」とびっくりしたかもしれない。自分自身は、そうだった(理解できない、と違和感をもった)――「チシキ」があるとかえってそれにとらわれてしまう悪い例だ。この点に関しては。アメリカは本当に独創的だと思う。枯れ葉剤にせよ劣化ウランにせよ、よくそんなこと思いつけるなあと、非道さにはあきれながらも、まじめに感心する部分も多々あるのだ。
(ファゴット)♪ゆめを〜また〜り輝ぐ夜姫〜
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一般に、AとBが争ってるとして、Aの言い分を聞けばBが悪いとなり逆もまたそうだろう。Aの主張するBの悪い点は(誇張やデッチアゲもあるとしても)中には事実の指摘もあるはずだ。――そこまではいい。つまりBにも悪い点は、ある。分からないのは、Bに悪い点がある、という事実なり宣伝なりをもって「Aは正しい」の証明とみなす、という人々の精神構造。例えばタリバンと反タリバンでも、交通違反者と取り締まり側でも、トムとジェリーでも、シルベスターとトゥイーティーでも、一方が悪い事をしてるというだけで他方を――なんら吟味せぬまま――正義だと思える人々の精神構造が理解できない。
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カキコをつらつら見てる。アメリカ地域というかたの多くは「なぜ世界中が立ち上がらないのか」「これは世界大戦ですよ」とふしぎがっている。――TVヘッドギアを常時装着し、死を暗示する恐ろしい映像を見せながら耳元で「悪いのは○○です」と繰り返しささやかれつづければ、やっぱこうなるのかな。もっとも、わざわざカキコする人はアグレッシブな人だけなので、統計的に無作為抽出された標本とは言えない。たぶん「これは侵略だ」なんて言ったらヒコクミン扱いされるのであろうか。他地域というかたがたは「たしかに大規模テロだが世界大戦ん?(犯人も不明なのに)」という点では、ほぼ一致しているものの、リアクションは、いろいろだ。ホンネとしては「巻き込まれたくない」という気分も多分に感じられるが、イギリスのかたも揺れている。
従来アフガンニュースは、タリバン寄りANCとアメリカ寄りAOPをリスンしていたが、現時点では、ANC, AOP のどちらも「あまりに直接的な当事者」になってしまったので、BBCを中心にワッチしてます。(CNNは初めから問題外。BBCが日頃から毎日Kate Clarkの現地レポートを出していたのに対し、CNNは扇情的なネタがない限り一か月に一本もアフガンニュースを出さないくせにタリバンを叩けるネタが入ったときだけ大騒ぎ)
2001.09.19 US aims beyond Bin Laden: BBC News 日本時間2:21発 The United States has indicated that the surrender of Osama Bin Laden would not be enough to avert a military strike against terrorism. つまりラディンを引き渡そうが引き渡すまいが、この機会をとらえて軍事侵攻を行うという意思表明です――中央アジアの豊富な天然資源にからむ利権争い(第二次グレートゲーム)は意外な展開を迎えそうです。しかしまだ「ただのポーズ」の可能性といういちるの望みがあります。(2:56)
「戦争は悪いから悪い」では意味がない。そんな一般論は、どうでもいい。個々の事例の問題だ。「戦争は悪くないから悪くない」も同じ。日本地域の人々の多くは、たぶん歴史的経験から「戦争→負けた→悲惨な結果→良くないこと」という集合的無意識があるのだろう。そしてだからこそ「戦争=良くないこと」と断定することに敗戦のコンプレックスを刺激され、そのコンプレックスを克服したいからこそ「わたしは戦争を支持する」と言ってみるのだろう。「戦争はいけません」なんて甘いとか「平和ボケ」と、ことさら偽悪的にふるまって「自分は、もう一人前なのだ」と誇示して見せるのだろう。――どっちにしても、「父親」(アメリカ)の権威への怯え、または、怯える自分へのやるせなさ、怯えの裏返しである父親への反発にとらわれている。
「戦争=良くない」と短絡して思考停止して実質的な判断をしないのも敗戦コンプレックスなら、「戦争=良くない」を否定することそれ自体を目的として実質的な判断が鈍るのも敗戦コンプレックスの裏返しだ。「反動誇張」だ。
「新しい歴史教科書」の話も、根元は、むしろ共感できる。敗戦の無意識的トラウマをいつまでも引きずらず、精神的に自立したいという本質においては。しかし、自分自身の本当の感じ方から目をそらし、自分を偽り、過去の行為が正しかったと言い張ることではトラウマは断ち切れない。克服するためには、イヤというほど直視しなければならない。内面的な問題なのだ。
もう子どもでないという意味で、もっとべつの意味で、親離れしてほしい。
親米的な友好国として、真の「親友」であればこそできること、すべきことは、相手がやりたいということをすべて手放しで「大賛成」と請け合うことでは、あるまい。自分自身の意見を持ち、率直に伝えるのが友人の態度だ。
経済的な損得も大事だが、経済的に繁栄しても心が満たされなければいつまでも荒廃は続くだろう。
リーサ・トゥーリネン
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2001.09.19 Foreign leaders head for US BBC News 日本時間9/18 23:38発 - 各国首脳が次々と訪米。我が英国のようなアメリカと強い友好関係にある同盟国であっても、侵攻の是非以前の問題として、まずはオサマ・ビン・ラディン氏の関与を示すもっとちゃんとした証拠を示してほしいと要求するのは当然のことだ。ブッシュ政権は国際社会の支持をとりつけるのに必死だが、「国際的な支持が得られようが得られまいが必要ならひとりでもやりたいことをやる。(国内問題なのだから)アメリカには、そうする権利があるのだ」と既に表明している。――としてBBCは国際社会のルールを無視しかねないアメリカを暗に批判。(0:26)
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US trials of Muslims delayed: Judges in the US have postponed several trials of Muslims amid fears that they are unlikely to receive a fair hearing in a climate of rising racial tension. ... Judges are concerned that jurors at trials of Muslims may hold views of the defendants strongly influenced by recent events.
米国内で、イスラム教徒が被告になっている裁判がいくつも延期。冷静な裁判官たちは「今のアメリカ国民の状態では、陪審員は公平な判断ができない」と見た。
これは決して一般論としてアメリカ国民が偏見に満ちているというより、今回のこの事例に関して、そういうふうに扇動してきたマスコミの使い方(by カスピ海の天然資源を横取りしたい人 etc)に問題があるように思います。冷静に考えれば、あれほど巧妙かつ重大な事件であってみれば、その日のうちに真相が解明され犯人が特定されるなんてあり得ない。――それにしてもアメリカの軍事専門家、「米政府はラディンの引き渡しには興味ないと思う」は、くちがすべりすぎですな。まぁ一般のアメリカ人はアフガン紛争の背景を学校で教わらないだろうから、この失言というかホンネの意味が分からないのだろうけど‥‥。
2001.09.18 Afghan exodus gathers pace BBC News 日本時間22:59発 - 報道によると、オサマを引き渡すかどうかは、聖職者ら1000人による特別な会合(Shura)で決定されるというが、その開催は、少なくとも1日延期された。(23:14)
ハイジャックされた飛行機に対し、ワシントン(ホワイトハウス)に接近するなら撃墜せよとの命令が出ていたことが公式に発表されたが、すでに書いたように、撃墜は当然のことであり、支持されるべきだ。
他方、「テロリストとの戦争」と称するものについて言えば、一般論として戦争それ自体は必ずしも悪じゃないが、この場合に関しては支持できない。第一に効果が期待できない。第二に象がアリを踏みつぶすようなもので、そもそも「戦争」ですらない。天然資源の権益などをにらんでの横暴な弱い者いじめだ。
「アメリカを怒らせると怖い」という恐怖感を植え付けることで、ある程度「小心者の抗議活動家」を思いとどまらせることができる効果はあるが、それだけだ。――コンピュータウィルスを広めたヤツは拷問のうえ死刑、という法律ができたと仮定してみよう。たしかにウィルス作者は恐れをなしてコンピュータウィルスは減るだろう。が、死刑になっても(死んでも)かまわないという考えの者なら平気でウィルスを撒き散らすに違いない。これに反して、ウィルスやセキュリティホールに対するそれなりの防御があれば、なにも刑罰でびびらせなくとも、リスクを回避できる。「やりたいけど、やると罰せられるからやらない」といった「相手の人間のあやふやな心理」などあてにせず、きちんと自分の側でウィルス対策ソフトを導入し、セキュアなファイアウォールを構築すれば、たとえウィルス入りメールを送りつけられても少しも困らない。
ウィルス入りメールを送りつけられHDを破壊されたから、もっと凶悪なウィルスをまいて仕返しするなんてのは、前世紀の猿の論理だ。旅客機がハイジャックされる危険があることは前々から分かりきったこと。子どもでも知ってること。セキュリティチェックがしっかりしている航空会社なら、そもそも機内に凶器など持ち込めない。ましてや過激な抗議活動の標的にされかねないことを続けてきた国だ。にもかかわらず、機内持ち込み品のチェックは(専門家に言わせれば)「あってないようなもの」なのだという。――これでは「公園のベンチに札束を置いておいたら盗まれた」というようなものではないか。盗みは悪にしても、「二度とこんなことがないように、公園のベンチに置き忘れた札束を盗んだヤツをひっとらえ、手足切断の極刑にして見せしめにしよう。そうすれば置き引きはなくなる」というようなあやふやな発想はやめて、「公園のベンチに貴重なものを置いて昼寝する」習慣を改めたほうが良い。
報復の論理では、「たとえ自分が死のうが戦争になって自国が空爆されようが構わない。とにかくアメリカへの恨みを晴らすのみ」という捨て鉢なテロリストを思いとどまらせることは、できない。それどころか、「アメリカを怒らせれば、自分の国の政府をアメリカが叩いてくれる」という前例になると、AならAという国の過激な反政府テロリストは、これ見よがしに「A国のアメリカに対する恨みを晴らすのだ!」なんて声明を出して特攻するであろう。アメリカは報復としてA国を爆撃――特攻したA国の反政府テロリストの意図通りだ。その人がやりたくても自分のちからではできなかったことを代わりにやってあげるテロ支援国家となる。
ハイジャックは人命をもてあそぶひれつな犯罪だが、それが分かっているからこそ、予防策があまりにずさんであれば、批判もされよう――「電子の要塞」イージス艦「コール」がゴムボートに沈められそうになったのをみても、たしかに破壊活動を伴う過激な抗議活動が好ましいわけないけれど(個人的にはグリンピースでさえ気にくわない)、ゴムボートに軍艦がやられるなんて、「やられたほうも恥ずかしい」と言わざるを得ない。ハイジャックを可能にするような凶器(具体的に何だったのか知らないが)をホイホイ持ち込まれ、少なくとも4機が次々乗っ取られてしまうのも、似て非なるものでは、なく、テロリストへの怒りがいかに大きいとしても、だからといってハイジャック対策に不備がなかったのかの点検を忘れて良いことには、ならない。
セキュリティ対策のぬかりや「そもそもなぜこういう命をかけた過激な抗議活動が行われるのか」という当然の疑問から自国民の目をそらしたい気持ちは理解できるが、そのためには「イスラム教徒はキリスト教徒を殺したがっているのだ」といった嘘のイメージを作らざるを得ず、本来、宗教とまったく無関係とも思われる事件なのに、イスラム教徒が暴行されたりといった無益ないさかいが拡大しているのは、好ましいこととは思えない。
2001.09.18 ラディン氏引き渡すか今日決定か: Taleban to decide Bin Laden fate BBC News 日本時間01:28発: アフガン政府首脳オマル師は、パキスタンのAbdul Sattar 外相と会談。外相は「時間が差し迫っている。最後通告や宣戦布告などはないだろうが、もう時間切れだ」として、ラディン氏をアメリカに引き渡すよう、うながした。これをうけてオマル師は、ラディン氏をアメリカに引き渡すかどうか日本時間のきょう(18日)政府内で決定すると発表。※もし仮にラディン氏がアメリカに引き渡されると、アメリカは軍事介入の口実を失ってしまう。いざ引き渡すと言われたときアメリカはどのようにそれを拒否するのか、あるいは口実のラディン氏が現に引き渡されても何らかの理由をつけて侵攻をするのか、動向が注目される。(2:20)
2001.09.18 追記 Afghan exodus gathers pace BBC News 日本時間22:59発 - 報道によると、オサマを引き渡すかどうかは、聖職者ら1000人による特別な会合(Shura)で決定されるというが、その開催は、少なくとも1日延期された。
2001.09.17 Bush ponders hits on terror chiefs BBC日本時間21:25発: アメリカは他国政府首脳(複数)の暗殺も検討。――「米国政府関係者が海外要人を殺すことを禁止したフォード大統領の決定(1976)の見直しを含め、あらゆることを再検討する」とパウエル国務長官。アメリカでは、暗殺は、議会の承認なしに大統領の判断のみで可能。今回の件では「60か国が報復戦争の対象となりうる」としている。
2001.09.18 ノリノリ「系」と愉快な仲間たち:「インド系住民」「アルバニア系住民」「中国系住民」「レバノン系住民」‥‥フン、おまえ日本系だろ? 猛毒を撒き散らすような日本系住民の言うことなんか、聴く耳持たないね!「日本系だもんなアイツ〜。日本系ってカミカゼ・テロ精神だから怖いよ。やられる前に皆殺しにしたほうが世界平和のためだね>日本系」
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2001.09.18 今回のハイジャック事件を知って以来、初めてほかのコラム系サイトを見てみた。米大規模テロの犯人像を考えるというページだ。「アメリカが先にビンラディンを暗殺しようとした?」と太字の小見出し。そうだとしてもだれも驚かないようなことが太字になっているところに、アフガン問題への距離の遠さ(「国際社会」からみての)が感じられて、ちょっとせつない。オクラホマシティの件とからめているのは良い視点だ。自分自身まっさきに連想したことで、「普通のアメリカ人が狂信的な行動に走った」という記述は少し不正確だが(ティモシーは「狂気の湾岸」帰り。ある意味、かれも戦争の犠牲者)、このときの教訓が今回は生かされていたという話は、ここを読むまで知らなかった――てっきり石仏の件のときみたいにCNNあたりが反アラブ憎悪をあおるプロパガンダをしまくっているのかと思っていた。
情報担当スタッフも、いつまで国民が簡単に踊らされると思わないほうがいいだろう。ましてやインターネットの時代だ。情報を一元的に支配することは困難だ。公式発表以外にも、いろいろな見方のいろいろな情報が流れる。人間中心の古い世代の人々は「いろいろな見方」におののき、自分の見方と違えばすべて「偏った悪い情報」と腹を立てるしかのうがないかもしれないが、情報中心の名無し世代はもっとスマートだ――偏っていて当たり前、というかガセが交じっていて当たり前、という前提から出発する。いろんな見方があることを「多様で豊か」と考え、極端なカキコさえ「そういう考え方もあるのか」とクールに参考にしながら、自分のビューを作ってく。「存在するすべての情報が現実」なのだ。
AならAという見方ばかりが垂れ流されていれば、わざと徹底的に正反対の見方をしてみることで、より高い総合的な判断が可能になるかもしれない。一般論としてもそうだが、ことアフガニスタンに関しては、垂れ流されている「ふつう」の見方のほうがあまりに偏っている点、アフガン問題を少しでも自分で調べたことがある者なら、程度の差はあれ、同意するだろう。パキスタンのドーンだけを見ていては偏ってしまうのと同様、ニホンのアサヒだけを見ていては偏ってしまう。たとえ日本のマスコミが伝えるアフガン関連情報を全部チェックしても、事実関係がすっきり透明に見通せて「そういうことなのか」とよく分かるってことは、たぶんないだろう。報道が偏ってるというより報道する側もよく分かってないというか、正直、結局のところアフガンのことなど興味ないってのがホンネだろう。といっても日本人は、けっこう根は優しい人が多いので、事実を知れば心を痛めると思う。アメリカにひとこと「NO」と言えればいいのに。「やめときな」って言えれば。「気持ちは分かるし同盟国だけど、同盟国であり本当の友人であるからこそ、こころから忠告する」って。無理かな?