Photos quoted from NATO - Refugee Convoy, NATO Killings
コトバで「空爆」というと、ただ透きとおったひびきかもしれないが、空の上に星があるように、空の下には人がいる。
写真の説明によると、「コソボで、避難民を輸送中のトラックをF16が上空から目ざとく発見、米パイロットは空爆を続け、75名を殺害した」のだという。KLA(コソボの急進的組織(過激派))を「支援」するための行動だが、一般には「NATO不要論のなかでNATOの存在をアピールした」と解釈されている。出撃した兵士たち自身は、いやいやだったらしい。
比較的情報が出やすいユーゴですら、真相は、よく分からない。ましてやチェチェンやイラクなど、攻撃をした側自身の「公式発表」以外、ほとんど情報がない。劣化ウラン弾のことだって、たまたまばれてしまった氷山の一角なのかもしれない。
Grdelica Canyon の鉄橋破壊も悪名高い。軍事的には橋の破壊が目的だったのに、わざわざ列車が橋を渡っているときに攻撃し、多数の乗客が犠牲になった。シューティングゲームでもやってるつもりなのか。
列車が高速すぎてよけられなかったと言い張ったが記者会見で見せた説明用のビデオが、細工されていた(早回し)というオチ。
ボタンひとつでこの結果。べんりな世の中になったものだ。人間だったモノの姿が識別できるだろうか。この婦人は「狂気の無差別テロにあった」と思いながら死んでいったのかも、しれない。
セルビア人の住む郊外の町に、ある夜、NATOはミサイルを撃ち込んだ。こんな「部品」を病院に運んでも仕方ない。軍需産業をうるおすと、副産物として奇妙な肉塊が生じるものだ。スライム状にとけかけた人間。そしてまた肉塊。
ユーゴスラビアのコソボだけに限っても、アメリカ(NATO)のテロ活動の結果は本当にひさんで正視に耐えないが、劣化ウラン弾の影響でアメリカ兵自身も、のちに人間とは思えない形態の赤ん坊の親になる。アメリカ兵も被害者なのだ。そんな兵器を自軍の兵士に使わせる軍上層部、ひいては兵器を製造する企業に責任がある。何を思いながら息を引き取ったのか。いったい何を? 平和のための正義のタタカイ? たしかに世界平和のためなら命を捨てる人もいよう、が、ご承知のように、コソボもまたNATOの介入で、平和どころか、かえって泥沼化しただけだ。もし空爆の効果で「平和」になっていたと仮定しても、それは暴力による支配と言わざるを得ない。
何を思いながら、死んでいったのか。ただれた全身、火の苦悶のなかで。ゆえなく殺された者たちが残したのは、沈黙の叫びだけ。なんと言っているのだろうか。「復讐してほしい」と? それとも「もうひとりでもこんな目にあってほしくない」と?
「わたしは身内を殺された、犯人に厳罰を」という気持ちは、よく分かる。アメリカの政策に恨みや怒りがある人々とアメリカ(政府)のあいだのことに、無関係な人が巻き込まれたのだから。だからこそ、アメリカに恨みがある人々とアメリカ政府のあいだで、話をつけてほしい。関係ない民間人をこれ以上、巻き込まないでほしい。無惨な死がいかに多くの人のこころに深い傷を残すか。人が死ぬとは、どういうことか。いま殴られたばかりなのに、無関係なのに殴られたらどんなに腹が立つか、理解できないのだろうか‥‥。
中東の石油の確保? パイプラインの権益? 軍需産業を軸にした景気のてこ入れ? カネと呼ばれる紙切れを集めるためなら地球なんて惜しくないという大統領であることは京都議定書の件からも想像がつくけれど、できることなら、どうか先々まで考えて賢明な判断をしてほしい。戦争に負けたことのない国、空から爆弾が落ちてきた経験のない国には、難しいのかもしれないが、助言してくれる友だちくらい、いると思う――。
米ロがアフガニスタンに侵攻したがっていて、いつあってもおかしくなかったこと、多国籍軍の話、そして、ことあるごとにラディンが口実にされること。アフガニスタンのページをごらんになったかたなら、これらは、すべて前々からのことで、珍しくも何ともない話だとご存知でしょう。
また、ホンネが破壊活動家(テロリスト)との戦いなどでないことも、ご承知の通りです(アメリカの場合。ロシアは、ある理由から政府への抗議活動を行う人々を叩くことそれ自体をホンネの目的のひとつとしている)。
アフガニスタンのページ13に数日前にメモしたように、アメリカが戦争とか言っているのも、もう今年の初めからのことで、今さら驚くことでもありません。コール事件のときも、こうなるのではとの不安が広まりました。
オサマをターゲットに、オサマがいそうなところだけを叩くなら分かります(というか、すでにアメリカは、それをやったことがあります)。しかし、「オサマ」がアフガニスタンという国それ自体と戦争することの口実になるとは驚きました。アフガニスタン政府のトップであるオマル師と、単にアフガニスタンに潜伏しているだけのオサマを混同していませんか?
口実だから何でもいいようなものの、この口実を議論の前提にして、「テロリストは許せないが戦争は良くない」だの「いや戦争もやむない」だの話しているのは、まったく理解できません。アフガニスタン政府は、少なくとも現時点では、今回の「テロ活動」とまったく無関係でしょう。「凶悪犯罪の実行犯とつながりがある疑いのあるフランス人が兵庫県西脇市に潜伏しているので、日本と戦争する、東京を叩く、日本政府関係者を戦犯として皆殺しにする」というのと同じくらい、ちんぷんかんぷんです。口実にすらなっていない。
アフガニスタンって、日本より広い国なんですよ。最高地点は富士山の倍くらいの標高あるし。
これまでの安保理制裁、追加制裁も「客人のオサマを引き渡せ。さもなくんば経済制裁で飢えさせる」という内容で、それすら非人道的としてアナンからすら非難されていた(国連事務総長や国連加盟国の多数派が反対していることを5つの国が「国連の名において」実行できてしまうという構造)。客人を引き渡さなければ、お前の国を全滅させる、みたいな発想は、まったく理解できません。ちからによる強制、脅迫、まさにテロ。
しかも、オサマですら、単に「もしかすると事件と関係あるかもしれない」というだけで(コールのときもそうでしたが)プロパガンダにあるような「黒幕」である物証は、皆無。たとえ容疑者ないし重要参考人だとしても――疑わしきは被告の利益にとまでは言わないにしても、動かぬ証拠があるわけでもないのに、アメリカが「オサマがあやしい」と言い張るだけで、前回のミサイル攻撃(モニカ・ミサイル)が正当化されるのかどうか。アメリカが「オサマがあやしい」と言い張るだけで、それをうのみにしていいのかどうか。湾岸戦争のときの「イラクの環境テロ」と称するあのヤラセの「油まみれの鳥」の映像に象徴されるような、これまでの宣伝工作をお忘れですか? パトリオットだって命中率は大本営発表の数十分の一だったし「ピンポイント爆撃」だって実際にはデタラメで多くの民間人が劣化ウランで白血病になっている現実。戦争は良くないとは思うが‥‥というかたですら、オサマは悪いということは無批判の前提にされているようですが、戦争の口実をほしがっている国の「発表」以外に、オサマについて、何かご存知なのですか? どの解説をみても「黒幕“と言われている”」だの「”とみられる”」などと変な受動態が並んでいるだけで、受動態の動作主は「そう言い張りたい人々」なのだから、結局、説得力のある証拠などないのにそう繰り返して人々を洗脳しているとでも言わざるを得ません。
そして何より、アフガニスタン人ですらないオサマは、アフガニスタンという国とは本質的には無関係でしょう。(関係あるのは、アフガニスタンという国のなかのほんの少数の政府関係者だけ。しかもアフガニスタン政府が、オサマの活動の活動資金を援助してるわけですらない。オサマ自身のほうがアフガン政府より金持ちなのでは?)
多くの人々が、アフガニスタンをイスラム教国というだけでアラブと勘違いしてみたり(それじゃインドネシアもアラブ? もしやアフガニスタンではアラビア語が公用語だとか思ってる?)、アフガニスタンが地理的に中東地域でイスラエルの隣のへんにあると思ってみたり(パレスティナ問題と混同?)、なんか議論の基本的枠組みもゆがんでるような‥‥検索エンジンは分類のエキスパートのハズだが、妖精現実のアフガニスタンのページを「イスラエル」に入れてる無知まるだしなディレクトリ検索もある(証拠画像)。「韓国旅行の情報リンク集」に「アイヌ民族博物館」が入ってるようなもの。となりの国と混同するならまだしもイスラエル、ヨルダン、イラク、イラン、アフガニスタン、4つくらい国境を越えた何千キロも離れたぜんぜんべつの国。日本、中国、アフガニスタン、イラン、イラクと見れば、日本とイラクをごっちゃにするのと同じレベル。お話にならない。
もちろん、Lycos のこのページのように、もっとまともで役立つリンク集もあります。
そもそも、アフガニスタンなんて、世界で一二を争うといっていいくらい、弱い国だよ。世界最貧国だよ。今だってアメリカの食糧援助を受けて、それでも飢え死にしてるんだよ。ぶくぶくに太ったライオンと利己的なシロクマとどう猛なパンダとぬけめないトラとぬらくらした巨大電気ウナギが、よってたかって、すでに半殺しになってるネズミを取り囲み、もてあそぶみたいなもんだよ。事実上「言うことを聞くか、死ぬか選べ」って言ってることだよ。こんな不条理、すんなり認めて降伏するのかなあ。不条理だけど、降伏すれば虐殺されず水と食べ物もらえるしなあ。うーーーん。結果的には、アフガニスタン人にとって物質的には福祉向上につながるのかもねえ(こころには深い屈辱とトラウマを負うとしても)。国民全員が抵抗もできずに虐殺されるよりは降伏するんだろうなあ。まあ、死なばもろともと猫をかむ窮鼠(きゅうそ)も出るでしょうが。
まあ、敗戦の屈辱のトラウマがあると、猛烈に働いて高度経済成長の原動力にもなるかもね。劣化ウラン除去装置コスモクリーナーを求めて宇宙へ飛び立つアフガン製アニメが国内でヒットするし。
米ロの代理戦争のコマにされてから二十年以上、戦争しか知らないで育った人たち。「戦争でない状態」というのがどんなものか知らない。一度も安心して本当にぐっすり眠れた夜などないような、失うべき財産もない貧しい人たち。叩くって、すでに内戦で倒壊してる建物の上に爆弾まくんですか。難民キャンプで飢えている人々に、野戦病院でうめいている少年兵の上に、またぞろ劣化ウランでもばらまくんですか。
竹槍とは言わないまでも、せいぜい旧式のロケット弾程度にカラシニコフしかなかろうに、アメリカの宇宙兵器だかなんだか湾岸のときみたいに最新電子兵器のテスト場にされちゃかなわんよ。泥の壁、天井は星空、電話なんて使ったことない、電気もないのでテレビもないという寒い「町」を、電子のかたまりみたいな最新鋭爆撃機で成層圏あたりから鼻くそほじりながら叩くわけ?
――それは戦争じゃないよ。
病気の赤ん坊の顔を土足で踏みつけるようなものだよ。サディスティックな笑みにくちびるゆがめつつ重みかけてく。支持できるかできないかという以前だよ。いわゆる普通にいう親米的、反米的なんていうくくりですらくくれない、「蛮行」とすら言えない。平和維持軍の米兵がコソボで現地の女の子をレイプ殺人したときだって、それは悪いことだけれどありえる事件だという意味で理解できた。しかし「アメリカの飛行機がハイジャックされた、犯人はオサマと関係あるらしい、“だから”アフガニスタンと戦争する」なんて、支離滅裂とか、ナンセンスとか、そんなコトバで言い表せないくらい分からない。
オサマ・ビン・ラディンは、もしそんなことになれば、自分から死刑判決のでっちあげ裁判を受けにアメリカに行くかも知れない。じつは前にも一度「わたしがいるとアフガニスタンの人に迷惑がかかるから」と言ってオサマがアフガンを去るというニュース(結局、ただのウワサだったらしいが)があって、そのときも、ありえることだなぁと思ったものだ。遠くにいるから勝手に一方的に悪者にできるけど、オサマの素顔を見、目の前で語るコトバが伝えられたとき――(ソ連時代、アメリカが何兆円もかけて反政府テロを全面支援してたことを証言したとしたら――)。やっぱりアメリカは、もう口実としての用済みになったオサマは喋らせないで殺すしかあるまい。裁判なんてやったら自分のほうがやばいもの。でもオサマがそんなふうに殺されたら、それを殉教だとか言って、またもえ~の若者が出たりして。
べつに中央アジアのどこか遠くに、イスラム教ガチガチの古くさい国がひとつふたつあってもいいじゃん。あったからって日本に不利益になるわけでもなかろうに。無理やり抑えつけ人命を取引材料に内政干渉するからケンカになるのでは? 古くさいキリスト教な国とかいっぱいあるんだから。イスラム教ガチガチでスタートしたって、その国の国民の考えが変われば自然と文化が変わって国も変わるよ。アメリカ流の権益至上主義が良いものなら、無理やり押しつけなくても、自然と広まるでしょうし。またアラブやイスラムの文化のなかにも――たとえその大半は、ほかの文化圏からみて変だとしても――きっと、独自のうつくしさみたいな面も多少は、あるかもしれないし。ドビュッシーの「アラベスク」なんて繊細で美しいピアノ曲だよね、アラベスク様式の文様からインスピレーションを得ているのでしょうけど。コーヒー文化も今じゃ人類共有の財産だし。イスラム教関連だから全面的に間違いというのは、キリスト教徒のやることだからすべて正しいというくらい頭悪すぎ。
想像してごらん。この世に国境なんてないと。
地球上どの国に行っても安心して同じ味のビッグマックが食べられて
同じ味のげっぷがでると。
世界のコトバ、マクドナルド。
でも、モスバーガーのほうがおいしいよね☆
Mozilla.org が、Mozilla 0.9.4 の最初のビルドをリリースしました。
正式なバージョン番号は 5.0.0.9.4.2001091311 です。正式リリース版とされる「Mozilla 1.0」(すなわち version 5.0.1.0.0)が出たとき、一般のユーザがそれを「Mozilla 1.0」と呼ぶかそれとも「Mozilla 5」と呼ぶか、分かりません。
以下、主に手元の Windows版について。見た目としては、外観がスマートになりました。サイドバーを出さない場合、左側の枠線がほとんど消えて、スッキリ。Mozilla 0.9.3の画面(32KB)と比較していただくと一目瞭然でしょう。洗練された、スマートでクールで美しい感じがします。キャプチャ画像(90KB)をごらんください。
Windows 版では、簡易起動がデフォルトでオンになりました。インストールのときデフォルトでチェックが入っていますが、このチェックを外せば無効にすることもできます。またもちろんインストール後に edit-preferences-advanced メニューから設定変更も可能です。名前は Quick Launch ですが、不可視ウィンドウで常時起動(常駐)させる機能なので使用メモリ量にご注意ください(30~50MB程度)。この機能を使うとタスクトレイに小さなアイコンが出ます。右クリックから常駐終了させることができます。よくあるパターンです。
インストーラを使うと、デフォルトでは、関連付けをすべて奪おうとします。
リリースノートによると、ポップアップキラー機能が改善されています。ページロード中に限って、windows.open メソッドを無効にし、ポップアップおよびポップアンダー広告を開かせないようにできるとのこと。ポップアップキラーは、べんりですが、半面、必要なウィンドウまでも広告と誤認して撃墜してしまうふべんもあります。今回の新機能はユーザが自分でクリックして新しいウィンドウを立ち上げたときには、それを閉じず、ページのロードとともに同時に(ユーザの意思と無関係に)開くウィンドウのみを無効化の対象にしたもので、良い発想と思われます。
アラビア語のサポートは、まだ不完全だと記されていますが、0.9.3+ の段階で、Windows版は、かなりいい線まで達しています。また、任意の場所(パス)にあるファイルを、ブックマーク用のファイルとして利用できるようになりました。自分用のディレクトリにある bookmark.htm を読み込ませたりもできるわけです。
サイドバーに HTML/CSS2 のクイックリファレンスをつけましょう、という話もリリースノートにありますが、これはネットスケープのれいの「神がかり」シリーズ(Evangelism)のもの。デフォルトで初めからついてるわけでなく、希望者用のアドオンです。
BBC News | In Depth | America Attacked - 現地時間(EDT=アメリカ東部夏時間)2001年9月11日の朝(日本時間、同日22~23時ごろ)、アメリカ合衆国の国内線・民間ジェット旅客機・少なくとも4機が次々とハイジャックされた。うち2機はニューヨークの世界貿易センタービル(the World Trade Center)に体当たりしてこれを破壊、1機は国防総省の本部(ペンタゴン)に墜落、ペンタゴンの一部が破壊された。残りの1機はペンシルバニア州郊外に墜落した(または撃墜された)。
各機には、乗員と乗客あわせて40~90名程度が乗っていたとされるが、全員死亡したと発表された。また、体当たりを受けたビルや墜落現場でもまきぞえで死傷者が出たもよう。
アメリカ政府当局は、12日現在、事件の詳細を公表していない。れいによって世論誘導をねらった「リーク情報」はリークされているようだが、ネット上をちらっとみた限りでは単純に扇動されている者は少なく、全般的には冷静な受け止められ方をしているようだ。
セキュリティの専門家のなかには、あまりにずさんなハイジャック対策がうんだ人災であるとの見方も出ている。Paul Bracken教授(イエール大学、国家安全保障論)はワイアードの記事のなかで、
Unlike Israel's El Al Airlines -- which sets a standard for airline security by stationing armed "sky marshals" on board every flight -- the security implemented by U.S. airlines is merely a "façade."
‥‥と指摘している。イスラエルの航空機は――パレスティナ問題等でこれまでもしばしばテロの標的にされてきたすえ――現在、すべての便に複数の sky marshals(乗っ取り防止のための訓練を受けた武装スタッフ)を常駐させている。また、イスラエルの航空機のセキュリティは名実ともに高く、1976年以降、一機もハイジャックされていないという。
これに反して、アメリカ合衆国の航空線のセキュリティチェックは、あってないようなものだ。機内への武器、危険物の持ち込みを監視する金属探知器を担当しているのはコンビニのバイト感覚のフリーター。「時給700円」といった感じでやとわれ、大量の乗客を、流れ作業でてきとーにさばいているという。わずかのコストをけちらず、きちんとした訓練を受けた正社員のスタッフとプラスチック爆弾でも検知できる装置を導入しておけば、もっとずっとセキュアになることは明らかだ。いくら資本主義のきびしい競争下とは言え、わずかのお金のために乗客のいのちをあやふやに扱っていると、根本的な信頼を失って元も子もなくなるのでないか。上記記事でも「This is not their fault. This is management's fault.」(バイトが悪いのでない。バイトですませようとするリスク・マネージメント感覚が過失なのだ)と指摘されている。
たとえ万一、アメリカ政府が裏からハイジャック犯を支援していたとしてさえ(それと知りつつ積極的に妨害しない場合とか‥‥)、民間の航空会社がそれなりのセキュリティチェックをしていれば、みずぎわで防げる可能性があるし、防げなければならない。次々と4機も乗っ取られてしまうのは――それも戦車で突っ込んでとかの強引な強行突破でなく正規の乗客としてホイホイと乗り込んで――、どうも、防御側にも問題があるようだ。盗まれれば致命的な結果になる機密の入った金庫に、ちゃんと鍵をかけずにほうっておくようなセキュリティ感覚だからだ。
アメリカの海軍には、百以上のミサイルが同時飛来しても完全に迎撃できる「ゼウスの盾」イージス艦があるが、これも、ゴムボートによる体当たりであっけなく沈没させられそうになり、多くの犠牲者が出た。このときも、「接近する不審な小型艇は、高圧放水で阻止する」という基本の手順が守られていなかったのであるが、艦長以下、関係者は処分されなかった。
よく言われるように、ハイジャックにせよ航空事故にせよ、犯人や責任者を明らかにして罪を追及することも必要かもしれないが、現実的にいちばん重要なのは、再発防止(つまり乗客のセキュリティを守ること)のために事実関係を明らかにすることだろう。犯人を殺してやりたいだの、ついでに犯人の一族郎党を皆殺しにしてやるだの、いやそれではまだ生ぬるい、犯人の生まれ故郷の町を全滅させるのだ、といった復讐心も人間の真実かもしれないが、この特定の事件の特定の責任者ないし犯人をつるしても、それだけでは、何度でも船は沈むし航空機は乗っ取られるであろう。
世界中の通信を監視するために諜報機関に巨額の秘密予算をまわしたり、テロ対策と称して高価なミサイルを乱射するような超テロ活動を国家ぐるみで遂行するのにくらべれば、時給700円のバイトさんを時給千円の正社員で代替するなんて、タダのようなものだ。
破壊活動を行う者にしても、破壊のための破壊を行うテレビまんがのナンセンスな巨大怪獣とは違う(それに近いのもいるかもしれないが、一般には違うだろう)――命をかけてアピールないし「抗議」せざるを得ないさしせまった憤りについて、アメリカは身に覚えがないわけでもあるまい。
犯人や経緯が未詳である以上、それについてコメントしても、憶測の域を出ない。また利己的な軍事侵略をしたがっていてそれを正当化しようとしている国があることだけは、遺憾ながら事実らしいが、あまりに「またぞろ」すぎて、新たな感情もわくまい。
(これは、ひとりひとりのアメリカ人ないし何々人が善いか悪いか、好きか嫌いかという問題では、ない。アメリカというだけで正義だとか嫌いとかいうのは、仏教国というだけで日本人は全員アナーキーだと決めつけるのと同じくらい頭悪すぎの態度だ。)
2001.09.16 追記: いつもは速報力で定評のあるバトルワッチ系で今ごろ「最後のハイジャックは米軍が撃墜??」の衝撃!! ~なんて扇情的な見だしで流してるらしい。「米軍機が撃墜の可能性も」というのは、すでに共同通信が11日に配信した公然情報なのに。
のみならず、上の記事をよくみてほしい、「または撃墜された」‥‥「少なくとも」4機‥‥乗っていた「とされる」‥‥全員死亡した「と発表された」、このカギかっこでくくった含みのある表現については、例えば、日航123便の疑惑をご存知のかたならすぐピンときただろう。風聞的なリーク情報をいっさい無視して、いま現在、確実に言えそうなことだけを簡潔にまとめればこうなる。テレビあたりで浴びせ流していることをまとめてみても、来年のきょう読めば「こんなふうにだまされていたのか」となりかねないからだ。ついでながら、この件の場合、ホワイトハウスなどに突っ込むことを考えれば、どっちにせよなかの人は死ぬのだから、撃墜するのは合理的であり、仮に撃墜したとしても素早い良い決断としてわたしは支持する。
ハイジャックされた飛行機に対し、ワシントン(ホワイトハウス)に接近するなら撃墜せよとの命令が出ていたことが公式に発表されたが、すでに書いたように、撃墜は当然のことであり、支持されるべきだ。
他方、「テロリストとの戦争」と称するものについて言えば、一般論として戦争それ自体は必ずしも悪じゃないが、この場合に関しては支持できない。第一に効果が期待できない。第二に象がアリを踏みつぶすようなもので、そもそも「戦争」ですらない。天然資源の権益などをにらんでの横暴な弱い者いじめだ。
「アメリカを怒らせると怖い」という恐怖感を植え付けることで、ある程度「小心者の抗議活動家」を思いとどまらせることができる効果はあるが、それだけだ。――コンピュータウィルスを広めたヤツは拷問のうえ死刑、という法律ができたと仮定してみよう。たしかにウィルス作者は恐れをなしてコンピュータウィルスは減るだろう。が、死刑になっても(死んでも)かまわないという考えの者なら平気でウィルスを撒き散らすに違いない。これに反して、ウィルスやセキュリティホールに対するそれなりの防御があれば、なにも刑罰でびびらせなくとも、リスクを回避できる。「やりたいけど、やると罰せられるからやらない」といった「相手の人間のあやふやな心理」などあてにせず、きちんと自分の側でウィルス対策ソフトを導入し、セキュアなファイアウォールを構築すれば、たとえウィルス入りメールを送りつけられても少しも困らない。
ウィルス入りメールを送りつけられHDを破壊されたから、もっと凶悪なウィルスをまいて仕返しするなんてのは、前世紀の猿の論理だ。旅客機がハイジャックされる危険があることは前々から分かりきったこと。子どもでも知ってること。セキュリティチェックがしっかりしている航空会社なら、そもそも機内に凶器など持ち込めない。ましてや過激な抗議活動の標的にされかねないことを続けてきた国だ。にもかかわらず、機内持ち込み品のチェックは(専門家に言わせれば)「あってないようなもの」なのだという。――これでは「公園のベンチに札束を置いておいたら盗まれた」というようなものではないか。盗みは悪にしても、「二度とこんなことがないように、公園のベンチに置き忘れた札束を盗んだヤツをひっとらえ、手足切断の極刑にして見せしめにしよう。そうすれば置き引きはなくなる」というようなあやふやな発想はやめて、「公園のベンチに貴重なものを置いて昼寝する」習慣を改めたほうが良い。
報復の論理では、「たとえ自分が死のうが戦争になって自国が空爆されようが構わない。とにかくアメリカへの恨みを晴らすのみ」という捨て鉢なテロリストを思いとどまらせることは、できない。それどころか、「アメリカを怒らせれば、自分の国の政府をアメリカが叩いてくれる」という前例になると、AならAという国の過激な反政府テロリストは、これ見よがしに「A国のアメリカに対する恨みを晴らすのだ!」なんて声明を出して特攻するであろう。アメリカは報復としてA国を爆撃――特攻したA国の反政府テロリストの意図通りだ。その人がやりたくても自分のちからではできなかったことを代わりにやってあげるテロ支援国家となる。
ハイジャックは人命をもてあそぶひれつな犯罪だが、それが分かっているからこそ、予防策があまりにずさんであれば、批判もされよう――「電子の要塞」イージス艦「コール」がゴムボートに沈められそうになったのをみても、たしかに破壊活動を伴う過激な抗議活動が好ましいわけないけれど(個人的にはグリンピースでさえ気にくわない)、ゴムボートに軍艦がやられるなんて、「やられたほうも恥ずかしい」と言わざるを得ない。ハイジャックを可能にするような凶器(具体的に何だったのか知らないが)をホイホイ持ち込まれ、少なくとも4機が次々乗っ取られてしまうのも、似て非なるものでは、なく、テロリストへの怒りがいかに大きいとしても、だからといってハイジャック対策に不備がなかったのかの点検を忘れて良いことには、ならない。
セキュリティ対策のぬかりや「そもそもなぜこういう命をかけた過激な抗議活動が行われるのか」という当然の疑問から自国民の目をそらしたい気持ちは理解できるが、そのためには「イスラム教徒はキリスト教徒を殺したがっているのだ」といった嘘のイメージを作らざるを得ず、本来、宗教とまったく無関係とも思われる事件なのに、イスラム教徒が暴行されたりといった無益ないさかいが拡大しているのは、好ましいこととは思えない。