おはなし

はじまり

小船で逃亡の旅に出た少年「セネル」と少女「シャーリィ」は、海上で嵐に遭遇する。暴風雨でよく見えないが、前方遠くに光の柱が立つ。突如、巨大な「船」が現れ、小船は大波に飲み込まれる。

波打ち際で目を覚ましたセネルは、シャーリィの体調が悪化していることに気付く。シャーリィは海水に触れると健康を害する体質なのだ。セネルはシャーリィを清流の浅瀬に沈め、回復を待つことにした。シャーリィはセネルを兄と呼び慕っているが、セネルは人間、シャーリィは水棲の人型種族のようだ。

そこへ空を飛ぶ少年が現れる。彼はシャーリィを「メルネス」と呼び、連れ去ろうとする。一方、シャーリィを「輝く人」と呼ぶ若者も現れ、セネルに味方する。

飛行人を撃退したセネルだが、今度は狼を連れた山賊が現れ、まんまとシャーリィを奪い去る。

セネルを助けた若者は「ウィル」と名乗り、ここは古代文明の遺跡で海上を彷徨う巨大な船「遺跡船」の上なのだ、という。ウィルも光の柱を見ており、遺跡のどこかに異変が生じたのではないかと考え、探索していたところ、セネルに出会ったのだそうだ。伝説によると、光の柱は輝く人が誕生した合図なのだ、ともいう。

シャーリィをさらわれ荒れるセネルに危ういものを感じたか、ウィルはセネルを遺跡船唯一の街ウェルテスへと案内する。

山賊のアジト

ウィルは何か用事があるようで、セネルとは噴水広場で待ち合わせることに。

広場には陽気なフェロモンボンバーズと街の人々がいた。気の立っているセネルは彼らと喧嘩を始め、遅れてきたウィルに叩きのめされ牢に入れられる。

ウィルの上司(?)ミュゼットさんがセネルを牢から出す。情報屋「ジェイ」の情報に基づき、ウィルとセネルはシャーリィを追って山賊のアジトを目指す。

山賊のアジトは霧の山脈の向こうにあるのだという。山脈は街の北方にある。一応、テイルズ恒例の獣道のようなものがフィールド上に見えているので、それを伝って進む。

霧の山脈にはお節介な少女騎士「クロエ」がいた。クロエもまたウェルテスの住人で、少女誘拐の話を聞いて駆けつけたのだという。以降、3人で山賊のアジトを目指すことに。

意外と山脈からアジトまで距離があった。街から山脈までより長いんじゃないか。崖を登ったり降りたりできれば楽なんだけど……。地形の都合で迂回また迂回、というのが「テイルズ オブ レジェンディア(TOL)」の流儀らしい。

さて、アジトに到着。入口はそれっぽいのだが、異様なことに内部は魔物の巣。よくこんなところに住んでいるよな……。最奥部で「モーゼス」と名乗る山賊と、相棒の狼「ギート」を撃破。シャーリィが閉じ込められている部屋の鍵を受け取るが、裏手の窓から例の空飛ぶ少年が侵入し、一歩先にシャーリィを連れ去る。

同時に山賊のアジトは赤い鎧の軍勢に襲われる。軍人たちの狙いもまたネルフェス(=シャーリィ)。モーゼスは主人公らを無視して応戦に向かう。山賊副官のチャバが裏口から主人公らを逃がしてくれる。

秘密の地下道

相手は空を飛べるので、結局のところどこへ向かったんだかわかったものではないのだが、とりあえず飛び去った方へ向かうことにする。というか、アジトへ軍隊がやってきたため、道を戻ることは不可能。とすると選択肢はひとつしかない。地形の都合で、水晶の森以外の場所に向かうことは不可能なのだ。

水晶の森は「風の谷のナウシカ」の腐海の地下みたいな場所。絶景。

途中、トレジャーハンターの「ノーマ」と出会う。一人でモンスターがうようよしている世界を旅するのはつらいらしく、一緒に旅をしようと提案される。セネルたちは半ば無視するが、ノーマは強引に仲間となってしまう。

水晶の森は行き止まりになっていたが、ノーマが自然の芸術を爪術でバコーンと破壊、道を開く。自然学者のウィルはノーマを叱る。

森を抜けると、そこは遺跡船の船首部分。海を渡って飛び去ったのでなければ、ここまで姿の見えなかった空飛ぶ少年は、北ではなく南へ向かったと考えるのが妥当だろう。

山脈を挟んで山賊のアジト〜水晶の森ルートと平行して走る道を、ひたすら南へ。ところが、またもや行き止まり。しかしそこには、遺跡の入口があった。おそらく地下通路だろう。通路の出口は、行く手をさえぎる山の向こう側ではなかろうか?

ノーマのいうとおり、爪術士が扉に手を触れると、閉ざされし扉が開く。ずんずん進むと空飛ぶ少年こと「ワルター」に追いつく。これを撃破するとシャーリィを取り戻すことができる。しかしグズグズしてはいられない。後ろからは赤い鎧の軍隊が迫っているのだ。

秘密の地下道を進むと、伝説のモフモフ族と遭遇する。二足歩行し、人間同等の知能を持つラッコである。元創王国時代からずっと遺跡船に住み、今も文明を保っているのだという。かつてモフモフ族は秘密の地下道に村を作っていたのだが、「長々悪魔」が現れ、移動を余儀なくされたのだとか。

地下鉄の駅のような場所を抜け地上に出ると、長々悪魔ことディノワームに遭遇。撃破する。モフモフ族に感謝される。

無事にシャーリィを取り戻したセネルは、もはや用のなくなったウィルたちを置いてシャーリィと二人で山間の桟道へ。しかしそこには、海を経由して赤い鎧の軍隊が先回りし、待ち構えていた。セネルは崖下へ突き落とされ、シャーリィはクルザンド王統国軍を率いるヴァーツラフ王子らに連れ去られる。

1日目終了。

かんそう

全力疾走

開幕早々、主人公の「妹」が誘拐される緊迫した展開。セネルのDQNぶりに「ひく」ものの、こういうキャラが共感される時代なのかな、ということはドラマなどを見ていて思う。愛する人のことになると狂人化してしまうのが愛情の証明になる、というか。逆に淡々としていると愛情を疑われるとか。

「噴水広場ってどこよ?」みたいな疑問はあったんだけど、掲示板の地図で解決。

状況が状況なので、街中を呑気に探索したりすることはない。プレーヤー的には全速力でお話しを進めたつもり……なんだけど、DS版「ドラゴンクエスト4(DQ4)」の第1章ならもうとっくにクリアできてる頃なんだけどなあ、というくらいの時間が経っても、お話がほとんど進んでいないのには困惑。

戦闘に時間がかかる

何に時間を食っているのか。まずフィールドやダンジョンが広い、ということはあるだろう。戦闘時間も長い。格闘ゲームのスタッフが作った作品だけに、雑魚は一撃で倒す、みたいな設計にはしていない。敵HPのゲージが表示され、だんだんに体力を削っていく感じがよくわかる。

逃走にやたら時間がかかることも、理解はできる。平均戦闘時間が長くなった分、味方のダメージも減っている。逃走に必要な時間を長くしないと、逃走のペナルティーが軽くなりすぎるというバランス感覚だろう。

TOLでは「しばらく街に戻れない」状況がしばしばあるので、幸運頼りの逃走を続けて意図しない低レベル攻略をしてしまうと、将棋や囲碁でいうところの「詰み」になってしまいかねない。逃走の面倒くささは、「悪いこといわないから、逃げずに戦って経験値を稼いでね」というスタッフのメッセージなんだろうと思う。

それにしても戦闘時間が長い。私はオート戦闘にしているので、お茶を飲んだり、本を読んだり、洗濯物を畳んだりしている。

ただ、戦闘ランクをイージーにしていても、しばしば雑魚戦で全滅してしまう。それは例えば、敵の前衛にばかり攻撃を仕掛けて、真に危険な爪術使いを野放しにしていた、とか、石化などの危険な状態異常に無策だったり、とか。

しばしば攻撃相手の選定にまごついたり、様子見をして間を取ったり、既に敵の移動した場所に攻撃を仕掛けたりして、全滅せずとも「バカァーッ」とプレーヤーに叱られるAIだが、あんまり賢かったら、それはそれで問題だろう。オート戦闘の方が勝率が高かったら、戦闘に虚しさを感じる人の方が多いんじゃないか。

広大で美しいマップ

マップの広さはどうだろう。ルートはシンプルなんだよね。ただ、だだっ広い。十字ボタン操作だと「歩く」、レバー操作だと「走る」になるんだけど、みんな走って移動すると思う。DQ4だとしばしば画面切替から画面切替まで無戦闘ということがあるけど、この広さだとさすがにそれはない。

歩いた距離からエンカウント(敵との遭遇)率を考えれば、むしろDQ4の方が高いのかもしれないが、人の感覚というのは不思議なもので、いくつ角を曲がって、いくつ扉を開けて、といったことを確率計算の分母にしたくなるんですよね。するとTOLはエンカウント率が高い! という文句が出てくるのだろう。

私は正直、TOLのエンカウント率が高いとは思わない。マップの広さにせよ何にせよ、「テイルズ オブ ザ テンペスト(TOT)」でだいぶ慣らされた感じがする。地平線が見え、下手なダンジョンよりフィールド移動で苦労する、リアルな距離感覚で世界が構築されているのがTOT。それと比較すれば、TOLはまだしもゲームらしくデフォルメされていると思う。

スマートな3D表現

固定視点だから地味だけど、街もフィールドもダンジョンも、3Dならではのスマートかつ美しい見せ方をしており、これには感心しました。

3Dだから視点移動できなきゃダメ、みたいな発想がゲームの操作性を悪化させてしまった事例は多々あって、PS版「ドラゴンクエスト7(DQ7)」はその典型だと思う。視点移動できないが故に、見えているけど入れない家がTOLの街にはいくつもあったりするんだけど、それくらいはわかりやすさの代償として許容範囲。

ウェルテス

GBA版「オリエンタルブルー 青の天外」には、最初の街「大都」が広大すぎて迷う、との評があるが、TOLに登場するウェルテスもまた広い。だが冒険の過程でお世話になる店は入口付近に固まっており、その他、ストーリー上何度も足を運ぶ場所は、自然と覚えられるようになっています。

ウェルテスは水辺の町で、街は細かい街区毎に水路で区切られ、橋が道をつないでいる。当初、多くの橋の上には、工事や昼寝してる人やお喋りに興じる住人らがおり、街の半分が訪問不可能なんです。お話が進むと、少しずつ行ける場所が増える。親切ですよね。

後々小さな村は他に2つ登場するのだけれど、それぞれ数回しか訪問することはない。

ふつうのRPGでは、いくつもの街の作りを覚え、どこで何を売っていたかをメモし、随時各地を訪問しながら旅をしなければならない。TOLはその点、わかりやすい。いつものお店へ折々に訪れるだけで、状況に応じた新商品の入荷がある。以前からの商品がなくなってしまうこともない。

初心者に優しいRPG

大きな街を見せるけど、入れない家、入っても何にもない家がけっこう多い。街の人と話しても、物語を進めるのに有益な情報は、ほぼ何も手に入らない。既によーくわかってる状況について、ディテールを少しずつ補強する程度の内容。なので、「情報収集」は不要。

強制イベントで必要な情報は全て提示される。大切なことは何度も科白になって登場するから、メモなしでもだいたいどうにかなる。たいへんなボリュームの会話で、各キャラクターの心情や性格もよくわかる。フィールドに出ると、**方向の**へ向かおう、という念押しの強制スキット。

戦闘は、あんまりぼんやりしてると全滅することもあるけど、基本的にはオートで放置しておいても勝てる。

ダンジョンはだいたいどこも一本道(宝箱を開けたい場合のみ寄り道する)。迷宮はない。パズルは諦めてもよい。

こうしてみてくると、TOLの性格というのがよくよく見えてくる感じがします。TOLが目指したのは、いまどきの初心者向けRPG、なんじゃないか。結果的に「そういう売り方」をしなかったせいもあってか、従来路線の発展形を望む固定ファンから批判を浴び、あまり売れなかったのは不幸な話。

高度化・複雑化が進む長期シリーズにおいて、「ゲームデザインをシンプルにする」路線を選んだ意欲作が、期待されたほどの成功をせずに終ってしまうとなると、ファミコン時代のRPGのDS向けリメイク作がミリオンセラーになるのも不思議はない。

シンプルなシステムは既に完成されており、全くの新シリーズで爆発的人気を得ることは難しい。まず話題にもならないから。だからこそ、人気シリーズの新作をシンプルに作りたいのに、固定ファンが批判して潰す。前作まで積み上げてきた要素を全部入れろと無理をいう。

新規の初心者層をファンとして取り込めないゲームシリーズは先細りするしかない。当面、TOLのような路線はありえないのだろう。残念ですね。TOTも同様に固定ファンにボコられてしまった。ドラクエファンを呼び込むなら「テイルズ オブ イノセンス(TOI)」よりTOTの方がずっと、とっつきやすいのに。

まあ、劣化ドラクエ待望というか、シンプルで20時間以内にクリアできる短めのRPGをやりたいと思っている私などにとって、(ある程度)そういう路線を志向したテイルズが2作とも不評で、固定ファンに盛り上げてもらえず、一般にも浸透せず消えていったのが残念でならない。

再び、長い長い長い

あとまあこれはテイルズシリーズはたいていそうじゃないかといわれればそうなんでしょうけど、DQ4第1章では、子どもたちはどこへ消えたのか? 水で囲まれた塔に入る方法は? といった謎を解かなければ先へ進めなかったんだけど、TOLにそうした展開は皆無(といっていいと思う、一部、それっぽい箇所もあるけど)。

ドラクエで「時間がかかった」感があるのって、そういうところだったりする。天空装備を求めてあてどなく世界を彷徨ったり、新しい乗り物が手に入ると、今まで行けなかったところに何かないか、しらみつぶしに探索を始めたり。

そういう手探りの部分なしで、ひたすらレール上を走って走って、なのに時間はどんどん過ぎていく。それがもやもや感の原因だと思う。

何に満足感を覚えるか、について、TOLの想定プレーヤー像と私との間に、微妙な溝を感じてしまうのでした。おなかいっぱいのイベントシーンで満足するのか、結局のところ話がどれだけ進んだわけ? ってところが気になっちゃうのかの違い。

別の日のプレイ日記で詳述するつもりだけど、A地点からB地点まで移動しよう、と話し合いで決まったとして、映画なら次のカットはもうB地点だと思うんですよ、道中に強敵や印象的な風景でもない限りは。ところがゲームの場合、移動の一歩一歩まで省略せずに見せるわけです。

私は映画や漫画のようにRPGを楽しみたいと常々いっています。しかしRPGであるからには、全てを見せる分、ディテールは簡略化すべきだ、という主張がある。

TOLの場合、DVD-ROMで容量がたっぷりあって、しかもゲームは時間無制限だけに編集に意を払う必要がないためか、イベントがいちいち長い。会話は小説よりくどい。だからプレイ時間がどんどん延びていく。

今日の第1章って、アニメなら1〜2話程度だと思うんですよ。実質22〜45分程度(OP・ED・CM略)。ゲームだから、2倍程度の時間はかかっても仕方ない。だけど、4倍5倍ともなると、ちょっと勘弁してほしい。

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