備忘録

平成16年8月28日

再開したアドバイスの3件目。

ご依頼人と Web サイトのご紹介

天体観測……ではなくて、テイルズオブデスティニー(および同2)と鋼の錬金術師(通称ハガレン)の同人活動を公開している Web サイトです。

  • ドリーム小説って何?
  • 明澄の小説なんか読みたくない。
  • 荒らしに来ましたv
  • CP小説の意味を知らない。
  • オフラインの明澄の友人で許可をもらってない。

上記に1つでも当てはまる方は、すぐにでも、退室してください。特に、友人で許可をもらっていないのに入った方は、即絶交します。

表書きはなんだか物騒ですけれども、内容はむしろソフト路線です。ご安心ください。ただし、この道に疎い方が掲示板に作品の感想を書くことはお勧めできません。感想をいただけると嬉しいです、という言葉にはいろいろ留保がついていることをお忘れなく。

管理人の 明澄 玲璃 さん(どう読むの?)は平成2年生まれの中学3年生。早生まれなので、中2ではありません。ハガレンのカップリングならロイエド萌え(=メジャーなパターン)、好きな言葉は honest(純粋)、wing(羽根)だそうで、中学生といったら悪の限りを尽くす年頃じゃなかったっけ? とオジサンは拍子抜けしました。そういえば数年前に塾で教えていた中学生も、たいてい純朴ないい子達でした。みんなこんなに優しくて礼儀正しくて頑張り屋でいいのかなあ、と不安になったものです。

ご相談の内容

アクセス数が少なくなってきてしまい困っています。

アドバイスいろいろ

昨今の高校入試はフツーの生徒にとってはまったく大したことないのですけれども、夏休みが終われば、一応は受験モードに入るわけです。行ける所へ行ければいい、なんていって塾講師を困らせる子も、宿題はサボっても塾へ来れば一生懸命に勉強するようになるのがこの季節。ただし私がアドバイスの依頼をいただいたのは、関東の中学校が夏休みに入って間もなくのこと。夏休みに思いっきり更新するつもりだったのかもしれませんね。ごめんなさい、1ヶ月かかってしまいました(ただしアドバイスの受付は8月17日まで休止しており明澄さんの依頼はイレギュラー)。

再開1回目に、私はアクセス向上にお気楽で確実な手法は存在しないと書きました。しかし、今回のアドバイス依頼は趣が異なります。アクセス数が少なくなってきたというのです。それで困っているのだ、と。つまり、以前のアクセス数を回復できれば満足というわけですね。それならば、対処法はいくつか考えられます。

アクセス数が減る主な理由

アクセス向上に理由があるように、アクセス減少にも理由があります。趣味の個人サイトにおいて、アクセス数が次第に減っていく理由をいくつか挙げてみましょう。

  1. 管理人が飽きた
  2. 閲覧者が飽きた
  3. 人間関係の希薄化
  4. メインコンテンツの変遷
  5. 主要リンク元の心変わり

順番に説明します。

1.管理人が飽きた

単純に更新頻度が低下してアクセス数が減る、というパターンだけではありません。ペースを守っていても、管理人の飽きは文章に表れてくる場合があります。明に暗に「割とどうでもいい」という空気が出てくると、閲覧者が去っていくことがあります。逆に、管理人が飽きてきたことがよい結果につながる、というケースには滅多にお目にかかりません。管理人が飽きてきたからといって閲覧者が減るとは限らないのですが、どちらかといえば悪い方に影響するわけです。

飽きたわけではないけれど優先順位は下がった、などバリエーションはいろいろです。私がこの項を最初に持ってきたのは、まずアクセス向上について自分自身に問いかけてみてほしいからです。「本当にアクセス数を増やしたいですか?」「アクセス数が減って本当に困っていますか?」「アクセス数を回復するために、どれくらいの努力ならできますか?」etc.

もし、Web サイト運営のために現状以下のエネルギーしか注げないということであれば、「諦める」のも有力な選択肢として浮上してきます。管理人自身が飽きているのなら、アクセス数が減少して「困る」と思うのは、勘違いかもしれません。よく考えてみたら、「アクセス数なんて別にどうでもよかった」ことに気付くかもしれないのです。

2.閲覧者が飽きた

閲覧者の顔ぶれは、次第に変動していくものです。何年間もあなたの Web サイトのファンであり続けてくれる閲覧者は、ごくわずかです。ほとんどの閲覧者は、次第に飽きて去っていきます。したがって、新規閲覧者の確保が閲覧者が飽きるペースに追いつかない場合、アクセス数は減少していきます。

閲覧者が飽きる要因はたくさんあります。

  • 更新頻度が低い
  • 記事がつまらない
  • いつも似たような記事ばかり
  • 管理人がやる気をなくしている(雰囲気の問題)
  • 閲覧者が忙しくなった
  • 題材自体の人気が落ち目

中学生の Web サイトは、閲覧者も年齢の近い層であることが多く、とくに中3であれば同世代が受験シーズンに突入してアクセス数が減少するということがあります。お盆の時期には家族旅行でネット離れをするとか、部活の大会がたくさんある秋にもアクセス数が減るケースがあります。どの Web サイトの閲覧者層にも一定の偏りがあり、それぞれの事情にしたがって、様々な理由でアクセス数は増減するものです。

有名なところでは、曜日毎の増減があります。例えば週末にアクセスが増えるサイトと減るサイトがあるのですが、これは意外とジャンルとの対応関係が取れません。当サイトに限っても、かつては週末にアクセスが増える傾向が明らかだったのに、最近は平日の方が閲覧者が多かったりします。路線変更なしにこのような変化が生じるということは、つまり製作者の工夫によって閲覧傾向を制御しようとする試みの難しさを示しています。

面白い記事なんて、そうそう書こうと思って書けるようなものではありません。1からわかるおもしろ日記書き方講座について甲賀見聞録説得力ゼロ。こんなん読んでかけるようになったら苦労しない。と手厳しいのですが、私もミヤモトさんの意見に賛成します。実際、高村はなさんの文章よりルール違反満載の私の文章の方が(基本的に)読む人が多いわけです。

更新頻度は努力次第で改善できますが、記事に飽きられるペースが勝ればアクセス数は減少してしまいます。更新回数の増加はしばしば質の低下を招きますので、一概に「更新頻度だけは上げるべきだ」ともいいかねます。もちろん、たくさん書くことで文章がこなれてくることもあります。たくさん書くことが粗製濫造に直結しているわけではありません。

ただし、ひとつだけいえることがあります。デザインはあまり関係ありません。「月の満ち欠け」には、安価な液晶パネルでは薄くて読みづらい文字色が指定されている文書がたくさんあります。これを読みやすい文字色に改善しても、ふつう、アクセス数には影響しません。もちろん、素晴らしい小説を公開したって、短期的にはアクセス数に影響しないわけですが、デザインの改善は中長期的にも効果がないという点が重要です。

日記レンタルサービスのいくつかでは、人気のある日記をランキング表示しています。だいたいどれも似たり寄ったりのデザインなのに、トップクラスと底辺層とではアクセス数が 1000〜10000 倍くらい違います。結局、大切なのは内容です。更新頻度だって、じつはそれほど問題じゃない。デザインよりは効く、という程度の話。そして内容の改善は非常に難しいので、飽きる閲覧者を引き止めるのは難しいということになります。

3.人間関係の希薄化

暗い話が続いたので、ちょっとだけ明るい話を。

1日数十人が訪問する程度のサイトの場合、アクセス数の減少に最も強く関係していると考えられるのが人間関係の希薄化です。明澄さんがよく遊びに行くサイトはどこでしょう? リンク先の2件でしょうか。さて、最近どうでしょう、お友達のサイトの掲示板に書き込みをしたり、感想のメールを送ったりしていますか?

人気のある Web サイトは、あちこちからリンクされています。だから新しい閲覧者がどんどんやってきます。そして、閲覧者になかなか飽きられないので、その人気を維持し続けられるわけです。逆に不人気の Web サイトは、まずリンクされません。たまにリンクされても、すぐに飽きられて実力通りの閲覧者数になってしまいます。人気サイトになれるだけの内容があっても、リンクされなければ人はやってきません。逆に、リンクされても内容がなければ人気は出ません。

……こうかんがえていくと、ちょっと疑問がわいてきます。

仮に、Web サイトを内容によってランク付けしたとしましょう。同じジャンルでより上位のサイトがあるならば、下位サイトの閲覧者は、全員、上位サイトに乗り換えてもよさそうなものです。ハガレンのドリーム小説を公開しているサイトは世の中にたくさんあるわけで、一流どころだけでも何サイトもあるわけでしょう。にもかかわらず、わざわざ明澄さんの小説を読みに来る方がいらっしゃるわけです。

他に同系統の Web サイトがあることを知らないはずがない。他にいくらでも読む価値があるサイトがあることを知りながら、やってくる閲覧者がどうして存在するのか。

人気サイトは1日に数万人が読むわけですが、庶民の Web サイトにも1日数人の閲覧者がいます。こういう方はどこからやってくるのかというと、管理人の巡回先からやってきます。検索エンジンはほとんど気にする意味がありません。不人気サイトは検索エンジンの登場順位が低く、ふつうの人はやってきません。100件以上も検索結果を見て回るような人は、どうせその1回限りしか見に来てはくれないものです。その点、巡回先からやってくる閲覧者は、そこそこの確率でブックマークに登録してくれます。

アクセス解析をすると、ブックマーク経由が1番多く、次にリンク集経由の閲覧者が多いことに気付かれるはずです。小説サイトではアンテナ経由はあまり多くないのですが、これは例外もありえます。検索エンジンはあまり大したことがないでしょう。ただし場合によってはリンク集より人数は多く出るかもしれません。小さなサイトであればあるほど、ブックマークしてくれる閲覧者が重要になります。

学校で友達が一人もいない人は、それほど多くありません。「人気」は一部の人に集中しても、みんなそれなりに、一定の人間関係を築いていくのです。庶民の Web サイトのあり方も、これに似ています。Web サイトの人気獲得合戦は、まったくの自由競争になってもいいはずです。ところが実際には、そうはなりません。勝者は1人じゃないし、敗者も全てを奪われるわけではないのです。

  • ドリーム小説のよしあしは不明確な部分が多いわけですが、HTML の解説などは、かなり明瞭にランク付けできます。4流、5流の解説サイトともなると、欠点を指摘する気にもなれないという貧弱な内容しか持っていません。それでも何故か、その記事を読んで「勉強になりました」なんていっている閲覧者がいます。5流サイトの解説が1流サイトの解説に勝る点など一つもないにもかかわらず。
  • 私のリンク先やアンテナ登録サイトには、人気サイトと不人気サイトが共存しています。私自身、不人気サイトはやっぱり不人気サイトらしい内容だと思っています。じゃあなんで、不人気サイトを閲覧するのをやめて、人気サイトを閲覧する時間を増やそうとは考えないのか。
  • お笑いには「ちょっとうるさい」人がいて、ちょっとやそっとの芸人のネタにはクスリともしないのに、友人との会話ではニコニコしているなんてことはよくあります。くだらない冗談で笑ったり。そんなので笑えるなら、芸人さんのことをもうちょっと誉めたってよさそうなものじゃないか、と思う。

WWW では、身近な人もスーパースターもみんなネット越しの関係でしかないわけで、一見、みな共通の土俵で戦っているように見えます。テレビなんかに登場する大人気のスポーツ選手とクラスで一番スポーツが得意な人気者、という対比とはワケが違うように思われます。つまり、全国レベルのスポーツ選手とクラスで一番のスポーツマンが比較対象となる環境にあるのではないか、と。

ところが、現実は異なります。何故かネットでも、価値観の物差しはひとつにならないのです。「ご近所レベルのサイト」が「全国レベルのサイト」とは別の基準で評価され、それなりに人気を集めるのです。もっと素晴らしいサイトは他にいくらでもあるのに、何故か人は、ご近所レベルのサイトにも心惹かれます。

この不思議について、簡単に説明をつけてしまうことは避けたいと思います。ただ、ひとつの要素として人間関係が効いてくるのは事実です。自分のサイトを気に入ってくれて、掲示板で誉めてくれる人のサイトは、やっぱり見に行きたくなることが多い。あるいは、自分の好きなサイトと仲のいいサイトは、自分もチェックしておきたいと思うことがあります。小さなサイトほど、こうした緩やかな人間関係が重要になってきます。

ですから、明澄さんがネットにおける人間関係を希薄化させていったとき、アクセス数が減少していくことは十分に考えられます。逆に1日30アクセス程度までは、人間関係の再構築によって見込んでいくことも可能でしょう。1日1000人がアクセスするサイトを目指すような場合には、こうしたアプローチは無意味です。しかし「月の満ち欠け」の現状を見る限りでは、「ネット友達を増やしていく」という方向性を勧めたいと思います。ネットの寂しさに潰されないためにも。

4.メインコンテンツの変遷

管理人の関心が次第に人気コンテンツからそれ以外のコンテンツへ移ってしまい、閲覧者が離れていくというケースもあります。テイルズオブデスティニーとハガレン、どっちの方が人気があるのかわかりませんが、どちらに注力するかによって人気が増減する可能性はあります。

とはいえ、どっちにしたって、その道で1流のサイトは大変な人気となっているわけです。根本的にはコンテンツの質の問題なのです。仮にテイルズが大人気でハガレンはそれに負けるのだとしても、だからテイルズに集中しよう、なんて考えるのはトップクラスの実力者だけでいいのです。1日1000アクセス程度で満足できるなら、好きな方(あるいは両方)を書けばいい、ということになります。

もっとも、自分の実力に見切りをつけ、これ以上の向上はありえないと判断した場合には、「テイルズの方が少しは人気が増すだろう」と考えることもありえます。ただし私は感心しません。

5.主要リンク元の心変わり

ブックマーク経由の閲覧者が少なく、特定少数のリンク元がアクセス数の大半をコントロールしているケースでは、リンク元の心変わりがアクセス数の激減を招きます。多くの場合、これはどうしようもないことなので諦めてください。

……と、いうわけで。

アクセス数回復に有効かもしれない手立ては、「お友達を増やそう」という1点のみ。他はまあ、こういう事情も一応は頭の片隅に入れておくといいんじゃないかな、というお話でした。

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平成16年8月26日

1.リンクの target 指定問題

他サイトへのリンクを新しいタブで開きたいとは考えない人が現にいるにもかかわらず、target="_blank" とすると、閲覧者は選択の余地なく新しいウィンドウを開かされてしまう。これが target="_blank" が嫌われる唯一無二の理由です。

そもそも新しいウィンドウという発想のないブラウザを利用している場合、target="_blank" は無視されます。テキストブラウザの大半とか、携帯電話に搭載されているブラウザとか。W3C が target 属性を排除する方向で HTML の改訂を進めてきたのは、target 属性に汎用性がないからです。リンク先を新しいウィンドウで開くとか、新しいタブで開くといった機能は特定環境でしか意味がないのだから、HTML 文書ではなくブラウザが対処すべき課題なのです。

現に、Firefox の拡張プラグインには、リンク元文書と別ドメインの URI へのリンクを自動で新タブで開く機能を有するものがあります。他サイトへのリンクは新タブで開きたいと考える閲覧者にとって、これは最もスマートな解決策です。この拡張プラグインさえあれば、製作者に何も期待する必要がありません。

つまり、本来、他サイトへのリンクは新タブで開くとか開かないといったことは、ブラウザの設定をいじって閲覧者自身が決めればいいことです。HTML 文書の製作者が、他サイトへのリンクは絶対に新タブで開きなさいと指定するべきではない。少なくともそれは、全員が幸せになれる方法ではないわけです。

しかしながら現状、IE にそうした機能は用意されていないし、多くの IE コンポーネントのタブブラウザにもそうした機能は用意されていません。ただし、右のダブルクリックを「新タブで開く」に割り当てられるとか、「新タブで開く」マウスジェスチャーを用意している、といったタブブラウザは無数にあります。でも大半の閲覧者が、それを面倒くさがります。にもかかわらず、他サイトへのリンクは新タブ(または新窓)で開きたいと考えているのです。

2.ガールズサイトのデザイン事情

仮に、(大半の)読者に努力を強いないことを是とするならば、文字サイズを小さくすることにも理があります。

当サイトは、運営開始後しばらくはアドバイスしかしていませんでした。他人にアドバイスするばかりで、自分のところはどう見られているんだろう? という疑問はいつもあって、2002年の上期には、結構たくさんのサイトに意見を伺いました。当時、サイト批評サイトの大半はガールズサイトで、その管理人は10代から20代の女性が多かったのです。

いただいた評価の中で目立った批判的内容を並べると以下の通りです。

  1. 文字が多い(幅を固定し1行の文字数を制限すべき/ページが縦に長い/etc.)
  2. 文字サイズが大きい
  3. フレームを使ってはどうか(全頁に上位のナビゲーションを添えるべき/etc.)

幅固定の是非とリッチなナビゲーションの問題はさておき、「文字サイズが大きい」という感想に注目していただきたいのです。

女子中高生のサイトには、文字の小さなサイトが多くあります。それはなぜでしょうか?

じつは私も小さな文字が好きです。12px がベストで、10px が許容できる最小値。IE で文字サイズ「最小」を選択しますと、サイズ無指定の文字がちょうど 12px となります。私は常に文字サイズ「最小」でウェブを閲覧しているので、小さな文字サイズを指定されると小さく表示され過ぎるのが不満です。小さな文字が好きな人は IEの表示設定で「小」「最小」を選べばよく、作者が小さな文字を好きだからといって、文字サイズ「中」で文字が小さく見える必要はないのではないか、と私は考えていました。

しかし、私の主張は説得力を持っていませんでした。

(多くの)女子中高生は、小さな字を好みます。そして、意識的に字の小さなサイトを選び、ひいきにします。つまり、自分は小さな字が好きだから、どのサイトも小さな字で読もう、とは考えない。もともと字が小さいサイトを選ぶのです。印象的な言葉があります。「字の大きなサイトに、共感できたことがないんです。センスも、生き方も違うんですよ、大きな字でも平気でいられる人とは。だから、私は字の小さなサイトを選ぶし、自分もそうするんです」メールで出した質問への、ていねいな回答の一部です。

彼女たちには、「標準より小さな文字サイズ」が意味を持っていました。表示設定で「小」「最小」を選べばいい、といった問題ではなかった。自分とセンスの近い客層を期待する彼女たちにとって、小さな文字は、世界観を共有できない訪問者を排除するフィルターでもあったのでした。実際、彼女らのサイトの読者の9割以上は、文字サイズ「中」で小さく表示される文字を好ましく思う人々だったに違いありません。

したがって、次のような主張は否定されます。

もちろん閲覧者が無知であることを助長するようなことになったら問題だとは思いますが、しかし「ページを見ていただく」という立場から考えるなら「様々なブラウズ環境にある閲覧者に対して、できるかぎりこちらの意図がストレートに伝わり、しかも相手にとって見やすい/閲覧可能であるページ作成を心がけるべきである」という点ははずせないと思います。もちろん100%対応などはハナから無理ですが(当サイトもunicode未対応ならつらいでしょうし、Netscape4.xは切り捨てています)、できるだけ多くの方に自分のサイトを「読んでいただく」というのであれば(少なくとも主張サイトはそうあるべきでしょう)「読者に努力を強いない」というのは一つの条件と思われます。

なぜなら、読者が最初から努力を強いられるなら、そのサイトはそもそも読まれません。となると、自分の啓蒙したいことすら伝えられないのです。

女子中高生が思いを伝えたい相手は、自分とセンスの近い読者です。そして彼女らは「文字が小さいサイトしか、読む気になれない」と思っています。様々なブラウズ環境にある閲覧者に対応するために、主な読者層を逃しては本末転倒です。読んでほしい人に読まれるために、彼女らは文字を小さくする以外の選択肢を持ちません。

3.

ガールズサイトの文字サイズ問題は、target="_blank" 問題とまったく同じ構造を持っています。

原則論を貫けば怠惰な閲覧者に「ユーザビリティが低い」と罵られ、現実論で突き進んでも理論派に「ユーザビリティが低い」と批判されます。絶望的な状況です。趣味でやっている製作者は、純粋に自分の好きな方を選べばいいと思う。私は原則論を重視したい。だから、こういう。

バカな閲覧者は勝手に不幸になればいい。

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平成16年8月23日

アテネオリンピックの女子マラソンで野口みずきが金メダルを獲得した。嬉しかった。

野口には姉、兄、弟がいる。姉と兄は、経済的理由で高校へ進学できなかった。三重県伊勢市、特別な街ではない。野口みずきは現在、26歳。約20年前、私が小学生の頃、日本には経済的理由で高校へいけない人がまだまだ(割合はともかく人数は)たくさんいたのに、みんなそんな人がいることを知らない顔をしてきた。私の育った街にもいた。中学生になっても制服が買えず、不登校になった。父子家庭だったが、五体満足なはずの父親が働いているところを、見た人がいない。いや、それならまだいい。恨む相手がいる。野口の両親は共働きで、身を粉にして頑張っていた。

どこか遠い世界の話ではない。これが日本の現実なのだ。もちろん、貧乏で飢えるわけではない。野口はちゃんとサイズにぴったりの子供服を買い与えられていた。靴だってある。風呂にも入れる。雨漏りのしない家で成長した。幸せな暮らし、何不自由ない暮らしをしてきたといっていい。だが多くの日本人は、幼少時の野口のような生活環境さえも、どこか遠い世界の出来事だと思っている。

かけっこに自信のあった野口は、中学で友人に誘われて陸上部に入った。走ることに打ち込めるのは3年間だけ。野口はまじめにコツコツ練習を続けたが、1500m走で県大会6位が最高の成績だった。ふつうの部員とは格が違うが、全国レベルで見れば平凡な選手に過ぎなかった。だが、そんな野口の頑張りを、姉と兄が見ていた。「みずきを高校に行かせて、陸上を続けさせてあげて」と両親に頼み込んだという。みずきは最初、拒否したが、ついに腹をくくった。そして、地獄の3年間を過ごす。

県立宇治山田商業高校で誰よりも陸上に打ち込んだ野口だったが、インターハイも予選落ち。「強くなりたい」という思いも虚しく、時間だけが過ぎていった。

何の結果も出せなかった野口だったが、ワコール陸上部の藤田信之監督がその頑張りを目に留めた。そして実業団に勧誘するのである。そしてまた何年もつらい日が続いた。相変わらず、野口は結果を出すことができなかった。高橋尚子がそうであったように、野口みずきもまた、長らく結果に恵まれない選手だった。だが、その頑張りを評価する人が、いつもいた。

努力偏重の考え方は、しばしば古臭いものとして忌避される。ダメなものはダメだ、という言い方も、とくに最近よく聞く。一理ある、と思う。結果が大事だ、という意見に異論はない。けれども、結果だけが大事なわけじゃない。そして、結果の伴わない頑張りを誉めること、その頑張りを大切にすることは、単なる敗北主義では決してない、とも思う。

高校でも大学でも結果を出せなかった土佐礼子。誰も土佐の素質を信じなかったが、一途な努力が周囲の人々を感動させ、彼女は陸上を続ける環境を用意することができた。実績はないけれど走ることが世界一好きだった高橋尚子に、小出監督は人生を賭けた。そうして高橋と野口は世界の頂点へと上り詰め、土佐は世界のベスト5に入った。嬉しかった。当然、頑張る人がみな報われるわけではない。それはわかっている。でもそんなこと、今はいいじゃないか。ただただ感動した。

平成16年8月22日

ずっと宣伝し忘れていたんですけれども、FolioVol.6 ホラー特集が公開されています。興味のある方はぜひ。

もちろん私の連載いろはの先の CSS 第6回も収録されていますが、今回のテーマは非常に地味です。大筋では、以前にやったのと同じでもありますし。本当は角丸テーブルを題材にするつもりだったんですけれども、なんとなく見栄えのしないものを選んでしまいました。いずれにせよ、興味のある方はどうぞ。

次回は10月だそうで、またずいぶん開いてしまいますね。だったらこのサイトで CSS の記事を書けばいいようなものなんですが、やっぱり〆切がないと書けないのが因果なところ。そこそこ反響がある記事なので、ああいうのをいっぱい書いたら喜ばれるのだろうとは思いますが、どうしても書けないんです。なんでだろう。

平成16年8月22日

お盆で帰ったときに、実家の方で私の口座からおろしたお金の合計が300万円を超えたとかいう話を聞きました。どういうシステムでやっているかというと、私は印鑑も通帳も実家に預けていて、私の貯金の30万円を超えた分が給料日の午後に引きおろされるのです。郵便局は残高を調べるのに手数料が要りません。だから、残高を調べてから1000円単位できっちりおろすわけです。

私は月に4万円くらい現金を使っていて(カードでお金を引き出す)、あといろいろカードでモノを買っていたりして、自動で引き落とされるものがあるんですけれども、それでも給料が入ると貯金が38万円くらいになるらしい。それで8万円くらい引きおろされるんですね。通勤定期を買う月は私がたくさんお金を使っているので、0〜2万円になるんですが、なんといってもボーナスが大きい。昨年度の給与所得は206万円(年収は320万円)だったのに、私が使ったお金は80万円くらいだったとか。

でも考えてみると、よくもまあ80万円も浪費しているモンだよな、と思う。大学時代はバイト収入が年額40万円くらいで、年金を払って残り30万円弱。ここから昼食代と交通費と教科書代を払い、余ったお金を貯金して就職活動の交通費とかにしたものでした。社員寮暮らしだから寮費は天引きされているのに、一体、80万円も何に使っているんだろう。家計簿をつけてみようと思っているのだけれど、面倒くさくて未だに実現していない。

社会人になってから、120円で 200cc くらいしか入っていない自動販売機のアセロラドリンクも平気で買うようになった。昼食にパンを食べるときも、いつの間にか値段と大きさの比を考えなくなっている。100円のアイスクリームではなく、180円のソフトクリームを食べることもある。というか、大学時代は基本的にアイスなんて食べなかったんじゃないかな。食堂の冷たい水は無料だったし。とにかく、なにかと生活が贅沢になっているのは間違いない。

目刺しの土光さんは偉大で、とても私のような俗物には真似できない。金持ちになったらなったなりの生活をしてしまう自分が悲しい。

平成16年8月21日

再開したアドバイスの2件目。

ご依頼人と Web サイトのご紹介

管理人 MASARU さんは茨城県在住、28歳、B型の男性。サッカーチームに所属し、最近はコーチも務めていらっしゃるスポーツマン。Flash や 3DCG にも興味があり、あちこちへ旅行しては写真を撮る趣味も。こうした多彩な人生を送る MASARU さんが、身の回りのあれこれを詰め込んだ Web サイトが NeoCool です。

NeoCool のメインコンテンツは写真と Flash ムービーで、力作が多数公開されています。しかしこのところ更新が続いているのは、所属されているサッカーチームの活動状況。最近、一番の関心事なのでしょう。また意外に(?)きちんと作られているのが地域情報のコーナ。近所のお店の紹介なのですが、主なメニューや店先の写真など、ていねいにまとめられています。さらに3次元モデリングによるイラストも少しだけ用意されています。

典型的なごった煮サイトですが、管理人 MASARU さんのパーソナリティーを表現するサイトとしては、よくまとまっていると思います。デザイン上の制約からコンテンツを増やせないのが気になるところですが、そのときには向上した技術を駆使してリニューアルされるのでしょうから、大きな問題とはいえません。このサイトで人気を得ようとすると大変なのですが、ローカルで日記をつけている人(最近はどうだかわかりませんが、一昔前までは意外に大勢が地道に日記をつけていたものです)のように、現在・未来の自分自身のために作成されている Web サイトであれば、現在の方向性は間違っていないでしょう。

ご相談の内容

自分の身の回りの出来事(趣味とその足跡)ばかりです。デザイン系のアドバイスなど頂けたらお願いします。それとは別になるのですがデザインの勉強になる本がありましたら紹介お願いします。

アドバイスいろいろ

デザイン系のアドバイスをご希望とのことですから、その点に的を絞って意見させていただきます。

問題は大きく3つあります。

  1. レイアウト
  2. 配色
  3. Flash の使い方

順に解説します。

1.レイアウト

NeoCool のレイアウトには、初歩的なミスが多数あります。例えば、以下のスクリーンショット(図1)をご覧ください。

図1

たしかに、ひどいレイアウトではありません。すっきりと情報を整理できています。けれども、どこか垢抜けない、隙の多い印象があります。それは何故か、と考えてみると、このレイアウトが基本的なデザインルールを押えていないことに気付きます。

図2

図2では、図1をグレースケールに変更しオレンジ色の補助線をいくつか重ねてみました。画面を構成する各要素のエッジを延長した、ごく単純な補助線です。簡単のため、鉛直方向の補助線だけ示しました。左寄せの文字列は左側、右寄せの文字列は右側、長方形の要素は両側に補助線を引いています。

一見して、補助線が多すぎることがわかります。レイアウトがちぐはぐになっているのです。

こうなってしまった理由は、予想がつきます。各部分に注目すれば、たしかに現在の配置は美しいのです。

例えば最上位のナビゲーションの領域。「Information」と「BBS」では文字数が違いすぎますから、同じ幅を割り当てたのではアンバランスに思われたのでしょう。そこで「Gallery」と「BBS」という文字数の少ないもの同士を縦に並べ、等間隔ではなく文字数に見合った幅を割り当てたわけです。第2階層のナビゲーションも同様です。「Motion」「Photo」「Monochrome」の文字数にあわせて、幅を決めていらっしゃる。そして写真のサムネールは全部同じ大きさなので、幅は3等分となります。

画面の構成を考えるとき、積み木のようにやっていってはダメなのです。まず全体を考え、次に部分を考えねばなりません。部分は全体の構成要素に過ぎないのであって、そのデザインは全体のバランスの中で決めていく、という意識をきちんと持っていないと、どれほど知恵を絞ってもうまくいきません。

今回、サムネールの画像は全て同じ大きさにすべきなのですから、これが動かしようのない前提条件となります。とすると、基本的な配置を現状維持とするならば、幅は3等分しかありえません。これが出発点です。文字数と幅の釣り合いをとるには、長い単語と短い単語を上下に並べればよいのです。このとき長い単語を上、短い単語を下に置きます。そうすれば違和感が落ち着きます。きちんと目標を見定めれば、よいアイデアはどんどん浮かんできます。

今、私はひとつの例について意見しましたが、こうした考え方は他の多くのページのデザインにおいても適用できます。一気に全部、改善しようとする必要はありません。ひとつひとつ、考えていくことを勧めます。

お勧めの解説書

この本は、デザインの初歩的な知識を得るのに最適です。デザインのポイントを「近接」「整列」「反復」「コントラスト」の4項目に整理し解説しています。

私が先ほど説明したのは「整列」の考え方でした。せっかくですから他の3項目についても指摘しておきましょう。

近接

いくつかの項目を近づけると、それらは関連するグループと判断されます。この性質を使用して、画面の構成要素を組織化することにより、情報がきちんと伝わるようになります。たいていの閲覧者は階層化されていない項目がずらずら並ぶことを嫌がりますので、各要素の間隔にはきちんと差異をつけていくべきです。

NeoCool では、ナビゲーション周りに改善の余地が大きいのではないでしょうか。再び図1をご覧ください。2行にわたっている第1階層の行間と、第1階層と第2階層の間の距離が同じですよね。そして第2階層とサムネールの中間に「1/1」という第3階層のナビゲーションがあります。私なら、第1階層の行間を縮め、第3階層はサムネールの近くへ寄せます。一方、「Site Map」が離れた位置にあるのは正解だと思います。

反復

繰り返しは、孤立する各要素に関連があることを示します。逆に、本当は同じような役割を担っている要素であっても、見た目を違えてしまうと異なるものとして認識されてしまうわけです。

NeoCool では、全体としては反復に注意が払われています。左半分がコンテンツの表示領域、右下が第1階層のナビゲーション、右上が下位のナビゲーション、という配置は、別画面に開かれる掲示板とサイトマップを例外とすれば不動です。難があるのは下位のナビゲーションのデザインがいろいろだということでしょう。

コントラスト

デザインに強弱をつけることで、情報を整理することができます。

NeoCool では、情報の整理が大まかなレイアウトだけで終わってしまっていて、それ以上の工夫があまり見られません。ナビゲーションの階層は、文字の大きさやフォントの選択によっても示されるべきです。

今、重要なものほど、大きく目立たせましょう。写真のサムネールを切り替える「1/11」といった文字列は、定期的に文字を光らせるくらいに目立たせてもいいと思う。その代わり、文字は少し小さくしてもいい。逆に第1階層のナビゲーションは、もっと地味でいいはずです。場所も取り過ぎています。私ならサイトマップや著作権表示と同様に、枠の外へ追い出しているだろうと思います(そしてその方が第1階層のナビゲーションだとわかりやすい)。

結局、デザインを考える4つのポイントは、すべて情報を整理する手段です。作者の頭の中では情報が整理できていても、表現が平板では閲覧者に伝わりません。「近接」「整列」「反復」「コントラスト」は、いずれもクールなデザインを実現するために有用な方法ですが、それと同時に、情報の性質を閲覧者に伝える大切な手段でもあるのです。

2.配色

配色のポイントもレイアウトと同様です。関係の深いものは色を「近接」しましょう。同じ役割の構成要素は色を「反復」させましょう。重要な部分とそうでない部分には「コントラスト」をつけましょう。そして全体の色調を「整列」しましょう。

「整列」は他の3項目と少し性質が違っていることに注意してください。「近接」「反復」「コントラスト」は、各要素をグループにしたり、上下関係を作ったりして、意図的に変化を作る方法です。これに対して「整列」は、意図しない変化をつぶす方法なのです。それによって雑音を消去し、表現したい箇所をきちんと目立たせるわけです。ですから、「整列しない」ことで変化を生み出すのはもちろん OK です。例えば、見出しと本文の整列線をずらすのは常識的なデザイン手法です。

重要なことは、まず地ならしをして、真っ白なキャンバスを作ることです。そして、きちんとコントロールしながら、変化を作っていくことです。コントロールの基本はトップダウン方式です。レイアウトの基本的な考え方は、配色とまったく変わりありません。

NeoCool の配色は、どこか垢抜けない感じがします。具体的には、例えばナビゲーションの赤い下線、「Gallery」第2階層ナビゲーションの黒帯と青地のコントラスト、地域情報の薄黄の背景色……どうにも統一感がない。ひとつひとつがそれほどひどいとは思いません。例えば紺に鮮やかな赤の取り合わせ、かなり冒険的だと思いますが、ありえない組み合わせではないというところ(常識的には補色を狙いますからオレンジ系にします)。でも、使うなら徹底しないといけません。

色というのは簡単なようで、センスだけではうまくいかないものです。その道のプロが配色サンプルをたくさん公開されていますから、まずはそれらを探して選んでいくことを勧めます。また色相環などの色彩の基礎知識は、持っておくに越したことはありません。

3.Flash の使い方

最後はまあ、与太話です。

Flash を使ってみる、というのがひとつの意図だと思いますので、それ自体はどうこういうつもりもないわけなのですが、使い方に改善の余地が多いのは事実です。一番、気になったのは、リンクの反応でした。まず「これかな?」と思った文字列がリンクなのかどうか、カーソルを重ねてみてもわからないんですね、Flash の場合。ふつうのリンクだったら、ステータスバーにリンク先の URI が表示されるので、装飾の下線とリンクは見分けがつきます。Tab でフォーカスを移しても判別できます。

WWW ブラウザの HTML 文書の解釈機構はけっこうよくできていて、細かいところでいろんな仕事をしているわけです。Flash で Web サイトを作るときに、一番考えなければいけないのは、それで不便が生じないようにすることだと思う。もちろん、そもそも Flash のプラグインを許可していない閲覧者の場合にはどうしようもないのだけれど、それは NeoCool の対象層でもないから、こちらからお断りでもいいのかもしれない。だからそういう極端な話を抜きにして、ふつうの訪問客について、ちょっと考えてみたい。

Flash を使えば、かなり自由にインターフェースをいじれるのだけれど、結局のところ「リンクをクリックして情報を切り替える」「所定の領域に収まりきらない情報は縦スクロールで表示する」というシステムを採用するケースがほとんどですよね。何故かというと、それが閲覧者のほぼ全員が特別な説明抜きで迷いなく使える唯一のインターフェースだからです。Flash でこのインターフェースに取り組む際、気をつけるべき点は2つ。

  • リンクはリンクとわかるようにする(操作感もできる限りブラウザ標準の挙動に似せる)
  • スクロールバーはスクロールバーとわかるようにする(同上)

一部で用いられているスクロールバー、私は問題ないと思いました。でも、リンクは問題あり。2点、改善されるとよいでしょう。

  • カーソルを重ねたときに、何か変化させる
  • リンクをクリックしたときに、何か変化させる(ちょっとしたことでいいから、最小のタイムラグで何か変化がほしい。IE でテキストリンクをクリックすると、細い点線が生じます。そのことをきちんと認識している方はそう多くないのですが、人間の目は無意識であっても変化を敏感に感じ取っています。だから、しばらく画面が切り替わらなくても、「クリックし忘れたかな?」と不安にならないのです)

NeoCool のリンクは、私のような低速回線の利用者の場合、クリック後しばらく画面に何の変化も生じないので不安になります。なんでも自由にできる代わりに、何でも自分で作りこまないといけないのが Flash によるインターフェースのつらいところだと思います。

と、いうわけで、長い長いアドバイスもこれでお終いです。最後までお付き合いいただき、どうもありがとうございました。

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平成16年8月21日

アテネ五輪が話題の昨今ですが、私は今年もやっぱりテレビなしの生活をしているわけです。「なんで?」と聞かれることがしばしばあるのですが、明確な理由はありません。「なくても困らないから」というのが正直なところですが、寮の食堂で見るテレビ番組はどれも面白くて、基本的に食事が終わったら部屋に帰らなきゃいけないんですけど、いつも後ろ髪引かれる思いがします。だったらテレビ買えばいいじゃないか、と。

結局、面倒くさいんじゃないかと思ってます。テレビを買いにいくのがそもそも面倒くさい。買ってきたらきたで、部屋のレイアウトを変えなきゃいけない。テレビ線の端子は、本棚の後ろですし、小さな室内アンテナだときれいに見えないんでしょ? たしか。というか、小さな畳で四畳半の部屋だから、3メートル離れようと思ったら対角線を使わないといけない。となると端子云々だけでなく部屋の配置を全部変えないといけなくて、生活のスタイルも変えないといけない。

旅行が嫌いで、それは何故かといったら、生活に変化をつけたくないから。社会人1年目と2年目と3年目でほとんど生活スタイルを変えていないのだけれど、これについては社会人になってほんとによかったと思っています。学生は自分にコントロールできない変化の要因が多すぎていけない。

……あるいは、私はテレビがすごく好きなので、買うのが不安だというのもあります。みんなテレビなんてそんなに面白いものじゃないよ、というのだけれど、実家にいた頃、両親が旅行に出かけてしまうと1日中テレビを見ていたような気がします。だから高校生になっても大学生になっても自分の部屋には絶対にテレビを置きませんでした。なきゃないで我慢できるのだけれど、あるものを我慢するのは無理だと思ったので。今ならもう大丈夫だろうとは思うけど、心配ないとはいえません。

他人と一緒にテレビを見るのが好きじゃなくて、自分の部屋にもテレビがないわけだから、私は食事時のニュース番組以外はほとんどテレビを見ないできました。でもテレビ情報は大好きで、視聴率の高い番組だとか、あるいはほぼ日の「昨夜、オレは観た!」のような、テレビを見てる人にしかわからないネタにも心惹かれます。ほとんど想像するしかない世界なんですけれども、なんだかテレビって面白そう! って気分になるんですね。

テレビの土踏まずとかそういったテレビの感想を書いているサイトは、ブックマークやアンテナには入れていないんですけど、たまたま巡回先にリンクされていると必ず読みます。あ、模倣犯はアンテナに入っているから、例外ということになるのかな。

ところで、以前にも書いた通り、私のアンテナ登録数は10〜20件の間をさまよってます。その内5つは自分のサイトとかなので、巡回先は10件弱ですね。なんで自分のサイトなんか入れているのかというと、私はブラウザのブックマークを使っていなくて、アンテナをオンラインブックマークにしているのです。だから、MT へのログインとか、Amazon まで、みんなアンテナの画面からリンクを辿っているんですね。ブラウザのホームページはアンテナです。

登録数を絞っているのはシンプルな生活をしたいという希望の表れなんですけれども、他の理由もあります。MT のログイン画面なんてのは更新されないから、登録件数を増やすとスクロールなしでは表示されないくらい下の方に沈んでしまいます。ジャンルわけとか面倒くさいでしょ。デフォルトは全部表示にしかできないみたいですし。ていうか、どうでもいいですね、こんな話は。

で、テレビの話なんですけど、なんだかこれもどうでもいい話のような気がしてきたので、終わりにします。

平成16年8月18日

Book Guide にレビューを50件ほど更新しました。これで一段落となり、今後しばらくは Word 解説書のレビューに注力していく予定です。50〜100冊くらいレビューするつもりです。その間にまたどんどん Web サイト作成関連の新刊が登場するでしょうけれども、そのあたりはまあ、折を見て読んでいきます。

Word 本レビューを思い立ったきっかけは、文書作りでつまずくWordのしくみと落とし穴という傑作に出会ったこと。こういう素晴らしい解説書が売れないのはおかしい、と思う。Word の解説書も変なのが多いから、積極的にこの傑作へと誘導していくつもり。

あと、Web デザイン関連でレビューしようと思いつつ積み残しになっている本が30冊ほどあります。それらはとっくに読み終っていて、あとはレビューするだけなのですが、なかなかこれが書けません。お勧め本に未レビューの本が多いのはそうした事情があるからですけれども、これがなかなか難題で……。

平成16年8月17日

再開したアドバイスの1件目。

ご依頼人と Web サイトのご紹介

古典的なフォントいじりのテキストサイト。リンク集のトップが庵〜iori〜というのは、あまりにもそのまんまという感じがします。あなたのロリコン度チェック120%というハイスコアを叩き出す典型的な痛い系管理人、その表の顔は島根の高校生、16歳。

島根の高校は18日から始業式なのだとか。山陰は夏涼しく、冬寒いですからねぇ。夏暑く冬寒い盆地よりはマシとはいえ、山陰の冬はなめてかかるととんでもないので注意が必要ですよ、って誰にいっているんだか。その点、南関東は素晴らしいですね。冬に雪が積もらず、夏も耐えられない暑さでない。一時期、首都移転が話題になりましたが、よりによって候補地が長野と栃木。冬のことを考えてないでしょう、あなた、と。

さて、世の中にはけっこう、テキストサイトの管理人をやるために生まれてきたような人間がいて、この方もその一人。飽きるまでは頑張ってほしいところです。

ご相談の内容

サイト批評をお願いします。日記と文章がメインのサイトです。リピーター数、アクセス数が伸びず悩んでいます。

アドバイスいろいろ

私もこれまでにずいぶんたくさんの相談に乗ってきたわけですが、やはり管理人の悩みとして1番多いのが、アクセスの伸び悩みです。この点について、私の意見はここ数年ほとんど変化ありません。

アクセス向上を考える
  1. 初級篇[2002.09.22]
  2. 企画篇[2002.11.07]
  3. 計測篇[2002.11.18]

お暇な方は2年前の拙論をご覧いただきたいと思いますが、端的にいって、ふつうの人が、自分の書きたいことを自分の書きたいペースで書いている限り、人気サイトは作れません。Web サイト運営の成功者がしばしば他の方面ではとくに成功していないことから、平凡な人でも何とかなるものだ、という誤解が未だにあります。しかしなるべく早い段階で目を覚ました方が、傷が小さくてすむでしょう。

私のサイト「趣味の Web デザイン」についているカウンターの数字は、先日、500万を越えました。これは当サイトだけでなく、私の管理する多種多様なコンテンツの6割超でカウンターを共有していることに注意していただきたいのですが、まあ何にせよ約3年で500万という数字に達したわけです。これって凄いのか? というと全然そんなことはありません。

スポニチアネックスは1日270万ページビュー(Web Design 2004)ですから、その2日分にもなりません。ちなみにZAKZAKは1日1000万ページビューで、sanspo.comは1日900万ページビュー(ともに Web Design 2003)。余談ですがasahi.comは月間2億ページビュー(Web Design 2004)ですから、ZAKZAKに負けています。

WWW は出版業界に似ています。どれほど人気のある Web サイトも(インフラ的な役割を担う検索エンジン大手やプロバイダのポータルサイト、楽天広場などを例外とします)、圧倒的多数に無視されているのです。本が100万部売れたら大ベストセラーですが、よく考えてみれば、日本人の99%以上はその本を読んでいないわけです。

音楽なら、知らない内にどこかで聞いていることもありえましょう。しかし本には、それがありません。Web サイトも同様です。閲覧者の能動的なクリックなくして Web サイトが読まれることはないのです。それゆえに、先述の超人気サイト群でさえ、やはりネットユーザの大半は読んでいません。

月間1億7000万ページビュー(Web Design 2004)のYOMIURI ON-LINEのユニークオーディエンスは2002年3月時点で195万人、パソコンから WWW を利用する層の8.57%だけが利用しています(Nielsen/NetRatings 調べ/利用率は月に1回以上閲覧したかどうかで計測)。面白いことに同じデータでasahi.comの利用者は158万人で利用率は6.94%だとか。サイトのページビューは自己申告なので水増しがあるのかもしれません。

とにかく、私の3年分を1日や2日で追い越す(=当サイトの1000〜10000倍凄い)ような Web サイトでさえ、その程度の人気しかないわけです。9割以上の人は、YOMIURI ON-LINE なんて月に1度も見てないわけです。こうした状況を押えずにアクセス向上を語るのは、ウソです。

敢えてわかりやすさを優先してモノをいうならば、1日100人の訪問客を得るのが目標なのであれば、日本のネットユーザ7000万人の無関心を恐れる必要はありません。0.00015%の支持があれば、望みは実現できます。

アクセス向上指南サイトの多くは、見た目の改善を求めます。しかしそれは間違いです。ちょっと探せばすぐに、とんでもなくひどい見た目であっても大人気の Web サイトが見つかります。無数に、です。1日100人とか1000人が訪問する程度でよければ、それこそ腐るほど実例があります。逆に、見た目はいいけど人気のない Web サイトも無数にあることに気付かれるでしょう。

よほど高い目標を掲げない限り、「嫌われない」アプローチは虚しいのです。これはもう、断言していい。

以前、カプセルプラレールのファンサイトからアクセス向上の相談を受けました。どこでも配置モードで写真を貼りまくったひどいひどい作りのサイトで、やたらめったら表示が重いし、画像オフにしたら何も表示されないし、ナビゲーションも適当だし、「何だこれは」という感じでしたが、じつはこれがジャンルで圧倒的にトップの地位を占めるサイトでした。

他のサイトがほとんど写真を載せない中、そのサイトだけが、たくさんのレールをつなぎ、ひろい部屋でたくさんのカププラを走らせていました。派手な大量の写真が惜しげもなくアップされ、ファンがそれを見に押し寄せていました。総天然色の絢爛なデザインは、ファンの夢の王国を体現していたのです。

そして管理人氏はレギュラーシリーズをほぼコンプリート、レアアイテムも執念でゲットしたのです。整理されたデータベースこそ作りませんでしたが、きっちりアルバムをアップしたのですから、需要があるのも当然でした。

強烈な欠点を無数に抱えたサイトでしたが、すべて美点の前にかすみました。そうだから、お上品な他サイトの10倍もの閲覧者数を誇っていたのです。

見た目の改善が無意味だというわけではありません。それでお客さんが2倍や3倍に増えることはありえます(たいていは効果ありませんが)。けれども、せいぜ2倍、3倍なんです。10倍、100倍にはなりませんよ。大切なのは「嫌われない」ことじゃないんです。いかにコアな読者層の「需要」を捉まえるか、なんです。

emeth さんの Web サイトは面白いと思います。頑張って書いていらっしゃる。でも4ヶ月で1500しかカウンターが回らない。それで悩んでいらっしゃる。

人気がないのだとすれば、その理由はひとつしかありません。現在 emeth さんのサイトの需要が、それだけしかないのです。よそのサイトを見て、「あんなつまらないのが何でウチより人気あるんだ」と思っても無意味です。どちらのサイトも日本人の99%以上が読む価値を見出さない路傍の石に過ぎません。そのことに気付けば、世の中のほとんどの人気サイトが自分から見てつまらないのは何故か、得心されるはずです。

emeth さんにとってはどうあれ、人気サイトにはそれなりの需要があります。ではどうしたらいいのか。

これほど長い文章を読まされて、こんな答えでは怒られるかもしれませんけれども、私はこう申し上げます。「売れる本の書き方がわかっているなら、出版社が倒産するはずがない」と。問題点がわかったところで、結局、どうしようもありません。ウソにだまされて無駄な苦労をせずにすむだけです。

もし、人気さえ出るなら何でもやる、といことなら簡単です。才能頼りのテキストサイトなんかやめてしまえばいいのです。書店で専用コーナが作られているようなジャンルのハウツー本をたくさん買ってきて、お勉強の成果をどんどんサイトに書いていく。需要が大きく役に立つ情報を無料で提供すれば、当然のように人気が出るものです。

でも、そんなことをするつもりはないわけでしょう。であれば、ここで発想を転換した方がよいだろうと思うのです。

「正法眼蔵随聞記」には、こうあります。

切に思うことは必ずとぐるなり

ただしこの言葉には裏があります。何を思い、何をすればよいのか? その答えは「少欲」「知足」「精進」の3語に集約されます。何でもかんでも願い望めば叶うわけではありません。欲を少なくし、足るを知り、なおかつ精進することなしに物事を成すことはできないのです。

私は、現状に満足されることが、幸せへの道だと考えます。しかしだからといって、なーんだ、これだけしかお客さんが来ないなら更新頻度も半分でいいや……とやってしまうと、現状の維持さえできません。少欲、知足に続けて精進が欠かせない所以です。

がっかりされるかもしれませんが、これで私のアドバイスは終わります。

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平成16年8月17日

年初からずっと休んでいたアドバイスを、再開します。規約を大幅に改訂しておりますので、以下、よくご覧いただいて、条件に納得の上でお申し込みください。

お申込の手引き
お申し込み書式(全て必須)
  • サイト名およびURI
  • 簡単な自サイト分析
  • 具体的な疑問・ご相談
アドバイスの内容
  • 疑問、ご相談をいただいた件について私見を述べます
規約
  • 非営利個人Webサイト限定
  • お一人様1回限り
  • 備忘録でアドバイスを公開します
  • (なるべく)2週間以内に
  • ご質問・ご相談はお気軽にどうぞ
  • 移転等、事後の状況変化には無対応

現在、5件待ちです。これから申し込まれた方には、おそらく2週間以内にはアドバイスできません。ご了承ください。

ところで、アドバイスの過去ログは2年近く更新が止まっています。メールで方々に出してきたのですけれども、「面倒なことは先延ばし」にしている内に、ちょっとやそっとではまとめきれない量となってしまいました。おそらくもう、整理された形では公開されないだろうと思います。楽しみにされていた方にはお詫び申し上げます。

平成16年8月7日

この記事の筆者が意図的にか、あるいは単なる不勉強のために書いていないことについて、触れておきたい。

みなさんよくご存知の通り、日本のインターネット網は電話線ネットワークとともにある。インターネットの中枢が大手町にあるのは、そこに NTT があるからだ。さて、ここで注意していただきたいことがある。

なぜ、インターネットは従来の電話網と同等の信頼性が確保できないのか? 「そういうものだ」ですませずに、利用者は疑問に思っていいはずだ。

5月の事故は分電盤の故障によるものだった。インターネット関連企業は軒並みやられたが、電話は通じた。理由は簡単、高度な信頼性を誇る専用の無停電機構を備えた電源を使っているからだ。地震で停電した地域でも電話交換機が動くのは、なまじっかの地震では壊れないビルと電源装置の組み合わせが採用されているからに他ならない。

以下、余談。読み飛ばし推奨。

有線の電話網では競争相手のいない NTT だからこそ、前述の贅沢が可能となっている。ちなみに、NTT ドコモは、NTT 東西の電話網と同等の機能を持つ電話交換機に用いる電源について、NTT 東西の3分の1の値段をつけた。今でこそ NTT 東西も業者を競わせて値切るようになってきたけれども、NTT ドコモの衝撃は先輩社員の語り草だ。「ついにそういう時代がきたか」と思った、という。

そして、10年近い月日が経った。官民あげての「低価格化」ブームは、今後ますます高まってゆく。高速道路の非常電話が1基30万円(年割)というのが道路公団民営化のときに槍玉に挙げられた。携帯電話にすれば10分の1になるじゃないか、と。馬鹿をいうんじゃないよ、である。電話を知っている人間なら、30万円の理由がわかる。

非常電話は「絶対に不通になってはいけない」から、特別のシステムを組んでいる。1台毎に専用の無停電電源が備わっている。土砂崩れ、橋げたの落下、洪水、そうした最悪の状況下でも通じなければいけないのが非常電話で、そのために多くの人間が誇りをかけて仕事をしてきた。

たしかに、非常電話の用途で最も多いのは JAF を呼ぶことだろう。でなければ交通事故の通報。そういった場面なら、たしかに携帯電話でいい。でも、本当の非常時に通じなくていいのか。「いいんだ」といえる人だけが、30万円のものが3万円になったといって喜んでほしい。

勘違いしている人が多いと思うけれど、電電公社はぼったくりをやっていたわけじゃない。グループ全体で考えれば、社員の給料だってふつうだった。国営だから、ぼろ儲けしたって事業拡大はない。だから電電公社は、ひたすら電話網の信頼性の向上に努めてきた。NTT になったとき、民間企業になって機材の納入価格はすぐに30%下がった、などといって公社時代の高コスト体質が批判された。そのとき、電話網の信頼性も3%低下した、という話は業界紙にしか載らなかったという。

それでも NTT は、固定電話事業に見切りをつけた数年前までは、曲がりなりにも信頼性の確保に矜持を持っていた。

今はもう時代が変わった。NTT 東西も、遠からず、ドコモ並みの値段を提示してくる。そういう値段を提示しておいて、以前と同等の信頼性を求めるのは無理なんだ、利用者にはどういいつくろってみてもね。かつての NTT ご用達の電源メーカは自衛隊ご用達の電源メーカでもあった。ドコモ向けの電源メーカとして電話業界に参入してきたのは、民生で安いものを作ってきたところで、技術の背景にある思想が全然違う。

とはいえ、NTT に電源を納めてきたメーカのひとつは、昔、洗濯機を作っていた。かつて日本の電気製品は丈夫だった。とすると、昔の家電メーカは軍事レベルの堅牢性を持った商品を作っていたのかもしれない。

母が嫁入り道具に持ってきた電子レンジは、20年以上も現役だった。捨てる前に分解してみたら、あまりにも簡単な作りなのでビックリした。そんな商品が、月給の2倍近い値段(1978年に約30万円)だったのだ。父が若い頃に買ったレコードプレーヤもまた、月給より高かったという。

モノの程度と値段をきちんと見比べてほしい。最近の薄型テレビ、値段はたしかに高いけれど、一昔前のビジネスのやり方が通用するなら、あれはまだ軽自動車並の値段でなければウソだ。各社の薄型テレビで発火事故があってリコールが行われたが、いずれも無茶な設計と、それを見過ごす忙しい検査体制が祟っている。

日本の電気製品はよく壊れるようになったが、日本車は今でも信頼性が高い。値段の叩きあいになっていないから、ともいえるけれど、それはつまり消費者がまだ、信頼性を本気で重視していることの表れでもある。中国から安い車を輸入して売ろうとする業者は、まだ珍しい。輸入した新車を月給の2倍や3倍で買うような時代が来たら、車の安全性も泡と消えたと考えてほしい。

よく基盤が壊れた、とか素子がイカれた、なんていうけれど、電気製品が壊れるのは、まずモノの部分である。次に基盤のハンダがやられる。電子部品ひとつひとつは、基本的に壊れない。素人向けに粗っぽくいうなら、そうでなければ、何百万もの素子をひとつにまとめた LSI なんて商品は成立しないのだ。

叩くと映るテレビ、というのは、まず端子の接触が怪しい。でなければハンダに亀裂がある。こういった問題にきちんと対処して信頼性を確保するには、どうしたって時間とお金がかかる。頑張れば値下げできる……それはそうだが、だからっていきなり半額とか、ましてや10分の1の値段になるものではない。しかし実際には、技術革新抜きでそういうことが行われている。

何でそんなことが可能になったか、というと、ベストエフォート型のサービスを日本人が許すことがわかったからだ。信頼性より値段を重視することがわかったからだ。電話は人の命に関わる生活インフラだから、これまで必死に「絶対」を目指してきたのに、と技術者はこぼす。

インターネットの基盤が脆弱なのは、利用者が金を出さないからだ。いざというときのために投資することを許さず、平時の転送速度増大に注ぎ込むことばっかり要求する。

こうした軽薄な風潮がどんな結果をもたらすか。それは目に見えている。

参考

平成16年8月7日

日本が3-1で中国を下した、今日のサッカーアジア杯決勝の話(と書いておかないと後でわかんなくなるので)。寮の食堂のテレビで同僚と一緒に観戦。

そりゃたまにはあることなんだろうとは思っていたけれど、実況中継で「神の手」を見たのは初めて。ワーイと喜べるものかと思ったら、全然そうじゃない。みんな凍りついてしまった。卑近な感覚としては、自己申告しないとヤバイ(詳細は略す)んじゃないかな、とハラハラしたし、そもそもこういうルール外の得点は気持ちのいいものじゃないことを思い知らされた。

もうセミも鳴いていない。静けさに耐えられなくなって、ビールをゴクゴク飲んだ。

それからはまったく気が気ではなくて、額に汗だらだら。とにかく居心地が悪く、何かよくないことが起きそうな気がして、怖くなった。数分後にはみんな、元通りに話をしていたのだけれど、誰の表情にも強張りがあって、なんだか悪霊に憑かれた人々、って感じだった。そんなわけで、3点目が入ったのにはホッとした。ホント、勝てばいいってもんじゃない。寿命が縮んだような気がする。今回はテレビの前で、つくづく反省させられた。でも、のどもと過ぎれば何とやらで、また愚かなことを口走ることは目に見えていて、気が重くなる。

今回のアジア杯決勝トーナメントは、毎試合、最後まで目が離せなかった。テレビ番組としては最高だけれども……いやはや。何はともあれ決勝戦、きれいな形で3点目が入っての勝ちで、本当によかった。

追記:2004年8月8日

Twenty minutes into second half, that had been evenly contested after the restart, Japan took the lead as Nakata wrote his name in the annals of the 'hand of God' goals.

こういった審判のミスで試合の結果が左右されるケースはしばしばあるのだそうで、サッカー観戦に慣れたファンなら、そんなに蒼ざめるようなことでもないのだという。日本2連覇!決勝戦レポートで中田浩二選手はゴールシーンは、ラッキーかもしれないけど、強引に行った。諦めない気持ちがゴールにつながった。とおっしゃっている。お互いシャツを引っ張ったりして、大抵どの選手も手が大活躍なのだけれど、そういう感覚が少し見えた気がした。

学校の授業のサッカーでは、シャツを引っ張ったりしたら必ず先生に叱られたし、お互いそういう行為は許さなかったものだ。世の中の標準はそんなものじゃないんだね。

おまけ:迎賓館裏口経由