趣味Web 小説 2011-12-09

肩寄せ合って生きていく (仕事の話1)

古い記事を、いくつか読み返した。あの頃は、低成長とはいっても、景気がよかったな……。

1.

  1. みんな定時で帰る。どんなに能力の高い人も、定時帰社でこなせる以上の仕事は請け負わない。とにかく残業はしない、させない。
  2. それでは仕事が終らないなら、人を増やす。同じ量の仕事をこなすのに、競合他社より多くの人を雇うのだから、その分、給料が少ないのは当然だ。
  3. 優秀な人と、そうでもない人との差は、一定の勤務時間内における成果の差として現れ、それに基づいて給与や昇進に格差をつけることになる。
  4. 優秀な人が残業までして、他の社員にいっそう大きな差をつけること、逆に長時間労働で能力差を逆転することを、いずれも認めない。許さない。

人手不足の時代ならいざ知らず、人余りの時代である。日本中の会社が、上記の方針で経営されるべきだ。しかし、この方針は、ふつうの労働者にはウケが悪い。上記を7割くらい実践しようとしてきた会社を約10年間、内側から見つめてきて、つくづく実感した。

もっと働ける。もっと給料がほしい。優秀な人ほど、そう思い、他社へと移っていく。残った側は、彼らより明らかに低い自分の能力を知っている。会社に残った少数の優秀な人はみな管理職になり、そのことに不満はない。だが有能ならざる多数派に属する私たちは、将来不安に脅えている。これで本当に会社は存続できるのだろうか。この給料では、将来に備えた貯蓄も難しいし……と。たまたま私は倹約家だから、慈善事業に寄付できるくらいだが、多くの同僚には余裕がない。

そうした状況をつぶさに見てもなお、去る者を追わず、淡々と人員を補充する経営陣はすごい。現代の奇跡だと思う。

2.

病気の派遣社員を「交代させろ」と積極的に主張した若手社員たちは、みんなリーマンショックの前に他社へ移った。1つ以上の特許がある若手社員には連日のようにヘッドハンティングの電話があった。さすが研究開発部門、僅かな例外はあったが、優秀な若手社員をゴッソリやられた。

送別会で聞いた話では、給料が下がるという人は皆無。給料が2倍になって、課長より高給取りになるという人までいた。仕事が厳しくなるとしても、みな「望むところ」だといっていた。

結局、残ったのは、飲み会の欠席者と、あのとき自らは口を開かず無言で頷くにとどめた人だけだった。これほどハッキリ明暗が分かれるのであれば、なるほど「採用面接で人柄を見る」のもまんざら不可能への挑戦とはいえないんだな、と感じた。

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