本稿は、作文を非常に苦手とするお子さんをお持ちの保護者の方に向けて書かれています。夏休みの宿題として作文を書かねばならない本人が読むのに適した文章・内容ではありませんので、ご注意ください。
読書感想文も、作文です。
作文が苦手な方は、「読書感想文らしさ」など気にする必要がありません。そんなことよりも、とにかく規定の枚数分、原稿用紙のマス目を文字で埋めることに集中すべきです。そして、とにかく感想文を書き上げることができたら、大いに誉めましょう。
最初から、素晴らしい作文が書けてしまうような魔法はありません。私自身、大した作文は書けません。ただ、文章を書ける(=「話す」ように「書く」ことができる)能力は、この先の人生において、必ず役に立つものです。うまい作文でなくてもいい、先生には誉められなくてもいい、今はただ、作文を書き上げること。それが大切です。
私は、「1行読めば書ける」といった道筋は解説しません。作文が苦手なお子さんは、そうした解説を読んだって、やっぱり書けないからです。もっと根源的な問題があるのです。
読書感想文は、「参照用テキストが用意された課題作文」です。
したがって、じつは手をつけようがない「自由題」の作文などよりも論点がハッキリしており、書きやすい作文だといえます。
また、従来の作文指導の手順は、全て読書感想文にも応用できます。
これらの解説は、そのまま読書感想文の指導手順ともなっています。
本稿を最後まで読まれましたら、作文講座を最初から順にご覧ください。
お子さんと会話し、30分間以上の録音記録を作ることが、全ての出発点となります。
人権作文、おかねの作文、旅行記など通常の作文テーマであれば、保護者の方は事前準備なしでお子さんと会話することができます。読書感想文は違います。指導する保護者も、事前に参照用テキストを読まねばならないのです。
子どもだけに本を読ませて会話に臨むと、悲惨な結果となります。これは警告です。
ですから、保護者の方が簡単に読める本を選択してください。とはいえ、本の感想をテーマに30分間会話し続ける必要があるので、あまりに無内容な本でも困ります。
課題図書はその点、よく考えられています。迷ったら課題図書を選択されるのが無難です。ただし、作文の苦手なお子さんはたいてい、本を読むのも苦手です。1段階低年齢向けの本を選ぶのが安全ではあります。
……じつはここが考えどころでありまして、今年の課題図書の中でそれをやりますと、お子さんが傷つく場合があります。そのあたり、うまく処理できる自信がないのであれば、多少背伸びをしてでも対象学年通りの本を選ぶ他ありません。また課題図書以外から本を選ぶ場合であっても、著名な作品ですと、やはり選択した本の対象年齢の低さが、からかいなどの原因となることがあります。
本来、難し過ぎて読めない本をうまく避けるための年齢区分なのであって、例えば大人が童話を読んでも全く問題ない。そうしたことをきちんと子どもに教えられるか? じつは、それだけなら、そう難しい話ではないのです。問題は、子どもが心無い攻撃にさらされたときに、それに耐える強さを育てられるか、なのです。
杞憂であれば、けっこうです。しかし私は、中途半端に賢い子が、少し学習面で遅れる子を手ひどく攻撃する場面に、幾度も遭遇してきました。子どもたちの生きる世界は残酷です。作文指導の域を超えた問題ですけれども、あっさり無視することはできません。
作文が苦手なお子さんは、たいてい本も読めません。放っておいたら、読まない。ではどうするか。
一番よいのは、「読み聞かせ」です。小学校高学年になると、子どもはハッキリと恥ずかしがりますけれども、これまで一度も読み聞かせをしたことがないのであれば、ラストチャンスだと思って挑戦されることを勧めます。
読み聞かせは姿勢がポイントです。必ず、子どもが本文を読めるような位置取りをしてください。
親子仲がよく、スキンシップに抵抗がないのであれば、腕まくらするような形で長いすに座って、あるいはひざの間に子どもを座らせて(この場合、保護者の方は子どもの頭越しに本を読みますので、一定以上の体格差が必要です)、読み聞かせをします。こうすれば、子どもの正面で本が開かれるので、ベストなのです。
小学校中学年以上ですと、先述のような位置取りは子どもが嫌がる場合があります。その場合は並んで長いすに座るなどして、ふたりからよく見える位置に開いた本を保護者の方が音読します。
そして可能ならば、お子さんにも半分程度の音読を任せてください。これは漢字の読みの指導方法としても有効です。なお、非常に多くの方が間違えるのですが、お子さんの音読が下手くそでも、叱ってはいけません。お子さんの音読が下手だとすれば、それはあなたがこれまで何も指導してこなかったからであって、むしろあなたが謝らねばならないのです。
子どものたどたどしい読み方には、「ただそれだけの文章を音読することが、その子にとってどれほどの苦痛か」が現れています。頑張って1ページ、2ページを音読した子を叱るなんてとんでもない。頑張れ、頑張れと励まし、読み終えたらよく誉めるべきです。
本当に教育熱心な方は、ふだんから国語の教科書を子どもと一緒に音読したり、漢字の「指書き」指導をていねいにされているものです。これは成績アップの秘術なので、もし興味をお持ちであれば、ここでひとつ修行されてですね、今後の恒常的なご指導に役立てていただきたいと思います。
多忙で、どうしても読み聞かせができない場合には、お子さんと「どちらが早く読み終わるか」という競争をしましょう。何せ相手は一日中暇なわけですから、興が乗れば1~3日で読了します。ようはその波に乗るまで、どうやってやる気を持続させるかなんですね。「親子で競争する」のも、そのひとつの手段なのです。
なお、子どもが本を読み終えてしまったら、保護者の方はなんとしてでもその日のうちに読了すべきです。なので、ハリー・ポッターなどを選択するのはやめましょう。200ページ以内の文字の大きな本でなければ、つらい。
また、読み聞かせは全頁について行わねばならないというものでもなく、一部だけでも価値がありますので、時間の都合がつけば、少しだけでも読み聞かせをした方がいいだろうと思います。
(2006-08-14)