とにかく「書けちゃう」方法・2

とにかく「書けちゃう」方法・1 の最難関はテープの文字起こしです。それがあまりに大変である、という意見はよくわかります。

パソコンの文字入力に慣れていないお子さんの場合、最悪、一週間かかってしまいます。そうなると本末転倒という感じもするわけです。いずれパソコン(というよりキーボード)には慣れるべきでしょうから、どこかで文字入力の練習はしなければならないのですが、それが絶対に今でなければならないかというと、そうでもないのも事実でしょう。

私は、一度は必ず文字起こしをやった方がいいと考えています。30分全部が無理なら、最初の5分間分だけでもやるべきだと思う。

その理由は後述しますが、とりあえず、テープ起こしを省くことは可能です。その場合の作業手順は以下の通りです。

  1. テープレコーダーを用意する。
  2. テーマに沿って親子で雑談をする。
  3. 必ず30分以上、雑談を続ける。
  4. 親子でテープを聴き「残す」「捨てる」を決める
  5. 短くまとめる。(パソコンで下書きす)
  6. 原稿用紙に清書する。

親子でテープを聴く

お子さんが大好きな保護者の方は、このテープを家宝にされるとよいでしょう。

さて、テープの聴き方ですけれども、事前に次の説明をしてください。

「いろいろ話したことをまとめて作文にします。今回は、会話をそのまま作文に使っていくことにしましょう。30分間話した内容を全部書くと原稿用紙30枚になってしまうので、必要なところと削っていいところを一緒に決めていこうね。」

ある部分を残すかどうかについては、できる限り子どもに決めさせてください。その結果、多くなり過ぎても少なくなり過ぎても問題ありません。そのうちに子どもが気付きます。

紙に下書きしてはいけないのは、こうした問題に柔軟に対応できないからです。後から内容を削ったり増やしたりするためには、必ずパソコンで下書きする必要があります。そうでないと、子どもは面倒を嫌って場当たり的な、適当な方法で対応しようとします。

この作文講座で重要なことは、話した内容をそのまま活かして作文に仕上げることです。適当に取り繕うのは、今するべきことではありません。だから、言葉を足すなら必ずテープを聴いて会話を拾うよう指導してください。紙では、そこがいい加減になるのです。

さて、テープを聴いている間は余計な口をなるべく挟まず、適宜、子どもに決断を促してください。そして決断の理由をきちんと聞き、「よく考えたね」と誉めましょう。子どもは自分の意見を否定されると、以降、無口になります。当面は何でも肯定でよいのです。

何を消し、何を残すかは、子どもにメモを取らせてください。テープはその都度止めます。そして、テープの文字起こしをしない代わりに、要約を書かせることを勧めます。非常に簡単な要約、あるいは小見出しのようなもので結構です。

テーマ
よりよい消費者になるために
  1. はじめ(削る)
  2. 私のお小遣いは多いか少ないか(残す)
  3. 金持ちはいつから金持ちなの?(残す)
  4. (以下略)

こんな感じでメモを完成させてください。

下書きの指導

下書きの指導には十分、注意してください。

発言の一字一句変えてはいけない、と厳しいことをいう必要はありませんが、「つまらないやり取りまで、きちんとテープに従いなさい」と明言する必要はあります。

下書きができたら、「よく頑張ったね」と誉めましょう。作文の完成までは、あと一息なのです。

下書きをテープと比較してください。概ね口調や雰囲気が写し取られていれば構いません。子どもは手抜きしようとして発言を適当に省略することがあるので、その点はきちんと指導する必要があります。

誤字はきちんと指摘してください。

分量に問題があれば、書き足すか削るかしましょう。書き足す場合にはテープから会話を持ってくるよう指導してください。

最後に、30分の会話の一部を抜き出したわけですから、会話が飛んでいる箇所がありますね。もし不自然であれば、20~60字でト書きを作って間をつなぐよう指導します。どうつないだらよいのかについては、まずは子どもの答えを待つべきです。

このト書きを上手に書かせるのには苦労します。あまり多くを期待しない方がベターです。保護者が作例を示してしまうと、あまりお勉強になりません。指導の際には以下の手順を利用されるとよいでしょう。

  1. よく書けたね。偉い!(上手でも下手でもとにかく書いたことを誉める)
  2. じゃあ声に出して読んでみるよ。
  3. (ト書きの数行前から数行後まで読む)
  4. どうだったかな?
  5. ちょこっと、変な感じがするんだけど、私の気のせいかな?
  6. 具体的に何がおかしいのか指摘する。

なるべく4番目のステップで頑張りたいところです。6番目までいってしまうのは、避けた方がいい。といいますのは、文章の接続を自然にできるかどうかというのは、日本語の豊かな体験抜きには語れない問題であって、拙速に教え込むのは得策でないからです。

結局、子どもが全然変だと思わないものを無理に直しても、それは親の作文にしかなりません。作文は総合力が問われる課題なので、作文のできには国語力の過半が現れます。しまし実際問題、作文から国語を教えるのは難しいのです。

接続詞は接続詞単体でお勉強した方が効率がよく、「前後をつなげる文章」という高度な概念をきちんと操るには、説明文の読解について学んでいくことが不可欠です。作文指導では、作文指導でしか教えられないことに注力しましょう。

子どもの作文をみて、いろいろもどかしい思いをされるかもしれませんが、一度に多くを教えることは避けてください。作文は子どもを誉めるきっかけの宝庫です。何事かを教え込むことよりも、いかにしてたくさん誉めるか、ということに注意を集中してください。

清書の指導

ト書きも含めて分量が規定枚数ピッタリになったら、原稿用紙に清書しましょう。この作業を親が手伝うことは厳禁です。清書は、パソコンの下書きを印刷して、それを見ながらやるのがお勧めです。パソコンの画面と見比べながら清書するのはうまくありません。

ところで、子どもが清書に飽きてしまうことはよくあります。ひとつの対処法は、保護者と競争させることです。ただしハンデをつけましょう。また一気に全部書くのは無理です。原稿用紙1~3枚ごとに一息入れましょう(その都度、勝敗を決めてもよい)。

文字起こしの効果について

私はそこそこのスピードで文章を書きます。もちろん提出作文には難渋するわけですけれども、書きたいことのハッキリしている文章を、とりあえずクオリティは気にせずに書き上げるのは、それほど遅くない。

例えば、このページはここまで2時間余りで書いています。決して早くないけれども、小学生の頃の、1週間かけて1枚しか書けなかった状況とは違うわけですね。

最終的には、いわゆる「お喋りするのと同じような感覚」で文章を書けるようになること、自分の様々な思いをある程度の流れを作りながらどんどん書いていけること、そのあたりが「サバイバル技術としての作文能力」のひとつの到達点といえます。

多くの小学生・中学生は、「お喋りする脳」と「文章を書く脳」が疎遠になっています。そして、「考える脳」はきちんと意識されてさえいない。

だから、「思ったことをどんどん書けばいいんだよ」といわれても、書けない。書こうとすると考えられないし、考える方を頑張ると、文章をまとめられない。けれども、お喋りはできるわけですね。相手がいれば、表現と思考を同時に回していくことができる。

だから、そのうまくいっている状態の自分をきちんと認識し、文章脳の中に取り込んでいく作業が大切なのです。親子の会話を録音して聞く……ただ聞くだけでも効果があります。けれども、やはりそれを文字起こししていくべきですね。

文字起こしは、文章脳を鍛える最高の方法だと私は思っています。あまりに大変なのはわかっています。わかっていますが、それって筋肉を鍛える場合と同じなんじゃないでしょうか。負荷をかけずに筋肉を動かしても、鍛えられませんよね。

もちろん、無理をして潰れてしまっても意味がない。だから、一気にやる必要はありません。ただ、少しでも、ほんの少しずつでも、挑戦していただきたいな、と思うのです。

(2006-08-14)