お父さん、お母さんが料理を苦手としている場合にこそ面白い研究テーマ。
デジカメ時代です。写真をぜいたくに100~300枚使ってください。
この自由研究は、最短1日で完成します。
まずデジカメやプリンターなどは全て事前に用意しておくこと。
昼食または夕食を題材にしましょう。そして食事を作る1~2時間前に取材(インタビュー)を開始します。
得意料理や、それにまつわるエピソードを訊ねたら、続いて食材の買出しに行きましょう。冷蔵庫に全部の材料が揃っているなら、このステップは省略しても構いません。
続いて、料理を作り始めます。写真を撮りまくること。そして各作業ごとにコツなどを訊ねる。ここが難しい、むかしここで失敗した、などのエピソードもできる限り引き出す。
完成した食事をおいしくいただき、みんなの感想を収録。
ここからが作業の本番。
以上で完成です。最後のステップでテープレコーダーが大活躍します。
なお、この手の作業が得意なお子さんであれば、1章と1冊をきっちり対応させる凝った構成を採用するなど、いろいろ工夫が可能です。ページ数を入れ、目次と索引を作る子もいます。ただ、それは例外ですね。
深く考える必要はありません。とにかく写真をいっぱい貼った、写真マンガのようなノートが何冊か完成したら、お子さんを誉めてやってください。
別にテープでなければいけない理由は全くありませんが、説明書を読まなくても小学生でも簡単に使える録音機器(しかも落っことして壊してしまっても値段的に我慢できるもの)は、他にあまりありません。
IC レコーダーも便利ですけれども、操作の簡単なものを選びましょう。録音したファイルがどこへいったのかわからなくなってしまうようなことがあると、たいへん困ります。
デジカメもテープレコーダーもそうなんですけれども、プロの取材者は意外と記憶を信頼していません。きちんと機械的に採取した記録を、バックアップとして持っておこうとするものです。小中学生の自由研究においても、この姿勢は見習うべきです。
インタビューしながらメモをとることの重要性は今も変わりませんが、その意義は「聞いたことを忘れないようにするため」から「重要なことを重要なことと再確認するため」へと変質しています。相手の発言の詳細は、テープレコーダーに記録させればよいのです。インタビュアーは、話のポイントを掴みつつ質問を組み立てていくことに全意識を集中しましょう。
なお、テープレコーダーは自由研究の間中、ずっと回し続けることを勧めます。
材料の買出しに行く、スーパーで商品を選ぶ、レジでお金を払う、材料を冷蔵庫にしまう、調理器具を準備する、以下略……常に人は何事かを考えています。「ねー、なんでジャスコじゃなくてダイエーに行くの?」「ねね、そっちのトマトと、こっちのトマト、どう違うの? こっちを選んだのはどうして?」「何番のレジに並ぶの?」「野菜は野菜室、って決めているわけでもないんだね。どうして?」「あ、まな板に水をかけるのって、何でなの?」ひとつひとつの行動に、意識的な理由、無意識的な理由が存在します。
後でまとめてインタビューしよう、というのは大きな間違いで、その場その場で質問すること、語ること、説明していくことが大事なんです。テープレコーダーを回し続けることは、だから大切なんです。気になることをすぐその場で聞く。そのためには、テープレコーダーを回し続ける必要があるのです。
この手の研究は、文字中心でやろうとするとたいてい失敗します。なぜなら、ルポライターのような筆力が全くないからで、何より分量の点でみすぼらしいものとなりがち。
デジカメ時代の到来によって、素人でも写真を100枚、200枚と撮って活用できるようになりました。これを活かさない手はありません。
あらゆる場面でどんどん写真を撮りましょう。要らない写真を後で捨てることはできても、後で増やすことはできません。
インタビュー中は、随時、写真を撮ります。インタビューに熱中すると、すぐに写真を忘れますから、注意が必要です。どんどん撮る。恥ずかしがっても気にせず撮ることが大切です。その内に表情が柔らかくなります。
車に乗ってスーパーへ材料を買いに行くのであれば、まず車を写します。運転席に誰が座るのか、ちゃんと写真に記録します。そして社内の様子も写す。スーパーが見えてきたら、その遠景をパチリ。駐車場の様子も記録。買い物カゴも撮影。まず野菜売り場へ。売り場の様子をパチリ。
万事、この調子でやっていく。とくに食材の選び方などは興味深いポイント。どの野菜がダメで、どの野菜がいいのか、その判断基準、実際の見た目などをどんどん記録していきます。
画像の大きさは 800×600 程度で十分です。もっと小さくても構わない。ただし、屋内での撮影となりますので、フラッシュや証明については保護者の方で事前に知識を蓄えておく必要があるでしょう。子どもが「きれいな写真が撮れない」と困惑してから説明書を開くのでは遅すぎます。
また、調理中の撮影には十分注意してください。火には近づかず、ズームでカッコいい写真を撮ってください。
お話はテープレコーダーで記録、ビジュアルはデジカメで記録。
前述のように何から何までテープレコーダーとデジカメで記録していくことは、自由研究を短時間で仕上げるためには必要不可欠です。
考えたり悩んだりするから、自由研究はたいへんなのです。けれども、本当はそんなもの、馬鹿馬鹿しいのですよ。だって、お父さん(お母さん)が得意料理を作る過程を取材しながら、既に十分、考えたはずではありませんか。多くのことを学んだはずではありませんか。それを素直にそのまま表現していけばよいのです。
と、こう書きますと、それなら別に、テープレコーダーもデジカメも不要なのではないか? という意見が出てくるでしょう。たしかにその通り。けれども、やってみればわかります。記憶とメモに頼った取材では、自分が見たまま、感じたままを記録として残すことが非常に困難なのです。
結局、忘れてしまうのですね。ひと段落してから机に向かうと、生の感覚が掌から水のように流れ落ちていくのです。もちろん、こうして一拍おくことで余計なものが消え去って、物事の本質が見えてくるケースもありましょう。新聞記事などは、そうして書かれているわけです。しかし夏休みの宿題としての自由研究には、向かない方法だと私は考えます。
夾雑物を排除した後に残るのは、レポート用紙1枚にも満たない内容であることが多いからです。それはなぜかといったら、大した実験をしていないからです。突っ込んだ取材をしていないからです。
私は常々思っています。初心者に、物事の本質だけを教えることが可能なのか? あるいは、本質だけ教えていけば、それでいいのか? いずれも、No だと思うのです。
いろいろ勉強したことをまとめる、という作業は、どこかでやらなければならない。そういった訓練は必要でしょう。私も、そのことは認めます。けれども、その前段階として、お勉強したことを全て記録する段階がなければおかしい。実力不十分の人間が情報を取捨選択を行う危険性について、配慮がほしい。
近年の学校教育では、総合学習などと称して「取材」と「まとめ」の学習が称揚されています。ところが、これがとんだ片手落ちになっているのです。「まとめ」の方しか評価されない。ある意味、取材をサボって全部でっち上げたって、その嘘がバレなければいい。
これはシステムの問題なのです。「まとめ」の前に、「取材」した全データを公開させる必要があるのです。このとき、文章を書かせてはいけない。そこには嘘が入るからです。子どもはすぐに嘘をつく。それは必ずしも意図的なものではなく、単に記憶の混乱であることも多い。
だから、「取材現場の声」を録音させること、「見たもの」を撮影すること、それらを生の実感を生かした状態で整理してみせることが必要なんです。
今回、私が提案する「簡単な自由研究のコツ」では、「まとめ」については解説しません。それは次の段階だと考えているからです。あるいは、そんなことはこの先何回でも挑戦する機会がある。夏休み、親子が長期間一緒にお勉強に取り組むことができるこの唯一の機会にやっておくべきことは何なのか。それは「取材」の訓練なのです。
「自由に研究する前に」でも図書館の活用法を親子で学ぶ道筋を示しました。学校の授業は、このあたりが非常にいい加減になっているのです。きちんと教えてくれないのです。学校任せではダメなのです。だから、保護者の方が頑張らねばなりません。
自由帳1ページにつき写真を2枚しか貼ってはいけない。これは鉄則です。
写真の説明は20~80文字としてください。長文は厳禁です。これも鉄則です。
以上2点をきちんと守れば、結構いい感じのノートが完成します。ていねいに写真を貼るよう、よく指導されるとよいでしょう。ただ、枚数が枚数ですから、途中でグッタリ疲れてくるだろうとは思います。
頑張れば1日で完成する自由研究ですが、2日かかってもおかしくはありません。
お子さんに簡単な料理をさせるオマケについては、保護者の方が取材・まとめをされるとよいでしょう。ノート1冊でピッタリ収まるように材料を精選して、密度の濃いものとするよう頑張ってみてください。
オマケを先にやってはいけません。子どもがサボる口実になります(「ねー、今年の自由研究、これでいいじゃない。頑張って料理したんだし、いいでしょ?」)。時間と余力がある場合だけ、取り組んでください。
簡単なのは間違いないけれど、やっぱりそれなりにたいへんな作業だということが理解され、頑張って自由研究を仕上げたお子さんに対して、少し優しくなれるのではないでしょうか。これを学校に提出するかどうかは別として、少なくともお子さんへのよいプレゼントにはなるはずです。
1冊のノートには収まりませんので、箱か袋に入れて提出します。
(2006-08-14)